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フォレストサイドハウスの住人達(その20)

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2017/09/25 (月) 15:33 ID:/K5M318Y No.3050
フォレストサイドハウスの住人である坂上咲江は、結婚以来、いわゆる「女の喜び」知らずに過ごし
てきました。結婚後、十数年経った時、短大の同窓会に出席した帰り道、偶然が重なり、銀座で小規
模な備品販売・不動産会社を経営する50男の遊び人、村上総一郎と遭遇したのです。

元竿師である村上の手管に咲江が溺れるのは簡単でした。不倫、裏切り行為に悩みながら、それでも
肉の誘惑に堪えきれなくて、咲江は一年近く村上の下に通い詰めたのです。その頃には、咲江の心は
ズタズタになり、夫を捨て村上の下へ走るか、彼女自身をこの世から消すか、二つに一つの道しか考
えられないところまで追い詰められていたのです。

咲江の親友である浦上千春が立ち上がりました。経験豊富な鶴岡由美子、公園で売店を経営する美津
崎愛が千春のサポートに回ったのです。ソープに勤める千春は咲江の夫、坂上夏樹に接近し、女体の
扱いから、高度な性技まで教え込みました。この方面でも豊かな才能を持っていた夏樹は、短時間に
恐ろしいほどの性豪に成長したのです。

性豪の夫を持つことになった咲江は、夜の疲れで昼間、正気を失うことがしばしば起きるほど性生活
を満喫することになるのです。
これで、咲江は村上と切れるはずだ・・、そうなるはずだと・・・、千春も、そして由美子も愛も、
そう思ったのです。予想に反して、咲江は村上との仲を、なかなか清算しようとしないのです。男と
女、二人の間に新たな感情が芽生え、二人は、どうやら、「永遠の契り」さえ結びそうな状況に
なったのです。

千春はギブアップしました。強い絆を作り上げた咲江と村上の仲を裂くには、由美子の力を借りる以
外、他に手がないところまで追い込まれたのです。そして、由美子演出・主演の舞台が幕を開いたの
です。ここまでが、前章までのあらすじです。多少話が前後するのをお許しいただいて、この章で
は、幕開きまでの経緯に少し触れ、その後、幕が締まった後の経過を追うことにします。

相変わらず身近な市民の平凡なストリーです、ご支援ください。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その11)』
の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。    

また、文中登場する人物、団体は全てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきます。
卑猥な言葉を文脈上やむを得ず使用することになりますが、伏字等で不快な思いをさせないよう注意
しますが、気を悪くされることもあると存じます。そうした時は読み流してご容赦ください。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字余脱
字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるようにしま
す。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した当該記事を読み直していただけると幸いです。

・〈(1)2014.5.8〉 文末にこの記事があれば、この日、この記事に1回目の手を加えたことを示
します。
・〈記事番号1779に修正を加えました。(2)2014.5.8〉 文頭にこの記事があれば、記事番号1779
 に二回目の修正を加えたことを示し、日付は最後の修正日付です。ご面倒でも当該記事を読み直し
ていただければ幸いです。


[41] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(665)  鶴岡次郎 :2018/02/24 (土) 13:56 ID:OH602l3M No.3093
「私の体、本当にいやらしいの・・、
自分の体が、本当に怖い・・・
見て・・、このもの欲しそうな乳房…、
ブラウスを持ち上げているこの乳房、ぷりぷりでしょう・・、
こうして、男の指が触れるのをじっと待っているのよ…・
アソコだって、いつも濡れている…・・」

「・・・・・・」

汚らわしいものを見るような視線を自身の胸のあたりに当てて、咲江が吐き捨てるように言っていま
す。笑みを浮かべて千春は咲江を見ています。

「お風呂でぷりぷりの白い肌を見ると・・、
特に、太ももからアソコの周りを見ると・・・、
自分の体なのに、何だか・・・
いやらしく・・、物欲しそうに見えて・・・、
急いで目をそらし、石鹸をまぶして、お湯をぶっかけることが多い…。
このままだと・・、私はただの色狂いになるかも…」

「ハハ・・・・、
色狂い・・だなんて…、
そんな古臭い言葉、良く知っているのね…、
相変わらずだね…、咲江は…・・」

本気で咲江は心配しているのです。一方千春は、吹き出しそうになるのを必死で抑えて、咲江に優し
い視線を送っているのです。本気で色狂いになるのを案じている咲江が千春にはとっても可愛いいと
思えるのです。

「なんでも心配になるのね・・・、
咲江は小さい時から、ずっと優等生だったからね・・、
この数ケ月の間に、禁断の男の味を知ってしまって・・、
体も、心も、驚き、慌てているのよ…・、
咲江は本当に箱入り奥様だからね・・・・」

「・・・・・・・・」

千春の言葉を聞いて、からかわれていると思ったのでしょう、咲江は不満そうな表情を浮かべていま
す。

「うん・・、バカにして・・・、
だったら千春の場合はどうなの…、
千春にだって、何も知らない処女時代はあったのでしょ‥
最初から、ソープ嬢だったわけではないでしょう…」

「あら・・、いけないんだ・・、
今の言葉は差別用語だよ・・・」

「ゴメン、ゴメン・・、
他に言葉を知らないから、つい言ってしまった。
ゴメンナサイ…」

「私の場合はね・・・、
いろいろあって・・・、
娘時代、20歳そこそこまでに、十分に経験を積んでいて、
その頃、既に、今の咲江のように、男狂いの禁断症状が出ていた。
独身で、その上、周りには男が多い職場だったから、
欲望に任せて、日に数人の男に抱かれることも珍しいことではなかった・・」

「・・・・・」

遠くを見る目で、ぽつりぽつりと語る千春の話に、咲江は言葉が出ない様子です。


[42] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(666)  鶴岡次郎 :2018/02/28 (水) 10:58 ID:cnGdQDv2 No.3094
「もし、あの人に会っていなかったら・・・、
間違いなく、今頃、私は・・、
社会の底辺を這いずり回っていると思う・・・
男狂いで危ないところまで来ていたところを救ってくれた・・」

「あの人って…、
ああ・・・、ご主人のことね…」

「・・・・・」

咲江の質問に、千春は黙って首を振っています。

「その人に勧められて、今の仕事に就いた・・・」

「ああ・・、佐王子さんのことか・・・・・」

そうだったのかという表情で、咲江が頷いています。ことあるごとに千春から聞かされていて、咲江
はソープの店主である佐王子のことはかなり良く知っているのです。しかし、千春が咲江に話したの
は最近のソープ勤めの話で、若い頃の千春の話を聞くのは咲江にとっても初めてのことなのです。

「銀座にある靴店に勤務していたことは話したことがあるよね・・・、
ある日、私のお店に偶然主人がやって来た・・。
勿論主人はお店に初めて来た人で、男狂いの対象ではなかった。
波長が合ったということかしら、一目で互いに好きになり、
普通の恋人同士の付き合いを経て、二ケ月後に、結婚を申し込まれた」

なつかしそうに、幸せな表情を浮かべ千春が話しています。

「うれしかった‥、でも・・、彼を欺くことは出来なかった・・。
私はすべてを告白した・・。
数えきれない男に抱かれている淫乱な女だと告げた。
50男の情人(いろ)が居ることも告げた・・・。
それでも・・・・、主人は私と結婚すると言ってくれた・・・」

「良く、それで、・・・・・・・」

「・・・ご主人は結婚を決意したわね・・」の言葉を飲み込んで、咲江は目を見張り、千春を見つめ
ています。

「うん・・、そのことでは主人に一生頭が上がらない。
今でも時々、そのことを話題にすることがあるけれど、
主人も首をひねっているのよ・・、
何故、結婚したのかな…、だって…・
後悔しているのかしら・・・、ふふ‥‥」

「千春のことが本当に好きなんだよ‥」

「そうはいっても・・、淫乱な私が家庭を持つなど、
無理があるのは自分でも、良く分かっていたから、
主人との結婚を本気で考えることが出来なかった・・・、
それで・・、あの人に主人と結婚すると報告した・・、
喜んでくれて、その世界から足を洗う方法や・・、
未来の夫を上手く騙す手練手管など・・
いろいろアドバイスをしてくれると思ったのに、
意外にも、強く反対された・・、
どうしても結婚をあきらめないのなら、
一度主人に会いたいと言いだした・・」

「あら、あら・・・
佐王子さん、きれいごとを言っても、本音が出てしまったのね‥‥、
千春に惚れ込んでいて、手放したくないと思ったのね・・・
一匹狼のような人と思っていたけれど、案外いいところあるわよ・・・・」

過去話で、結果が判っているだけに、興味半分で、笑いながら咲江がコメントしています。


[43] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(667)  鶴岡次郎 :2018/03/01 (木) 15:08 ID:33jm8UW2 No.3095

「三人で会うことを決めた。
この時点で、私は主人との結婚を完全にあきらめていた。
短い間だったけれど、いい夢を見たとあきらめることにした。
あの人が主人に、何もかも話すのは判っていた。
ある程度まで私は告白しているけれど、
あの人の口から全てを聞けば、今度こそ主人もあきれ果て、
結婚話は跡形もなく消えると思った・・・
私の行状は・・、本当に・・・、凄いものだったから…・」

当時の乱行を少し悔いている様子を見せ、その時の苦しい心境を思い出したのでしょう、千春の瞳に
涙があふれ出ています。

「当日あの人は、普段とは違って、
アウトローになり切った服装で現れた‥。
そして・・、開口一番・・・、
あの人が主人に告げた…
凄い乱暴な言葉使いだった…」

「怖いね‥‥」

「この女は天性の淫乱で、男好きで、
これまで数えきれない男と関係を持っている。
その上、自分がスケベー女になるすべてのことを教えた、
千春は当代一の淫乱女になった、
とても、素人である主人の手に負える女でない、
普通の家庭を築ける女でないと・・・、
あの人が主人に教えた・・・」

「すごい・・・、本当の修羅場ね…
・・・で、ご主人はどんな様子だったの…・」

「もちろん、緊張していた…、
でも、私以上に冷静だった…、
あの人から聞かされた私の淫乱話はすでに知っていることだから、
そのことで、慌てる様子を見せていなかった…。
黙って、ことさら気負った様子を見せないで、あの人に対面していた」

「すごいね・・、
佐王子さんって・・、ヤクザでしょう…、
普通のサラリーマンならビビッて、おしっこを洩らすよ‥‥
その意味でも、ご主人は立派ね…・」

「ふふ・・・、ヤクザではないけれど、似たような者ね・・
特にその日は、ヤクザでも顔負けのやばい服装だった…」

「・・・で、殴り合いになったの…
そうなれば、ご主人は敵わないよね…」

「主人は冷静に対応していた・・、
主人の対応を見て、あの人の様子が変わった…、
口調も丁寧な、いつもの彼に戻った…、
それまでは、それこそヤクザの真似をして、
それらしく、汚い言葉を吐いていたのよ・・・、
やくざ映画の主人公のように迫力があったわ‥、ふふ・・・」

「ご主人を脅かして、結婚をあきらめさせようと思ったのね・・、
それが失敗したから、作戦を変えたのかしら…」

「主人は判っていたようなの・・、
あの人は悪い人でないと、第一印象で判断したと言っていた。
それで、落ち着いてあの人の出方を探る気になったらしいの・・」

「最初の出会いで勝負はついていたのね・・、
佐王子さんがいくら、凄んでも、ご主人は怖くなかったんだ‥」

咲江が笑いながらコメントして、千春がにっこり微笑んで頷いています。


[44] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(668)  鶴岡次郎 :2018/03/07 (水) 14:57 ID:up6PpwnE No.3096

「服装から判断すると、見るからに悪そうなヤクザだけれど・・・、
隠しても隠し切れない、あの人の人柄を主人が一発で見抜いたのだと思う・・、
主人、優秀なセールスマンだから・・・、
そして、故意に凄んで見せているあの人の真の狙いを察知したのよ・・」

「出来る男同士だと、初対面でも、
互いの力量を瞬時に読み取ると言われているとおりの展開だね……
ご主人は、佐王子さんの力量をわずかの間に読み取ったのね…
そして、佐王子さんもご主人の力量をすぐに読み取って、作戦変更した」

「私抜きで少し話し合いたいとあの人が提案し、
喫茶店内の少し離れて席に、二人は移った…。
遠くから見る限り、二人は商談でもしているような様子で、
熱心に話し合っていた・・・。
結論が出たらしく、二人の前に呼ばれた・・」

ここで千春は言葉を切り、じっと咲江を見つめていました。

「『千春・・、
良い人に出会えたな…
幸せになれよ…』
私の顔を見つめ、あの人がそう言ってくれた。
私は泣きだしていた・・・」

「・・・・・・・」

その時を思い出したのでしょう、千春の瞳に涙があふれ出ていました。咲江も涙を見せています。

「下の子が幼稚園に入り、子育てを卒業した頃…、
私に、例の症状、男狂いの禁断症状が出た・・・。
私自身が絶望するほど、強い症状だった。
やたらに男を欲しがる私を見て、主人があの人に連絡を入れた。
主人とあの人は、その後も連絡を絶やしていなかったのだと思う。
直ぐに、あの人がやってきて、その夜は主人の前であの人に抱かれた」

「・・・・・・・」

凄い展開に、咲江は言葉を挟むことが出来ません。

「しばらくあの人が家に通ってくれて、
主人と、あの人が力を合わせ、必死で私を抱いてくれた。
私にとっては、二人の夫が出来たと同じ状態だった。
おかげで、私の症状は小康状態を保った」

「・・・・・・」

「あの人と、主人が相談して、
ソープ勤めをすることになった・・・。
そして、現在に至っている…。
これが、他人には話したことがない、私の物語よ・・・」

「千春にはすごい歴史があるんだね・・・、
それに比べれば、私など、歩き始めた赤子と同じね‥
千春、ご主人、そして佐王子さん・・、全部すごい人だね…」

咲江が本音で感心しています。


[45] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(669)  鶴岡次郎 :2018/03/08 (木) 15:02 ID:0F98oVNc No.3097

「そうだね・・、
主人とあの人のおかげだね・・
何とか、私が暮らしていけるのは‥‥」

しんみりした調子で千春が答えています。

「さあ…、私の物語はこれくらいにして・・、
咲江の話に戻るよ、
私のスケベーな話を聞いて、
咲江はどう思ったの…、少しは考えが変わったの…、
私の話を聞いても、まだ・・、咲江は自分のことを・・、
異常に欲望の強い、例外的に淫乱な女だと、自分を責めるの…・?」

「う・・・・ン・・・」

千春の物語を聞かされ、女の業の深さは理解した様子ですが、いざ、自分のこととなると、釈然とし
ないところがある様子です。やはり、自分は異常な女だと思う気持ちが咲江から消えない様子です。

「欲望の赴くままに、動いてはいけない・・、
何事も・・、ほどほどが良いと、しつけられてきたのね‥
そこが、咲江の良いところだけれど…、
度を越して心配すると、体を壊すよ・・・、
時には、私を見習って、羽目を外すことも覚えなくては‥」

「うん・・、そのことは頭では判っているんだけれど…」

「私たちより若い年代の女性でも・・、
結婚後、数年経ち、ほどほどに体が熟れてくると・・、
信じられないほど、スケベー女に変身するものだよ……」

「・・・・」

「私たちのマンション内でも、私と同じように、
風俗街で働いている人妻のうわさ話を時々聞くでしょう…、
彼女たち・・、経済的な理由は勿論考えられるけれど、
本音を言えば、私と同じで・・・・、
その仕事内容がそんなに嫌いでないのだと思う‥‥」

「確かに・・、そう言えるね…
他の男に抱かれるのが死ぬほど嫌な女が・・、
ソープに勤めたりしないよね・・・」

「生理的、道徳的に、その仕事に馴染めない女は、確かに居るよ、
そんな女は、長続きしないのよ・・・・。
二、三日どころか、初日で逃げ出している…」

「そうだろうね…」

咲江が頷いています。

「二、三ケ月その仕事を続けられる女は、
例外なく、その気があるのよ・・、
スケベーな本質は、大部分の女性共有のものだと思う…」

「確かに…、
以前、千春の仕事を聞かされた時は、正直引いたけれど、
今は・・、チャンスがあれば、私もその仕事をやりたいと・・、
思い始めている。そこまで私も成長したのだね・・・・」

「そうだよ・・、
咲江もいろいろ修行を積んで、
ようやく、一人前の女になったのだと思う…、
私たち女性は、生涯、メスの本性に逆らえないのだよ・・・、
神様から与えられた天性のお恵みを、幸せなことだと思い・・、
許される範囲内で、本性に忠実に生きるべきだよ…」

「うん・・、努力してみる…、
今日・・、千春に話して良かった・・・」

千春の説明に咲江が笑みで答えています。どうやら


[46] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(670)  鶴岡次郎 :2018/03/09 (金) 14:51 ID:5WGUdOGs No.3098
どうやら・・・、今を盛りに燃え盛る情欲と、なんとか付き合っていこうと咲江は決心した様子で
す。あまりに強い情欲に圧倒されて、自分は異常だと・・、救いようがないと・・、自己放棄さえし
かねない状態だったのです。それが、千春の行状を聞き、千春と比較すれば、自分はまだましだと思
い始めているのです。

「ところで・・・、もう一つの問題…、
村上さんのことだよ・・・、
このことに触れると、咲江は、いつも不機嫌になるけれど…
今日は・・、しっかり聞いてもらうよ…」

「うん・・・」

強い表情を浮かべた千春が語りかけています。神妙な表情を浮かべ咲江が頷いています。

咲江の夫、坂上夏樹がセックスに目覚める前までは、咲江は欲求不満で悩み、罪悪感にさいなまれな
がらも、粋で、遊び人である50男の村上との情事に溺れ、ずるずると一年関係を続けてきたので
す。

ところが・・、坂上夏樹が千春の手でセックスに開眼してからは、ことセックスに関して、咲江は
ゲップが出るほど満足出来るようになったのです。村上との情事に頼る必要がなくなったのです。そ
れなら、危険を冒して村上との関係を継続する意味も、言い訳もないのです。それでも、咲江はなか
なか別れを言い出さないのです。何度か忠告しても、その都度うまく逃げられたのです。由美子たち
と交わした約束もあり、ここらで咲江を話し合いのテーブルに引きずり出す必要があるのです。今日
の千春は真剣です。最後通告をするつもりなのです。千春の様子を見て、咲江の表情から笑みが消え
ています。

「同じ女だから・・、咲江の悩みが判るから・・、
セックスに満足できていない咲江に同情して‥
村上さんとの関係を、黙認してきたけれど・・・、
もう・・、潮時だよ‥。
今日は遠慮しないで、はっきり言うよ・・・」

「・・・・・・」

「以前から言っていることだけれど…、
浮気相手として、村上さんは危険だよ…。
村上さんは・・、普通の人ではないよ…、
はっきり言ってヤクザに近い人だと思う・・・・」

「・・・・・・・」

否定をも肯定もしないあいまいな表情で、それでも真剣な表情で千春の話を聞いています。村上がそ
の筋に近い男であることは、咲江はとっくに気がついていると思います。多分、一年前、最初の出会
いから村上が普通の人でないことには気がついていると思います。普通の主婦にとって、危険な香り
がする男は魅力的に見えます、それだからこそ、強く惹かれたのだと思います。

仲のいい二人ですが、ここしばらくは、村上の話題はタブーになっていて、その話題に触れそうにな
ると、咲江の機嫌が極端に悪くなっていたのです。それで千春が話題を引っ込めてきたのです。しか
し、今日は違うようです、千春の気迫が咲江を圧倒しているのです。千春の強い入れ込みようを見
て、逃げられないと腹を固めたのでしょうか、咲江は神妙な表情で、千春の話を聞いています。

「やくざが素人の咲江に夢中になるはずがない・・・、
何か目的があるはず…、
きっと、思いもよらない災難が襲ってくるはず・・、
別れるなら今だよ、今でも、相当深みに嵌っているけれどね・・・、
今なら・・・、何とか抜けられると思う、私も力を貸すから・・・・」

「判っている‥、
今が潮時だというのも分かっている・・・」

「・・・・・・・・」

咲江は黙ってうなだれています。ここまで追い込まれると、いつもなら、千春を睨みつけて、その場
から立ち去るのがいつもの咲江です。ところが、今日はおとなしく、最後まで千春の言葉を聞くつも
りの様子です。意外に殊勝な咲江の態度に千春がすこし驚き、黙って咲江の表情を探っています。咲
江の本音がどこにあるのか、千春には読み切れないです。

ここで村上の批判を止めておけばよかったのですが、ここに来るまで、うっぷんが溜まっていたので
しょう・・、千春は言葉を滑らしてしまったのです。

「はっきり言うよ…」


[47] フォレストサイドハウスの住人達(その20)  鶴岡次郎 :2018/03/13 (火) 13:28 ID:XqXe3w4c No.3099
千春が咲江の顔をまっすぐに見ています。そして、咲江も千春を睨みつけています。二人がこんなに
真剣ににらみ合うのは初めてのことです。

「その道のプロに近い村上さんが、
素人女である咲江とのセックスに満足しているはずがない・・・。
私も曲りなりにその道のプロだから、良く判るの、
咲江や、もちろん私でも・・、
その足元にも及ばない、凄い女が彼の傍に居るはずだよ・・・」

「別の女が居るなんて…・、
そんなはずがない!・・・」

「・・・・・・・」

別の女が村上の傍に侍っていると・・、千春が言葉を滑らし瞬間、咲江の形相が変わりました。強い
意志を込めて、千春をにらみつけているのです。あまりの強い語調に千春がびっくりして咲江の顔を
見ています。

「彼の傍に・・・、
私以外の女が居るはずがない・・・、
彼にとって・・、
私は・・、ただ一人の女だよ…」

一言、一言かみしめるように、咲江が千春の言葉に反論しています。驚きの表情を隠しきれない千春
が、それでも必死で、咲江の表情から、彼女の意志を読み取ろうとしています。

これまでは、村上のことに触れると、感情的になって、その場を立つか、耳を塞いで、千春のアドバ
イスを聞こうとしなかったのです。明らかに咲江自身でもそうだと判っている村上の素顔を、千春か
ら改めて追及されると、逃げ場がないだけに感情的に反抗せざるを得なかったのです。

でも、今日は違うのです。自信をみせて千春の言葉に反論しているのです。この変化が進歩なのか、
それとも後退なのか千春は判断に迷っていました。

「ああ・・、私ったら…、
つい・・、感情的になってゴメンナサイ…、
他に女が居ると千春が言うから・・、
つい・・、カーっとなってしまった・・。
正確に言うとね・・・、
以前は千春の言う通りだったかもしれない・・、
彼の傍にはたくさんの女が居たと思う…
そのことは・・、悔しいけれど・・、認めざるを得ない…・」

「・・・・・・・」

咲江は冷静です、話の筋を通して、千春に説明しようとしているのです。一方の千春は彼女が、この
先、何を主張しようとしているのか、まだ完全につかみ切れていない様子で、当惑の中にいるので
す。

「でも・・、今は違うの…、
ある事情があって・・、
彼の周りから女たちが姿を消して・・・、
彼は私一人の者になったの・・、
私なしでは生きてゆけないと・・、
そう・・、彼が・・、言ってくれるの…・」

「エッ…、
そんなことて・・、
本当に、彼がそう言うの…・?
騙されているんじゃないの…・」

千春の反論の言葉に力がありません。あまりに自信たっぷりに自身の立場を説明する咲江を見てい
て、千春の中に不安が広がっているのです。何かが起こり、その事実が咲江を大きく変えたのだと、
千春は漸く気が付いています。

「男と女の仲は、当事者しか判らない事情があるのよ・・、
私のことを心配しくれる千春の気持ちには、いつも感謝している・・、
でも・・、
村上さんと、私との仲には誰も口を挟ませない!
それが、千春であっても、許さない…」

「・・・・・・・・」

「私以外の女が彼の傍に居るなんて…、
とんでもない話よ!・・・」

最後の言葉を吐き捨てるように言って、千春の顔を、また、にらみつけているのです。


[48] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(672)  鶴岡次郎 :2018/03/14 (水) 11:05 ID:H5xkLHic No.3100
千春は当惑していました。こんなはずではなかったのです。以前の咲江はどこか頼りないところが
あって、村上との仲も、体の疼きに堪えかねて、心ならずも村上のところへ出向く様子だったので
す。そして、何よりも、村上との関係を恥じ、早く別れるべきだと咲江は悩み続け、千春にも何度も
相談していたのです。それが、今日は村上との関係を、むしろ誇らしげに咲江は語っているのです。

「どうしたの咲江…、
村上さんとは別れるべきだと・・.、
優しい旦那様を裏切っているのがつらい・・・と、
悩み・・、悲しんでいたのは・・、咲江だよ…」

「そうだよ・・」

「なら…、
旦那様が素晴らしい変身を遂げたのだから・・・、
もう・・、村上さんに頼る必要はないでしょう…
村上さんだって・・、
あなたが居なくなっても、それほど不自由しないと思う…」

「確かに・・・、そうだった・・、
一ケ月前までは・・、千春の言う通りだった…
でも・・、事情が変わったのよ…」

「どんな事情なの…」

「ゴメンナサイ…、
千春にさえ・・、
まだ・・、その事情を言えない・・
いずれ、その時が来たら、
私の中で、気持ちが固まったら…・
千春には、真っ先に伝える・・、
それまで・・、待ってほしい…・・」

「・・・・・・・」

「ただ・・、これだけは言える…、
私と、彼の仲は・・・、
以前とは比べ物にならないほど、
深く、強くなったのよ・・」

「・・・・・・・・」

千春の説得で咲江が村上と別れると決断するならそれが一番で、その可能性も十分高いと千春は由美
子たちと話し合っていたのです。そして、千春は咲江を説得できると、密かに自信を持っていたので
す。ところが、いざ話し合ってみると、以前より咲江の気持ちは強固になり、村上への思いがより深
く、強くなっているのです。

千春は知りませんが、経営している会社の倒産騒動で、一時的性不能に陥った村上を助け出した実績
が咲江を変えたのです。咲江なしでは村上は生きていけないとまで思いこんでいるのです。これで完
全に、村上の愛を勝ち取ったと自信を持っているのです。その強気な姿勢に、事情が判らない千春は
驚いているのです。それでも千春は、この場でその事情を・・、咲江と村上の仲が深く、強くなった
事情を・・、無理には聴きだそうとはしませんでした。咲江が千春の説得を受け入れないことは計画
に織り込み済みだったのです。

千春は決断を下しました。この場でこれ以上、咲江と言い争っても、千春の力では咲江を説得して、
村上と別れさせることは不可能で、これ以上の深追いは止めて、次の作戦を始動することにしたので
す。


[49] フォレストサイドハウスの住人達(その20)(673)  鶴岡次郎 :2018/03/15 (木) 14:49 ID:t5eylsH2 No.3101
人が生きていく中で、「あの時・・、ちゃんと話しておけば…、
私の人生も変わっていたかもしれない…」と、思うことが、一つや、二つあるものですが・・、
この時の咲江にも、そのことが当てはまります。

経営する会社の倒産のショックで、一時的性的不能に陥った村上を、献身的に支え、見事復帰させた
咲江の愛情物語を千春に話せば、感動した千春は、咲江と村上の仲を裂く計画を放棄して、二人の仲
を支援する側に立ったと思えるのです。そうなれば、由美子演出・主演のドラマの幕が開くことがな
かったと思います。
しかし、現実には、咲江はかたくなに何も話さず、千春もそのことを聞こうとせず、計画通り、村上
と咲江の仲を分断する作戦、由美子演出・主演のドラマが開幕することになるのです。

由美子が書いた台本に従って、千春は咲江の挑発にかかりました。

「私は・・、村上さんには本命の女が居ると思う…、
可愛そうだけれど・・、
村上さんにとって、咲江は遊びの対象でしかないと思う…」

「・・・・・・・」

もう・・、咲江は反論しません、この話題で千春と口論するつもりがないのです。それほど咲江は村
上との関係に自信を持っているのです。咲江の態度には余裕があります。千晴も引き下がるわけには
行かない訳があるのです。女の誇りと意地を掛けたぶつかり合いが始まったのです。

「これほど言っても…、
村上さんの唯一の女だと・・、
咲江は言い張るのね…」

「うん・・・」、

「私もプロの女だから・・・、
その誇りと意地にかけて、はっきり言わせていただくわ‥、
村上さんのナンバー・ワンの女は別に居る・・
咲江はただもてあそばれている便利な女だと思う・・・」

「千春がその道に精通していることは認めるけれど・・・、
私は当事者だよ・・・、
村上さんと私の関係は永遠だと・・、
当事者の私がそう思っているのだよ・・・、
千春が何と言おうと・・・、
この一点だけは譲れない・・・」

「判った…、
どちらが正しいか…、
村上さんの身辺調査をして確かめない・・?
幸い私の事務所にはいろいろな調査をする専門スタッフが居るから、
その人に頼めば簡単に村上さんの相手が見つかると思う・・、
どう・・、やって見る…」

「うん・・・・・・」

由美子が千春に伝授した揺動作戦成功です。千春の挑発に咲江が見事引っかかりました。

「多分、数日で彼の浮気の尻尾を掴んで、連絡をしてくれるはず・・、
その時は、男女の現場に咲江に乗り込んでもらうことになるけれど・・、
構わないかしら…?」

「うん・・、いいよ・・・
でも・・・、この先、一ケ月の間・・・・、
何も起こらなかったら・・、
今度こそ、私たちの関係に口を挟まないと約束してね‥」

「判った…」

咲江も、千春も自信満々です。こうして、由美子演出・主演のドラマが幕を開くことになったのです。


[50] 新しい章へ移ります  鶴岡次郎 :2018/03/15 (木) 15:30 ID:t5eylsH2 No.3102
新スレを立て、新しい章へ移ります。じろー


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