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フォレストサイドハウスの住人達(その17)

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2017/02/21 (火) 16:08 ID:jVjgatjw No.2962
 国立の研究所に勤める坂上夏樹と咲江の夫婦は、結婚10年目を迎え、ある危機に来ていました。
ひょんな縁で咲江が遊び人である村上総一郎、55歳と男女の仲になったのです。村上は銀座で小規
模ながらも家具、備品などの卸会社を経営している人物で、なかなかの遊び人なのです。夫しか男を
知らなかった咲江は村上のテクと魅力にすっかり溺れこんでしまいました。二人の仲は一年余り続い
ているのです。

当然のことながら、咲江は悩みました、それでも村上から離れることができないのです。坂上と別
れ、独身である村上と暮らす道さえ考えるほどになっているのです。かろうじて咲江が坂上家に留
まっているのは、幼い二人の子供ことと、今まさに正念場に来ている夫、夏樹の研究活動を阻害した
くない気持ちがあるからなのです。

咲江の親友である、浦上千春は親しくしている由美子と愛に咲江の問題を相談したのです。坂上夏樹
にセックスの技を教え込み、彼の力で咲江を村上の色地獄から救い出す作戦を女三人は計画し、実行
に移しました。

坂上夏樹に色事を教え込む担当に千春がなりました。夏樹は素晴らしい才能と驚くほどの男根に恵ま
れていました。わずか二時間余りの訓練で夏樹はその素晴らしい能力を生かし、その道ではベテラン
である千春を十分に参らせるほどに成長したのです。

この夏樹の姿を見て、由美子たち三人の女たちは、計画の成功を予感していました。残された課題は
咲江が村上と切れることです。凄い男に変貌した夏樹に毎日抱かれていれば、早い段階で、咲江は村
上と切れるはずだと、時間の問題だと、誰もが確信できたのです。

この章では、村上の色地獄からなかなか這い出ることができない咲江と、由美子達女三人の活躍を描
きます。相変わらず、これと言って特徴のない市民たちが織り成す風景を描きます。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その11)』
の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。    

また、文中登場する人物、団体は全てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきます。
卑猥な言葉を文脈上やむを得ず使用することになりますが、伏字等で不快な思いをさせないよう注意
しますが、気を悪くされることもあると存じます。そうした時は読み流してご容赦ください。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字余脱
字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるようにしま
す。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した当該記事を読み直していただけると幸いです。

・〈(1)2014.5.8〉 文末にこの記事があれば、この日、この記事に1回目の手を加えたことを示
します。
・〈記事番号1779に修正を加えました。(2)2014.5.8〉 文頭にこの記事があれば、記事番号1779
 に二回目の修正を加えたことを示し、日付は最後の修正日付です。ご面倒でも当該記事を読み直し
ていただければ幸いです。


[28] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(579)  鶴岡次郎 :2017/04/21 (金) 15:53 ID:jVjgatjw No.2993

「もしかすると・・、
あの最中に・・
おしっこを掛けてほしいと彼が言ったの…?」

「うん…、
これも、千春が教えたことでしょう…、
悪いんだから…・」

「・・・で、咲江はどうしたの…?」

「やったわよ・・・、
いっぱいかけてやった…、
奴はすごく喜んで・・、
驚いたことに、ごくごく飲んでいた…・」

「咲江はどう思ったの…、
気持ちよかったでしょう・・」

「最初は嫌だった…、
でも・・、彼の喜ぶ姿を見たくて・・・、
要求されれば、二回目以降も断らなかった…」

「さすが咲江ね・・、偉い・・・、
何度かやっているうちに、
慣れて・・、楽しくなったでしょう…」

「うん…、
今では、普通に楽しめるようになった…
それでも・・、異常なことをしているという気持ちが抜けない・・
おおげさに言えば、ちょっとした背徳感を感じている・・・」

「そうかな・・、決して珍しいことではないよ・・・、
私の知っている普通のご夫妻…、
上品な奥様と会社重役の旦那様だけれどね…
その旦那様はおしっこを被るの大好きらしい…
私のお客様の中にも、おしっこを好む人はかなりいる…・」

「そうなんだ…、
ああ・・・、良かった…、
普通の行為なんだ…」

恥ずべき背徳行為でないと判り、咲江がうれしそうな表情を浮かべています。

「思い切って千春に質問してよかった…、
私たち夫婦は変態趣味なんだと、ずっと後ろめたい気分だった…」

この時まで、その変態的な行為に溺れながらも、こんなことはしてはいけないことだと、咲江は心を
痛めていた様子なのです。


[29] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(580)  鶴岡次郎 :2017/04/24 (月) 16:19 ID:0xQ/4Vt6 No.2994

「この際だから・・、
いろいろ、千春に聞こうかな……」

「いいわよ・・・、
その道のことなら、ちょっとは自慢できる知恵があるから・・」

笑いながら千春が答えています。

「実はね‥‥、主人たら・・・・
すごく恥ずかしい下着を着せたがるの…・、
肝心のところが全部穴が開いた下着なのよ…」

「そんなの・・、普通だよ・・・、
男ならだれでもそうだよ・・」


「そうなの…、知らなかった…、
私・・、そんな下着の存在さえ知らなかった…」

「男の人の間では・・、
ゴルフ大会の景品にそんな下着を準備したりするそうよ・・」

「そうなの…」

千春の言葉で咲江はかなり安心した様子ですが、まだ引っかかることがありそうな雰囲気です。

「実はね…
家で着せるだけでないの・・、
夜・・、公園で・・・、
その下着姿で歩かせるのよ‥‥
変でしょう…・?」

「少しも変じゃないよ‥‥」

「変だよ…」

「咲江は・・、どうなの…、
嫌々・・、下着姿を曝したの…」

「ううん・・」

恥ずかしそうに首を振っています。

「そうでしょう・・、
咲江も興奮したのでしょう…、
だったら、いいのよ・・、
夫婦で楽しんでいるのだから・・・、
少しも変じゃない…」

「そうなんだ…
千春が言うんだから・・・、
そうなんだね…」

その道に詳しい千春にはっきりと言われて、咲江はようやく納得した様子です。

それから後が大変でした。体位のこと、性感帯のこと、剃毛のこと、男根への唇の使い方・・、など
など、咲江の興味は尽きません。立て続けに質問してくるのです。その一つ一つに丁寧に千春は答え
ました。


[30] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(581)  鶴岡次郎 :2017/04/25 (火) 14:17 ID:ftmZjoO. No.2995

最初は咲江との会話を楽しんでいたのですが、次第に重苦しいものが千春の胸の中に広がり始めまし
た。会話自体はなまめかしい、楽しいはずのものなのですが、千春は次第に口数が少なくなりまし
た。段々に咲江と会話をすることが苦痛になって来たのです。その訳を千春自身でさえはっきり理解
できていないのです。

一方咲江は、千春となまめいた話をするのが楽しいようで、おしゃべりはとどまる気配がありませ
ん。淫蕩な表情を浮かべ咲江の質問が続きます。

「主人の持ちモノは相当大きいと思うけれど…、
実際は、どうなの…?
私は村上さんしか知らないけれど・・
千春なら、かなり客観的に評価できるでしょう・・・」

「大きいよ、太さも、長さも、超一流だよ・・」

「千春が保証するのなら、本物だね・・、
うれしい・・」

咲江は嬉しそうです。努めて笑みを浮かべていますが、千春の表情は硬いのです。しかし、興奮して
いる咲江は千春の変化に気が付いていません。

「サイズが超一流で・・・
千春直伝のテクを覚え込んだ男…、
夫はすごい男に変貌したと思えるけれど・・、
どうなの…?
旦那様と比較してどう…?
愛人の・・、ああ・・佐王子さんと比べたらどうなの…」

楽しそうに咲江が質問しています。夏樹の体を知っているのは自分と千春だけで、千春にも夏樹の話
題は興味があるはずだと咲江は思いこんでいる様子です。千春の心の内を言えば、咲江とは夏樹の話
題をこれ以上続けたくない気持ちになっているです。堪えきれなくなった千春はついにそのことに触
れました。

「ああ・・、咲江・・、勘弁して・・、
咲江の前でご主人を話題にするのは・・、
これでも結構つらいのよ・・・」

「エッ・・、
どうして…・・?」

「だって・・、そうでしょう・・・、
どんな理由があるにせよ、
咲江の旦那様を寝取った事実が私にのしかかるのよ・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

意外なことを聞くという表情で咲江が黙って千春を見つめています。


[31] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(582)  鶴岡次郎 :2017/04/26 (水) 15:57 ID:lHbH97.M No.2996

「無邪気に夏樹さんのことを語る咲江を見ていると・・・、
こんないい友達を裏切った自分自身が、段々にひどい女に思えてくる…。
咲江の優しい言葉、一つ一つが私の心に突き刺さる気がする‥。
むしろ・・、酷い言葉でののしられた方がいいとさえ思える…。
勝手なことを言っていると判っているけれど…、本当に、辛い・・」

思い切って胸の内を吐き出しました。驚いた表情で咲江が千春を見ています。

「あら・・ら・・、そうだったの…、
少しも気が付かなかった…
ゴメンナサイ・・・
主人のことでは千春に感謝こそすれ・・、
非難する気持ちは少しもないのよ・・」

「判っている・・・・・・
咲江の気持ちは判っている・・、
でも、私は自分自身が許せないの…」

「そうなんだ…、
家の人と寝たことで、千春は自分自身を責めているのね…・・。
判った・・、千春の気持ちは分かった…、
もう・・、この話はしない・・」

「ありがとう・・、
そう言っていただけると嬉しい・・
この埋め合わせはきっとするから…・」

うっかりと千春が口を滑らせています。

「埋め合わせをするって…、
どんな埋め合わせをしてくれるの…?」

楽しそうに咲江が質問しています。

「どんなって…、
咲江がしてほしいことよ・・、
私が出来ることなら、何でもするわ・・・」

「何でもいいの…?
実はね・・・、本当のこと言うとね・・・、
千春の濡れたアソコに、夫のアレが入ったと思うと・・、
千春が憎いと思う気持ちを捨てきれないの…・」

「・・・・・・・・」

力なく千春が頷いています。やはりそうなんだと、納得しているのです。

「同時に・・、
千春と夫を共有できて良かったと思う気持ちもあるの…、
私自身も驚いている奇妙な感情だけれど、本当のことだよ…
それに・・、主人の才能を花咲かせてくれた・・…」

「・・・・・・・・・・・」

優しい咲江の言葉に千春は泣きそうになっています。

「だから・・・、今度のことで・・、
千春に埋め合わせしていただかなくてもいいのだけれど…、
どうしてもというのなら・・、お言葉に甘えてもいいかな…・」

「どうぞ‥」

からかうような表情を浮かべた咲江をにらみつけて、千春が言葉を吐き出しています。


[32] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(583)  鶴岡次郎 :2017/05/08 (月) 15:56 ID:iWOXxzf6 No.2998
「なら・・、旦那様を貸してほしい・・」

「エッ・・、家の旦那を…」

「そうだよ・・、千春の旦那様を貸してほしい。
あなたのように、二回でなくてもいい、一回で良い・・」

「家の旦那に抱かれたいの…・?」

「そう・・、文字通り、私のアソコに埋め合わせするの…、
ああ・・、下品なこと言ったわね・・・」

「仕方がないわね・・・、
元はといえば、私が悪いのだから・・・
主人でいいのなら・・、いつでもいいよ・・
でも・・、一回きりだよ…・」

苦しそうの表情を浮かべ千春が答えています。そんな千春を咲江が見て笑っています。

「ああ・・、冗談よ、冗談…、
本気にしないで…・、
そんなことするはずがないでしょう・・、
千春は私たち夫婦のために身を捨ててくれたのだから、
感謝こそすれ、埋め合わせを要求することなど絶対できない・・。
ゴメンナサイね・・、つい調子に乗って・・」

真剣な表情で咲江が謝り、深々と頭を下げています。

「千春…、
私・・、本当に幸せなの…
千春をからかう気分になれたのも久しぶりよ・・、
あなたのおかげよ・・、感謝している…。

夫婦間のHが充実することで・・、
こんなに生活が変わるとは思いもしなかった・・・」

瞳を濡らして咲江が話しています。千春の旦那を貸してほしいと言って困らせるいたずらも、気楽な
気分だからできることで、以前のような追い詰められた状態では、冗談の一つも口にできなかったの
です。

「私・・、今はとっても幸せよ・・・、
この気持ちをぜひ千春に伝えたいと思って、
今日・・、声をかけたの…・、

いろいろ・・、言ったけれど…、
千晴には感謝の言葉以外、思いつかない…」

「そう言っていただけると、
私も苦労した甲斐がある…」

「抱かれる度に…、気が狂うほどいかされて…、
声さえ枯れて、全身愛液で濡れたまま・・・、
気を失ってそのまま寝入り・・、
朝、セックスの香りに包まれて目覚めた時・・・、
その幸せ感…、
全身に残るけだるさでさえ快適なの…、
坂上の妻に選ばれ・・、
私は・・、恵まれているとしみじみ感じるの・・
幸せだわ…・」

つい二ヶ月前までは、淡白な旦那のセックスに絶望して、他の男とのセックスに溺れていたことを忘
れたように、うっとりした表情でのろけている咲江です。


[33] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(584)  鶴岡次郎 :2017/05/10 (水) 15:37 ID:5tU8d6dk No.2999
ここで突然・・、笑みを浮かべた表情を消し、少し改まった表情に戻しました。咲江の表情の変化に
気づいた千春が、少し不安そうにして咲江を見ています。その場に緊張した雰囲気が広がっていま
す。

「このことは言わないでおこうと思っていたのだけれど・・・、
やはり・・、言おうと思う…、
もやもやした気持ちを抱いているのがつらいの・・・」

千春は少し構える様子を見せています。

「私の嫉妬心から出た言葉だと思うかもしれないけれど、
決してその感情だけに支配されたわけではない…、
この先も、千春とはいつまでも、今のままの親友でいたいから・・・、
今感じていることを千春に知ってもらいたいと思ている…」

ここまで聞いても、咲江が何を言い出すのか千春には見当がつかない様子です。いえ・・、もっと正
確に言えば、千春にはある程度まで咲江の心の内が見えて始めているのです、しかし、そのことを認
めるのがつらくて、千春は自分の心に芽生えた不安を無理やり消し去っているのです。それでも、姿
勢を正して、聞く体制を作っています。

「異常なほど潔癖症である夫が、とにかくソープへ武者修行に出る決心をした。これは画期的なこと
で、よく我慢して、決断してくれたと私は感謝している・・・」

千春が軽く頷いています。やはりそのことに触れてきたと・・・・、千春の中に黒雲のように不安定
な気持ちが広がっています。

「でも・・、私には判るの…、
彼の頑張りはここまでが精いっぱいだったと思う…。
お店に行き、女のいる部屋の扉を開けるまでが、彼の限界だったと思う・・・」

確信をもって咲江が言いきっています。

夫婦の危機を回避するため、自らを鍛えるため坂上夏樹はソープを訪ねる決意を固め、ソープへ出向
き、ソープ嬢の部屋の扉を開けるところまで行ったのです。夏樹をよく知る、妻、咲江は夏樹の行動
はここまでだと言い切っているのです。

「当然のことだけれど、私は一度もソープへ行ったことがない・・、
でも・・、ある程度までは想像がつく…、

いかにもそれらしい、スケベーな調度品・・、
あたりに充満するセックスと、女のすえた匂い・・、
何人もの男がその部屋で精を吐き散らしたに違いないのです・・。

正直言って・・、
その部屋で女に触れるなど、彼には到底無理だったと思う…
部屋に入ったものの、そこかしこに生息する細菌のことを思って、
そこから直ぐに逃げ出したくなったと思う…・・」

「・・・・・・・」

静かに話す咲江の言葉を千春は冷静に受け止めていました。ソープのことをそんな風に言う咲江のこ
とが少し気に障るのですが、当たらずとも遠からずの内容ですから、反論はもちろん、言い訳も言わ
ないで、黙って、咲江の言葉を受け入れているのです。

「では・・、何故…、
彼はその部屋に留まったか…・、
その訳は…・・、
それは・・、その部屋の主があなただったからよ・・・、
千春がそこに居たからだと思う・・・」

「・・・・・・・・」

笑みを失った二人の女はじっと見つめ合っています。この展開を千春は予想できていたようで、静か
に聞いています。もちろん、咲江も冷静です。二人の女は顔をそらさず視線を静かに合わせていま
す。


[34] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(585)  鶴岡次郎 :2017/05/11 (木) 10:27 ID:KDMvOYwk No.3000

「公園で二家族が出会ったことがあったでしょう…、
あの時以来、主人は千春のことを時々話題にするのよ・・・、
あの人が・・、それまで他の女を話題にすることは・・、
結婚以来・・、一度もなかった…」

「・・・・・・・・」

咲江は静かに語っています。千春は視線を宙に漂わせています。

「思春期の少年のように澄んだ心を持っている人だから・・・、
あなたへの思いを私にさえ、隠すことができないのよ…
それは・・、いじらしいと思えるほど一途に思い込んでいるのよ…」

「・・・・・・・・」

ここで笑みを再び浮かべて咲江が千春の表情を見ています。咲江の微笑みが本物だと千春には直ぐに
判りました。

咲江に何と答えるべきか、千春は迷っていました。それでも、千春はうろたえることなく、静かな表
情を必死で作っていました。勿論、夏樹が千春に熱い思いを寄せていることを千春は最初から察知し
ていました。公園で初めて出会った時から、夏樹の千春を見る視線の強さは異常だったのです。

千春への恋心に咲江が気付いてくれないことを祈っていたのですが、咲江はそんなに甘くなかったの
です。

一方では、彼に抱かれて、彼のすごさを肌身で感じ、少年のような一途な思いを知るにつけ、千春の
気持ちも夏樹に大きく傾いているのです。この気持ちは咲江に未だ悟られていないはずなのです。夏
樹への熱い思いを咲江には悟られたくない、それだけを千春は考えているのです。

「部屋にあなたが居るのを知った彼は驚きながらも、
天に上る気持ちになったと思う・・・・。
だって…、あんなに憧れていた女が目の前に居て・・・、
おそらく・・、ほとんど裸に近い姿なのでしょう・・、
彼ならずとも、男なら誰だって・・、
その場を去ることが出来ない‥‥」

「・・・・・・・」

「豊かな乳房、淫らな股間、そのすべてが彼を有頂天にさせたと思う。
知らない女を汚い物と考える潔癖症など一気に吹き飛ばされたと思う。
あなたに言われるままに、あなたを抱き、あなたのアソコに口をつけ、
果ては、あなたのおしっこを浴び、喜びの声を上げるようになったのだと思う…。
男なんて・・、所詮そんなものだと思う…・」.

「咲江…、私は・・・、何と言われても仕方ないけれど…、
そんな言い方をしては、旦那様が可哀いそうだよ・・」

「ゴメン・・、言い過ぎました…、
少し・・、妬いているのかな…」

素直に咲江が頭を下げています。


[35] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(586)  鶴岡次郎 :2017/05/16 (火) 11:37 ID:1qUjlNAw No.3001

「あまりにストイックな研究生活を続けた結果、
セックスに興味を持てない体になっていたの…・、主人は…」

「・・・・・・・」

坂上夏樹は性的不能に近い状態だったと・・、夫婦だからこそ知りうる情報を咲江は千春に告げてい
るのです。あまりに衝撃的な咲江の発言に千春はただ驚いて咲江の顔を見ています。

「長い間・・・、私を抱くことが出来ないでいた…・、
多分…、
千春以外の女がいくら頑張っても・・、
主人を立ち直らせることはできなかったと思う…、
これは間違いのないことだと思う…」

「・・・・・・・・」

「もし・・、あの部屋に千春以外の女が居れば・・・、
彼女が若くて、飛びっきり、きれいな娘(こ)でも・・・、
扉を閉めて、すごすごと、その場を立ち去ったと思う…。
知らない女を抱くことなど・・、
彼にはあまりにハードルが高すぎるから・・・」

「・・・・・・・」

千春はただ黙って聞いているだけです。咲江の発言は続きます。

「そうなれば、さらに大きな失意を・・・、
多分決定的なダメージを・・、彼は受けることになり・・・・、
私たち夫婦は崩壊へ向けて、転がり堕ちたと思う…」

「・・・・・・・」

咲江を見つめる千春の瞳に涙があふれ出ています。そこまで咲江が追い込まれていたことに千春は気
が付かないでいたのです。

「悔しいけれど・・、
私にはできないことを千春はやり遂げてくれた…」

「・・・・・・・」

千春は何も答えることができません。ただ、じっと咲江の顔を見ていました。咲江も静かな表情で千
春を見ています。

「あなたを抱いて・・・、
主人は男を取り戻したのよ・・、
完全に・・、凄いほどの男に変身した…・」

「・・・・・・」

こっくりと千春が頷いています。

「主人が女アサリを続けていることは知っている…、
でも・・、私を大切にしてくれるから、黙っている…、
ただ・・・、一つ・・・、心配なことがある…」

「・・・・・・・」

咲江が何を言い出すのか千春は気が付いていました。


[36] フォレストサイドハウスの住人達(その17)(587)  鶴岡次郎 :2017/05/19 (金) 14:38 ID:6iCUD7eg No.3002
「主人は・・・、
千春を忘れることが出来ないでいると思う…・
悔しいけれど、主人にとって、千春は特別な人なのよ…」

「そんなことはない‥
商売女とお客の関係よ・・・、
ご主人には・・、私はただの娼婦よ・・・」

思い切り彼女自身をさげすんだ言葉を出している千春です。その分、坂上春樹への思いが強いのです
が、それには気が付いていないのです。

「ううん・・、
私には判るの…、
彼自身も・・、いけないことだと判っていても…、
千春への気持ちを、私の前でも隠すことが出来ないのよ…」

「・・・・・・・・・・・・・・」

一瞬、寂しそうな表情を咲江が見せています。不注意な言葉は出せないと千春はじっと口を閉じてい
ます。それでもこのままではまずい方向へ展開すると思ったのでしょう、重い口を開きました。

「二度目にお店に来た時・・・」

最初の言葉を口に出し、次の言葉を考え、千春は慎重に話し始めました。

「ご主人は・・、お別れの挨拶に来たと言った…。
そして・・・、二度とこの店には来ないと断言した・・・、
修行のつもりでやっていた女遊びもきっぱり止めると言った…」

「そうなの…、
そんなことをあなたに宣言したの…」

「うん・・・、
正直言うとね・・・、
そこまで割り切らなくてもいいのに・・と、私は思った」

咲江の表情に明るさが戻ってきたことを確かめ、千春は喜んでいました。

「彼はきっぱり宣言した…。
これから先は、ここで起こったことはすべて忘れてほしい・・・、
顔見知りのご近所同士として付き合ってほしいと・・、彼は言った…。
勿論・・、私も異論はないと答えた…」

言葉を選びながら千春は説明しました。

「そう…、
そんなことを言ったの…
彼なりに、ケジメをつけたのね…・」

「そうだと思う…、
女遊びより、研究が大切だとも言っていた…。
私は大切な顧客を失って残念だけれど…、
他にもたくさん御客はいるからね・・、
一人や、二人、お客が逃げても構わない・・、ふふ…」

「よく言うわね…、
でも・・、もし・・、もしもよ・・・、
あなたのことが忘れきれなくて、主人がお店に来たら・・・、
相手するのでしょう…?」

「・・・・・」

そう言ってじっと咲江が千春を見つめているのです。千春は言葉を出せないでいました。親友が真剣
に問いかけているのです。心にかなわない返事はできないと千春はじっと彼女自身の心の内を覗き込
んでいるのです。そして、ゆっくりと口を開きました。

「彼が来たら・・・、
もし・・・、彼がお店に来たら‥‥、
追い返す‥・・、スタッフに頼んで玄関払いする…・、ふふ…」

「・・・・・・・」

咲江の瞳にみるみる涙があふれ出ていました。千春が手を差し出し、咲江がその手をしっかり握って
います。見つめ合い、二人の女はそのままの姿勢でじっと手を握り合わせていました。

〈彼を立ち直らせてくれたことには感謝している・・・・。
でも・・、これから先は、主人には手を出さないでほしい…
千春には遊びでも・・・、
あなたを抱けば主人は深みに嵌って行くと思う・・
悔しいけれど…、千春にはそれだけの魅力があふれている‥‥、
お願い…、主人には手を出さないで…・・〉

〈約束する…、
ご主人には絶対手を出さない…〉

〈ありがとう・・〉

咲江がもう一度強く千春の手を握りしめました。千春も咲江の手を強く握りなおしています。千春の
心の言葉を聞いて、咲江の頬に一筋の涙の跡が出来ています。千春の手が温かいと咲江は感じ取って
いました。


[37] 新しいスレを立てます  鶴岡次郎 :2017/05/19 (金) 14:44 ID:6iCUD7eg No.3003
新しい章へ移ります。ジロー


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