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一丁目一番地の管理人(その30)

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2012/08/10 (金) 17:59 ID:CXwBGk8c No.2280
由美子が介入した効果もあって、警察庁参事官、伍台と元妻喜美枝の仲はどうやらもとの鞘に納
まる雰囲気です。この事件に関連した真黒興産の関係者、そして、竹内寅之助、敦子の動向を
追ってみます。最期までご支援ください。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その
11)』の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。    

また、文中登場する人物、団体は全てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきま
す。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字
余脱字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるよう
にします。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した記事を読み直していただけると幸
いです。

  ・ 文末に修正記号がなければ、無修正です。
  ・ 文末に(2)とあれば、その記事に二回手を加えたことを示します。
  ・ 1779(1)、文頭にこの記号があれば、記事番号1779に一回修正を加えたことを示します。
                                      
                                      ジロー


[2] 一丁目一番地の管理人(446)  鶴岡次郎 :2012/08/10 (金) 18:35 ID:CXwBGk8c No.2281

二人の女(2)

土手の森組員殺人事件の犯人が逮捕されたニュースは、その一時間後には、真黒興産の井上社長
に届いていました。直ぐに、緊急秘密会議が招集されました。出席者は井上社長、秘書室長、横
山和夫 そして謎の男、秘書室勤務の木島信夫です。この秘密会議の正式メンバーであるレスト
ラン「蘭」の雇われマダムである工藤桜子の姿が見えません。

「意外な犯人だったネ・・・、
てっきり竹内の犯行と思っていたが・・・」

井上が切り出しました。

「ハイ・・、
桜子マダムと圧村が竹内を脅し、金を受け取っていたことに気がつきませんでした。
もっと早く私がこのことに気付いていれば、こんな大騒ぎにならなかったのです。
申し訳なく思っています・・・」

横山秘書室長が井上に深々と頭を下げています。井上はただ頷いています。

「竹内と敦子は一緒に逃げているのだね・・、
こちらの準備が完了するまで、彼らを匿(かくま)うと言っていたが、
その作戦は上手く行っているのか・・」

井上が木島に向かって質問しています。

「ご存知のように、偶然敦子が死体の第一発見者となって、警察が彼女に接触してきました。捜
査本部は彼女に何の疑いもかけませんでしたが、伍台参事官が乗り出してきて、彼女と竹内が愛
人関係にあることを知り、彼女が組織の一員である可能性を感じ取った様子でした。このあたり
はさすがに伍台だと思いました」

木島が低い声で、誰の顔も見ないで話しています。彼を使いこなしている井上でさえ、木島が何
を考えているか判らないことが多いのです。

「社長からご指示を受けて、竹内の会社を倒産させ、夜逃げに追い込みました。
敦子には50万円を与えて、無条件で組織から抜けることを条件にして口封じしました。
私の計画ではこの時点で敦子は竹内と切れると読んでいたのですが、案外根性の座った女で、亭
主を捨てて、落ち目の竹内についてゆく決心をしたのです」

木島は淡々と話しています。

「竹内と敦子は逃亡生活を経験して、闇の組織の恐さが身に染みて判ったはずです。これから先、
更に手を打って口止めしなくても、彼らが積極的に警察に協力することはないと確信しています。

不安の種を完全に消す手も考えられるのですが、彼らには伍台の目が張り付いていると思います。
ここはむしろ危険を犯すより、このまま泳がせておき、彼らが何もしゃべらなかったら、私達が
何もしないことを、彼らに思い込ませる作戦に切り替えるのが得策だと思っています・・・」

「・・・・・・・・」

木島が説明し、井上がただ、木島を睨んでいます。木島の方針を了解しているわけではないので
すが、かといって、井上にも良いアイデアが無いのです。

「他の女や、彼女達のお客に関してですが、あの事件発生直後、一週間ほどかけて、私と桜子さ
んが手分けして、女達とお客に直に会い、こちらに協力せざるを得ないように、脅しをかけ、縛
り付けました。

この時点で、たとえ、竹内と敦子が何かを洩らしても、他の女達の筋からは、何も情報が流れな
い手は打てたと確信しました。その後、警察関係の筋をつついて情報を集めて確認したところ、
女達の存在は一切当局には知られていません。勿論、伍台も何も掴んでいない様子です」

木島の説明は続きます。抱えている売春婦と、そのお客はそれぞれ、30名近くいるのです。彼
らから、組織の秘密が洩れる心配もあったわけですが、これについては、完璧な対策を完了した
と木島が報告し、井上が大きく頷いています。

「それと、更に念のため・・、
女を使った情報収集活動は、一年ほど止めるつもりです・・。
情報の収集は別の方法で何とかカバーするつもりです・・・」

息のかかった売春婦を企業の重役に派遣し、産業スパイをする活動をしばらく自粛すると木島は
言っているのです。その言葉に井上はようやく満足した様子で、コックリ頷いています。

「判った・・、竹内と敦子のことは忘れよう・・・
たとえ、竹内と敦子から何かが漏れ出しても、
何も心配ないのだね・・、よくやってくれた・・。

ところで、桜子はどうすることにしたのだ・・・」

「香港へ送り出しました・・。
二年ほど、あちらの店を任せることで話は付いています。
もちろん、『蘭』は閉じました・・・」

井上が頷いています。

「今回も、何とか、伍台の手をかいくぐることが出来た・・。
しかし、奴のことだ、絶対あきらめていないはずだ・・」

井上は宙に挑戦的な視線を向けていました。その視線の先に、端正な伍台の引きしまった顔が井
上には見えていたのです。


[3] 一丁目一番地の管理人(447)  鶴岡次郎 :2012/08/11 (土) 15:48 ID:VfNB8sK2 No.2282
ここは九州の大都市にある浦野君江のアパートです。君江は二十代の時、市内全域に縄張りを持
つ的屋組合『木の葉会』の先代組長に拾われ、最初は一般組員同様屋台の商売に出ていたのです
が、彼女の才能を認めた先代組長の意向で、組の経理、購買を一手に任されるようになりました。
現組長の河野喜十郎の代になっても、君江は大切にされ、組の経理・購買を担当を続け、組長の
右腕として、隠然とした力を持つようになり、組にはなくてはならない存在になっているのです。

彼女の部屋は繁華街に近い所に立っている8階建の古いビルの4階にある2DKの住まいです。
この住まいは組員の夫が残した唯一の財産で、夫の死後、君江はここで20年ほど女一人で暮ら
してきたのです。

12畳ほどの居間に置かれた布張りのソファーに腰を下ろし、中年の男がコーヒーを飲みながら
新聞を読んでいます。君江は居間続きのキッチンで朝食の準備をしています。何処から見ても、
中年夫妻ののんびりとした朝の光景です。

病室で敦子と別れた竹内は、退院後誘われるまま、君江のアパートに潜り込み、そのまま同居を
続けて、もう半年近く経っているのです。


敦子と別れたその直後から君江と暮らすようになったわけですから、一般社会の常識では、この
関係はとうてい受け入れられないのですが、的屋仲間内では男女が本能的に結びつくことに理解
があり、更に組内で力を持っている君江が決めたことですから、誰も竹内と君江の関係を表立って
非難しませんでした。

現組長の河野喜十郎は70歳を越えていて、かねてから後継者に跡目を譲りたいと予ねて考えて
るのですが、なかなかこれと思う人物がいなくて困り果てているのです。『君江が男なら、文句
ないのだが・・・』、彼の意中の人は君江なのですが、彼が言うとおり、女組長実現には越える
べきハードルが多くて、河野としても次の足を踏み出せないでいるのです。


君江と一緒に暮らすようになった竹内は、彼女の手助けを積極的にやるようになりました。元々、
大手商事会社の部長を勤め、事情があって退社して、自ら貿易会社を興し、それなりの成果を上
げる会社にまで成長させた実績を持つ竹内ですから、300名を越える組員を持つ、木の葉会の
経営を理解するのは簡単でしたし、経営の問題点を数日の内に探し出していました。

的屋の商売は紛れもなく小売業で、商品や材料の仕入れのタイミングとその仕入れ量が商売の儲
けに大きく影響するのです。君江と組長は商品や材料が不足して、組員の商売を止めることを何
よりも恐れていて、大枚を払って倉庫を借り、常時、商品や材料をストックする経営方針を長年
採用していたのです。勿論、倉庫内の品は全部現金決済で代価を支払済みなのです。

竹内は先ず倉庫の賃貸契約を破棄することから始めました。ストックしてあった商品、材料はそ
のほとんどを棄てました。当然、君江は反対しましたが意外なことに組長が竹内の説明を聞き、
竹内の思うとおり組の経営改革を進めることを認めたのです。組長の決断を聞き、君江は納得し
ました。そして、積極的に竹内をサポートするようになったのです。


[4] 一丁目一番地の管理人(448)  鶴岡次郎 :2012/08/12 (日) 16:41 ID:jZ4Z4/j2 No.2283

組長の信頼を得た竹内は直ぐに経営改革に手を染めました。その頃には君江は竹内を全面的に信
用するようになっていて、彼の有力な手足となって働きました。
商品と材料を指定した時間、指定した量を、指定した場所へ届けるよう竹内は問屋筋に伝えまし
た。この購買方針に難色を示す問屋もいましたが、竹内は持ち前の交渉力で大部分の問屋を説得
しました。しかし、最期まで抗った問屋とはあっさり取引を打ち切り、別の問屋に切り替えまし
た。結果として木の葉会創立以来取引していた問屋が数軒切られることになりました。

竹内の経営改革が始まると、問屋筋ばかりでなく、屋台の現場でも混乱が発生しました。商品や
材料が切れたとの苦情が上がり、血相変えた組員が竹内のところへ乗り込んできました。

「竹内さんョ・・・、どうしてくれんだ・・・
せっかく、売れ始めたら、ブツが無いんだよ・・、
こんなこと、いままで一度だって無かったんだ・・・

こんなことをしていたら、稼ぎが無くなり、
お飯(まんま)の食い上げになるョ・・・
どうしてくれんだ・・・」

彼らが竹内に事前申請した仕入見込みがずさんだったため、商品不足が発生したのですが、その
ことは棚に上げ、売り子達は竹内の責任を追及して彼に激しく迫りました。売り上げ高に比例し
て、組員の日当が配分される仕組みになっているので、商品不足で売り上げが落ちると稼ぎが落
ちますから、組員達は必死なのです。

竹内は笑みさえ浮かべて、頭を下げ、一切の言い訳を言わず、一日の稼ぎに相当する額の金を包
み、これを彼らに差し出し、商品が無いなら商売を中断するように伝えました。
竹内が平謝りし、一日の稼ぎに相当する金を差し出すので、組員達は上げた手の下し場所がなく
なり、すごすごと引き下がりました。

こうしたことが数日続きました。それでも、竹内は詳しい説明も言い訳もしませんでした。ただ、
ひたすら金包みを差し出すことに徹したのです。この間、組長は何も口を挟まないで、ただみん
なの動きを見ていました。さすがに、組員達は気がつき始めました。

前日に確りした仕込み量を竹内に伝えておけば、その量は確実に届けられることにようやく組員
たちは気づいたのです。結果として、組員たちから上がってくる売り上げ予算の精度が一週間の
内に、格段に進歩しました。長い売り子経験を持つ人達ですから、天気予報の情報さえ掴めば、
祭礼当日の売り上げを予測をすることはさほど難しいことではなかったのです。

組員がはじき出した正確な売り上げ予算を元に、竹内は商品、材料の買い付けを始めました。購
入量と購入日時が確定していますから、複数の問屋に引き合いを出し、競争入札させる商品が半
数以上を占めるようになりました。勿論購入価格は平均して30%ダウンしました。

こうした経営感覚は商社経営で磨いた竹内ならではのことでした。そして同時に、彼は売り上げ
予算データから売れ筋商品も掴んでいました。売れ筋商品の屋台に最上の場所を与えることにし
たのです。それまではベテラン組員が良い場所をとっていたのです。

この処置で良い意味で、仲間内に競争意識が芽生えました。良い場所を獲得するため、ギリギリ
上限まで売り上げ予算を設定し、その予算達成のため、組員が必死で働くことになったのです。

それまで赤字の脅威にいつも曝されてきた組の台所は一気に潤い始めました。組員への給料も上
昇しました。半年も経つと組長は勿論、仲間内の皆が竹内の実力を認めるようになり、彼の号令
は組の隅々まで行き渡り、即日実践に移されるようになっていたのです。また、日常生活での揉
め事、金銭的なことか、男女関係の縺れがその揉め事の主な原因だったのですが、そうした組員
の揉め事に竹内は積極的に口を出し、的確な判断を下しました。

老齢の組長に代って、他の組織との交渉にも竹内は顔を出すようになりました。この世界での経
験は少ないのですが、商社業務で鍛えた交渉力と頭脳、そして持ち前の度胸の良さで、そうした
交渉ごとも上手くこなすようになり、短い期間に竹内の名前は的屋組長の間に広がりました。

ただ、この世界で経験が浅いことは動かしようの無い事実で、彼の実力を皆が認めながらも、所
詮、竹内は外部の人だとの見方を、仲間達は変えなかったのです。



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