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フォレストサイドハウスの住人達(その21)(674)

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2018/03/16 (金) 11:51 ID:enmyrC3g No.3103
由美子演出・主演のドラマ、そのクライマックスはかなり前の章で、すでに書きましたので、少し気
の抜けたビールのようになりました。もう少し全体の構成を上手くまとめれば、面白いものになった
かと反省しております。しかし、これも書き流しの小説の味だとご理解いただき(勝手な言い分です
ね)ドラマのクライマックスに至る経緯や、クライマックス後の役者たちの動向を楽しんでいただけ
れば、作者冥利に尽きます。それでは相変わらず変わり映えのしない市民の物語を始めます。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その11)』
の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。また、文中登場する人物、団体は全
てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきます。卑猥な言葉を文脈上やむを得ず使用
することになりますが、伏字等で不快な思いをさせないよう注意しますが、気を悪くされることもあ
ると存じます。そうした時は読み流してご容赦ください。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字余脱
字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるようにしま
す。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した当該記事を読み直していただけると幸いです。

・〈(1)2014.5.8〉文末にこの記事があれば、この日、この記事に1回目の手を加えたことを示し
ます。
・〈記事番号1779に修正を加えました。(2)2014.5.8〉文頭にこの記事があれば、記事番号1779に
二回目の修正を加えたことを示し、日付は最後の修正日付です。ご面倒でも当該記事を読み直してい
ただければ幸いです。


それぞれの道

咲江を円満に村上と別れさせる。これが由美子、千春、そして愛の究極の目的です。そして夫、坂上
夏樹には浮気の事実を知られないことが絶対条件です。既に、千春の心からなる説得は空振りに終わ
りました。性的不能の窮地から村上を救い出した咲江は村上の愛情と信頼を独り占めにしていると、
自信満々です。なまじのことでは咲江を翻意させることは困難に思えます。千春が挑発して、咲江は
由美子たちが仕掛けた罠近くに駆り出されました。いよいよ、切り札、由美子の登場です。

銀座に出物の店舗を探しているバーのマダムになり切って、由美子が村上の事務所を訪問する日程が
決まりました。由美子から決行の連絡を受けた千春は、自宅に居る咲江に連絡をいれました。

「お待たせしたけれど・・、
村上さんを探っているスタッフから連絡が入りました。
今日・・、村上さんは女と会う・・・
おそらく・・、彼のアパートでセックスすることになる」

「エッ・・、
本当なの・・・
信じられない・・・」

「間違いない‥、
それで、今晩、
咲江に出張ってほしいけれど・・、
時間はとれるかしら‥」

「主人は研究で遅くなると言っているし・・、
子供たちはおばあちゃんにお願いするから問題ない・・、
何時からなの…」

「午後7時に咲江の自宅へ私が迎えに行く…
二人が食事をする店をスタッフが調べて、
私達に連絡してくることになっている…、
それから先は、私にも、判らない…・
長い夜になるかもしれないから、そのつもりでいてほしい‥」

「判った…、
主人には千春と一緒だと言い訳するから、
口裏を合わせてほしい‥」

「その件は了解よ・・、.
ところで・・、大丈夫・・?
好きな男の浮気現場に乗り込むなんて…、
私だって嫌だから・・・、
そんな経験を無理に咲江にさせたくないと思うから・・」

「良いわよ‥、
村上さんに私以外の女が居ると言うのなら・・
その女が見たい・・・」

「判った・・」

こうしてドラマは開幕したのです。


事務所での商談が終わり、由美子が計画したとおり、村上が由美子を食事に誘いました。

「ほら・・・、通りの向こうにレストランが見えるでしょう…、
一時間ほど前に村上さんがきれいな女を連れて、
あのレストランへ入ったらしいの・・。
ここで彼らの食事が終わるのを待ちましょう‥、
ここに座っていると、
レストランに出入りする人が良く見えるから・‥」

村上を尾行しているスタッフから連絡を受けたことになっていますが、店内から、由美子がこっそり
千春へ連絡をして、レストラン名を教えたのです。そして千春と咲江は、そのレストランとは狭い道
路を隔てた喫茶店に入ったのです。その喫茶店の窓から、レストランの出入り口が監視できるので
す。


[41] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(713)  鶴岡次郎 :2018/07/19 (木) 16:39 ID:z9JwB1hM No.3148
「本気で奥様を奪う作戦を練りました・・。
しかし・・、結局できませんでした…
あきらめる以外・・、道はなかったのです‥‥」

肩を落とし、村上は視線を床に落としています。その時のことを思い出し、やりきれない思いに
なっているのです。恋する女をあきらめると決断した男、気落ちしている哀れな姿を隠そうとしない
男を、しっかり抱きしめたいと咲江は思いました。しかし、出来ませんでした。泣き叫んでいる女心
を咲江は必死で抑え込んだのです。ここで村上を抱きしめれば、確実に、もう一人の男、夫を、突き
放すことになると、咲江には判っていたのです。どんなに村上を憐れんでも、夫を捨てて、彼の元に
走る気持ちにはなれなかったのです。

この場に居る三人三様に、思いにふけっているのでしょう・・、沈黙の時がゆっくりと流れていまし
た。

「私ごとき者のところに、奥様を引き留めてはおけない・・、
今なら、大恩ある咲江さん一家の崩壊が防げる・・、
縁を切るべきだと思いました・・。
それで・・、ある女に頼んで、芝居を打ちました・・」

驚いた表情で咲江が村上の顔を見ています、そして次の瞬間、あの女、由美子のことに触れるつもり
だと察知しているのです。

「咲江さん・・、
先日の女は私が金で雇った女です‥」

村上が先手を打って、由美子の素性を明かしました。驚いた表情を浮かべて咲江が村上を見ていま
す。そして慌てて口を挟みました。

「総一郎さん・・・、
アッ・・、社長さん‥‥、
あの女のことは主人には一切話していません…
苦しくて、悔しくて・・、告白する気になれなかったのです。
だから・・・、説明をしないと…、主人には判りません…」

また未告白の話題が明らかになったのです。坂上は苦笑を浮かべて咲江を見ています。

「そうですか・・、
あの女のことは旦那様には話していないのですね‥
何も、秘密にすることではないと思いますが…。
いいでしょう…、私から事情を説明します…」

笑いながら村上が言っています。

「奥様と別れるため、卑劣な手を打ったのです…。
ベッドで別の女と親しくしているところを奥様に見せつけて・・、
奥様をあきれさせ、私を軽蔑するように仕向けようと考えたのです…。
狙い通り、奥様は怒って、私を捨てました・・」

事情を察知して坂上が頷いています。

「咲江さん・・・、
あのような別れは・・・、
私の本意でなかったことだけは信じてください、
もっと、ちゃんとした別れ方をするべきでした‥
でも・・、別れ話をするのが怖かったのです…
心優しいあなたが別れを知って、泣き出すと、
私自身の決心が揺らぐことを恐れたのです‥・・」

「・・・・・・・」

「これが・・、私が申しあげたいことの全てです…」

そこで言葉を切り、村上は深々と頭を下げました。涙を一杯貯めた目で、咲江が村上を見ています。
坂上はゆったりと構えていて、笑みさえ浮かべています。


[42] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(714)  鶴岡次郎 :2018/07/20 (金) 16:53 ID:wEHdKWko No.3149
「それで・・、判った…、
あの日、取り乱した様子を見せて、戻ってきた咲江が・・、
身も世もなく、泣き崩れたわけが…、
最愛の村上さんが他の女と寝ているところを目撃したのだね、
それじゃ、悔しいし、嫉妬と、情欲で女体は疼くし、
メチャメチャの気分だよね・・・
咲江でなくても、女性なら誰だって、狂うよね…・」

その場の雰囲気を変えるつもりなのでしょう、明るい声で坂上が声を出しています。坂上は上機嫌で
す。この事務所を訪ねてきて一時間も過ぎていないのですが、次々と新しい秘密が暴露され、一時は
妻と村上の関係が決定的な局面に入り、離婚手前まで来ていたことを告げられたのです。そした今
は、ともかくも、二人の関係は解消した様子なのです。坂上の気持ちは晴れ晴れとしていました。

「そうなら・・、そうだと・・、
最初から、言ってくれればよかったのに…」

「だって…、いくら私でも・・・、
一年間も、あなたを裏切り続けた上・・、
最後には、その男に捨てられましたなんて…、
とても言えなかった…、スミマセン・・」

頬に涙の後を見せながら、肩を落とす咲江の肩を坂上が抱きしめています。

「村上さん・・・、
あなたの勇気に私は感謝を申し上げます。
黙っていれば、それはそれで済んだのに・・、
苦しい胸の内を、よくぞ、吐き出していただきました…。
なかなか、出来ないことだと感じ入っております…」

「・・・・・・・」

坂上が軽く頭を下げ、村上が黙って頷いています。男二人、黙っていても通じるものがある様子で
す。

「実は・・、
私も・・、お二人に告白することがあります・」

「・・・・・・」

二人の顔を見ながら、笑みを浮かべて坂上が語っています。咲江と村上が不審そうに坂上を見つめ
ています。

「村上さんと知り合ったのは二週間前で、
男と女の関係は未遂に終わったと・・・、
妻から嘘の告白を受けていたのですが・・・、
実は・・、私は最初から少し変だと思っていました。
そして、その後、決定的な証拠を掴んだのです…
ですから今日、お二人から告白を聞く前に・・・、
ある程度まで真相を察知していました・・・」

「エッ‥、バレていたの・・」

咲江が思わず口走っています。


[43] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(715)  鶴岡次郎 :2018/07/29 (日) 15:50 ID:2ZhADSkE No.3150
咲江の問いかけに笑顔で答えて、坂上はゆっくりと口を開きました。

「あの日のお前は異常だった…、
涙を流した跡が歴然としていたし・・、
それでいて・・、
全身から欲情した香りが漂い出ていた…、
これは何かあったなと・・、感じたよ‥
先ほどの村上さんの説明で納得したのだが…、
村上さんとその女の芝居を見せつけられ、
惚れた男に捨てられたお前はボロボロになって帰って来たのだね・・・」

「そうよ、何もかも終わった・・、
あなたを裏切った罰だ・・、
どうなっていいと、投げやりな気持ちだった・・。
尋ねられれば、ありのままを告白しようと決めていた…。
でも・・、
あなたは何も問いかけてこなかった・・・」

「うん・・、
下手な質問が出来る雰囲気ではなかった・・
お前が、説明するまで質問しないつもりになっていた・・」

「悲しくて・・、辛くって…、
それでも・・、
あなたを裏切っている身だから・・、
あなたにどのように説明しようか、迷いに迷っていた・・」

「でも・・、お前は・・・、
話してくれた…」

「あなたの顔を見て・・、
あなたに抱きしめられて…、
私の帰るところは、ここだとはっきり感じたの・・、
それで、すべてを話すことにした…」

その時を思い出したのでしょう、咲江が涙を流しています。

「妻の告白を聞いていて…、
妻は村上さんに惚れていると思いました・・。
それでも・・、
男と女の関係は未遂に終わったと妻は言いました・・・
妻としては、そのことだけは曖昧にしたかったのでしょう・・」

「・・・・・」

ここで坂上は村上に向かって説明を始めました。村上は黙って頷いています。

「確証こそ掴めませんでしたが、
妻は嘘を言っていると思いました。
二人は深い関係にあるはずだと推察しました。
言ってみれば、浮気妻を持つ男の勘ですかね…・
はは・・・・・・」

「・・・・・・・」

「正直に言います…、
二人が深い関係にあると思っても・・、
私にはそれほど、怒りが沸いていませんでした‥。
その場で妻を問い詰める気持ちもわきませんでした…。
他の男とのあぶない関係を告白し、泣き崩れる妻を見て・・・、
お恥ずかしいことですが、惚れなおしました…・
その時の妻は、悪魔のように魅力的でした…
こんなに魅力的に変貌するのなら・・、
少しくらいの浮気は見逃してもいいとさえ思っていました」

「パパ…・・・」

「・・・・・・」

恥じらいを浮かべながら、咲江は涙を流しているのです。村上が難しい表情を浮かべ、何度も頷いて
います。坂上が咲江に惚れなおした気持ちは村上にはよく理解できる様子です。


[44] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(716)  鶴岡次郎 :2018/07/31 (火) 15:48 ID:hhdaTZCE No.3151

「妻の罪を許すことを伝えました…・。
妻の告白をすべて信じることにして、
私からは何も質問しませんでした‥。
その後、寝室で仲直りのセックスをしたのです・・、
その夜の妻は異常に燃え上がりました…」

「・・・・」

夫婦の微妙な話ですが、神妙な表情で村上は聞いています。一方咲江は、恥ずかしい閨の行動が話題
になっているのですが、気にする風でもなく、笑みさえ浮かべているのです。それは当然です、目の
前に居る男二人には、咲江のすべてを曝しているのですから、今更恥ずかしがることは何もないので
す。

「夫に秘密を告白した解放感が背中を押したのでしょう、
それまでは決して口にしなかった、
恥ずかしい言葉を何度も叫んだのです。
それを聞いて・・、ピーンと来たのです」

「エッ・・、あの時・・、何か言ったの・・・・」

ここで咲江が反応しています。閨で、絶頂に届いた時、何を口走ったのか、そのことが気になる様子
です。

「絶頂になった時、妻が発した言葉を聴いて・・、
妻には男が居る・・・、
それは村上さんだと‥。
そして、その関係は昨日、今日始まったものではない・・、
さすがに一年も続いているとは思いませんでしたが、
少なくとも、男女の密な関係が二人の間に存在すると確信しました・・・」

笑みを浮かべて夏樹が語っています。咲江も初めて聞く内容らしく、驚いている様子を見せていま
す。

「私・・、何を言ったの…
浮気がバレるようなこと言ったかしら・・・」

もう・・、咲江は完全に開き直っています。

「気になるだろう・・」

「そりゃ・・、そうでしょう‥、知りたい・・!
もしかして・・・、
あの時・・、総一郎さん・・・て、名前を叫んだの・・?
いくら私でも・・、それは、さすがにないわね…、ふふ…
降参!・・教えて…・」

「大きい・・、大きい・・、
あなたのモノが一番好き…、
そう・・、叫んだのだ・・・」

「ああ・・・、
言ってしまったんだ…」

夏樹の答えを聞いて咲江は絶句しています。


[45] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(717)  鶴岡次郎 :2018/08/03 (金) 16:31 ID:y18mFz76 No.3152
比較すべき対象を知らない間は、いかに夫のモノが大きくとも、「大きい・・」とか、「あなたのモ
ノが一番・・」とかの発想は出ないものです。他の男を知って、初めて客観的に夫のモノが評価でき
るのです。村上との浮気を夫に告白して、一年余に及ぶ罪悪感の縛りから、咲江は解放されたので
す。そこに油断が発生したのです。夫に抱かれて、今までにないほど感じ、禁句を・・、思わず、口
に出してしまったのです。

村上は笑いをかみ殺しています。夫婦の会話に愛情があふれていて、かなり深刻な話にもかかわら
ず、笑いを誘われるのです。それで、思わず口を開きました。

「私のモノは自慢できる寸法ではないですからね・・・、
旦那様の立派で、大きなモノを受け容れた時、
貧弱な私のモノと、つい比較して、
奥さんが失言したのですね・・、
とんだところで、赤恥をかいてしまいました・・、ハハ・・」

夫婦の軽妙な会話を聞いていて、もしかして、いちるいの望みが残されているかもしれないと村上は
思い始めているのです。坂上夏樹は思った以上に大物かもしれないと思い始めているのです。そうで
あれば、その坂上の人柄に掛けてみようと村上は考えたのです。

ここまで悪事がバレてしまえば、もう失うものは何もないと思う気持ちが村上の背中を押しました。
何事か決心を固めた様子で、口を開きました。

「坂上さん・・・、
嫌がる奥様を騙し、脅かし、一年間も旦那様を欺かせました。
男として申し開きが出来ないことをして参りました・・。
それでも、私は胸を張って、申し上げたいのです。
奥様を思う私の気持ちは旦那様にも負けないつもりです・・
とにかく、奥様が好きでたまらないのです。
奥様のためなら、死ねと言われれば、笑って死んで見せます」

ほとんど絶叫するように叫んでいます。50男が二十歳前の青年のように頬を紅潮させて、青っぽい
セリフを叫んでいるのです。その青っぽさが、今の村上に似合っているのです。

坂上が真剣に耳を傾けていますし、咲江に至っては大粒の涙を流しているのです。どうやら今の言葉
で、村上は坂上夫妻の心をつかんだ様子です。

「奥様を私の会社に預けていただく件・・・、
いかがでしょうか・・、
ぜひ・・、実現していただけないでしょうか‥」

「私の気持ちは何も変わっていません・・・。
むしろ、正直にすべてを告白いただいたことで、
村上さんの人柄がよく判り、もっと安心しました。
改めて、申し入れます。
村上さんの会社で妻を雇ってください・・」

「ああ・・・、本当ですか・・、
許可していただけるのですか…」

「よろしくお願い申します‥、
さあ・・、咲江からもお礼を申し上げなさい‥」

「ありがとうございます‥、
総一郎さん・・、いえ・・、社長…、
不束者ですが、一生懸命働きます…
よろしくお願い申します…」

咲江と坂上が立ち上がり、頭を下げています。村上もあわてて立ち上がり、頭を下げています。

「うれしいな・・・、
こんなことが起きるなんて…、
親切は人のためならずと・・、
昔の人が言っていますが、
私の場合はまさに、その通りですね……」

村上は喜びを爆破させているのです。チョッとした親切心から、咲江を助けた、そのことがきっかけ
になり、咲江と関係を持つことになり、今また、一緒に働けることが許されたのです。この先、孤独
な独り暮らしを覚悟していた村上にとっては、願ってもないことなのです。


[46] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(718)  鶴岡次郎 :2018/08/06 (月) 14:29 ID:614XfVzg No.3153
「坂上さん・・、
私は散々に不摂生を重ねて来ましたので、
残された人生は、残り10年もないと思います‥。
その残り僅かな人生を、全て・・・、
咲江さんと坂上さんに捧げます…。
ありがとうございます。このとおりです…」

ソファーから滑り降り、床に正座して、村上は床に頭を付けています。

一度きりの浮気で、体の関係はなかったと咲江は嘘の告白をしたのです。その嘘を信じて、夫はすべ
てを許し、改めて村上の事務所に勤めることを認めてくれたのです。村上の告白で咲江の嘘がバレま
した。一年の浮気は長すぎます、離婚話も浮上するかもしれないと咲江は覚悟を決めていたのです。
それが、全てを許してくれたうえ、これからは夫公認で村上に抱かれることが出来るのです。村上同
様、咲江も感動の渦の中に居ました。

村上が夫に頭を下げているのを見て、咲江も夫にお礼を言うべきだと気がついたようです。急いで
立ち上がり、村上の傍に正座して、夫に向かって、心から感謝の気持ちを込めて首を垂れています。

村上と咲江の土下座を受け、坂上は嬉しそうな表情を浮かべています。顔を上げた村上が坂上を見
て、そして傍に居る咲江と視線が合いました。どちらからともなく顔が近づき、二人の唇が重なり合
いました。坂上の存在は気になりますが、興奮を抑えきれなくなったのです。

最初はおとなしく唇を合わせていたのですが、女の方が仕掛けて、互いに舌を絡め合う激しくキッス
になりました。

坂上はそんな二人から視線を外し、窓の外を見ています。二人はいつ果てるとも判らない状態です。
しっかり抱き合い、唸り声さえ発しているのです。坂上から公認された喜びが爆発しているのです。
このままの展開だと、二人は床に体を倒し、本格的に抱き合うかもしれません。坂上が振り向き、未
だ激しく抱き合っている二人に声を掛けました。優しい声です。

「咲江・・!
それくらいでいいだろう・・」

二人には坂上の声が届いていない様子です。二人に近づき、咲江の肩に手をかけ、少し大きな声で呼
びかけました。相変わらず優しいトーンです。

「咲江…!
もう・・・、いいだろう…」

肩を触られ、ようやく夫の存在に気がつき、慌てて、重なっている男の唇を離しています。男の舌を
深々と吸い込んでいて、音を立てて男の舌が抜き出されると、唾液が二人の唇の間に糸を張っていま
す。激しい吸引を受けたのでしょう、咲江の唇は少しはれぼったくなり、真っ赤に変色しています。
淫蕩に変形した妻の唇を眺めながら、苦笑の表情を浮かべています。坂上は少し妬ける気分になって
いるのです。

「ああ・・、あなた・・・・
スミマセン・・・、うれしくて…」

頬を染めて咲江が恥ずかしそうにしています。村上は坂上の顔を見ることが出来ない様子です。それ
でいて、二人は右手と左手を固く握りあっているのです。

「私は、これから研究所に寄って、
やり残した実験を片付けるつもりだ・・・、
咲江は先に・・、家へ帰ってほしい・・・」

ここで言葉を飲んで、からかいの笑みを二人に向けて、夏樹が言いました。

「それとも・・、
村上さんさえ、ご迷惑でなければ、
一晩お世話になり、明日の昼過ぎ帰って来てもいいよ・・・・
仕事を早めに終えて、おばあちゃんから子供たちを引き取り、
明日の朝、責任もって学校へ送り出すから…」

「エッ・・・、良いの…・?」

「これから先のことも含めて、二人にはつもり話もあるだろうから、
ゆっくりして来るといい・・。
子供たちには、お母さんは友達の家に泊まると伝えるから‥」

うれしそうな表情を浮かべる咲江に、優しい視線を送り、坂上夏樹は潔く背を見せて、玄関に向
かって歩き始めました。

村上が坂上夏樹を玄関まで見送りました。玄関で二人の男は固い握手を交わしました。これから先、
いつまで続くか判らないのですが、二人は咲江を共有することになるのです。ある意味で肉親以上に
近い関係になった二人なのです、万感を込めて二人は視線を絡めていました。

「では・・、お世話になりました…」

「こちらこそ・・、
明日の午後には奥さんを送り届けます・・」

互いに多くを語らなくても、心が通い合う気持ちになっているのです。


[47] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(719)  鶴岡次郎 :2018/08/08 (水) 17:38 ID:xK9vDxcc No.3154

放心状態で咲江はソファーに腰を下ろしていました。先ほど起きた事態の展開が信じられない気持ち
なのです。昨夜、閨での嘘の告白を信じて夫は村上の事務所に勤務することを認めてくれたのです。
夫を裏切っている身としては村上と会うことに不安はあったのです、それでも、咲江の嘘を村上も守
り切ってくれると信じて、事務所を訪問したのです。

しかし、夫、坂上の対応に感動した村上は、咲江の嘘を守りとおすことを潔しとしないで、一年間の
不倫関係を告白してしまったのです。これで全て終わった、悪くても離婚は避けられないと覚悟を決
めたのです。親権を失うこともありうると思いました、せめて子供と面会できる道だけは残しておき
たいと咲江は思っていたのです。

夫はすべてを水に流してくれて、村上と関係を続けることさえ認めてくれたのです。咲江はこの瞬間
でも信じられない気持ちでいっぱいなのです。それでも、湧き上がる喜びを咲江は抑えることが出来
ませんでした。不倫の関係を続けることは精神へのダメージが大きいのです。これからは、こそこそ
隠れて会わなくてもいいし、会った後必ず襲ってくる、あの絶望的な自己嫌悪感、罪悪感にさいなま
れることがなくなるのです。

「ああ・・、私は解放された…て、感じね…
この事務所に村上さんと二人きりで居ても、誰も咎めないのね‥。
ああ・・、自由なんだ‥」

両手を天井に向けて突き上げ、咲江は興奮してしゃべっています。そんな咲江を、笑みを浮かべて村
上が見ています。村上にとって、こんなに明るい咲江を見るのは初めてのことなのです。

「それにしてもご主人は大物だね・・・、
彼の迫力に圧倒されたよ」

咲江の傍に座った村上が笑みを浮かべたまま、ゆっくりと語りかけました。

「私には・・、もったいない程の人なのよ…」

「奥さんを愛しているんだね…」

「愛されているのは確かだけれど…、
欲を言えば、もっと私に甘えてほしい…」

「贅沢な悩みだね・・・、
立派過ぎて、近寄りがたい気がするんだね…」

「そうかも・・・・・・・」

「まだ若いし・・、才能があり、すべてに恵まれている、
彼・・、挫折を知らずにここまで来たはずだから‥
何かに躓いた時・・、処理に困ることが起きるはず・・。
しかし、人に頼ることを知らない人だから・・
孤高の人になり易いかも・・・・」

「孤高の人・・、上手いことを言うわね・・・、
優しい人だけれど、気がつけば、遠くへ行っていることがある・・。
夫は・・、そうした一面は確かに持っている…
よく知っているはずの夫が・・、
まったく知らない人に思えることがある・・
私…、本当に夫を愛しているのかしら…・
そう思う瞬間があるの……」

村上の言葉に大きく頷きながら、咲江が静かに言葉を出しています。夫を愛することの意味を自分に
問いかけているのかもしれません。


[48] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(720)  鶴岡次郎 :2018/08/09 (木) 11:06 ID:HDt5T5IU No.3155

「家庭を持たない俺が言うのは変だが…、
本音をぶつけ合って、いつも喧嘩をしている夫婦もいるし、
坂上さん夫婦のように、本音を吐き出すことは抑えて、
いつも相手の幸せを深く考えている夫婦もいるよ・・・、
いずれが正しいかなどは、判らない・・、
いろんな形の夫婦が居てもいいと思う…」

呟くように、言葉を拾いながら村上は語っています。

「そうね・・・・、
夫婦の形に一定の決まりはないのね…。
あまり考えこまないで、
夫を愛し、自分自身に誠実に生きることを心がけることにする・・・」

明るい表情で咲江が言っています。今回の経験で、咲江は何かを掴んだ様子です。夫を裏切ったこと
は紛れもない事実で、決して許されることではないのですが、一方では、彼女自身、自分の気持ちを
裏切らないで生きてきた自負があるのです。言い換えれば、浮気と言う大罪を夫から追及されれば、
弁解せず、夫が与える罰を受け入れる覚悟を決めていたのです。これから先も、彼女自身が信じる道
を歩いて行くと、心を決めた様子です。

「奥さんの助けが必要になる時が、いずれ来ると思う…、
俺をEDから立ち直らせたように、
彼が窮地に立った時、献身的に支えることだね…、
奥さんなら、出来るよ…・」

「うん・・、そうする‥
それまでは、総一郎さんが私に甘えてください…
う・・んと、可愛がってあげるから…」

「おい、おい・・、
あまり入れ込まないでほしいな‥、
以前とは状況が違うのだから‥」

「なあ・・に、その言い方・・、
俺にあまり惚れ込むな・・、
そう言いたいわけ…?」

「うん・・、そんな格好いい話ではないが・・・、
当たらずとも遠からずだ…」

「必要以上に惚れ込むなと言っているのね・・、
その入れ込み加減が判らないなら、
私とは別れる・・と、そう思っているの・・・?」

「そうではない・・、
奥さんと別れるなら、むしろ死を選ぶよ‥」

「大げさね・・、死なれたら困るから、
別れないことにするわ‥、ふふ…
でも・・、死ぬほど好いてくれているなんて・・、とっても嬉しい…」

「大好きな奥さんとこうして仲良くさせていただいているのは、
ご主人の大きな器量のおかげだと思っている。
奥さんと同じくらい、ご主人を大切な人だと思っている・・
その意味で、これまでとは違う心構えで奥さんと接するつもりだ、
俺はご主人を決して裏切らないと決めている・・、
そこのところを、奥さんもよく理解してほしい、
節度あるお付き合いをしてほしい・・」

「節度あるお付き合い…?
それって・・、
セックス抜きってことなの…?」

「いや・・、そう言うわけではない・・、
セックスは、今まで通り・・、
いや、多分・・・、
今まで以上に、励むつもりだ・・・」

「なら・・、私はいいわ‥
私は毎日でも良いのよ‥‥」

セックスが出来るのなら、あとは問題ないと割り切ったらしく、咲江はあっさり納得しています。

「毎日か…、
それは・・・、ちょっと難しいかな…、
俺にも仕事があるし…、
病から回復したばっかりだし…・」

「ふふ・・・、バカね・・・、
冗談よ、冗談…、
毎日するはずがないでしょう…」

「・・・・・・」

それ以上この種の会話を続けることは危険だと察した様子で村上が言葉を飲み、咲江の表情を横目で
盗み見しています。村上の困惑には気づかないようすで咲江はすました横顔を見せています。先ほど
のディープキッスで少し乱れたルージュ、張りのある頬、みずみずしい瞳、それと意識をしなくても
傍に居るすべてのオスを惹き付ける今盛りのメスのオーラを発散しています。村上でなくても、毎日
挑まれたら大変だと逃げ腰になるほどの魅力を発散しているのです。


[49] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(721)  鶴岡次郎 :2018/08/22 (水) 16:02 ID:MWRtknGY No.3157
「何と言ったらいいか…、
身も、心も、全てを、互いに差し出す必要はないということだ・・、
俺も、奥さんも、その気配りが必要だということだ‥」

「うん・・、判った‥
総一郎さんのそういうところが好き・・、
義理人情に厚く、人の好意に感謝の気持ちを忘れないのよね・・
主人の気持ちを大切にしろということね…・」

「・・・・・・」

にっこり微笑んで答える咲江を見て、村上が黙って頷いています。

男の実力で咲江を引き付け、坂上に隠れて不倫の関係を続けてきて、一時は、本気で咲江を坂上から
奪い取る気になったことがある村上ですが、坂上夏樹の大きな器に取り込まれて、言わば咲江を貸し
てもらう関係になったのです。今までとは違うのだ、新たな関係がスタートしたと、村上は咲江に伝
えたのです。

咲江も村上の気持ちを理解した様子です。

「ご心配なく・・、
総一郎さんに惚れこんで、主人を忘れたりしないから、
主人も、総一郎さんも、私にとっては大切な人・・、
二人とも大好きだよ…・
私・・、今、とっても幸せな気分なの…・」

決して口には出しませんが、二人の全く違うタイプの男に抱かれることになった自身の境遇を咲江は
しっかりと胸に刻み込み、その喜びを密かに噛み締めているのです。その感情が彼女の中でさらに大
きくなりました。体をくねらせながら咲江は村上を見つめてささやきました。濃い女臭が村上の鼻腔
をくすぐり始めているのです。

「ネエ・・、抱いてほしい…」

「アパートへ行こうか‥」

「ううん・・、ここで、今すぐ・・」

欲情した咲江の表情を確認して、村上は少し慌てています。

「判った…、
とてもアパートまではもちそうもないね…
腰が完全にいかれているよ…・」

「あ・・・ん・・・、
意地悪…・、でも、本当なの…、
もう・・、一歩も歩けない…
ああ・・・、欲しい、欲しい…・・.」

体をくねらせ、着ていたワンピースを脱ぎ捨て、ブラを無造作に剥ぎ取り、一気にショーツを脱ぎ取
り、それをソファーに投げ捨てています。
全裸になった咲江を横目で見ながら、小走りで玄関へ行き、閉店の看板を出し、扉に施錠しました。
その場で衣服、下着をはぎ取り、村上も全裸になりました。

村上が両手を差し出しました。男に走り寄り、飛びつきました。支えきれなくて男が床に腰を下ろし
ています。男の上に乗りかかり、咲江は男の体に両手、両脚を絡めて、唇に吸い付きました。男の体
が女の体液で濡れ始めています。下から、男が攻撃を開始しました。指を入れ、乳房を吸い、背中を
さすり、女を責めています。

「ああ・・・、うれしい…
ここに戻って来れるなんて…、
夢みたい…・」

咲江の目から涙があふれ出ています。村上も泣いています。ソフトタイルの床の上で、二人は抱き合
い、呻きながら絡み始めました。

事務所で二時間ほど抱き合った後、近くのレストランで食事を済ませ、アパートへ戻った二人は、
白々と夜が明けるまで絡み合いました。


[50] 新しい章を立てます  鶴岡次郎 :2018/08/22 (水) 16:21 ID:MWRtknGY No.3158
新スレを立て、新しい章を起こします。ジロー


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