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フォレストサイドハウスの住人達(その21)(674)

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2018/03/16 (金) 11:51 ID:enmyrC3g No.3103
由美子演出・主演のドラマ、そのクライマックスはかなり前の章で、すでに書きましたので、少し気
の抜けたビールのようになりました。もう少し全体の構成を上手くまとめれば、面白いものになった
かと反省しております。しかし、これも書き流しの小説の味だとご理解いただき(勝手な言い分です
ね)ドラマのクライマックスに至る経緯や、クライマックス後の役者たちの動向を楽しんでいただけ
れば、作者冥利に尽きます。それでは相変わらず変わり映えのしない市民の物語を始めます。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その11)』
の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。また、文中登場する人物、団体は全
てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきます。卑猥な言葉を文脈上やむを得ず使用
することになりますが、伏字等で不快な思いをさせないよう注意しますが、気を悪くされることもあ
ると存じます。そうした時は読み流してご容赦ください。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字余脱
字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるようにしま
す。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した当該記事を読み直していただけると幸いです。

・〈(1)2014.5.8〉文末にこの記事があれば、この日、この記事に1回目の手を加えたことを示し
ます。
・〈記事番号1779に修正を加えました。(2)2014.5.8〉文頭にこの記事があれば、記事番号1779に
二回目の修正を加えたことを示し、日付は最後の修正日付です。ご面倒でも当該記事を読み直してい
ただければ幸いです。


それぞれの道

咲江を円満に村上と別れさせる。これが由美子、千春、そして愛の究極の目的です。そして夫、坂上
夏樹には浮気の事実を知られないことが絶対条件です。既に、千春の心からなる説得は空振りに終わ
りました。性的不能の窮地から村上を救い出した咲江は村上の愛情と信頼を独り占めにしていると、
自信満々です。なまじのことでは咲江を翻意させることは困難に思えます。千春が挑発して、咲江は
由美子たちが仕掛けた罠近くに駆り出されました。いよいよ、切り札、由美子の登場です。

銀座に出物の店舗を探しているバーのマダムになり切って、由美子が村上の事務所を訪問する日程が
決まりました。由美子から決行の連絡を受けた千春は、自宅に居る咲江に連絡をいれました。

「お待たせしたけれど・・、
村上さんを探っているスタッフから連絡が入りました。
今日・・、村上さんは女と会う・・・
おそらく・・、彼のアパートでセックスすることになる」

「エッ・・、
本当なの・・・
信じられない・・・」

「間違いない‥、
それで、今晩、
咲江に出張ってほしいけれど・・、
時間はとれるかしら‥」

「主人は研究で遅くなると言っているし・・、
子供たちはおばあちゃんにお願いするから問題ない・・、
何時からなの…」

「午後7時に咲江の自宅へ私が迎えに行く…
二人が食事をする店をスタッフが調べて、
私達に連絡してくることになっている…、
それから先は、私にも、判らない…・
長い夜になるかもしれないから、そのつもりでいてほしい‥」

「判った…、
主人には千春と一緒だと言い訳するから、
口裏を合わせてほしい‥」

「その件は了解よ・・、.
ところで・・、大丈夫・・?
好きな男の浮気現場に乗り込むなんて…、
私だって嫌だから・・・、
そんな経験を無理に咲江にさせたくないと思うから・・」

「良いわよ‥、
村上さんに私以外の女が居ると言うのなら・・
その女が見たい・・・」

「判った・・」

こうしてドラマは開幕したのです。


事務所での商談が終わり、由美子が計画したとおり、村上が由美子を食事に誘いました。

「ほら・・・、通りの向こうにレストランが見えるでしょう…、
一時間ほど前に村上さんがきれいな女を連れて、
あのレストランへ入ったらしいの・・。
ここで彼らの食事が終わるのを待ちましょう‥、
ここに座っていると、
レストランに出入りする人が良く見えるから・‥」

村上を尾行しているスタッフから連絡を受けたことになっていますが、店内から、由美子がこっそり
千春へ連絡をして、レストラン名を教えたのです。そして千春と咲江は、そのレストランとは狭い道
路を隔てた喫茶店に入ったのです。その喫茶店の窓から、レストランの出入り口が監視できるので
す。


[2] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(675)  鶴岡次郎 :2018/03/17 (土) 16:44 ID:rqFM1v66 No.3104
緊張していますが、咲江は落ち着いた様子で、この尾行劇を楽しんでいる様子さえ見せているので
す。

「お店のお客さんだとおもう…、
これまでだって、女性客と二人きりで食事したことが何度かあったわよ‥、
レストランを出たら、そのまま別れるはず‥‥、
彼は・・・、自分の部屋には女を入れない習慣だから‥、
私以外の女は…・」

咲江は自信たっぷりに言い切っています。ここまで来ても、咲江の自信は揺らがない様子です。村上
の愛を信じ切っているのです。そんな咲江を千春は少しまぶしそうに見ているのです。この時、既
に、由美子から連絡を受けていて、村上が由美子を部屋に誘ったことを千春は知っていたのです。

咲江の様子を見て、千春は少なからず胸を痛めていました。親友のためを思い、親友の行き先が危う
いと思って仕組んだ芝居ですが、この後、辛い思いを味わうことになる咲江のことを思い、千春は心
安らかでなかったのです。それでも、由美子や愛を動かし、ここまでやってきた計画を中断する気に
はならなかったのです。すべて咲江の幸せのためだと、千春は自身に言い聞かせていました。

「ああ・・、二人がレストランを出たよ・・、
これから、村上さんのアパートへ向かうと思うけれど…、
こっそり後をつけて・・、二人を観察しよう・・・」

見れば派手な服装の女と腕を絡めて背広姿の村上がレストランから出てきました。二人は何事か楽し
そうに話し合っています。村上が女を誘ってアパートに向かう可能性が濃厚になっただけに、さすが
に咲江の表情が硬くなっています。それでも、ここまでくれば、最後まで見届ける決意を咲江は固め
た様子で、二人を尾行するとの千春の誘いにはっきりと頷いているのです。

レストランを出た由美子と村上はビルの谷間をゆっくりと歩いています。あたりは暗がりで、その上
二人からかなり離れて尾行しているので、咲江から由美子の表情までは読み取れません。それでも、
それと判る由美子の派手な衣装から、由美子が酒場の女であると咲江は断定していました。

暗闇に来ると、二人は抱き合い、長い間唇を合わせていました。男の手が女の臀部を強くつかみ、ス
カートがたくし上げられ、女のショーツが見えているのです。女は全身を男に預けて、体をくねらせ
ながら、唇をむさぼっています。どう見ても女が欲情しているのが判ります。

「あの女、派手なショーツを付けている・・、
あんなに小さくては、何もかも見えてしまう・・、

女の方が積極的だね・・、
彼女・・、もう・・、
アソコをべっとり濡らしているよ・・・、きっと・・・

あら、あら・・、
お尻を強く掴んでいる・・、
指が入っているかも…、
あれじゃ・・、女はたまらない…・」

咲江の嫉妬心を煽り立てるのが目的なのでしょう、千春が卑猥な用語を多用して男と女の抱擁シーン
を解説しています。咲江は黙って二人を見つめています。そんな咲江を千春はつらそうに見ているの
です。

もつれるようにして、二人が外付けの階段を上がり、村上の部屋に入るのを咲江と千春は見届けまし
た。情欲が高まり、明らかにメスに変貌している女を部屋に連れ込んだのです。この後何が起きるか
は明らかです。先ほどまで千春の嫉妬心をあおっていた千春もさすがにこうなっては何も言いませ
ん、咲江は無表情を装い、二人の背をじっと見つめています。


[3] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(676)  鶴岡次郎 :2018/03/19 (月) 16:43 ID:ivoK86r6 No.3107

村上と由美子がことを始めるまで30分以上必要です、咲江を誘って、千春は近くにある小さな中華
店に入りました。ラーメンをすすりながら、その時を待つことにしたのです。

「咲江・・、平気…?
先が長いから、少し食べておいた方がいいよ・・、
誘っておきながら、変なことを言うようだけれど…、
我慢できないほど辛いなら…、
ここで尾行を中断してもいいんだよ‥‥」

「ありがとう…、
自分の目で見るまでは、千春の言葉を信じることが出来なかった・・
まさか・・、部屋に女を連れ込むとは思ってもいなかった…」

「・・・・・」

やはり女と一緒に部屋に入ったのがかなりこたえているのです。

「でも・・、大丈夫・・・、
ここまで来たら、最後まで見届けることにする…
どんな女を選んだのか、この目で、しっかり見届けたい・・・
私以外の女とやって、あの人が満足できるはずがない‥
私が・・、彼の男を取り戻してあげたのだから…
他の女と出来るはずがない…・・」

最後の言葉は彼女自身に言い聞かせているような様子でつぶやき、窓の外に視線を移しました。ここ
へきても、自分以外の女を抱いても村上は満足できないはずと咲江は信じている様子なのです。その
つぶやきを耳にして、千春は胸が締め付けられる思いになっていました。

これから30分後、由美子の手にかかって、歓喜のうなり声を発して精液を吐き出す村上を、間違い
なく、咲江は見ることになるのです。その時の気持ちを思うと、今すぐにでもこの計画を止めようか
と思ってしまうのです。何とかその誘惑に堪えた千春は黙って、咲江の横顔を見ていました。

「30分後に乗り込むよ・・・・」

「うん・・・」

ほとんど無表情で、咲江が頷いています。千春は胸が詰まる思いになっていました。

そして・・、30分経過しました…。

「ぼつぼつ時間だね・・・、
二人は今頃・・・、たぶん・・・」

うっかり口に出して、さすがに、そこで言葉を止めている千春です。

「千春・・、変に気を使わないで…、
今頃・・、二人はベッドの上でのたうち回っているはずね…、
お互いの性器をしゃぶり合っているかも知らない・・
あるいは・・・、
汚いま〇こが、チ〇ポを咥え込んでいるかもしれない・・」

咲江が無感動な表情で、きわどい言葉を発しています。その危ない言葉とは裏腹に、咲江の瞳に涙が
あふれているのです。その涙に気が付かないふりをして、千春が元気に声を出しました。


[4] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(677)  鶴岡次郎 :2018/03/22 (木) 16:53 ID:bmHRDfbY No.3108
「さあ・・、時間だよ・・・、
いよいよだよ・・・
咲江・・、覚悟はいい…」

「うん・・」

「合鍵で部屋に入ったら…、
静かに行動して、二人に気づかれないようにしてね、
万が一、早い段階で二人に気づかれたら、
その時は、その時だから・・・、
咲江の気が済むように、言いたいことを言って…
素早く、そこから逃げ出すのよ…」

「判った‥」

「多分、何の危険もないと思うけれど・・、
もし・・、何かあればこの笛を吹いてね・・・
私か、スタッフが駆けつけるから・・・」

口にくわえて吹けば、すさまじい音を発するホイッスルを準備してきているのです。実はこの笛は敵
地に乗り込む由美子の身を案じて、Uが準備した物です。村上の部屋で相対する由美子と咲江が同じ
笛を持っているのです。

「判った…」

「できるだけ長く・・・、
辛いだろうけれど…、
どちらかが最後に行きつくまで、
十分に観察してほしい・・」

「判った…」

「咲江とその女・・・、
どちらを大切に考えているか・・・、
どちら女から、より深いセックスの喜びを得ているか・・・、
どちらが彼の生きがいになっているか…
そこのところをはっきりと・・・、
自分の目で見て、判断してほしい・・
咲江なら、見抜くことが出来るはずだよ・・」

千春の言葉を一言、一句を漏らさない様子で聞いています。この様子なら大丈夫と千春は安どしてい
ます。それでも最後の念押しを忘れませんでした。

「二人の絡み合う様子を冷静に観察してほしい・・、
決して感情的になってはいけない…、
愛しい男が他の女と抱き合っているのを見て・・、
冷静になれという方がおかしいと判っているけれど・・、
ここは我慢に、我慢を重ねてほしい・・・」

「判っている・・、
そこで感情的な行動をとるほど、バカではない・・、
二人が抱き合っているところをじっくり見てやる…、
隅から、隅まで見てやる…
愛しい私のチ○ポを・・・、
汚いおマ○コが食べているのを、全部見てやる・・・」

「その意気・・、頑張ってね・・」

「言われなくても、頑張る…
彼があの女をどのように料理するかしっかり見届ける。
彼は好き好んで、あの女を抱いているのではない・・、
あの女との商売を成功させるため、セックスをするのよ、
あのスケベー女、街の中で彼にかじりついて、
お尻を振って、キッスしてたでしょう・・、
彼が欲しくてたまらないのよ・・・
あの女とは、ビジネスのためのセックス・・、
本当のセックスは私とだけなのよ‥」

最後の言葉を独り言のように咲江が呟いています。

〈ああ・・、やはり・・、
ここまで来ても・・、
咲江は自分が第一の女だと信じているのだ・・〉

千春は暗澹とした気分になっていました。最愛の男が女を部屋に連れ込み、絡み合っているのを知り
ながらも、咲江はまだ男の愛情を信じているのです。千春はそれ以上言葉が出ませんでした。


[5] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(678)  鶴岡次郎 :2018/03/30 (金) 12:10 ID:4C9O8Q7. No.3109
村上のアパートに着いた咲江は、それでも半信半疑で部屋の扉をあけました。男と女が酒でも飲み交
わし、商談の続きをしていることを願っていたのです。直ぐに男と女のうめき声が咲江の期待を打ち
砕きました。部屋の中には隠微な香りが満ちています。その渦中に居る二人は、咲江の侵入に全く気
付いていませんでした。

暗がりの中で、それでも勝手知った部屋の中ですから、咲江は二人の絡みが真正面、三メートル先に
見える居間のソファーにそっと腰を下ろしました。事前にこの光景を予測できていましたから、比較
的落ち着いています。

69の体制で女が上になり二人は激しい戦闘を続けていました。これ以上は無理と思えるほど男根は
勃起し、それを咥えている女の顔がゆがんでいるのです。いっぱいに両脚を開いた女の股間に男が顔
を入れ、盛んに陰唇を舌で擦りあげているのです。したたり落ちる愛液を顔面に受けて、男はむせび
ながらも、必死で戦っています。あたりに二人の嬌声とうなり声が響いています。

二人の絡み合う姿をぼんやり見ながら、咲江は別のことを考えていました。そう・・、始めて村上に
抱かれた日のことをはっきりと思い出していたのです。そして目の前で男と女が絡み合う姿に、その
時の村上と咲江自身の姿を重ねていたのです。

その場に立ち上がり、スカートの裾をそっと・・、まくりあげ、ショーツをストッキングごと脱ぎ、
バッグの中に投げ入れました。股間はもう・・、すでにぐっしょりと濡れています。

村上と見知らぬ女のすさまじい交わりを見ながら、村上にこの部屋で初めて抱かれた時ことを咲江は
思い出していました。
あの時、村上から激しい愛撫を受けた時、初めて男に接した時のような衝撃を受けたのです。村上と
のセックスに比べると、それまでの夫とのセックスは子供だましに思えたのです。女性器への接吻も
初めてでした。男根を咥えることも初めてでした。全身を舐めまわす村上の舌の動きに翻弄されまし
た。

目の前にいる女もその時の咲江と同じように村上の舌でほんろうされ、体をくねらせ、悲鳴を上げて
いるのです。咲江は乱暴に指を女陰に差し込み、激しく動かし始めました。声はさすがに抑えていま
すが、水音は出ています。それでも少し離れているので、二人にはその音が届いていないようです。

よく見ると、咲江自身が抱かれた時と明らかに違う現象が目の前で展開されているのです。そのこと
に気が付いた時、自身の性器に挿入した咲江の指がぴたりと止まっていました。

目の前の女は唸り声をあげ、体をこれ以上は無理と思えるほどそらし、愛撫だけで何度も昇天してい
ます。これは咲江も同じでした。ただ違うのは村上の様子です。咲江を抱く時、村上はいつも憎らし
いほど冷静に咲江を責めるのです。それが目の前の村上は激しい女の愛撫攻撃を受けて、我を忘れて
乱れているのです。男根をしゃぶられ、お尻りに指を入れられ、村上は悲鳴さえ上げているのです。

「…素人の咲江に村上が満足しているはずがない・・・」と、
そう言った千春の言葉を咲江は、この時、はっきり思い出していました。

潮時なのでしょう、村上が女から体を離し、女の足首を両手で握り、いっぱいに開き、その両脚の間
に体を入れているのです。ひくひくと女陰がうごめき、男根を求めているのが咲江からもよく見えま
した。

男のお腹にくっつくほど勃起した男根が女の性器に宛がわれ、その一瞬の後、男根は一気に突っ込ま
れました。男の唸り声と高い女の悲鳴が同時に響いています。

やがて・・、男の体が女の上でけいれんし、がっくりと力が抜けていくのを咲江は涙を流しながら、
最後まで見届けました。


[6] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(679)  鶴岡次郎 :2018/04/02 (月) 14:25 ID:Ku8WU4qo No.3110

疑いの余地はないのです。咲江がこれまでやり遂げたことがない結果を、目の前で女はやり遂げたの
です。

失神したかと思えるほど村上を深く逝かせ、彼の精液をすべて膣内に搾り取ったのです。咲江との場
合、村上はいつも余裕を残し、精液は咲江の腹に吐き出されていたのです。それどころか、精を発す
ることさえ毎回ではなかったのです。完全な敗北感を咲江はひしひしと味わっていました。

由美子の天性とも言える膣内筋の微妙な動き、その鍛え抜かれた技に、抵抗空しく屈してしまった村
上、この経緯、それに対する咲江の行動、咲江に対する由美子の反応など、すでに先の章で詳しく報
告しましたので、ここでの再報告は割愛させていただきます。

さて・・、完璧に女の自信を砕かれ、深い失意を抱いた咲江は、潔く敗北を認め、村上に別れの言葉
を残し、その部屋を後にしました。

玄関のドアーが締まり、「カチャ…」と、自動施錠の高い金属音が部屋中に響きました。その音は、
咲江の別れの言葉に、村上には聞こえたはずです。

「ああ…あ・・、
行ってしまったか…・、
ママには・・・
とんだ修羅場を見られてしまいました…」

「…で、どうするんですか…
あの方とは・・・」

「どうするって…、
先方から縁を切ってきたのですから・・・、
こちらは、その申し出を黙って受け入れるだけです…」

不貞腐れているのでもなく、無理に強がっているのでもなく、村上は淡々と答えています。そんな男
の横顔を由美子はじっと見つめています。由美子の心中で何かが消え、新しい感情が沸きあがってい
る様子です。

「社長さん・・、
それでいいのですか・・・?
忘れることができるんですか…?
その気が残っているのなら…、
私にかまわないで・・、
今から、追いかけたらどうですか…・」

ここへ来た目的は咲江を村上から引き離すことだったはずです。すべてが計画通り進んで、由美子の
思惑通り、咲江は自らの意志で別れの挨拶を残して、村上の部屋から出て行ったのです。

預かっていた部屋の鍵を残していったのを見ても、彼女が再び村上の下へ来ることはないと言えるの
です。これ以上完璧な成功はありません。喜んでいいはずの由美子の表情がさえないのです。それど
ころか、あろうことか、咲江の後を追えと村上に進言しているのです。由美子は何を考えているので
しょうか‥‥。


[7] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(680)  鶴岡次郎 :2018/04/06 (金) 15:30 ID:iGXpyASA No.3111
「彼女だって・・、未練たっぷりでしたよ‥‥、
村上さんが追ってくるのを心のどこかで待っていると思います。
今だったら…、
今・・、追いかけたら…・
間に合うかもしれませんよ…・・」

真剣に由美子は勧めています。

咲江を村上から引き離す計画で事を進めてきたのですが、けなげに別れの言葉を放ち、振り返りもし
ないで部屋を出て行った咲江・・・。一方、村上は・・、女が大きな誤解をしたまま、自分から離れ
て行こうとしているのに、弁解さえしないで黙って女の背を見つめているのです。

愛し合う二人のあまりに潔い別れを、目の当たりにして、その別れを演出したのは由美子自身である
ことを忘れたかのように、二人が寄りを戻すよう、村上に真剣にアドバイスしているのです。

「・・・・・・・」

村上は一瞬考える様子でしたが、すぐに笑みを浮かべ、首を振っています。

「いや…、よしましょう‥‥、
今までも、そうしてきましたし…、
これからも・・、そうしたいと思っています…」

「彼女とは…、
遊びだったんですか…?」

「ハイ・・、最初はそのつもりでした…、
しかし…、日が経つにつれ・・、情が増して…、
そして・・、ある事件を契機に・・・、
彼女と一緒にこれからの人生を生きて行きたい…、
そう思いました…」

「ある事件て…?」

その事件のことを村上が話すはずがないと思いながら、思わず由美子は質問を発していました。質問
を発してから、まずいことを聞いたというしぐさを見せています。

無粋な質問をした由美子にチラッと視線を走らせ、それでも、嫌な顔を見せないで、村上は軽く頷い
ています。聞かれるままに由美子には、すべてを話すつもりのようです。


[8] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(681)  鶴岡次郎 :2018/04/10 (火) 15:17 ID:.ZdgorDQ No.3112

「数ケ月前のことですが・・・、
私の体が・・、私の男が・・、
突然、利かなくなったのです・・・、
これで・・、私の人生は終わったと・・・、
そう…、思いました…」

「・・・・・・・・」

予想外の言葉に由美子は言葉を失っています。若いとは言えませんが、60にはまだ達していない村
上です、女が抱けなくなる歳ではありません。

「彼女が献身的に支えてくれたのです‥‥。
ダメな私をさげすむわけでもなく・・・、
かといって、無理に励ますわけでもなく・・・、
普通に接してくれたのです‥‥
他の女はいつの間にか、私から離れて行きました…」

しんみりと村上が告白しています。

「女として・・、
愛する男が・・、
突然、そんな状態になった時…、
どう対処したらいいのでしょうね…、
正直言って・・、私には判りません…・
咲江さんは、その難しい仕事を、
見事やり遂げたのですね…」

「ハイ…、おっしゃる通りです…
もし・・、彼女が居なければ…、
今頃、私は・・、たぶん…、
どこかで、自分の体を処分していたと思います…
彼女は、命の恩人でもあるのです‥‥」

「・・・・・」

性的不能に陥り、命を絶つことさえ村上は考えたと言っているのです。普通の男であれば、60近く
になって不能になっても、死を考える人は少ないと思います。しかし、性交が出来なくなることは、
生きる意味がなくなったに等しいと村上は考えたのです。

村上と同じように、男と女の交わりに高い価値観と特別の感情を持っている由美子には、村上の気持
ちが正確に理解できるのです。由美子は言葉を失い、ただ、じっと村上を見つめています。

「彼女の献身的な支えのおかげで・・・、
私は奇跡的に復帰することが出来ました。
その時以来・・、
彼女となら・・、
命を懸けて、付き合ってもいいと思うようになりました…」

「なら・・・、どうして・・・?」

「・・・・・・・・・」

そんなに大切な女を・・、どうして咲江を・・、手放したと由美子は質問しているのです。その由美
子の質問へ、どう答えようか考えている様子でもなく、かといって、由美子の質問を無視している様
子でもなく、何か、別のことを考えている様子です。

「30年前・・、竿師という泥沼に足を踏み入れて以来・・・、
女には惚れない、惚れてはいけないと・・・、
それが外道に生きる者の、せめてもの罪滅ぼしだと・・・、
自分自身に言い聞かせてきました…・」

由美子の質問の答えが見つからないのでしょうか・・・、村上は唐突に、別の話題を語り始めまし
た。


[9] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(682)  鶴岡次郎 :2018/04/11 (水) 12:41 ID:69K.pIZ. No.3113
「お察しの通り、たくさんの女性と関係を持ってきました・・。
私と関係を持ったことで、人生が変わってしまった女性もたくさんいます。
それでも・・、自分に掛けた竿師の戒律は守ってきたつもりです‥。
誰にも話したことがないのですが・・、
姐さんにこうしてお会いできたことに、何かの縁を感じます‥、
くだらない話ですが、私の生き様を聞いていただけますか…」

「・・・・・・・・」

竿師として半生を生きてきた男が、これまで関係した女性への思いを由美子に語るつもりのようで
す。ゆったりと構えていた由美子の態度が、この時、変化しました。村上と真剣勝負をするような気
配さえ見せて、耳を傾けています。由美子は感じ取っていたのです。おそらくこの男が初めて語る自
分ストリーを由美子は聞くことになると感じ取っているのです。なぜ、由美子が聞き手として選ばれ
たのか、無理に詮索しませんでした。それでも由美子の女心は弾んでいました。

「日に数人の女性と接することも珍しくなく・・・、
中には、所帯を持ちたいと思う女もたくさんいました・・。
しばらくの間、同棲した女性も少なくありません‥。
しかし・・、いずれの女性とも一年と続きませんでした」

「村上さんが捨てたのでしょう…」

「いえ・・、
女の方から逃げ出していくパターンがほとんどでした。
無理ないと思います‥。
女に惚れることをタブーとしてきましたし・・、
万が一、惚れてもすぐにその気持ちを打ち消すことにしていましたから・・、
女はそんな男の気持ちに敏感です・・・・」

「一度も・・、女性に惚れ抜いたことがないのですか…」

「自分自身に掛けた戒めを破って・・
生涯で惚れ抜いたと言える女は・・・、
二人だけです…。
その一人が…、咲江でした‥‥」

「・・・・・・」

由美子は複雑な心境で聞いていました。おそらく千人を超える女性と接し、その中で、村上が本気で
惚れたのは咲江ともう一人の女だけという村上の言葉を聞いて、由美子の中に奇妙な感情が沸きあ
がっているのです。

〈もう一人・・・、
惚れた女が居るらしいが…
それは・・・、誰…?〉

もう一人の惚れた女の名を確かめたい気持ちが沸いたのですが、由美子の女心が素直に質問させない
のです。

「咲江とはかれこれ、一年ほどの関係です‥。
咲江の旦那は将来を期待される有名な学者さんです・・・・
多分・・、彼は・・・、
咲江と私の関係に気がついていないと思います…」

由美子も知っている咲江の事情を村上は語っています。このことから考えても、村上は由美子に何も
隠さず話している様子です。

「先ほど申し上げた通り・・、
最初は遊びの域を出ませんでしたが・・、
日が経つにつれ、深みに入り、
遂には・・・、
自分自身に掛けた禁を破って、
旦那様から咲江さんを奪い取るつもりになっていました・・・・。
奪い取る自信もありました…」

「・・・・・・・・」

「しかし…、
今日・・、姐さんに出会って…、
あのような展開になり、
咲江から三下り半を突き付けられた…。
これは運命だと思いました…。
抗うことが許されない運命だと思いました・・」

「運命だなんて・・・・・
そんなことはないと思う・・・・・」

咲江と別れることになったのは運命だと吐き出している男の言葉を聞いていて、由美子は胸が締め付
けられる思いになっていました。思い切って告白しようと思ったのですが、踏みとどまりました。

〈許してほしい・・・、
あなた方の別れは運命なんかではない…、
別れの修羅場を演出したのは私なのよ・・・〉

できることなら、すべて告白して、村上に謝りたいと由美子は切に思ったのです。しかし、由美子は
踏みとどまりました。


[10] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(683)  鶴岡次郎 :2018/04/13 (金) 11:00 ID:2VFdKYZI No.3114
ここで、すべてを告白しても、村上たちの仲はもう元には戻せないと・・・、由美子にはそう・・、
読み取れたのです。それなら、当初計画通り、村上を騙し通すことが最良策だと、由美子は自分自身
を説得したのです。

「もし・・、今日・・、
姐さんに出会っていなかったら…、
私は決して、咲江を手放すことにはならなかったと思います…」

「・・・・・・」

「誰に説得されても、誰から圧力を受けても・・、
たとえ、その結果、命を失うことがあっても・・、
決して、咲江を手ばなさなかったと思います‥」

「私のせいだというの…?」

「変な意味ではありません…、
何と言ったらいいのか…、
姐さんに格好いい男の姿を見せたかった…、
そう思っていただいて構いません…」

「・・・…」

由美子に格好いい姿を見せたいという村上の気持ちは決して嘘ではないと思います。間違いなく、
もう一人の惚れた女は由美子だと村上は告白しているのです。もちろん、由美子は気がついていま
す。

「咲江と別れることになったのは・・、
結果として、姐さんと寝たことが原因です‥。
でも・・、姐さんを恨んでなんかいません・・、
むしろ・・、姐さんに感謝しています‥」

「感謝…??」

「はい・・・、
姐さんのおかげです、姐さんが居たからこそ・・、
私は道を踏み外さずに済みました・・・、
姐さんに出会っていなかったら、
咲江を旦那さんから奪い取り・・、
咲江一家の幸せを壊していました…。
今・・、私はそう思って姐さんに感謝しております…」

思いを上手く口にすることが出来ない様子で、口ごもりながら、村上は少し照れた様子で、それでも
笑いながら説明しました。

「さすが社長さんね・・・、
変に引きずろうとしないのが偉い・・・」

「・・・・・・・・」

由美子に褒められて、村上は黙って苦笑しています。村上の恋心を由美子は完全に無視しているので
す。村上は淡い失望感を噛み締めていました。

「水が入ったことだし・・、
私も帰らせていただくわ・・・、
今日は・・・、本当に楽しかった・・・・・
久しぶりに感じたわ…、ありがとう…」

ベッドから降り立ち、濡れた体に直接衣服を付けています。男の吐き出した唾液や体液を体に残した
まま、シャワーを使わないで帰ろうとしているのです。

「シャワー、使えますよ・・・」

「ううん・・、このまま・・・、
体に染みついた社長さんの香りを楽しみながら帰るわ・・・
今日はお風呂に入らないことにしようかな…、ふふ・・・」

「・・・・・・・」

村上が複雑な表情で由美子を見ています。

村上の視線を意識しながら、傍にあるテイシューを取り上げ、股間を丁寧に拭っています。拭った紙
を傍のごみ入れにそっと入れています。最後に新しいテイシューを丸めて、亀裂に押し込みました。
言葉通り、村上の精を大切に持ち帰るつもりなのでしょう。一連の動きは見事でした。全部を見せる
わけでなく、隠すべきは隠して、それでいて男の目を楽しませながら、上品に振舞っているのです。
男心を知り抜いた見事な動きです。

「姐さん・・
また・・、会えますね…」

「・・・・・・・・」

身支度を手早く終えた由美子が黙って首を振っています。

二人はしばらく無言で見つめ合っていました。そして、村上が右手を前後に振っています。早く帰れ
と言っているのです。


[11] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(684)  鶴岡次郎 :2018/04/17 (火) 17:17 ID:xOJ/itaM No.3115
笑みを浮かべた由美子がちょっと頭を下げて、潔く背を向けてドアーの方向へ歩き始めました。男の
攻撃に身を反らせてうめき声をあげた女の背を、男はじっと見つめていました。男根を一杯に飲み込
み、例えようもない妖しい動きをした女陰は下着とスカートに包まれ、緩やかに揺れながら男の視界
から遠ざかっているのです。飛びつけば、もう一度あの味を楽しめるのです。高まる気持ちを男は何
とか抑え込みました。

ドアーの閉まる音が響き、静寂がこの部屋に訪れました。

首を振りながら、苦笑を浮かべて村上はベッドサイドのボトルを取り上げ、その中の水を勢い良く飲
んでいます。村上の喉がぐびぐびと、そこだけが別の生き物のようにうごめいています。
ついっと、右手を伸ばした村上が屑籠から小さな紙くずを拾い上げました。そして鼻先にそれを押し
当て、深く息を吸い込んでいます。目を閉じて、何度も、何度も、吸い込んでいます。先ほど由美子
が股間を拭うのに使ったティシューです。

「もう一人・・、
掟を破って、惚れた女が居た・・・
数年前に出会って一目惚れし・・・、
ようやく、今日、あなたを抱くことが出来た…」

初めて由美子に出会った頃を村上ははっきり覚えています。的屋組合の全国規模の総会が開催され、
たくさんの関係者が集まっていました。総会の打ち上げパーティの催しものとして、恒例の白黒
ショーが催されました。そのショウの舞台に何故か、由美子が登っていたのです。村上は観衆の一人
として由美子を見たのです。その頃由美子はすでに的屋天狗組、組長夫人で・・、その道でも性豪と
して有名な女性でした。村上は地元の組織に草鞋を脱いだ一匹狼の竿師でした。由美子の舞台を見て
鮮烈な衝撃を受けた村上は、舞台を終えた由美子をその控室に訪ねたのです。

「自分は地元の組織に草鞋を脱いでいるしがない竿師です。
今は・・、とても姐さんの相手が出来る自信はありませんが・・、
修行を積んだ暁には・・、ぜひ・・、
姐さんとお手合わせしたいと思い、
無礼を承知で、こうして、楽屋裏に訪ねてきました…」

礼儀正しく名乗る村上を由美子は暖かく迎え入れました。

「村上さんと言いましたね・・・、
今でも、凄い精力をあなたから感じ取ることが出来ます。
きっと、その道では名のある方だと思います…、
私で良ければ・・、いつでもお相手します‥、
時間が出来た時、組に連絡を入れてください…」

その道のプロ同士、村上と一戦交えることを由美子は快諾したのですが、それ以来、村上は一度も由
美子と連絡を取ったことがないのです。竿師家業の相方として由美子を考えるべきなのに、村上は由
美子に一目惚れをしてしまい、絶対に無理だと判っていながら、プロの男と女でなく、素のままの男
と女に成り切って、愛し合いたいと思うようになっていたのです。

村上の望みが達成されることもなく、何年か過ぎ、村上は竿師家業から足を洗い、飲食店経営者を相
手に、店舗売買の斡旋、店内備品、飲食物、その他諸々の商品を扱う商いをはじめて、苦労の末、銀
座に店を持つまでになったのです。そして、由美子が店のお客として村上の前に現れたのです。

村上は狂喜しました。この機会を神が与えてくれたものだと思いました。長年の望み通り、素のまま
の男と女になり切って・・・、少なくとも村上はそう思ったのですが・・、二人は抱き合い、ベテラ
ンの二人でさえ、かって経験したことがないほど、深い、味わいに満ちたセックスを楽しんだので
す。

「俺の気持ちが判っていながら・・、
あなたは黙って去っていった…・
これもまた・・、運命なのか…・」

ぽつりとつぶやいて、由美子が残した濃い香りが漂う室内に、村上はいつまでも座っていました。


[12] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(685)  鶴岡次郎 :2018/04/18 (水) 10:44 ID:R6LJkjRg No.3116

背の高い男が由美子を待っていました。村上と由美子がレストランを出てから、ずっとその後を尾行
し、アパートの階段が見えるビルの陰で、その男はずっと由美子を待っていたのです。

その男の胸の中に飛び込み、由美子が思いっきり甘えています。万が一、村上が暴力をふるったり、
話がこじれて咲江を手放さないと言いだしたら、ワン切りの携帯電話連絡を受け、その場に乗りこむ
つもりで彼は待機していたのです。由美子の情夫、的屋の大親分、宇田川 裕(U)です。

「計画通り上手く事が運んだんだね・・・
俺の出番がなくて何よりだよ・・・・」

「うん・・・」

「大分活躍してきたようだが・・、
おいしい男だったんだろう・・・」

「それほどでもなかったわ・・・」

「嘘を言え、全身から悪事の匂いが漂い出ている・・・、
満足しました…と、その顔が正直に語っているよ・・・、
階段を下りてくる腰がふらついていたよ・・・、
悪い子だ…」

男と寝てきた直後の隠微な匂いをまき散らし、情事の余韻の残るほてった表情を隠せない由美子のお
尻をポンポンと叩いているのです。いたずらをした幼い少女を父親が優しくいさめている様子です。

「だって…、絶対失敗できないから・・・、
私・・・、必死だった・・・」

「そうかな…、
俺には楽しんできたとしか見えないけれど・・」

「いい気持になったのは事実だけれど・・、
楽しんでばかりいたわけではないのよ・・、
彼・・、有名な竿師でしょう・・、
噂通り凄いテクニシャンで、
一時は、返り討ちも覚悟したほどなの・・」

「・・・・・・・」

「全身を丹念に舐めるの・・、
足の先から唇まで・・、
それは凄いから・・、
わたし・・、何度も潮を吹いていた…、
ちょっと油断するとね・・・」

「ああ・・、もういい・・、
その話はもういい・・・」

「ウフフ…、妬いてくれるの・・・・、
これからが良いところなんだけれど・・・、
嫌なら止めるわ・・
後でゆっくり話してあげる…」

「・・・・・・」

「それでね・・、
せっかくだから、シャワーを使わなかったわ・・・、
私は・・、洗い流したいけれど・・、
Uさんがお土産をほしがるでしょう、
それで、あの人の唾液も、精液も、全部体に張り付けてきた・・。
感謝してほしい・・・」

大きなUに抱えられて由美子はゆっくりと都心の繁華街を駐車場まで歩いています。そして、歩きな
がら電話を始めました。


[13] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(685)  鶴岡次郎 :2018/04/19 (木) 10:32 ID:Id0vmhtc No.3117
「終わったよ・・・
千春さん‥‥、彼女と会えたの…?」

この近くのどこかに待機している千春に連絡しているのです。咲江は千春と落ち合う約束になってい
て、それを確かめるため由美子は千春に連絡を入れたのです。

「そう・・、
咲江さんは来なかったんだ‥…、
一人で帰ったのね…、
彼女の気持ち・・、判る気がする‥‥」

どうやら、村上の部屋を出た咲江は千春とは顔を合わせないで、一人で帰った様子です。

「彼女、立派だった・・、
でも・・、泣いていた…・」

「咲江、泣いていたのですか・・・・」

「うん・・、
健気に頑張っていたけれど、涙があふれていた・・」

「そうですよね・・・、
彼女の気持ちわかります‥‥」

「明日・・、彼女と会えるのね・・、
うん・・、よく話を聞いてあげて・・、
それが一番の慰めになるから…」

声を落とし、丁寧に由美子が千春に頼んでいます。

「ああ・・、私はいいの・・、
彼・・、ずっと私を待っていてくれたのよ・・・」

「優しいのね・・・・・・・」

「ふふ・・・、そうよ・・、
今から、どこかで…、火照った体を慰めてもらうの…
後はお願いするね・・・、では…・」

由美子と千春の会話は弾みませんでした。二人とも互いに色々聞きたいことはあるのですが、咲江の
ことを考えると千春も由美子もここで多くを語る気持ちになれないのです。


村上の部屋に忍び込み、由美子と村上の激しい性交を目のあたりにし、村上に別れの言葉を吐きだ
し、潔く部屋を出るまでは自分が自分でない気分で動いていたのです。初めて見る男と女の交わり、
普通の状態であれば体を濡らし興奮するのですが、愛する男の裏切り行為なのです、緊張と、怒り、
そして絶望・・、ありとあらゆる感情に翻弄されて、体を襲う情欲を意識する余裕がなかったので
す。

扉を閉め、暗い階段を夢うつつの状態で降り切り、明るい路上に出た時、始めて咲江は体を襲う恐ろ
しいほどの情欲に気がつきました。これまでこれほどの情欲を感じたことはないのです。

プチプチと音を立てて女陰がうごめき、盛んに愛液を噴出しているのです。村上の部屋で下着を取り
去りバッグに入れています。下着を付けていない大腿部に愛液が流れ出し、少し粘り気を帯びた愛液
は靴にまで達しているのです。そして形の良い脚はネオンの光を受けて鮮やかに輝いているのです。
普通であれば慌ててふき取るのですが、その気持ちさえ激しい情欲に消されているのです。この時点
で、喫茶店で待っている千春のことはすっかり忘れていました。

一刻も早く、夫に会いたい・・、彼の男根に触れたい・・、その気持ちに取り込まれていました。携
帯電話を持つ手が興奮で震えていました。


[14] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(686)  鶴岡次郎 :2018/04/21 (土) 11:46 ID:asp23.26 No.3118
呼び出し音がそれほど長く続かず、低い声で応答する夫の声が咲江に優しく呼びかけました。

「ああ・・・、あなた…、
今・・、何処・・・
ああ・・・、帰っていたのね…」

早めの帰宅をした夫が自宅にいることを確かめると、咲江の欲望は爆発しました。

「うれしい…
会いたい・・、
早く会いたい・・・」

「咲江…、どうしたのだ…、
何があったの・・、
今・・、何処だ・・・
迎えに行くから、その場所を教えてくれ・・・・」

鳴き声を出して甘える咲江の様子を案じて、坂上が慌てています。

「ああ・・、いいの・・、
銀座の繁華街に居るから、人も多くて何も危険はない・・、
ただ・・、抱いてほしいの・・・」

「・・・・・」

「ああ・・、抱いてほしい・・・、
大きい・・、大きい・・、あなたのアレが欲しい・・・、
チ○ポ・・、チ○ポが欲しい・・・」

「咲江・・、お前・・・・」

「ああ・・、ほしい・・・、
ぐっと・・、チ〇ポを入れてほしい・・、
私のオマ〇コに・・、ぐっと入れてほしい…
ああ・・、我慢できない…」

「咲江…」

最近目覚めて、寝室ではいつも淫らな言葉で夫に迫る咲江なのですが、路上からの電話でかなりの大
声で咲江は訴えているのです。電話の向こうで坂上は当惑していました。おそらく周りに咲江の声は
良く聞こえたと思いますが、まさかおとなしそうな婦人がそんな破廉恥な言葉を出すとは思いません
から、誰もその卑猥な言葉に気が付きません。ただ一人・・、ビルの陰で、咲江を見守っていた、背
の高い男、U以外は気が付いていませんでした。

夫、坂上の勧めで、電車を使わずタクシーで帰宅した咲江は夫の前に首をうなだれて座っています。
電話をした路上では切羽詰まるほど追い込まれ、狂ったように男根を求めていた激しい情欲はタク
シーに揺られて帰路をたどるうちに何とか小康状態に戻っています。それでも、愛液の噴出は、少し
その量は少なくなったものの、相変わらずにじみ出ていて、腿を伝って足首まで伝わり落ちているの
です。多量に噴出した愛液は一部が乾いて、異様な匂いを発散させています。子供たちはすでに寝付
いているようで、夫婦二人きりです。

「何があったのか話してくれるね・・・」

「・・・・」

うつろな瞳で見つめる咲江の表情を見て、坂上はこれ以上妻に問いかけるのは無駄だと気がついたよ
うで、真剣な表情を崩し、満面に笑みを浮かべて、やさしく声を掛けました。

「判った・・、
いいよ・・、今夜のところは・・・、
話したくなってからでいい・・・」

「・・・・・・」

疲れてはいるようなのですが、それでいて肌は紅潮し、胸が激しく動き、何よりも、全身から濃い女
臭を放っているのです。坂上はまぶしいものを見るような様子で、妻を見つめています。

〈何があったのだ…、
明らかに欲情している…、
綺麗だ、官能的だ、いや・・、そそられる…・
男のせいだ・・、妻の後ろには僕の知らない男が居る…・・〉

これほど輝く妻を見たのは初めてだと・・・、坂上は騒ぐ心を必死で抑え込んでいました。

妻の身に何かが降りかかた・・、多分それは坂上の知らない男が関与しているはずのなのです
が・・、そのことが原因で妻の中に潜んでいた女が揺り起こされ、激しい情欲の虜になり、妻は我
を忘れる状態になっている・・。そこまでは想像できるのですが・・・、具体的には何も判らないの
です。どう慰めていいのか、事件の内容を厳しく聴きだすべきなのか、ただ愛情込めて励ますべきな
のか、坂上は途方に暮れていました。研究で難題に直面した時でも、これほど途方に暮れたこと
はないのです。

坂上は黙って待つことを選びました・・。おそらくは生涯初めてのショッキングな事件に遭遇し、妻
は正気失っている、彼女の正気が少しでも回復するまで、じっと待つことにしよう・・、坂上はそう
決心したのです。

「暖かいお茶でも入れようか‥」

満面に笑みを浮かべ、坂上はゆっくりソファーから立ち上がりました。その時です、低い声で咲江が
声を発しました。


[15] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(687)  鶴岡次郎 :2018/04/22 (日) 10:20 ID:193Xz58Y No.3119
「男の人と・・、
ずっと一緒でした…、
あなたの知らない人です・・・・」

「・・・・・・・・・」

ポツリと咲江が口を開きました。やはりと言った表情で夏樹が黙って頷いています。

「抱かれました・・・」

「・・・・」

何かを訴えるように、涙さえ浮かべて、目をいっぱい見開いて、咲江は夏樹を見ています。一方、夏
樹には、目の前の女が・・、よく知っているはずの妻が・・、見知らぬ女に見えるのです。

夏樹は大きな戸惑いの中に居ました。妻が男と過ごしていたとの告白は、これまでの観察で、ある程
度まで予想できていたことでした。彼を一番戸惑わせているのは彼自身の気持ちの在り方なのです。

狂わしいほどの嫉妬、妻の頬を思い切り殴りつけるような、突き上げて来る激しい怒り、そんな感情
を夏樹は予想していたのです。しかし、妻の告白を聞いて、激しい嫉妬は感じるものの、怒りはほと
んど感じないのです。そんな自分自身を見つめて、夏樹は驚き、そして、その反応を知り、密かに喜
んでいるのです。

〈なんだこの感情は・・、
妻の浮気を知って、僕は喜んでいるようだ・・、
悔しくないのか・・、いや、悔しい・・、
しかし、反面では、何故かうれしい…〉

夏樹にとってその感情は決して悪いものではありませんでした。よく見ると、目の前に座っている女
は今まで見たことがないほど色っぽいのです。女性経験の少ない夏樹は色っぽい女をそうたくさん知
りません。最近では咲江の親友千春が思い当たるだけです。

目の前の女は千春に相当する・・、いえ・・、彼女以上のオーラ、女の魅力を発散させているので
す。いい女だ・・と、夏樹は言葉を忘れて自分の女房に見惚れているのです。

「全部申し上げます…、
とんでもない話だと思いますが・・、
最後まで聞いてください…」

「判った…、
全てを話してほしい…」

覚悟を決めたのでしょうか・・・、それとも、夫、夏樹に告白するストリーが固まったのでしょう
か・・、居住まいを正して咲江が語り始めました。

自分の女房のこぼれるような色香に酔いしれながら、つい甘い言葉をかけそうになる気持ちを抑えな
がら・・、夏樹はやや厳しい表情を作り出し、これから聞く、おそらくは浮気の告白を黙って聞く体
制を整えているのです。どんな話を聞いても、決して冷静さを失わないと自分に言い聞かせているの
です。

「一週間ほど前でした・・、デパートへ買い物に出かけ、あれやこれや見ている内に、
つい遅くなり、急いで帰らなくてはと、少し慌てていました・・・・。
普段はそこを通るのは避けている裏通りの飲み屋街を横切ることにしました・・、
駅への近道なんです‥‥」

一言、一言言葉を拾いながら咲江は話し始めました。どこまで告白するのか、この調子でいけば村上
のことをすべて告白するかもしれないのです。一年間も浮気を続け、何十回も抱かれていたと知れ
ば、いくら優しい坂上だって許すことが出来ないでしょう。咲江は離婚も視野に入れているのでしょ
うか、それでは、咲江の家庭は崩壊することになります、せっかくの由美子たちの努力が水の泡にな
ります。少し心配です。


[16] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(688)  鶴岡次郎 :2018/04/23 (月) 11:46 ID:7G/4NYAo No.3120
どうやら咲江は一年前村上と初めて遭遇した銀座の街角での事件に触れるつもりの様子です。全てを
正直に話すつもりのなのでしょうか・・。

「なるべく早い電車に乗りたかったから、すごく急いでいて、ほとんど駆けるようにビルの谷間を
通っている時だった・・、暗い角を曲がった瞬間、何かにぶつかり、そのはずみで倒れ、地面に膝を
つきました。激しい痛みを感じたのです。よく見ると、ぶつかった相手は、三、四人の若いサラリー
マン風の男達で、かなり酔っているようすでした・・・。悪いのは前方を注意しなかった私ですが、
膝の痛みで、素直に謝ることを忘れていました…」

その若者たちが、咲江の失策を追及してきて、しちこく絡み始めたと咲江は説明しました。一年前の
事件とは少し違う展開です。

「そこへあの方が・・、
偶然・・、通りかかったのです…、
もし・・、あのまま絡まれていたら・・、
どこかに連れ込まれていて、ひどい目にあっていたと思います・・」

50過ぎで、それほど体格が良くない、どちらかと言えばひ弱そうな男を甘く見た若者たちの内の一
人が、その男に掴みかかったのです。あっという間に若い男は道路に倒れ込んでいました。男の体が
わずかに動いたのを咲江は見たのですが、どのようにして酔っ払いが投げ飛ばされたのかわかりませ
んでした。もちろん、残る若者たちの目にも、その男の動きは判りませんでした。

戦意を急激になくした若者たちは、倒れていた一人を抱えるようにして逃げ出してしまいました。そ
の様子を見た、咲江は安心したのか、道路に座り込んでしまったのです。

男は咲江を抱きかかえるようにして、近所にある彼の事務所に連れて行きました。そこで熱いコー
ヒーをごちそうになり、一息ついたところで、先ほど酔っ払いに絡まれた恐怖が改めて咲江の中によ
みがえりました。突然咲江は泣き出したのです。男は優しく抱きしめてくれました。咲江は男の胸に
顔を押し付けてかなりの時間泣いていました。

「彼の胸で泣いていると・・、
気が休まりました…。
あなたとは違う匂いでしたが、
あなたに抱かれている気分でした・・
このまま・・、じっと抱かれていたいと思っていました・・
スミマセン・・・・・」

膝に傷を受け、若い酔っ払いから絡まれ、精神的にも、肉体面でもかなりのダメージを受け落ち込ん
でいるところを村上に優しくされ、思わず彼の胸に縋りつき、少なからず女心が騒いだことを咲江は
夫に告白しているのです。

この告白の下敷きなっているのが、一年前の事件です。暗いビルの谷間で、村上の体に衝突し、跳ね
飛ばされ膝に傷を負い、彼の部下である若い男に背負われて事務所に担ぎ込まれたのです。その時感
じた女の興奮を思い出しながら今日の事件を夫に話しているのです。

創作話ですが真に迫っているのは、一年前の実体験で感じた興奮とトキメキを思い出し、その内容を
忠実に告白しているせいです。あの時、若い男の体臭を嗅ぎ、彼の体温を感じ取り、咲江の下半身は
痺れ、下着を汚すほどの愛液を噴出していたのです。

膝に軽い傷をうけ、少し血がにじみ出しているのを直ぐに村上が見つけました。それほどの傷ではな
いのに、村上は随分と心配してくれて、丁寧に応急手当てをしてくれ、別室に居た社員の人を近くの
店に走らせて、ストキングを買い求めてくれ・・。そのうえ、咲江の自宅までハイヤーで送り届けて
くれたのです。咲江はその通りを一週間前の事件として夫に報告したのです。

「まるで王女様のように彼は私をやさしくもてなしてくれました・・。
路上で、若い男たちから・・、
『おばちゃん・・、あそぼうよ・・』と・・・、
蔑みの言葉を浴びた、その寂しい気持ちが・・・、
彼の手厚いもてなしで吹き飛びました・・・
『私はまだ、まだ、まだ・・、女なんだ・・』と・・、
本気で思えました…」

このように咲江は夫に告げたのです。夏樹は複雑な表情を浮かべ聞いています。それでも・・、話の
内容を疑っている様子は見えません。


[17] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(689)  鶴岡次郎 :2018/04/24 (火) 10:57 ID:MqmKZ8N. No.3121
「その時のお礼が言いたくて・・、
今日・・、銀座へ行きました…。
あなたの知らない男の方に会うのが、
何となく、後ろめたい気持ちがあり、
あなたには、千春と銀座で落ち合って食事をすると嘘を言いました・・。
スミマセン」

「・・・・・・」

笑って、夏樹が頷いています。

「彼に会えば・・、
誘われるとは覚悟していました・・。
でも・・、食事に付き合う程度までと決めていました・・・
それが・・、食事の雰囲気がとっても良くて・・、
甘い言葉に乗って・・・、
彼のアパートへ行ったのが間違いの元でした‥・」

「・・・・・・・」

苦しい言い訳を言葉通り受け取り、夏樹は頷いています。

〈この人は・・、
母の言葉を信じる幼い子供のように、
疑うことを知らないのだ・・
こんなに純真な人を騙してはいけない…〉

咲江は予定外の本音を吐き出したのです。

「嘘を言いました・・、スミマセン・・・。
家を出る時から・・、
もし・・・、彼が求めたら・・
受け容れてもいいと・・、
あなたを裏切る気持ちが心の底にありました・・
私は悪い妻です…、スミマセン・・・」

「・・・・・・・・」

夏樹が黙って頷いています。

その男、村上に妻の気持ちが傾くのは当然だと夏樹は考えていました。話を聞く限りでも、窮地に
立った女を救い出す完璧なヒーローを、村上は演じているのです。これで、気持ちを傾けない女はこ
の世に存在しないだろうと、ほろ苦い気持ちを夏樹は噛み締めているのです。

おそらくは・・、男に抱かれる覚悟を固めて・・、それなりの装い・・、そこに男を迎える気持ち
で、シャワーを使い隅々まで体を清め、仕上げに男心を動かす香水と下着を着け、罪悪感を背負いな
がら、視線を落として、家を出たのだろうと、夏樹は推測していました。

そう思っても、なぜか夏樹は不愉快になっていないのです。そこまで成長した咲江を歓迎する気持ち
の方が強いのです。そんな自分自身の心中をのぞき込み、夏樹は少し首をひねっているのです。

〈この感情は何なのだろう・・、
寝取られ体質だとその道の文献にはあるようだが・・、
まさか・・、僕が・・〉

以前の夏樹であれば、こんな時、どのような反応を見せるだろうと自問しているのです。ソープで修
業を重ねた結果、夏樹の中に、男と女の間で起きるもめごとへの理解力が増しているのは確かです。
そのことを知って、夏樹は驚きながら、自分自身の成長に感嘆しているのです。


[18] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(690)  鶴岡次郎 :2018/04/25 (水) 13:03 ID:1BEoYRu2 No.3122

「その方は銀座に事務所を持っている村上総一郎さんと言う方です。
飲食店向けの店舗設備全般を取り扱っている会社の社長さんです。
50歳くらいの方で、商売柄かなり粋な方です…」

坂上は黙って聞いています。

〈50男か…、
もっと若い男かと思っていたが・・、
咲江が心ときめかした相手だから、
かなりいい男に違いない・・。
これは強敵だな…〉

相手が50男だと知り、夏樹は警戒心をつのらせていました。三十そこそこの男であれば、なんとか
手の内が読み取れ、対抗できる自信はあるのですが、50男となると、とてもかなわないと思えてく
るのです。

「誘われるまま・・、
近くのレストランでお食事をごちそうになりました。
申し訳ありませんが、とっても楽しい時間を過ごしました…。
食後…、事務所の近くにある彼のアパートへ誘われました…」

「・・・・・」

「一人住まいの男性の部屋に行くなど・・・、
不注意な行為だったと思います、
でも・・、その時は断り切れなくて・・」

さすがに視線を夫から外しています。

「いえ…、正直に申し上げます…、
アパートへ行けばどうなるか判っていました・・・、
お姫様のように扱われ、有頂天になり・・、
彼への感謝の気持ちがつのり・・。
彼に抱かれてもいいと、
そんな気持ちになっていたのです・・・・
断る気持ちは最初からなかったと思います…」

「・・・・・・・・」

夏樹の表情は変わりません。それどころか笑みさえ漂わせているのです。
咲江はその先も思い切って話すことにしました。

この一年、村上と不倫関係を続けてきて、彼女の中で大きく育っている罪悪感、その一方で、村上から
与えられる快楽に馴染んでしまった女体、罪悪感と女の快楽の狭間に立って、咲江はずっと悩み続け
てきたのです。その苦しい思いをすべて吐き出すように咲江は話しています。こうなると、どこまで
が実話なのか、どの部分が創作なのか、当の咲江自身もわからなくなってしまうのではと・・、そん
なことが心配になります。

「期待と不安で体を震わせながら、彼の部屋に向かいました・・。
恥ずかしいほど濡れていました。スミマセン・・。
勿論、あなたのことは忘れるようにしていました。スミマセン・・。」

「・・・・」

一年前村上に腕をとられて、アパートに続く階段を上がった、その時の興奮と戸惑いを咲江は鮮明に
思い出していました。男の腕を振り払い、その場から去ることを咲江の理性は教えていたのです、そ
の一方では、大腿部まで愛液が流れ出している女体は咲江の理性を無視して、男の腕にかじりつき、
息を荒げながら、一歩一歩確実に彼のアパートへ歩み続けていたのです。

夫、夏樹は咲江の言葉を欠片も疑っていない様子です。その表情を見つめながら、咲江は決心してい
ました。一年前のあの日、村上の毒牙を受け容れたあの日の様子を、その事件が発生した日時も含め
て、すべて正直には伝えることは出来ないけれど、せめて、その時の揺れ動いた咲江の浮気心はでき
るだけ正確に夫に告白しようと心を決めていたのです。

その後続く一年余に及ぶ裏切り行為は何をしても償い切れないけれど、せめて、罪を犯すことに
なった咲江自身の浮気心と性衝動を正直に、夫に告白し、彼の裁断を待ちたい、その結果離婚話に発
展しても、それはそれで仕方のないことだと咲江は覚悟を決めているのです。


[19] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(691)  鶴岡次郎 :2018/05/07 (月) 13:25 ID:xIrICaQ6 No.3123

「部屋へ入り、扉が閉まると、
後ろから抱きすくめられました・・
びっくりして・・、私・・・、大声をあげていました・・。
彼の手が私の口をふさぎました・・」

咲江はその時のことを鮮明に覚えています。逃げ出そうと思えば、逃げ出せたはずです。男はそれほ
ど強く咲江を抑え込んだわけでなかったのです。優しくしてほしいと咲江は訴えました。男が頷いて
いました。

「私が逃げ出さないと知ると、男は優しくなりました。
乳房を・・、ああ・・、おっぱいを・・強く握りしめられ・・、
項に彼の唇が強く押し付けられました・・。
一番弱いところを責められて、私は嬉しい悲鳴を上げたと思います…。
スミマセン・・、続きを話してもいいですか…」

ここで言葉を飲み、咲江が夫の表情を探っています。夏樹は黙って、笑みさえ浮かべて頷いていま
す。夫の反応を確かめて、咲江はさらに赤裸々に話す気持ちになっています。この際できるだけ正直
にこの時の様子を夫に告げたい、そんな気持ちに咲江はなっているのです。そうすることが、夫への
わずかな罪滅ぼしになると咲江は思っているのです。

それだけでありません、彼女自身意識はしていないのですが、自身の情事を話すことで咲江はかなり
興奮しているのです。何もかも、隠さず、いけない言葉もふんだんに使って、自分の情事を話した
い、そんな気持ちが徐々に咲江の中で大きくなっているのです。危ない傾向です。

「一番弱い項を舐められて・・、
私は・・、
申し訳ありませんが・・、
何も抵抗できなくなりました…」

「・・・・・・」

咲江の体をよく知っている夏樹が何度も頷いています。

「唇を突き出し、積極的に彼の唇、そして舌を受け容れていました。
気がつくと、スカートの下に彼の手が滑り込んでいました・・・。
あの…、この先も話していいですか…」

焦らすつもりはないようですが、話すべきか、止めるべきか、咲江の口が止まるたび、夏樹はかなり
じれた様子を見せています。

「そんなに途切れ途切れに話されると・・、
イライラするよ・・、
この際、僕がどう思うかは、気にしなくていいから・・・、
全部正直に、スーッと話してくれないか…」

手を振り、早くすべてを話せと夏樹は言っているのです。それでも、夏樹は笑みを失わないのです。
夫の表情を見て、咲江は話を続けることにしました。咲江にどこか余裕が出ています。意識はしてい
ない様子ですが、夫が咲江の告白を嫌がっていないと察知して、夫をからかう気持ちの余裕さえ持ち
始めているのです。

「判りました・・、
あなたの前では、いつも正直で居たいと思っています・・、
何も隠さず、できるだけ詳しく話します・・・
嫌いにならないでください…・」

「そうしてほしい・・、
変に隠されると、間違った憶測をして、
咲江を誤解するとまずいからね・・
内容にもよるが、
咲江の告白を聞いて、
君を嫌いになることはないと思う・・」

「ハイ・・、判りました…。
では・・、出来るだけ忠実に、くわしく説明します…
あなたにとっては、耳を塞ぎたくなる話だと思います‥。
それでも、私は詳しく話します。
詳しく告白することが、罪を犯した私の務めだと思うからです。
途中で聞くに堪えないと思いになったら、そう言ってください…・」

決心した表情で咲江が話し始めました。


[20] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(692)  鶴岡次郎 :2018/05/08 (火) 13:35 ID:m43ENxME No.3124

「パンストを破って、ショーツの中に彼の指が入ってきました・・、
私は両脚を緩めて、彼の手を、指を、喜んで迎え入れていました。
多分・・、そこは恥ずかしいほど潤っていたと思います。
あなた以外の指をアソコに受け入れたのは、勿論、初めてでした・・」

夏樹が苦しそうな表情を浮かべています。その表情を見て、咲江が笑みを浮かべています。二人の心
の中でどのような動きがあるのでしょうか・・。咲江は話を続けるようです。夏樹の苦しむ表情を楽
しむかのような態度を見せていますから、さらに、過激な告白になりそうです。

「その場に押し倒されて・・・、
スカート腰のあたりまで巻き上げられて・・、
あっという間に、
パンストも、ショーッもはぎ取られていました・・・」

「過激だね・・・」

「彼の手が両足首を握り、思い切り両脚を開きました・・・。
恥ずかしいところを彼に…、
全部見られてしまいました・・。
正直に申し上げます‥、
私はその時、凄く感じていました・・・
もっと見てほしい・・と
自分でもいっぱい両脚を広げていました…」

「・・・・・・」

春樹の興奮した表情を、笑みを浮かべて咲江が楽しんでいます。どうやら、この場は咲江が支配する
ようになった様子です。

「あの人は、息がその部分にかかるほど近づいていました。
その部分にあの人の指が入ってきました。
一本、二本と・・。
縦横に動いて、
私はそれだけで、頂点へいかされていました・・・」

「・・・・・・・」

苦しそうな表情を浮かべていますが、夫は咲江の話を止めようとしません。

「体を反らせて、、
何度も、何度も・・、わたしは天国へ行きました。
下着の無い下半身はスカートが腰までまくり上げられ、
ブラウスのボタンは全部外され、ブラが押し上げられ・・、
私はほとんど全裸を男の目に曝していました・・」

「・・・・・」

「私は両脚を一杯広げて、愛液を噴き上げていました…、
今思っても、死にたいほど恥ずかしい姿をさらしました。
玄関の床が私の出した液でべっとりと濡れていました・・」

「玄関で抱かれていたのか・・・・・」

「ああ・・、そう言いませんでしたか‥
興奮して、言うのを忘れていたかもしれません・・・、
お部屋に入ると同時に、扉を閉めた瞬間、
後ろから抱かれて、全身にキッスの洗礼を受け、
その場に押し倒され・・、
気がついたら、アソコに指を、深々と入れられていたのです・・・・。
どうすることもできない状態でした…」

苦しそうな夫の表情の中に、恍惚の感情が入り混じっているのを、咲江は女の勘で見抜いていまし
た。咲江はすっかり落ちついています。


[21] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(693)  鶴岡次郎 :2018/05/10 (木) 09:51 ID:.ZdgorDQ No.3125

「その場で・・、着ているものを全部剥ぎ取られて、
彼に抱きあげられ、ベッドに運ばれました…、
私・・、その気になっていました・・。
多分・・、彼が衣服を剥ぎ取り易いように協力したと思います。
申し訳ありません・・・」

「・・・・・」

軽く頷きながら、その表情は話を続けるよう咲江を促しているのです。

「それでは話を続けます・・・・。
嫌になったら、そう言ってください…
ああ・・、忘れていました…、
ショーツとブラは、彼に差し上げました…
ですから・・、今は下着レスです…。
あら・・、こんなこと報告する必要ありませんね・・・、
ふふ・・・・・」

咲江が微笑みながら話し、スカートの裾を少し持ち上げました。白い内股は見えましたが、股間の影
までは見えません。夏樹が苦しそうな表情で頷いています。

「覚悟を決めて、ベッドに横たわっていると・・、
全裸の彼が私に覆いかぶさってきて…、
私の体の隅々まで、彼の舌と、指で愛撫してくれました…」

「舌でアソコを舐められたのか・・」

「はい・・」

「お前・・、その行為を嫌がっていたはずだが…」

「正直に申し上げます…、
私…、本当はその行為が好きなのです・・」

「・・・・」

「あなたに舐めてほしいと、結婚当初から思っていました・・。
先日、あなたの舌をアソコに感じた時、激しく抵抗しましたね・・」

夏樹が黙って頷いています。ソープで修業して、舌使いには自信を持つようになっているのですが、
咲江が激しく抵抗するので、その行為を嫌がる女もいるのだと理解して、その時は舐めるのをやめた
のです。

「あの時・・、
羞恥心が、そうさせたのです…
本当は・・、思い切り舐めてほしかった…、
私・・、本当はスケベーだと思います・・」

「そういうことだったのか・・・、
判らないものだね…」

夏樹が納得しています。咲江の本心は舐め続けてほしかったのだと夏樹はようやくわかった様子で
す。

「正直に申し上げます・・。
彼のモノも・・、しゃぶりました…。
狂ったようにしゃぶりました・・。
私・・・、何度も、何度も、いかされました・・・・・」

「何度も、何度もか・・・・」

「ハイ・・、何度も、何度もです…、
大きな声も出したと思います…」

「いつものように・・・、
大声を出して潮も吹いたのだろう…」

「ハイ・・・、多分・・・」

「・・・で、
ここまでくれば、後は挿入だね・・・」

「いえ…、最後まではしませんでした‥、
出来なかったのです・・・
先端が少し入って来て・・、
ああ・・、やっと、出来ると思った時でした‥‥、
そこで中断することになったのです…」

「なぜ・・・・?
そこまで行っておきながら、挿入しないなんて、
あり得ないことだろう…・」

坂上が不審な表情をしています。


[22] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(694)  鶴岡次郎 :2018/05/17 (木) 11:31 ID:xOJ/itaM No.3126

夫の表情に怒りがないことを確かめて咲江が口を開きました。

「突然・・、女の人が現れたのです…、
本当にびっくりしました。息が止まる思いでした・・・・」

「女の人が突然現れた・・・・?!」

意外な展開に坂上がびっくりして口をぽっかり開いています。夫の反応に満足したのでしょう、余裕
の表情で咲江が夫を見ています。この場を咲江は完全にコントロールしています。

「帰りのタクシーの中で気が付いたのですが、
多分、あの女性は彼の愛人だと思います・・。
薄暗がりの中、チラッと見ただけですが、凄みの漂う美人でした・・・。
とても私ごときが太刀打ちできる女性ではないと思いました・・・
多分・・、水商売の人・・、
それも飛び切り高級店のママだと感じました・・」

暗い中でも咲江は由美子をしっかり見ていたようです。

「あの女と村上さんは合鍵を渡されている関係だと思います。
いつものように合鍵を使って部屋にやってきて、
私たちが裸で抱き合っているところへ出くわしたのだと思います・・・
たぶん・・、すぐには声をかけないで、
私達の恥ずかしい絡みをしばらく見ていたのだと思います」

「とんだ修羅場だね・・・」

笑いを噛み殺して、坂上が明るい調子で口をはさんでいます。村上に愛人がいたこと、そして、十分
な挿入が無かったことも判ったのです。夏樹は少し安心しているのかもしれません。

「私たちの演技を褒めたたえるつもりなのでしょう・・、
拍手をしながら私たちの前に、その女は、突然現れたのです・・。
もう少しで完全挿入、そのタイミングで女は現れたのです…」

「残念だね…」

陽気な言葉を夏樹が吐き出しています

「ハイ・・、残念でした‥、
あら・・、スミマセン…、ふふ・・・・」

完全挿入できなかったことを思わず悔やんで、これはまずいことを言ったと反省し、夫に頭を下げて
いる咲江です。このあたりになると、創作話でなく事実を語っている気に咲江はなっているのです。

「多分・・、私がベッドに運ばれた直後から見ていて、
ストップをかけるタイミングを狙っていたのだと思います。
女だから判るのです・・・。
惚れた男が他の女に挿入する姿など、絶対見たくないのです。
挿入はさせたくない女の意地が働いたのです・・・」

悔しそうな表情を浮かべ、涙さえ見せているのです。

この時、咲江は村上と由美子の絡みを見た光景を頭に描きだしていました。咲江が部屋に忍び込んだ
時、由美子と村上の絡みはすでに中盤に入っていて、挿入も終わり、何度か由美子は頂点に達してい
たのです。悔しいけれど、最後まで見ることしか咲江にはできなかったのです。あの時もう少し早く
現場に踏み込んでいれば、挿入直前にストップをかけることが出来たのです。そうすれば、村上と咲
江の運命も変わっていたはずだと、咲江はぼんやりと考え、思わず涙を流しているのです。


[23] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(695)  鶴岡次郎 :2018/05/23 (水) 15:04 ID:7G/4NYAo No.3127

「正直に申し上げます…。
私は・・、そこで止めたくありませんでした‥。
誰が来ようと、誰に見られようが・・、
あの人のものを奥深く受け入れたかったのです…
泣きながら・・、止めないで・・、
チ〇ポを入れて…、村上さん…と、叫んでいました・・。
スミマセン…」

「・・・・・・」

自分自身の言葉に興奮している様子で、語っている内容の、その現場にいたかのように咲江は話して
います。もう・・、創作したストリーでなく、現実に起きた事実を語っている気分になっているので
しょうか・・。

いえ・・、村上を由美子に寝取られた悔しさが、改めて燃え上がり、咲江を苦しめているのです。出
来ればもう少し早く現場に踏み込みたかった、由美子に挿入されるその直前で介入したかった・・。
そうすれば、村上との別れを切り出すこともなかったと・・、咲江はそう思っているのです。

「でも・・、あの人はさっさと起き上がり、衣類を身に着けたのです。
私一人、裸で取り残されて、ベッドに顔を付けて泣いていました」

「・・・・・・・」

ここで言葉を切り、咲江は両手を顔に当てています。指の間から涙を流れだしています。夏樹が立ち
上がり、咲江の肩に手を伸ばし、妻の体を優しくさすっています。咲江が顔を上げ、夏樹を見て、微
笑んでいます。

「ありがとうございます…、
浮気をした、汚い妻なのに…、
こんなに優しくしていただいて…」

「・・・・・・・」

夏樹が指を伸ばし、咲江の涙をぬぐっています。

「あの時・・、確かに、私は狂っていました…。
今冷静に考えると・・、挿入がなくて、
あれでよかったのかとも思っています・」

「・・・・・・・・」

夏樹が軽く頷いています。

「それにしても・・、あの女、ただ者でなかった…、
彼女の容貌も、あの場での態度も・・、
憎らしいけれど、完璧で、素敵でした・・・」

村上と抱き合っていた由美子へのうっ積した気持ちが、創作話の中でさえ本音となって表れているの
です。

「女から何かされなかったのか・・・?」

「ハイ…、女は怒っている表情ではありませんでした・・。
ただ、じっと私たちを見ていました…。
村上さんだけが、おどおどして、すっかり慌てていました・・」

「その男・・、女に頭が上がらないのかも…、
その女に養われているのかもしれないね・・」

研究者の夏樹らしくないコメントですが、本で得た知識だと思います。


[24] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(696)  鶴岡次郎 :2018/05/29 (火) 14:28 ID:tIUff6fM No.3128
「私・・、いつまでも泣いていられないと思い・・、
起き上がり…、急いで衣服をつけて・・、
後も見ないで逃げ出してきました・・」

「それで、あのように訳の分からない、
慌てた電話をかけて来たのか…
危ないところだったね・・・、
それにしても、ひどい目に会わなくてよかったよ…」

咲江に怪我がなかったことを夏樹は喜んでいるのです。

「部屋を出る時、女が何か言っていましたが、
無視して飛び出てきました・・・
とにかく、人通りの多い、明るい大通りに出ることにしました」

「それで良かったよ・・、
正しい選択だった、よくやった…」

夏樹が本気でほめています。咲江の心が少し疼いています。

「シャワーも浴びていません、
それどころか、下着さえ着けていません・・・
彼に残してきたつもりですが・・、
たぶん…、あの女がごみ箱に投げ捨てたと思います・・・・」

「・・・・・・・」

「私…、あなたを裏切りました・・。
その気になって男のアパートについて行き・・・、
裸に剥かれ、全身を舐められ、指を入れられ、
いいように、弄ばれても、何も抵抗しませんでした・・・・
いいえ、それどころか、私は自分から、体を開いていました…」

「しかし、最後まで行かなかったのだろう‥」

「挿入はなくても、あの男の舌や、指で、全身をくまなく弄ばれて、
何度も逝きました・・。
私の体はあの男を完全に受け入れていたのです・・・」

興奮して咲江は話しています。おそらくこの瞬間、彼女自身、しゃべっている内容が創作話でなく事
実だと思っているような様子なのです。涙さえあふれ出ています。夏樹は笑みを絶やさないで黙って
聞いています。夏樹の笑みに力づけられて、咲江は話を続けました。

「挿入がなかったとはいえ・・、浮気同様の罪を犯しました。
いえ・・、心では浮気以上の間違いを犯したと思っています。
どんなお仕置きも覚悟しております・・・・」

テーブルに両手をついて、夫に向かって、深々と頭を下げているのです。そして夫、春樹の顔色を
探っているのです。

「まあ・・、そんなに自分を責めることはない・・・、
長い人生だ・・、そんな事故のような出来事もあるさ・・、
僕は、今聞いたことをすぐに忘れることが出来そうだ・・、
咲江はどうなの・・?
あの男の愛撫があまり気持ち良すぎて
忘れることが出来ないでいるのかな‥‥、
ああ‥、今のは悪い冗談だね・・、ゴメン、ゴメン…」

50男、村上に抱かれた咲江の衝撃の告白を聞かされても、夫、春樹は泰然として笑みさえ浮かべ、
咲江にからかいの言葉をかける余裕さえ見せているのです。もしかすると、許してもらえるかもしれ
ない、許されないにしても離婚まで発展することはなさそうだと、夫の気持ちを敏感に咲江は察知し
た様子です。

咲江の中で喜びが一気に爆発しています。涙をいっぱい溢れさせ、体をくねらせています。罪悪感、
自己嫌悪感は吹き飛び、喜びとそれを超える情欲で女体が支配され始めているのです。

「そんなに優しい言葉が聞けるとは思いませんでした。
あなたがどうおっしゃろうと、
妻として、夫のある身である人妻として・・・、
今日のことは決して許されることではないと私は思っています。
これからは、決して間違いを起こさないようにします」

深々と頭を下げています。


[25] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(697)  鶴岡次郎 :2018/05/31 (木) 14:11 ID:zREEd9cM No.3129
「私の犯した過ちは言い訳が出来ないことです。
いかなるお叱りも覚悟しています。
でも・・、今は・・・、
お叱りは後にしていただいて…・」

ここで咲江は言葉を飲み込み、じっと夫を見つめているのです。

「今は・・・、とってもほしいのです…
先ほどから体が我慢できないほど疼いているのです‥‥
ああ・・、堪らない…・・」

両足をすり合わせるようにして悶えているのです。何事が起きたのかと夏樹が咲江を見ています。

「あの女の出現で、挿入は果たせなかったのです‥。
それは、それで、良かったと思う反面・・・、
その気になっていた体が・・、
ああ・・、我慢できません‥‥」

夫の視線の中で、咲江は体を丸めて、低いうめき声を出しながら、震えているのです。すべてを理解
した夏樹はソファーから滑り降り、相対してソファーに座っている咲江の肩に手を寄せて引き寄せ、
抱きしめました。先ほどよりさらに強い女臭が彼の鼻腔を襲っています。

男と女はソファーから滑り降り、床に座って抱き合っています。顔を上げ夫の唇に自らの唇を寄せ吸
い付いています。

さらに強く夫は妻の体を抱きしめました。こんなに欲情した妻を夫は一度も見たことがありません。
どう取り扱うべきなのか夏樹には見当さえつかないのです。ただ強く抱きしめるだけなのです。

「ああ…、嫌…」

何かに焦れたような様子で、咲江が突然夏樹の腕を振りほどいて、夏樹から少し離れた場所に移動し
ました。そして夏樹に挑戦的な視線を向けて、床に腰を下ろしたまま、彼に向かって両足先を突き出したのです。

「ああ…、我慢できない…、
いやらしい女に成ったと軽蔑しないでください、
これが本当の私なのです…
ああ…我慢できない・・、スミマセン…」

スカートの裾を巻き上げ、両脚を思い切り開きました。足先を夏樹に向けていますから、ショーツの
無い股間がもろ出しになり、そこから愛液が噴出して、床に雫がしたたり落ちているのが夏樹からで
もはっきり見えます。

女はためらわず、右手の指を・・、二本・・、ズブズブと、股間に差し込んだのです。そして、かな
り激しく出し入れを始めました。夏樹が驚きと興奮で顔を真っ赤にして妻を見ています。こんな姿を
夫に曝したのはもちろん初めてです。

口をあんぐりと開け、両足先を一杯に開き、咲江は低いうめき声を発しているのです。それでいて、
挑戦的な視線は夫から決して外さないのです。咲江の強い意志がその視線からうかがえます。彼女は
ある決意を固めている様子です。

「ああ・・、堪らない・・
ああ・・、見て・・、見て・・・・・」

咲江が叫んでいます。指の動きがさらに激しくなり、水しぶきがほとばしり出ています。

咲江がこんなに欲情した姿をあからさまに見せるのはもちろん初めてのことです。いつもは、しとや
かなのです。抱かれて性感が高まり、ベッドで潮を吹き出す時でさえも、ただうなり声をあげている
だけなのです。そんな咲江はもちろんかわいいのですが、千春と比較すると、なんとなく物足りない
思いを夏樹はずっと抱いてきたのです。


[26] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(698)  鶴岡次郎 :2018/06/04 (月) 14:46 ID:tYQF7yO6 No.3130

今・・、欲情した姿を隠そうとしない咲江を見て、夏樹は嬉しくなっています。

〈素晴らしい・・、
悶える咲江は美しい・・・、
50男の愛撫を一度受けことで、
これほど変貌したのだ・・〉

目の前で、欲情して体をくねらせている咲江を見ながら、変貌した彼女の妖艶な姿を観察して、夏樹
はある真実に気がついているのです。50男に弄ばれ、全身を舐められ、挿入寸前まで行き、咲江の
中で何かが崩壊し、新たな芽が噴出した様子なのです。明らかに咲江は一皮も、二皮も剥けたので
す。

〈千春さんのように他の男をたくさん経験すれば・・、
咲江は、もっと淫乱なイイ女になるかも…
女が成熟するためには、
やはり・・、
他の男の精液をたくさん浴びることが必要悪なのか…・〉

こんな時でも冷静に、科学者、夏樹は分析を進めているのです。

「どうしてほしいの・・・、
何が欲しいのかな…?
はっきりと言ったら・・・、
何でも・・、咲江の好きなことをしてあげるよ…・」

破廉恥に悶える妻の姿を見ても彼の表情には笑みがあふれています。千春から手ほどきを受け目覚め
て、それからニケ月に及ぶセックス武者修行で、驚くほどの性豪に成長した春樹です。淫乱な女の素
晴らしさは身に染みて感じ取っているはずです。そして、悶える女をじらす言葉も方法も、聞きかじ
りで、知識は持ち合わせている様子です。それを今実戦に使おうとしているのです。

「ああ・・・、ほしい・・・、
ああ・・・・・・、
あなたのチ〇ポが欲しい・・・」

咲江はその場に立ち上がり着ているものを一気に脱ぎ去りました。

「この汚れた、汚らわしいオマ〇コを・・・、
他の男のチ〇ポを咥え込んだ、この浮気なオマ〇コです・・・
ああ・・、許していただけるのなら…、ここを舐めてください・・、
あなたの舌で、ここを清めてください…」

床に座っている夫、坂上の顔に女陰を押し付けました。夏樹は狂ったように咲江の女陰をむさぼり始
めました。咲江が顔をのけぞらせ、悲鳴を上げています。潮風吹が宙に舞っています。春樹の顔が愛
液でずぶぬれです。

「ああ・・、入れて・・・、
入れて・・、いっぱい入れて……
チ〇ポ・・、チ〇ポ、入れて…・」

長々と床に裸体を投げ出し、両脚を一杯開き、指でビラビラを開き、夫を誘っているのです。一気に
衣服を脱ぎ捨てた夏樹の股間に、偉大な男根が直立して、湯気を上げています。

「ああ…、これ・・、これが・・、欲しかった…
ああ・・、むむ・・・」

その夜、坂上家内では二人の唸り声と、嬌声が明け方まで続いていました。


[27] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(699)  鶴岡次郎 :2018/06/06 (水) 11:38 ID:iGXpyASA No.3131
それから三日後、ここは村上の事務所です。村上はいつも通り朝9時30分に出勤しています。その
時、事務所の電話が鳴りました。この店の客筋は夜の商売ですから、こんなに早朝、商談の電話が来
ることないのです。ある不安と、半分ほどの期待をもって受話器を取り上げました。

咲江からの電話でした。携帯電話でなく事務所の電話を使用した咲江の気持ちを村上はまず考えまし
た。村上と由美子の激しい絡みを覗き見してから三日過ぎているのです。傷心を抱いて帰ったに違い
ない咲江からの電話です。どのように対応しようか迷っていると、由美子のことには一切触れない
で、少し他人行儀な口ぶりでとんでもない申し入れを咲江はしたのです。

「明日、日曜日、午前中ですが・・、
少しお時間をいただきたいのです…、
いかがでしょうか…」

「明日の午前中か・・、
来客の予定はないので・・
二、三時間なら、なんとかなる…
旦那様が留守にするの‥‥?」

由美子に対抗して咲江を抱けと要求してきたと村上は判断したのです。それならそれでいい、別れ話
をしたばかりですが、村上にすれば別れたくて別れた女ではありませんから、咲江が抱いてくれと言
うのなら、これは渡りに船です。よりを戻すのは歓迎だと、少し弾んだ声で村上は答えたのです。

「それでは明日10時、事務所に参ります‥」

「ああ・・、待っている‥
あの女のことはその時ゆっくり話すから…
きっと、誤解が解けると思う、楽しみにしているよ…
俺にはやはり、奥さんがピッタリなんだ…・
ああ・・、何だか、今すぐにでも抱きたいな…」

村上の誘いの言葉に、咲江はむしろ冷たい声で答えたのです。

「明日は主人と一緒に参ります…」

「なんだと・・・!
旦那と一緒に来るって…?
一体どうしたのだ・・、バレたのか…?」

「お会いして、お世話になったお礼を言いたいと、主人が申しております」

「お礼なんて・・、
まさか・・、お礼参りなのか…。
それなら、それなりの覚悟をしなくてはいけないな‥」

「お礼参りではありません・・、
主人はそんな人ではありません。
総一郎さんとの関係を主人に正直に告白しました。
そうしたら…、
色々お世話になったお礼を申し上げたいと主人が言いだしたのです。
それで・・、明日二人でお伺いすることにしました‥」

「奥さんとの関係を知った上で会いたいと言うのか・・
う・・・ん・・・・」

電話の向こうで村上が唸っています。


[28] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(700)  鶴岡次郎 :2018/06/07 (木) 14:24 ID:xIrICaQ6 No.3132

「もし、もし・・・、
総一郎さん・・・、大丈夫ですか…」

「ああ・・、大丈夫だ・・、
少し、びっくりしただけだ・・、
それで・・、どんな話の展開になるのだ…」

「判りません・・、
主人が総一郎さんに会いたいというだけで、
それ以上のことは・・」

不安な気持ちを隠しきれないで問いかける村上の様子が咲江には手に取るようにわかるのです。笑い
出したいのを我慢しながら咲江は、むしろ沈んだ声で答えていました。

「俺と奥さんの関係を知った上で・・、
俺に会いたいと言うのだろう…、
最悪の事態だね…」

「・・・・・・・」

電話の向こうでぶつぶつと独り言を言っています。咲江は黙っていました。

「判った…、大体の背景は読めた・・、
ご主人の意図も、何となく判った…、
受けて立とう・・、このまま逃げることは出来ない、
明日、ご主人と会うよ‥」

村上がきっぱりと言い切りました。

由美子との関係を目撃した咲江が、村上に裏切られた悔しさが募るあまり、正気を失い、今までの浮
気行為をすべて旦那に告白したと、村上は考えたのです。

〈あの男、村上に騙されたのです…、
何も判らない素人の私を犯し、脅かし、一年余り弄んだのです。
そして、私に飽きが来たのでしょう、あっさり捨てたのです…〉

このような告白をしたのだろうと村上は考えたのです。

咲江の旦那がその告白を聞き、どのような気持ちになり、村上に何を仕掛けてくるのか、読めない部
分が多いのですが、ここまで来た以上、坂上夏樹に会って、彼の出方を見ないことには先へ進めない
と、村上は考えました。そして、いずれにしても、他人妻を抱いたのは事実で、話がこじれれば、金
で解決する道しかないと村上は覚悟を固めたのです。

「ありがとうございます…、
それでは、明日10時きっかりに事務所を訪問します‥」

この時、村上はあることに気がつきました。ひと時の驚きから覚めて、冷静に咲江の言葉を聞くと、
咲江がかなり陽気な雰囲気なのです。電話の声も終始軽やかで、明るいのです。浮気がバレて、主人
に手を引かれ、愛人の前に引き出される哀れな主婦とは思えないほど朗らかなのです。

「ああ・・、総一郎さん・・、
主人にはすべて、在りのまま告白したと言いましたが、
少し嘘が入っています・・。ふふ・・・・」

「・・・・・・・」

今度は村上が黙って聞く番です。咲江が何を言い出すのか少し不安な気持ちになっています。


[29] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(701)  鶴岡次郎 :2018/06/11 (月) 15:37 ID:69K.pIZ. No.3133

「だって・・、そうでしょう・・・、
一年前から浮気がつづいていて、
何十回も総一郎さんに抱かれたなど・・、
あまりにひどい裏切り行為だから・・・、
とても、主人には言えませんでしょう…・」

「・・・・・・・」

「抱かれる気になったけれど・・、
未遂に終わりました・・
そのように、主人には告白しました…」

「そう言うことか…、
脅かさないでくれよ・・・、
それなら、そうと、最初から言ってほしい・・、
奥さんを寝取った男として、
旦那と対決するつもりになっていたんだよ…」

村上は安どしています。

「ふふ・・・、そんなに驚きましたか・・、
少し、肝を冷やした方がいいのです‥、
浮気者の総一郎さんは、少し怖い思いをした方がいいのです…」

「・・・・・・」

村上は首をすくめて、黙っています。咲江が由美子のことに、暗に触れているのは確かなのです。こ
こは黙るしかないと思っているのです。

「路上で転んでケガをして、助けていただいたのが縁で村上さんと知り合いになったことはそのま
ま、嘘偽りなく夫に話しております。ただ、暗い路地で助けていただいたのは、一年前でなく、ほん
の二週間前だと話しました。そして、ここが大切なところですが、男と女の関係は未だだと伝えてい
ます‥」

「正直に告白しないと決めたのなら、
ただ、困っているところを助けられたと言えば済む話だろう…
わざわざ誤解を招く言葉、男女の関係は未だだと、言う必要ないだろう‥」

村上は当然の疑問を抱き、咲江の意図が理解できなくて困惑しています。

「ふふ・・・、
そんなに慌てなくてもいいわよ‥」

「・・で、どこまで話しているんだ・・」

「二週間前、路上で数人の酔っ払いに絡まれているところを総一郎さんに助けられ、事務所で傷の手
当てを受けて、お土産までもらって、ハイヤーで自宅へ送っていただいたことになっている・・・」

「まあ・・、ケガをして、治療したのは事実だからね・・、
日付以外は、当たらずとも遠からずだ・・・。
二週間前、酔っ払いに絡まれている奥さんを助けたことにするんだね‥
判った・・、私もその線で、口裏を合わせるよ・・・」

「それだけではありません、もっと大切なことを夫に話しました。
その事件から一週間後、今日から三日前のことになりますね・・・、
そう・・、あなたとあの女が激しく絡み合っていた日のことです・・」

ようやくあの日のことに咲江が直接言及して来たのです。村上は身構えていました。

「ふふ・・・、安心してください…、
あの女のことは、夫には話していません…、
これから先も・・、多分・・、誰にも話さないと思います‥
だから・・、村上さんも忘れてください…」

「判った・・、あの日のことは忘れる‥」

事務的な口調で咲江が話しています。咲江自身にとっても、由美子と村上の関係は出来れば忘れたい
ことなのです。その咲江の気持ちが村上にはよく判るだけに、咲江には酷いことをしたと、いまさら
ながらに、村上は後悔しているのです。


[30] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(702)  鶴岡次郎 :2018/06/12 (火) 16:31 ID:bTJ74AZI No.3134

「その日、お世話になったお礼に事務所に伺ったと夫に話しております。
食事をごちそうになり、アパートに誘われ、
自分の意思で村上さんの部屋へ行ったと話しました・・・」

「・・・・・・」

「玄関入るなりキッスをされ、裸に剥かれて、ベッドに運ばれ、
体中・・、当然アソコもよ、舌と指で全身を愛撫された・・と、
そのように説明しました…」

「おい、おい・・、本当にそこまで告白したのか…」

「はい・・、
お礼のため再びあなたを訪ねると決めた時から、
求められれば、あなたに抱かれてもいいと決めていたと、
夫に告白しました・・・・」

「やれ、やれ・・・」

妖しくなってきた雲行きに、村上は不安いっぱいです。

「キッスも、裸になったのも、体中を舐めていただいたのも、
全部、私がそうしてほしかったことだと、夫には伝えました‥。
だって・・、その通りだもの・・、
どこか・・、間違っていますか・・?」

「う・・、う・・・ン・・・
お互いその気があったのは確かだが・・、
そうはいっても、不倫は、不倫だからね・・、
普通はそこまで、夫には告白しないよ・・・・
お二人は変わっているね・・・」

「ただ・・、話したかった…、
隠さず全部、夫に話したかった・・、
それでも、一年前からの関係であることは、
さすがに話せませんでした…。
本当はすべて告白すべきだったと、
今でも、少し・・、気になっています‥」

「隠し通すのがつらくなったのだろう…
旦那にすべて告白する時が来たと感じたのだろうね・・
旦那への強い愛情が、奥さんを動かしたのだろう‥」

「主人を思う気持ちは、いつも強く抱いています。
ただ・・、あの女との関係を目撃して、
総一郎さんとの関係を、主人に隠し通すことの意味が・・、
私には分からなくなっていたのです‥」

「・・・・・・・」

村上の不安は的中したのです。由美子と村上の絡みを覗き見た咲江は、浮気な村上の本心を悟ったの
です。夫を裏切ってまで誠を尽くすほどの相手でないと思ったかもしれないのです。村上は咲江の次
の言葉を待っていました。咲江がゆっくりと言葉を吐きだしました。

「浮気な総一郎さんが嫌いになったのではなく、
総一郎さんと絡み合っているあの女を見て・・、
自分自身を見ているようで・・、
恥ずかしくなったのです・・・。
こんな見苦しいことを続けていてはいけないと思いました…
あの女が・・・、私の背中を押した…・・」

「判った・・、
それ以上は、何も言わないでくれ・・・・、
全て・・、俺の責任だ・・、
見苦しい行為を続けさせたのは俺だ‥‥。
咲江には辛い思いをさせた…
あの女とはそれほど深い関係でないのだが…、
いや、いや・・、言い訳は良そう…・
いずれにしても、咲江をそこまで追い込んだのは、俺だ…
堪忍してほしい…・・」

受話器を持ったまま、ゆっくりと頭を垂れています。


[31] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(703)  鶴岡次郎 :2018/06/13 (水) 15:41 ID:2VFdKYZI No.3135

「咲江一人に罪を背負わせることはしない、
俺も共犯者として・・、
いや・、首謀者として・・・、
旦那様のお裁きを甘んじて受けるよ‥。
大人しく、首を差し出すが…、
明日、旦那は俺に何をするつもりなのだろう…?」

「うふふ・・・、
どうでしょうか・・、
少なくとも暴力をふるう人ではありません、
その点は安心してください・・。
お礼を言うために事務所へ行くのだとしか、私には言いませんでした・・・」

何かを知っている様子ですが、咲江はそれ以上話しませんでした。

「とにかく・・・、
俺は首を洗って、お迎えするよ・・、
美味しいコーヒーでも味わってもらって、
お小言をいただき、
場合によっては少し痛い目にあっても構わない、
軽いお仕置きで、帰っていただければ良いけれどね・・・
最悪の事態になっても、俺は逃げないよ…・」

村上は覚悟決めました。咲江の夫が殴り掛かってくることになったとしても、大人しく、殴られよう
と決心したのです。咲江には言いませんでしたが、最後には金銭的な解決策も村上は考えているので
す。さすがにこうした対応には慣れている村上です、決断が速いのです。


当日、少し早めに出勤してきた村上はなにやら落ち着きのない様子で、そんなに広くない事務所内を
歩き回っています。村上の事務所は火曜日が休みで、日曜日は営業日なのです。

10時、約束の時間通りに坂上夏樹と咲江がやってきました。夏樹が珍しそうに事務所内を見ていま
す。咲江は少し緊張した様子を見せていますが、村上と顔を合わせると笑顔で挨拶を交わしていま
す。外から見る限りでは、二人の間には何もわだかまりは残っていない様子です。

窓際に置かれたかなり古い応接セットに坂上夫妻は案内されました。坂上がソファーから立ち上がり
ました。続いて咲江も立ち上がりました。驚きの表情を隠さないで村上が二人を見上げています。

「その節は・・、家内がすっかりお世話になりました。
本日はそのお礼に参りました・・
村上さんにとっては珍しいものではありませんが…、
お口汚しに、どうぞ…・」

坂上夏樹と咲江が深々と頭を下げ、手にした有名店の菓子折りを差し出しています。ソファーに
座っていた村上が慌てて立ち上がり、頭を下げています。

「本来ですと、もっと早くお礼を申し上げるべきところだったのですが・・、
なぜかお世話になった事実を妻が私に伏せておりまして・・。
ようやく一昨日、その話を聞かせてくれたのです。
そんな事情で、お礼に参るのが遅れました、申し訳ありません…」

「何事かと思えば・・、そのことですか‥。
ケガをされ、困っておられる奥様に少し手を貸しただけです…。
そんなに改まってお礼を言われると、返す言葉がありません‥」

村上が笑顔で答えています。


[32] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(704)  鶴岡次郎 :2018/06/14 (木) 11:54 ID:5lLvub/M No.3136

「さあ・・、ソファーにお座りください・・、
立ったままではゆっくり話もできません。
もっとも・・、これから決闘でもするなら別ですが…、アハハ・・」

「決闘ですか…、その選択肢もあるかもしれないですね‥
しかし、そうなれば、私はダメです、
体はでかいのですが、その方面は全く鍛えていませんから、
直ぐにノックアウトになります。あはは・・・・」

男たちは際どい冗談を交わしています。村上が先にソファーに腰を下ろし、続いて笑いながら坂上夫
妻が座りました。今の冗談で三人はすっかり緊張が解れた様子です。

事務所は狭くて、汚いが、これだけは一級品だと村上がいつも自慢している薫り高いコーヒーがお客
に出されました。坂上がコーヒーの味を誉め、得意そうに村上がコーヒーの入れ方を披露していま
す。コーヒー談義が途絶えたところで、坂上夏樹が姿勢を正してゆっくりと口を開きました。

「村上さん・・、
今日参りましたのは、咲江がお世話になったお礼が目的ですが・・・、
実を言いますと、お礼は勿論ですが、村上さんとじっくり話し合いたい、
そう思って・・、お忙しい中、時間をとっていただきました・・」

笑みを浮かべ、ゆっくりと坂上夏樹が話しています。それ・・、いよいよだと村上は緊張しました。
両手を握りしめて、ひそかにファイテイング態勢を心の中でとったのです。研究者だと聞いているの
ですが、高身長で立派な体格なのです、小男の部類に属する村上では体力的にかなり不利に思えるの
です。それでも村上は笑顔を絶やしませんでした。

「失礼ながら・・・、
私の想像している通りのお方なら・・、
思い切って、お願いしてみようと・・、
ある思いを抱いてここへ訪ねてきました・・」

「ほう…、面白そうなお話ですね・・・、
ダメな男だと判断したら、話を中断して帰る・・・、
そのおつもりだったのですね・・、
こうしてお話を続けようとしているのは・・・、
どうやら、私はあなたのお眼鏡にかなったのですかね…」

研究畑一筋の坂上夏樹は時として、一般常識とは異なる言動をとります。この時もそうです、村上と
出会って、話が通じそうな人物と判断したなら申し入れることがあると、かなりストレートに言って
いるのです。失礼な言葉です。さすが、人生経験豊かな村上です、坂上のストレートな会話を楽しむ
余裕さえ見せているのです。

「ハイ…、咲江からあなたの話を聞いて、
あなたの人物像を私なりに描くことが出来ました。
咲江が好意を持ったお方だから、間違いないと思いながらも、
ここへ来るまでは不安でした。
でも・・、お会いして、おいしいコーヒーをいただき、
村上さんのお顔を拝見して、お話をさせていただき、
私が想像した以上のお方だと確信することが出来ました・・」

「大変なことになりましたね・・、
私ごときを、そんなに信頼していただき、
うれしいことは嬉しいのですが、
そこまで信頼されると、
この先、悪いことが出来なくなりますね・・、
困りました・・・、ハハ・・・・」

満面に笑みを浮かべ村上が答えています。村上にとって、夏樹は初めて出会う人種ですが、坂上夏樹
が好きになっているのです。


[33] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(705)  鶴岡次郎 :2018/06/16 (土) 17:23 ID:5DGwzIoE No.3137

「咲江の窮地を救っていただき、親切にしていただいた、
その村上さんを見込んで、お頼みしたいことがあります‥、
村上さんのご都合や、お気持ちを何も考えないで、
勝手で、かなり面倒なことを、お願いをすることになります‥」

「何でしょう・・、どのようなことをすればいいのですか・・。
ご覧の通り、社長と言いながらも、社員は一人も居ませんし、
商売の方も、やっと軌道に乗りましたが、以前に比べると、
お恥ずかしいほど小さなものです。
こんな私で、できることなら・・、
出来る限りのことをやります・・・」

「咲江を雇ってほしいのです…。
そうはいっても、フルタイムは無理で、週に三日ほど、
日に5時間ほど働かせていただければいいのですが・・」

「エッ‥、
咲江さんをこの会社で雇えと・・、
そう・・、おっしゃっているのですか‥」

突然、意外な申し入れを受け、村上は慌てています。一年以上咲江をもてあそんだことを追及され、
良くて、30万ほどの示談金、悪くすれば、裁判沙汰になる可能性があると踏んでいたのです。

「アッ・・、給料のことはそれほど気にしておりません・・、
社長が決めていただければ、それで結構です・・」

咲江から聞かされていて、村上の会社は一人分の給料さえも支払う余裕がないことを夏樹はよく
知っているのです。

「社長の傍で働きたい・・、
お世話になったお礼の意味も込めて・・、
会社再建のため力になりたい・・と、
咲江が言うものですから・・、
足手まといになるかもしれないのですが、
使い走り程度のことは出来ると思いますので、
気軽に試してほしいのです‥‥」

「・・・・」

「咲江が言うには、
ともかくできる限り長い時間、
村上さんの傍に居たい・・・と、
亭主の私に惚気るのです…
困ったものです‥」

笑いながら坂上が言っています。咲江は少し恥ずかしそうな表情を浮かべていますが、それでも、夫
の言葉を否定せず何度も頷いているのです。

「下の子供が幼稚園に入りましたし、
ここらで好きなことをやらせてもいいかなと考えたのです‥
考えてみれば咲江は女ざかりを迎えています、
一方・、私は生涯をかけた仕事の山場が来ていて、
咲江にかかりきりになることは出来ずに、寂しい思いをさせることが多いのです。
それで、しかるべき方が居れば、咲江の相手をしていただければと考えたのです」

恥ずかしそうな表情で咲江が頷き、夏樹の言葉を肯定しています。あふれ出る涙を村上は止めること
が出来ません。

「ありがたいことです‥、
私ごときのために・・、
そこまで気を配っていただけるとは・・
何と申し上げていいか…、ムム……」

その先の言葉を発することが出来なくて、不覚にも村上は顔を両手で覆っています。この展開を村上
は予想できていなかったのです。坂上の来訪を告げられた時、これで咲江とは完全に離れることにな
り、事業も先細り、貯えも底をつき、この先寂しい、孤独で、貧しい老後が待っていると覚悟を固め
ていたのです。それが、夫公認で咲江との関係を継続できることになったのです。驚きとその感情を
超える喜び、言葉にできない感情に取り込まれ、村上は我を忘れ男泣きしているのです。


[34] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(706)  鶴岡次郎 :2018/06/22 (金) 16:29 ID:193Xz58Y No.3138
涙を流して喜ぶ村上を見て、坂上は少し当惑していました。彼への提案がそれほど大きな感動を与え
るとは予想できていなかったのです。

一方咲江は違います、これまで一年間、村上の良い時も、悪い時も見てきた咲江には、彼の感情の乱
れがよく理解できるのです。夫坂上の提案に歓喜の涙を流す村上の心情が手に取るようにわかるので
す。ソファーから立ち上がり、顔を伏せて泣いている村上の傍に座り、彼の体に両手を差し出し、男
の頭を抱きよせ、男の顔を胸に引き寄せようとしています。

突発性のEDになった時も、咲江は毎日のように、村上を抱きしめ、男が良いと言うまで抱きしめてい
たのです。その咲江の優しい抱擁が村上を元気づけ、生きる勇気を彼に与えたのです。このことを
知っているのは村上と咲江、二人きりです。二人の様子を見て、二人の間がただならない絆で結ばれ
ていることを坂上夏樹は察知していました。それでも不愉快な気分になっていません。どちらかと言
えば疼くような複雑な感情にとらわれているのです。

さすがに夫、坂上の前ですから、咲江の手を遮って、村上は少し抵抗しています。咲江は構わず抱き
しめた手をゆるめません、すぐに村上はあきらめました。素直に、咲江の豊かな胸に顔を押し付けて
います。あふれ出る涙が、ブラウスを通り抜け、ブラの隙間から肌に直接触れています。その感触を
感じ取った咲江はさらに強く村上を抱きしめています。

村上がそっと顔を上げ、自分を抱きしめている咲江を見ました。咲江も泣いていました。咲江が素手
で男の涙をぬぐい取っています。そして顔を寄せ、涙を唇で吸い取っているのです。男は目を閉じ、
無抵抗な姿勢で体を女に預けています。

村上と咲江、うれし涙を流す老境に近づいた男を、今は盛りと燃え盛っている女が優しく抱きしめて
いるのです。男と女の濡れ場と言うより、赤子を抱きしめる母親のような雰囲気が醸し出されていま
す。嫉妬心はほとんど感じず、奇妙な恍惚感を坂上は感じ取っているのです。

「いや・・、こともあろうに・・、
旦那様の前で…、
お恥ずかしいところをお見せしました・・
奥様・・、もう・・、大丈夫です‥、
ご主人の傍にお戻りください…・」

我に返ったように村上が咲江の手を振りほどき、咲江に元の席に戻るように言っています。村上に促
されて、笑みを浮かべながら咲江が坂上の傍に並んで座り、村上と向かい合う元の形に戻りました。
ひと時の感情の乱れから、村上は完全に立ち直っています。

「いや・・、お恥ずかしい姿を見せました…。
ご主人から突然のありがたいお話を聞いて、動転しました・・」

恥ずかしそうに、言い訳をいっています。笑みを浮かべて坂上と咲江がそんな村上を見ています。

「あまりの感動で、不覚にも涙を流してしまいました。
歳をとると・・、他人の優しさが身に染みるのです…。
旦那様の前に居ることを忘れて・・・、
奥様の優しい抱擁を受け入れてしまいました。
お許しください・・、この通りです…」

「あら、あら…、
そんなに謝ると、私一人が悪者になるわよ・・、
私がすごいスケベー女に思われるのよ‥」

「違うかな‥、
咲江は、村上さんの前では、
スケベーな女になれると言っていたね・・」

「ああ‥、やだ…、
そんなこと・・、言ったけ…」

「言ったよ…
村上さんとなら、どんなことでも、できると・・・
邪魔が入って、一週間前は男女の仲にはなれなかったけれど、
挿入されなかったのは残念だとも・・、言っていた…」

「ああ・・、嫌、いや…
はずかしい・・・」

坂上夏樹と咲江、夫妻のふざけ合いを、村上はじっと見ていました。そして、何事か決心した様子で
口を開きました。


[35] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(707)  鶴岡次郎 :2018/06/26 (火) 17:21 ID:xAVJp/aU No.3139
「坂上さん・・・、
奥様を私の会社に派遣していただく件、
落ちぶれた私には夢のようなご提案です‥、
明日と言わず、今日からでも受け入れたい思いです・・
しかし・・、出来ないのです‥‥」

ふざけ合っていた夏樹と咲江が笑い顔を残したまま、ハッとしたように、村上を見ています。

「このまま黙って、
ご主人のご厚意を受け容れることは出来ません。
そんな・・・、人の道を外れたことをしてしまったら、
この先、私はこの地で、今の家業をやっていく資格がありません‥」

思いつめた表情で村上が口を開きました。

「私はご主人が思っておられるような男ではありません。
恥知らずな行為を重ねてきた、ならず者です。
決して、ご主人や奥様が・・・、
気を許してお付き合い、いただける男でありません…」

「・・・・・・」

「私は・・、
綺麗な女の人を見れば、見境なく手を出す痴れ者です、
人妻にも、手を出すバカ者です。
どうか・・、こんな私をお許しください…、
そして、奥様とのご縁も、今日で終わりにしていただきたいのです…」

村上は必死で自分自身を貶(おとし)めているのです、ただ、その具体的内容、特に咲江に対してい
かなる悪さをしたのか村上はくわしく話していないのです。これ以上の付き合いを止めたいと坂上に
宣言しているのですが、その理由を話していないのです。何か大きな秘密を・・、たぶんそれは咲江
と深い関係にあることだと坂上は推察できているのですが、この場では決してその秘密を告白しない
と決めていると・・・、村上の硬い決意を坂上は察知していました。

一方咲江は心配そうな表情で村上をじっと見つめています。秘密にしている一年間の浮気行為のすべ
てを村上が告白する気になっているのであれば、それはそれでいいと咲江は覚悟を固めていました。

〈総一郎さん・・・、
構わないよ、私は・・・、
あなたが全部告白することで、楽になれるのなら…、
私のことは気にしないで・・〉

落ち着いた、透明な表情を咲江は浮かべています。夫である坂上がじっと咲江の表情を観察していま
す。そして、何事か感じた様子で、大きく頷いているのです。

「咲江・・、
村上さんはあのようにおっしゃっているが・・、
咲江はどう思うの…、
村上さんは、そんなに悪い人なの…?」

笑みを浮かべて坂上が咲江に尋ねています。

「そんなことはありません・・、
村上さんはとってもいい方です。
親切で、優しくて・・、その上…」

「奥様・・、
それ以上はおっしゃらないでください・・」

咲江の言葉を村上が遮っています。

「奥様の前ではいい人を演じているだけなのです。
一皮むけば、悪人中の悪人です‥」

驚きの表情で咲江が村上を見つめています。


[36] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(708)  鶴岡次郎 :2018/06/27 (水) 10:23 ID:SiCXfrnM No.3140
笑みを浮かべて坂上が咲江に言いました。

「咲江・・、
お前は村上さんが大好きだというが・・・、
村上さんはお前のことをそれほど思っていないのでは‥、
それで、私の申し出を遠回しに断るために、
ご自分を悪人だと、貶(おとし)めているのではないだろうか・・・」

「ご主人・・!
そんなことはありません・・、
奥様のことは・・・、
申し訳ありませんが・・、
大好きです・・・。
夢に見るほど好きです…」

思わず大好きだと言ってしまって、村上は恥ずかしそうにしています。好きだと言われた咲江もうれ
しそうな表情です。坂上は村上のその返事を待っていたようでしきりに頷いています。


二日前の夜、村上と由美子のベッドシーンを目撃した咲江は打ちひしがれて夫の元へ帰りました。夫
は詳しいことは何も聞かないで優しく妻を抱きしめたのです。咲江は今までにないほど乱れに乱れま
した。ベッドの中で咲江は夫に村上との関係を、その時点で話せるぎりぎりの内容を告白しました。

男と女の関係は未遂のままだが、限りなく浮気に近い関係だと咲江は告白したのです。村上に傾いて
いる咲江の気持ちは、十分に夫に伝わったはずです。夫は妻の言葉を黙って聞いていました。そし
て、妻の話が終わる頃には、夫の気持ちは固まっていたのです。

「咲江・・、話を聞いていると・・、
村上さんのこと・・、
随分と気に入っているようだね・・、
咲江にその気があるのなら・・、
これから先も・・、
彼との関係を続けてもいいよ・・」

「エッ‥、そんなこと・・、
でも・・、なぜ、そんなことを言うの…、
私が嫌いになったから…
私のことはどうなってもいいと思うからなの…」

「そうじゃない・・、
今日の咲江はいつもより数倍輝いている・・、
お色気だって、千春さんに十分対抗できる。
僕は、そんな咲江が大好きだ…、
この咲江の輝きは、悔しいが・・、
村上さんが引き出してくれたものだと思う・・」

「・・・・・・・」

咲江は緊張して耳を傾けています。夏樹は笑みを浮かべて話しています。

「村上さんとの関係を続けてほしい、
それによって、咲江はもっときれいな花を咲かせるだろう・・、
勿論、焼けるような嫉妬を感じるけれど、
どうやら、私はそんな嫉妬心を楽しめる男らしい・・・、
どうだろう・・、僕の気持ちが判るだろうか‥」

それから二人はかなりの時間話し合い、先ほど、坂上が申し入れたように、咲江が村上の店に勤務す
ることを決めたのです。もちろん、この時点で夫は、咲江の告白内容をすべて信用したわけでな
かったのです、特に、咲江と村上の仲が未遂に終わっているとの説明には、多少の疑問を持っていた
のです。それでも、二人の仲が一年も続いているとはさすがに認識していないのです。一方、咲江は
咲江で、村上と知り合ったのは、ほんの二週間前だと告白した内容を訂正すべきだと思いながらも、
その機会を失っていて、ずるずると村上の事務所訪問となっているのです。

一年間の裏切り行為を夫に告白する機会を失ったまま、愛人村上の前に、押し出された形の咲江、先
ほどの様子では、どうやら村上も、この場では告白できない大きな秘密を抱えて苦悩している様子で
す。焼けるような嫉妬心を楽しみながら、妻と愛人との仲を再構築しようとする坂上、三人三様の思
いが狭い事務所内で交差しています。そこには、怒り、騙し、蔑みなどの感情はなく、ただ相手のこ
とを思う優しい気持ちが満ちているのが救いです。


[37] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(709)  鶴岡次郎 :2018/06/29 (金) 13:33 ID:tIUff6fM No.3141

「咲江・・、
村上さんはお前のことが大好きだとおっしゃっている・・、
しかし、何かが引っ掛かっているようで、
素直に私達の申し出を受け入れてくださらない・・、
どうしてなのだろう‥」

坂上が咲江に尋ねています。村上は二人から視線を外して他人事のような表情を浮かべています。

「どうやら、村上さんは大きな秘密を抱えていて、
その秘密を抱えている限り、
お前を抱くことは出来ないと思っておられるようだ。
それなら思い切って告白してしまえば気が楽になるはずなのだが、
告白すれば、お前の罪を暴くことになり、踏み切れないようだ・・。
ここは、お前が動かないと先に進まないよ‥
何か、僕に打ち明けることがあるだろう…」

「ハイ・・、判りました…」

坂上に言われて咲江は覚悟を固めた様子です。

「あなた・・、
私は嘘の告白をしました・・。
村上さんとは二週間前に初めて出会ったと言いましたが・・・、
それは嘘です・・・」

「奥様・・」

村上がびっくりして咲江の言葉を制止しようと立ち上がりました。咲江が笑みを浮かべて、村上に座
るよう手で指示しています。村上が渋々座りました。

「村上さん‥、心配しないでください。
主人にはいずれ、すべてを話すつもりでしたから・・・、
いい機会ですから、ここで話します…」

笑みを崩さず咲江が話しています。

「二人の関係はこの一年間続いています‥、
勿論、男と女の関係です‥。
本当に申し訳ありません…」

咲江の爆弾告白です。

「エッ・・!
一年間…・、それは長いね…」

驚きで思わず高い声を坂上があげています。その言葉に怒気が含まれていないのを咲江は敏感に察知
して、安どの表情を浮かべています。

「申し訳ありません…」

咲江が立ち上がり、夫、坂上に深々と頭を下げ、続いて村上が立ち上がり、彼もまた深々と頭を下げ
ています。

「ご主人・・、奥様のおっしゃる通りです‥。
本当に申し訳ありません・・・。
この通りです。
いかなるお叱りも、賠償請求も、甘んじて受けます」

テーブルに両手をついて、村上が深々と頭を下げています。

「ただ・・・、
誤解しないでいただきたいのですが・・・・、
奥様は完全な被害者です‥。
奥様は、騙され、おどかされて、
私の言いなりになってきたのです・・・・」

「・・・・・・・」

村上の言葉に咲江がびっくりして、村上の表情を見ています。


[38] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(710)  鶴岡次郎 :2018/07/06 (金) 16:59 ID:614XfVzg No.3143

「全て、私が仕掛けて、奥様をだましました・・。
最初は、眠り薬で自由を奪い奥様を犯しました。
それ以降は、恥ずかしい写真をばらまくと脅かし、関係を続けました」

「そんなことはありません…
私も…・・」

一時の驚きから覚めた咲江が大きな瞳を開いて村上を見て、そして何かを言おうとして、口を開きま
したが、その行為を村上が手を挙げて止めています。二人の様子を見ている夏樹の表情は穏やかで
す。

「奥様・・、
おっしゃりたいことはたくさんあると思いますが…、
ここは私一人で弁明します。
私の話が終わりましたら・・、
奥様に補足していただきます‥
それまでは、口を挟まないで聞いてください、
それでよろしいですね…」

「・・・・・」

村上が強い調子で咲江の言葉を封じ込んでいます。咲江の瞳に涙があふれ出ています。一人で罪を背
負う村上の気持ちが、咲江には痛いほどわかるのです。村上は何とかして、愛する咲江の罪を軽くし
ようとしているのです。

「女をだまし、その女を売り飛ばすヤクザな仕事してきた私です。
女に惚れることなど一度もありませんでした。
それを誇りにして、ここまで生きてきました・・・」

「寂しいことですね…」

夏樹が正直な感想をまじめに述べています。

「そうですね・・、
寂しいと言えば、寂しい人生です。
それでも若い時は、その生き方を粋だと思い、自慢にしていました。
そんな生き方をしてきた私が・・、
還暦を三年後に迎える年になって・・、
初めて、女に惚れたのです‥‥」

涙をためた瞳を一杯に開いて、咲江はじっと村上を見つめています。チラッと視線を合わせました
が、村上は直ぐに咲江から視線を外しました。

「一年前、路上でケガをした奥様を偶然、助けました。
この事務所へお連れして、明るい光の下で奥様を見た時・・、
衝撃が走りました…。
何が何でも、この女性をものにしたいと思いました。
スミマセン・・、旦那様の前で汚い言葉を使いました・・・」

村上が頭を下げ、坂上が笑って会釈しています。

「いろいろ策を練って奥さんを落しました・・・
長年、この道で生きてきた私ですから・・、
素人の奥様を落すことはさほど難しくありませんでした・・
一度モノにすると・・・、
後は・・・、私の思うままです‥‥」

「・・・・・」

村上が夏樹の表情を探っています。あえて過激な言葉、坂上の気持ちを逆撫ぜするような表現をし
て、坂上の反応を探ろうとしているのです。坂上の怒りが強いようなら話の筋をあいまいにして、坂
上との話し合いをここで終え、あとは賠償金で解決しようと決めているのです。しかし、坂上は村上
の挑発に乗らず、ゆったりと構えているのです。その余裕のある坂上の表情を見て、村上は話を進め
る気になった様子です。


[39] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(711)  鶴岡次郎 :2018/07/11 (水) 15:16 ID:Wm4jq0o. No.3144
「さすがですね・・・、
ご主人は・・、
かなり誇張して話したのですが・・。
作り話に近い奥様の酷い話を聞いても動じませんね…。
それではこちらも腹を据えて、すべてを話します…」

真剣な表情で村上が言い放っています。坂上は黙って、村上の顔を見ています。男同士の真剣勝負が
始まった…、咲江はそう感じとっていました。もう・・、咲江が口を挟む余地はなさそうだと感じて
いたのです。

「女に惚れることはしない私ですが・・、
奥様は違いました。
一度抱くと、奥様の魅力の虜になりました。
この女を永久に放さないと決心しました・・。
それほど奥様は素晴らしかったのです‥」

「・・・・・・・・」

聞くに堪えない、村上と咲江のあからさまな情事の告白を、目を閉じ、表情を変えないで、坂上は聞
いています。夫が何を感じ、これから先どのように行動しようと思っているのか、咲江には見当もつ
きませんでした。よく知っているはずの夫、坂上夏樹が、この時ほど遠くの存在に思えたことは過去
になかったのです。咲江は覚悟を決めました。何が起きても、黙って夫の指示に従うと決めたので
す。

「奥様からは、何度も別れ話がありました・・。
私は必死で奥様を引き留めました・・。
それでも・・、半年も関係が続いたころには・・、
あれほど嫌っていた私に、時々ですが…、
気まぐれな好意を見せてくれるようになっていました。
それは、決して愛情とは呼べないものだったのですが、
うぬぼれ屋の私は、それを私への愛情だと思うようになっていました・・・」

「・・・・・・」

涙を一杯貯めた咲江が首を横に振っています。まぎれもなくそれは村上への愛だと咲江は主張してい
るのです。そんな咲江の仕草を、夫、坂上がじっと見ています。

「旦那様には申し訳ありませんが…、
奥様と過ごした一年は私にとって・・・
夢の世界でした…」

遠い視線を泳がせ、うっとりした表情で村上は語っています。

「いいことは長続きしません…、
奥様と関係をもって半年経った頃・・・、
不渡りを掴まされたのが契機で、
30年かけて育てた会社を倒産させてしまいました。
悪いことは続くもので・・、
男のモノが立たなくなりました・・。
それまで付き合ってきた女達は、一人去り、二人去り、
あっという間にすべていなくなりました…‥」

この頃、村上は突発性の性的不能に陥り、経済的な打撃もあって、女たちはあという間に、村上から
離れて行ったのです。

「経済的にも、体力面でもすっかり落ちぶれた私を・・・・、
奥様は見捨てませんでした・・・・。
ある時は慰め、ある時は背中を押し、私を支えてくれました。
おかげで、私はどん底から這い上がることが出来ました・・」

「・・・・・・・」

当時の苦労を思い出しているのでしょう、遠い視線を見せて村上が話しています。


[40] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(712)  鶴岡次郎 :2018/07/18 (水) 10:54 ID:ZL19ujEY No.3147

「奥様の存在がなかったら…、
多分・・、私はこの世から、早々と消えていたでしょう…。
私にとっては、奥様は救世主、女神なのです・・‥」

「・・・・・・」

「昔ほどではありませんが・・、
会社も何とか形が出来ました・・、
体も・・、奥様のおかげで元通りに戻りました・・。
出来れば奥様と一緒になりたいとさえ私は思うようになっていました・・・」

「・・・・・・・」

咲江との結婚を考えていたとの村上の告白は、咲江にも予想外のことだったようで、びっくりした表
情で村上を見つめています。少し怒ったそぶりを見せている坂上ですが、口を挟みませんでした。

「しかし・・、
体ばかりか、人妻の心まで奪う・・、
その罪を犯せば・・・、
旦那様は黙っていないでしょう・・」

「・・・・・・・」

村上が坂上の表情を見ています。当然だと言わんばかりの表情で坂上がゆっくり頷いています。あら
ゆる手を尽くして村上に対抗する決意を坂上は見せているのです。

「旦那様が騒げば、世間だって、決して私を許さないはずです。
まともな会社なら、やくざ者とは取引はしません。
奥様を奪えば・・・、
ようやく再興のめどがついた会社をつぶすことになるのは・・・・、
火を見るより明らかでした・・・」

坂上がゆっくりと頷いています。

「奥様との恋に生きるか、会社を守るか・・、
二者択一の瀬戸際に立たされたのです・・・。
恋に生きるか、会社か・・、
甘い言葉ですね・・・、ふふ・・・・」

自分の吐き出した言葉の甘さに気がついて、村上が声を出さないで笑っています。坂上も、咲江も笑
いません。

「恋にすべてを捧げるほど、若くはありませんでした。
奥様とこれ以上の関係を続けることは避けようと決心しました。.
私と奥様の恋に未来がないことは、最初から判っていたのです…
多分・・、奥様だって、旦那様を捨てることは出来ないはずです…・」

「・・・・・・・・」

50過ぎの遊び人が、人妻と恋に落ちてしまったのです。世間の目の届かないところで、ひっそりと
添い遂げるか、さもなくば潔く別れるか、村上はぎりぎりまで自身を追い込んでいたのです。
咲江の視線を避けたまま、透明な表情でしんみりと村上は話しています。坂上はじっと耳を傾けてい
ます。咲江は・・、村上を見ることが出来なくて、視線を落とし、必死で涙を抑えているのです

村上と咲江の仲が単純な肉体関係でなく、もっと深いところで結びついていることに坂上は改めて気
がついているのです。咲江はうつむいて涙をぬぐっています。
咲江の気持ちは複雑です。もし、村上から誘われていれば、夫を捨て、彼に付いていったかもしれな
いと、不安な気持ちが、彼女の心の隅に黒雲のように湧き上がっているのです。


[41] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(713)  鶴岡次郎 :2018/07/19 (木) 16:39 ID:z9JwB1hM No.3148
「本気で奥様を奪う作戦を練りました・・。
しかし・・、結局できませんでした…
あきらめる以外・・、道はなかったのです‥‥」

肩を落とし、村上は視線を床に落としています。その時のことを思い出し、やりきれない思いに
なっているのです。恋する女をあきらめると決断した男、気落ちしている哀れな姿を隠そうとしない
男を、しっかり抱きしめたいと咲江は思いました。しかし、出来ませんでした。泣き叫んでいる女心
を咲江は必死で抑え込んだのです。ここで村上を抱きしめれば、確実に、もう一人の男、夫を、突き
放すことになると、咲江には判っていたのです。どんなに村上を憐れんでも、夫を捨てて、彼の元に
走る気持ちにはなれなかったのです。

この場に居る三人三様に、思いにふけっているのでしょう・・、沈黙の時がゆっくりと流れていまし
た。

「私ごとき者のところに、奥様を引き留めてはおけない・・、
今なら、大恩ある咲江さん一家の崩壊が防げる・・、
縁を切るべきだと思いました・・。
それで・・、ある女に頼んで、芝居を打ちました・・」

驚いた表情で咲江が村上の顔を見ています、そして次の瞬間、あの女、由美子のことに触れるつもり
だと察知しているのです。

「咲江さん・・、
先日の女は私が金で雇った女です‥」

村上が先手を打って、由美子の素性を明かしました。驚いた表情を浮かべて咲江が村上を見ていま
す。そして慌てて口を挟みました。

「総一郎さん・・・、
アッ・・、社長さん‥‥、
あの女のことは主人には一切話していません…
苦しくて、悔しくて・・、告白する気になれなかったのです。
だから・・・、説明をしないと…、主人には判りません…」

また未告白の話題が明らかになったのです。坂上は苦笑を浮かべて咲江を見ています。

「そうですか・・、
あの女のことは旦那様には話していないのですね‥
何も、秘密にすることではないと思いますが…。
いいでしょう…、私から事情を説明します…」

笑いながら村上が言っています。

「奥様と別れるため、卑劣な手を打ったのです…。
ベッドで別の女と親しくしているところを奥様に見せつけて・・、
奥様をあきれさせ、私を軽蔑するように仕向けようと考えたのです…。
狙い通り、奥様は怒って、私を捨てました・・」

事情を察知して坂上が頷いています。

「咲江さん・・・、
あのような別れは・・・、
私の本意でなかったことだけは信じてください、
もっと、ちゃんとした別れ方をするべきでした‥
でも・・、別れ話をするのが怖かったのです…
心優しいあなたが別れを知って、泣き出すと、
私自身の決心が揺らぐことを恐れたのです‥・・」

「・・・・・・・」

「これが・・、私が申しあげたいことの全てです…」

そこで言葉を切り、村上は深々と頭を下げました。涙を一杯貯めた目で、咲江が村上を見ています。
坂上はゆったりと構えていて、笑みさえ浮かべています。


[42] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(714)  鶴岡次郎 :2018/07/20 (金) 16:53 ID:wEHdKWko No.3149
「それで・・、判った…、
あの日、取り乱した様子を見せて、戻ってきた咲江が・・、
身も世もなく、泣き崩れたわけが…、
最愛の村上さんが他の女と寝ているところを目撃したのだね、
それじゃ、悔しいし、嫉妬と、情欲で女体は疼くし、
メチャメチャの気分だよね・・・
咲江でなくても、女性なら誰だって、狂うよね…・」

その場の雰囲気を変えるつもりなのでしょう、明るい声で坂上が声を出しています。坂上は上機嫌で
す。この事務所を訪ねてきて一時間も過ぎていないのですが、次々と新しい秘密が暴露され、一時は
妻と村上の関係が決定的な局面に入り、離婚手前まで来ていたことを告げられたのです。そした今
は、ともかくも、二人の関係は解消した様子なのです。坂上の気持ちは晴れ晴れとしていました。

「そうなら・・、そうだと・・、
最初から、言ってくれればよかったのに…」

「だって…、いくら私でも・・・、
一年間も、あなたを裏切り続けた上・・、
最後には、その男に捨てられましたなんて…、
とても言えなかった…、スミマセン・・」

頬に涙の後を見せながら、肩を落とす咲江の肩を坂上が抱きしめています。

「村上さん・・・、
あなたの勇気に私は感謝を申し上げます。
黙っていれば、それはそれで済んだのに・・、
苦しい胸の内を、よくぞ、吐き出していただきました…。
なかなか、出来ないことだと感じ入っております…」

「・・・・・・・」

坂上が軽く頭を下げ、村上が黙って頷いています。男二人、黙っていても通じるものがある様子で
す。

「実は・・、
私も・・、お二人に告白することがあります・」

「・・・・・・」

二人の顔を見ながら、笑みを浮かべて坂上が語っています。咲江と村上が不審そうに坂上を見つめ
ています。

「村上さんと知り合ったのは二週間前で、
男と女の関係は未遂に終わったと・・・、
妻から嘘の告白を受けていたのですが・・・、
実は・・、私は最初から少し変だと思っていました。
そして、その後、決定的な証拠を掴んだのです…
ですから今日、お二人から告白を聞く前に・・・、
ある程度まで真相を察知していました・・・」

「エッ‥、バレていたの・・」

咲江が思わず口走っています。


[43] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(715)  鶴岡次郎 :2018/07/29 (日) 15:50 ID:2ZhADSkE No.3150
咲江の問いかけに笑顔で答えて、坂上はゆっくりと口を開きました。

「あの日のお前は異常だった…、
涙を流した跡が歴然としていたし・・、
それでいて・・、
全身から欲情した香りが漂い出ていた…、
これは何かあったなと・・、感じたよ‥
先ほどの村上さんの説明で納得したのだが…、
村上さんとその女の芝居を見せつけられ、
惚れた男に捨てられたお前はボロボロになって帰って来たのだね・・・」

「そうよ、何もかも終わった・・、
あなたを裏切った罰だ・・、
どうなっていいと、投げやりな気持ちだった・・。
尋ねられれば、ありのままを告白しようと決めていた…。
でも・・、
あなたは何も問いかけてこなかった・・・」

「うん・・、
下手な質問が出来る雰囲気ではなかった・・
お前が、説明するまで質問しないつもりになっていた・・」

「悲しくて・・、辛くって…、
それでも・・、
あなたを裏切っている身だから・・、
あなたにどのように説明しようか、迷いに迷っていた・・」

「でも・・、お前は・・・、
話してくれた…」

「あなたの顔を見て・・、
あなたに抱きしめられて…、
私の帰るところは、ここだとはっきり感じたの・・、
それで、すべてを話すことにした…」

その時を思い出したのでしょう、咲江が涙を流しています。

「妻の告白を聞いていて…、
妻は村上さんに惚れていると思いました・・。
それでも・・、
男と女の関係は未遂に終わったと妻は言いました・・・
妻としては、そのことだけは曖昧にしたかったのでしょう・・」

「・・・・・」

ここで坂上は村上に向かって説明を始めました。村上は黙って頷いています。

「確証こそ掴めませんでしたが、
妻は嘘を言っていると思いました。
二人は深い関係にあるはずだと推察しました。
言ってみれば、浮気妻を持つ男の勘ですかね…・
はは・・・・・・」

「・・・・・・・」

「正直に言います…、
二人が深い関係にあると思っても・・、
私にはそれほど、怒りが沸いていませんでした‥。
その場で妻を問い詰める気持ちもわきませんでした…。
他の男とのあぶない関係を告白し、泣き崩れる妻を見て・・・、
お恥ずかしいことですが、惚れなおしました…・
その時の妻は、悪魔のように魅力的でした…
こんなに魅力的に変貌するのなら・・、
少しくらいの浮気は見逃してもいいとさえ思っていました」

「パパ…・・・」

「・・・・・・」

恥じらいを浮かべながら、咲江は涙を流しているのです。村上が難しい表情を浮かべ、何度も頷いて
います。坂上が咲江に惚れなおした気持ちは村上にはよく理解できる様子です。


[44] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(716)  鶴岡次郎 :2018/07/31 (火) 15:48 ID:hhdaTZCE No.3151

「妻の罪を許すことを伝えました…・。
妻の告白をすべて信じることにして、
私からは何も質問しませんでした‥。
その後、寝室で仲直りのセックスをしたのです・・、
その夜の妻は異常に燃え上がりました…」

「・・・・」

夫婦の微妙な話ですが、神妙な表情で村上は聞いています。一方咲江は、恥ずかしい閨の行動が話題
になっているのですが、気にする風でもなく、笑みさえ浮かべているのです。それは当然です、目の
前に居る男二人には、咲江のすべてを曝しているのですから、今更恥ずかしがることは何もないので
す。

「夫に秘密を告白した解放感が背中を押したのでしょう、
それまでは決して口にしなかった、
恥ずかしい言葉を何度も叫んだのです。
それを聞いて・・、ピーンと来たのです」

「エッ・・、あの時・・、何か言ったの・・・・」

ここで咲江が反応しています。閨で、絶頂に届いた時、何を口走ったのか、そのことが気になる様子
です。

「絶頂になった時、妻が発した言葉を聴いて・・、
妻には男が居る・・・、
それは村上さんだと‥。
そして、その関係は昨日、今日始まったものではない・・、
さすがに一年も続いているとは思いませんでしたが、
少なくとも、男女の密な関係が二人の間に存在すると確信しました・・・」

笑みを浮かべて夏樹が語っています。咲江も初めて聞く内容らしく、驚いている様子を見せていま
す。

「私・・、何を言ったの…
浮気がバレるようなこと言ったかしら・・・」

もう・・、咲江は完全に開き直っています。

「気になるだろう・・」

「そりゃ・・、そうでしょう‥、知りたい・・!
もしかして・・・、
あの時・・、総一郎さん・・・て、名前を叫んだの・・?
いくら私でも・・、それは、さすがにないわね…、ふふ…
降参!・・教えて…・」

「大きい・・、大きい・・、
あなたのモノが一番好き…、
そう・・、叫んだのだ・・・」

「ああ・・・、
言ってしまったんだ…」

夏樹の答えを聞いて咲江は絶句しています。


[45] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(717)  鶴岡次郎 :2018/08/03 (金) 16:31 ID:y18mFz76 No.3152
比較すべき対象を知らない間は、いかに夫のモノが大きくとも、「大きい・・」とか、「あなたのモ
ノが一番・・」とかの発想は出ないものです。他の男を知って、初めて客観的に夫のモノが評価でき
るのです。村上との浮気を夫に告白して、一年余に及ぶ罪悪感の縛りから、咲江は解放されたので
す。そこに油断が発生したのです。夫に抱かれて、今までにないほど感じ、禁句を・・、思わず、口
に出してしまったのです。

村上は笑いをかみ殺しています。夫婦の会話に愛情があふれていて、かなり深刻な話にもかかわら
ず、笑いを誘われるのです。それで、思わず口を開きました。

「私のモノは自慢できる寸法ではないですからね・・・、
旦那様の立派で、大きなモノを受け容れた時、
貧弱な私のモノと、つい比較して、
奥さんが失言したのですね・・、
とんだところで、赤恥をかいてしまいました・・、ハハ・・」

夫婦の軽妙な会話を聞いていて、もしかして、いちるいの望みが残されているかもしれないと村上は
思い始めているのです。坂上夏樹は思った以上に大物かもしれないと思い始めているのです。そうで
あれば、その坂上の人柄に掛けてみようと村上は考えたのです。

ここまで悪事がバレてしまえば、もう失うものは何もないと思う気持ちが村上の背中を押しました。
何事か決心を固めた様子で、口を開きました。

「坂上さん・・・、
嫌がる奥様を騙し、脅かし、一年間も旦那様を欺かせました。
男として申し開きが出来ないことをして参りました・・。
それでも、私は胸を張って、申し上げたいのです。
奥様を思う私の気持ちは旦那様にも負けないつもりです・・
とにかく、奥様が好きでたまらないのです。
奥様のためなら、死ねと言われれば、笑って死んで見せます」

ほとんど絶叫するように叫んでいます。50男が二十歳前の青年のように頬を紅潮させて、青っぽい
セリフを叫んでいるのです。その青っぽさが、今の村上に似合っているのです。

坂上が真剣に耳を傾けていますし、咲江に至っては大粒の涙を流しているのです。どうやら今の言葉
で、村上は坂上夫妻の心をつかんだ様子です。

「奥様を私の会社に預けていただく件・・・、
いかがでしょうか・・、
ぜひ・・、実現していただけないでしょうか‥」

「私の気持ちは何も変わっていません・・・。
むしろ、正直にすべてを告白いただいたことで、
村上さんの人柄がよく判り、もっと安心しました。
改めて、申し入れます。
村上さんの会社で妻を雇ってください・・」

「ああ・・・、本当ですか・・、
許可していただけるのですか…」

「よろしくお願い申します‥、
さあ・・、咲江からもお礼を申し上げなさい‥」

「ありがとうございます‥、
総一郎さん・・、いえ・・、社長…、
不束者ですが、一生懸命働きます…
よろしくお願い申します…」

咲江と坂上が立ち上がり、頭を下げています。村上もあわてて立ち上がり、頭を下げています。

「うれしいな・・・、
こんなことが起きるなんて…、
親切は人のためならずと・・、
昔の人が言っていますが、
私の場合はまさに、その通りですね……」

村上は喜びを爆破させているのです。チョッとした親切心から、咲江を助けた、そのことがきっかけ
になり、咲江と関係を持つことになり、今また、一緒に働けることが許されたのです。この先、孤独
な独り暮らしを覚悟していた村上にとっては、願ってもないことなのです。


[46] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(718)  鶴岡次郎 :2018/08/06 (月) 14:29 ID:614XfVzg No.3153
「坂上さん・・、
私は散々に不摂生を重ねて来ましたので、
残された人生は、残り10年もないと思います‥。
その残り僅かな人生を、全て・・・、
咲江さんと坂上さんに捧げます…。
ありがとうございます。このとおりです…」

ソファーから滑り降り、床に正座して、村上は床に頭を付けています。

一度きりの浮気で、体の関係はなかったと咲江は嘘の告白をしたのです。その嘘を信じて、夫はすべ
てを許し、改めて村上の事務所に勤めることを認めてくれたのです。村上の告白で咲江の嘘がバレま
した。一年の浮気は長すぎます、離婚話も浮上するかもしれないと咲江は覚悟を決めていたのです。
それが、全てを許してくれたうえ、これからは夫公認で村上に抱かれることが出来るのです。村上同
様、咲江も感動の渦の中に居ました。

村上が夫に頭を下げているのを見て、咲江も夫にお礼を言うべきだと気がついたようです。急いで
立ち上がり、村上の傍に正座して、夫に向かって、心から感謝の気持ちを込めて首を垂れています。

村上と咲江の土下座を受け、坂上は嬉しそうな表情を浮かべています。顔を上げた村上が坂上を見
て、そして傍に居る咲江と視線が合いました。どちらからともなく顔が近づき、二人の唇が重なり合
いました。坂上の存在は気になりますが、興奮を抑えきれなくなったのです。

最初はおとなしく唇を合わせていたのですが、女の方が仕掛けて、互いに舌を絡め合う激しくキッス
になりました。

坂上はそんな二人から視線を外し、窓の外を見ています。二人はいつ果てるとも判らない状態です。
しっかり抱き合い、唸り声さえ発しているのです。坂上から公認された喜びが爆発しているのです。
このままの展開だと、二人は床に体を倒し、本格的に抱き合うかもしれません。坂上が振り向き、未
だ激しく抱き合っている二人に声を掛けました。優しい声です。

「咲江・・!
それくらいでいいだろう・・」

二人には坂上の声が届いていない様子です。二人に近づき、咲江の肩に手をかけ、少し大きな声で呼
びかけました。相変わらず優しいトーンです。

「咲江…!
もう・・・、いいだろう…」

肩を触られ、ようやく夫の存在に気がつき、慌てて、重なっている男の唇を離しています。男の舌を
深々と吸い込んでいて、音を立てて男の舌が抜き出されると、唾液が二人の唇の間に糸を張っていま
す。激しい吸引を受けたのでしょう、咲江の唇は少しはれぼったくなり、真っ赤に変色しています。
淫蕩に変形した妻の唇を眺めながら、苦笑の表情を浮かべています。坂上は少し妬ける気分になって
いるのです。

「ああ・・、あなた・・・・
スミマセン・・・、うれしくて…」

頬を染めて咲江が恥ずかしそうにしています。村上は坂上の顔を見ることが出来ない様子です。それ
でいて、二人は右手と左手を固く握りあっているのです。

「私は、これから研究所に寄って、
やり残した実験を片付けるつもりだ・・・、
咲江は先に・・、家へ帰ってほしい・・・」

ここで言葉を飲んで、からかいの笑みを二人に向けて、夏樹が言いました。

「それとも・・、
村上さんさえ、ご迷惑でなければ、
一晩お世話になり、明日の昼過ぎ帰って来てもいいよ・・・・
仕事を早めに終えて、おばあちゃんから子供たちを引き取り、
明日の朝、責任もって学校へ送り出すから…」

「エッ・・・、良いの…・?」

「これから先のことも含めて、二人にはつもり話もあるだろうから、
ゆっくりして来るといい・・。
子供たちには、お母さんは友達の家に泊まると伝えるから‥」

うれしそうな表情を浮かべる咲江に、優しい視線を送り、坂上夏樹は潔く背を見せて、玄関に向
かって歩き始めました。

村上が坂上夏樹を玄関まで見送りました。玄関で二人の男は固い握手を交わしました。これから先、
いつまで続くか判らないのですが、二人は咲江を共有することになるのです。ある意味で肉親以上に
近い関係になった二人なのです、万感を込めて二人は視線を絡めていました。

「では・・、お世話になりました…」

「こちらこそ・・、
明日の午後には奥さんを送り届けます・・」

互いに多くを語らなくても、心が通い合う気持ちになっているのです。


[47] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(719)  鶴岡次郎 :2018/08/08 (水) 17:38 ID:xK9vDxcc No.3154

放心状態で咲江はソファーに腰を下ろしていました。先ほど起きた事態の展開が信じられない気持ち
なのです。昨夜、閨での嘘の告白を信じて夫は村上の事務所に勤務することを認めてくれたのです。
夫を裏切っている身としては村上と会うことに不安はあったのです、それでも、咲江の嘘を村上も守
り切ってくれると信じて、事務所を訪問したのです。

しかし、夫、坂上の対応に感動した村上は、咲江の嘘を守りとおすことを潔しとしないで、一年間の
不倫関係を告白してしまったのです。これで全て終わった、悪くても離婚は避けられないと覚悟を決
めたのです。親権を失うこともありうると思いました、せめて子供と面会できる道だけは残しておき
たいと咲江は思っていたのです。

夫はすべてを水に流してくれて、村上と関係を続けることさえ認めてくれたのです。咲江はこの瞬間
でも信じられない気持ちでいっぱいなのです。それでも、湧き上がる喜びを咲江は抑えることが出来
ませんでした。不倫の関係を続けることは精神へのダメージが大きいのです。これからは、こそこそ
隠れて会わなくてもいいし、会った後必ず襲ってくる、あの絶望的な自己嫌悪感、罪悪感にさいなま
れることがなくなるのです。

「ああ・・、私は解放された…て、感じね…
この事務所に村上さんと二人きりで居ても、誰も咎めないのね‥。
ああ・・、自由なんだ‥」

両手を天井に向けて突き上げ、咲江は興奮してしゃべっています。そんな咲江を、笑みを浮かべて村
上が見ています。村上にとって、こんなに明るい咲江を見るのは初めてのことなのです。

「それにしてもご主人は大物だね・・・、
彼の迫力に圧倒されたよ」

咲江の傍に座った村上が笑みを浮かべたまま、ゆっくりと語りかけました。

「私には・・、もったいない程の人なのよ…」

「奥さんを愛しているんだね…」

「愛されているのは確かだけれど…、
欲を言えば、もっと私に甘えてほしい…」

「贅沢な悩みだね・・・、
立派過ぎて、近寄りがたい気がするんだね…」

「そうかも・・・・・・・」

「まだ若いし・・、才能があり、すべてに恵まれている、
彼・・、挫折を知らずにここまで来たはずだから‥
何かに躓いた時・・、処理に困ることが起きるはず・・。
しかし、人に頼ることを知らない人だから・・
孤高の人になり易いかも・・・・」

「孤高の人・・、上手いことを言うわね・・・、
優しい人だけれど、気がつけば、遠くへ行っていることがある・・。
夫は・・、そうした一面は確かに持っている…
よく知っているはずの夫が・・、
まったく知らない人に思えることがある・・
私…、本当に夫を愛しているのかしら…・
そう思う瞬間があるの……」

村上の言葉に大きく頷きながら、咲江が静かに言葉を出しています。夫を愛することの意味を自分に
問いかけているのかもしれません。


[48] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(720)  鶴岡次郎 :2018/08/09 (木) 11:06 ID:HDt5T5IU No.3155

「家庭を持たない俺が言うのは変だが…、
本音をぶつけ合って、いつも喧嘩をしている夫婦もいるし、
坂上さん夫婦のように、本音を吐き出すことは抑えて、
いつも相手の幸せを深く考えている夫婦もいるよ・・・、
いずれが正しいかなどは、判らない・・、
いろんな形の夫婦が居てもいいと思う…」

呟くように、言葉を拾いながら村上は語っています。

「そうね・・・・、
夫婦の形に一定の決まりはないのね…。
あまり考えこまないで、
夫を愛し、自分自身に誠実に生きることを心がけることにする・・・」

明るい表情で咲江が言っています。今回の経験で、咲江は何かを掴んだ様子です。夫を裏切ったこと
は紛れもない事実で、決して許されることではないのですが、一方では、彼女自身、自分の気持ちを
裏切らないで生きてきた自負があるのです。言い換えれば、浮気と言う大罪を夫から追及されれば、
弁解せず、夫が与える罰を受け入れる覚悟を決めていたのです。これから先も、彼女自身が信じる道
を歩いて行くと、心を決めた様子です。

「奥さんの助けが必要になる時が、いずれ来ると思う…、
俺をEDから立ち直らせたように、
彼が窮地に立った時、献身的に支えることだね…、
奥さんなら、出来るよ…・」

「うん・・、そうする‥
それまでは、総一郎さんが私に甘えてください…
う・・んと、可愛がってあげるから…」

「おい、おい・・、
あまり入れ込まないでほしいな‥、
以前とは状況が違うのだから‥」

「なあ・・に、その言い方・・、
俺にあまり惚れ込むな・・、
そう言いたいわけ…?」

「うん・・、そんな格好いい話ではないが・・・、
当たらずとも遠からずだ…」

「必要以上に惚れ込むなと言っているのね・・、
その入れ込み加減が判らないなら、
私とは別れる・・と、そう思っているの・・・?」

「そうではない・・、
奥さんと別れるなら、むしろ死を選ぶよ‥」

「大げさね・・、死なれたら困るから、
別れないことにするわ‥、ふふ…
でも・・、死ぬほど好いてくれているなんて・・、とっても嬉しい…」

「大好きな奥さんとこうして仲良くさせていただいているのは、
ご主人の大きな器量のおかげだと思っている。
奥さんと同じくらい、ご主人を大切な人だと思っている・・
その意味で、これまでとは違う心構えで奥さんと接するつもりだ、
俺はご主人を決して裏切らないと決めている・・、
そこのところを、奥さんもよく理解してほしい、
節度あるお付き合いをしてほしい・・」

「節度あるお付き合い…?
それって・・、
セックス抜きってことなの…?」

「いや・・、そう言うわけではない・・、
セックスは、今まで通り・・、
いや、多分・・・、
今まで以上に、励むつもりだ・・・」

「なら・・、私はいいわ‥
私は毎日でも良いのよ‥‥」

セックスが出来るのなら、あとは問題ないと割り切ったらしく、咲江はあっさり納得しています。

「毎日か…、
それは・・・、ちょっと難しいかな…、
俺にも仕事があるし…、
病から回復したばっかりだし…・」

「ふふ・・・、バカね・・・、
冗談よ、冗談…、
毎日するはずがないでしょう…」

「・・・・・・」

それ以上この種の会話を続けることは危険だと察した様子で村上が言葉を飲み、咲江の表情を横目で
盗み見しています。村上の困惑には気づかないようすで咲江はすました横顔を見せています。先ほど
のディープキッスで少し乱れたルージュ、張りのある頬、みずみずしい瞳、それと意識をしなくても
傍に居るすべてのオスを惹き付ける今盛りのメスのオーラを発散しています。村上でなくても、毎日
挑まれたら大変だと逃げ腰になるほどの魅力を発散しているのです。


[49] フォレストサイドハウスの住人達(その21)(721)  鶴岡次郎 :2018/08/22 (水) 16:02 ID:MWRtknGY No.3157
「何と言ったらいいか…、
身も、心も、全てを、互いに差し出す必要はないということだ・・、
俺も、奥さんも、その気配りが必要だということだ‥」

「うん・・、判った‥
総一郎さんのそういうところが好き・・、
義理人情に厚く、人の好意に感謝の気持ちを忘れないのよね・・
主人の気持ちを大切にしろということね…・」

「・・・・・・」

にっこり微笑んで答える咲江を見て、村上が黙って頷いています。

男の実力で咲江を引き付け、坂上に隠れて不倫の関係を続けてきて、一時は、本気で咲江を坂上から
奪い取る気になったことがある村上ですが、坂上夏樹の大きな器に取り込まれて、言わば咲江を貸し
てもらう関係になったのです。今までとは違うのだ、新たな関係がスタートしたと、村上は咲江に伝
えたのです。

咲江も村上の気持ちを理解した様子です。

「ご心配なく・・、
総一郎さんに惚れこんで、主人を忘れたりしないから、
主人も、総一郎さんも、私にとっては大切な人・・、
二人とも大好きだよ…・
私・・、今、とっても幸せな気分なの…・」

決して口には出しませんが、二人の全く違うタイプの男に抱かれることになった自身の境遇を咲江は
しっかりと胸に刻み込み、その喜びを密かに噛み締めているのです。その感情が彼女の中でさらに大
きくなりました。体をくねらせながら咲江は村上を見つめてささやきました。濃い女臭が村上の鼻腔
をくすぐり始めているのです。

「ネエ・・、抱いてほしい…」

「アパートへ行こうか‥」

「ううん・・、ここで、今すぐ・・」

欲情した咲江の表情を確認して、村上は少し慌てています。

「判った…、
とてもアパートまではもちそうもないね…
腰が完全にいかれているよ…・」

「あ・・・ん・・・、
意地悪…・、でも、本当なの…、
もう・・、一歩も歩けない…
ああ・・・、欲しい、欲しい…・・.」

体をくねらせ、着ていたワンピースを脱ぎ捨て、ブラを無造作に剥ぎ取り、一気にショーツを脱ぎ取
り、それをソファーに投げ捨てています。
全裸になった咲江を横目で見ながら、小走りで玄関へ行き、閉店の看板を出し、扉に施錠しました。
その場で衣服、下着をはぎ取り、村上も全裸になりました。

村上が両手を差し出しました。男に走り寄り、飛びつきました。支えきれなくて男が床に腰を下ろし
ています。男の上に乗りかかり、咲江は男の体に両手、両脚を絡めて、唇に吸い付きました。男の体
が女の体液で濡れ始めています。下から、男が攻撃を開始しました。指を入れ、乳房を吸い、背中を
さすり、女を責めています。

「ああ・・・、うれしい…
ここに戻って来れるなんて…、
夢みたい…・」

咲江の目から涙があふれ出ています。村上も泣いています。ソフトタイルの床の上で、二人は抱き合
い、呻きながら絡み始めました。

事務所で二時間ほど抱き合った後、近くのレストランで食事を済ませ、アパートへ戻った二人は、
白々と夜が明けるまで絡み合いました。


[50] 新しい章を立てます  鶴岡次郎 :2018/08/22 (水) 16:21 ID:MWRtknGY No.3158
新スレを立て、新しい章を起こします。ジロー


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