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フォレストサイドハウスの住人達(その10)

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2015/01/13 (火) 15:46 ID:KJbTWW7o No.2636
浦上千春の隣人、佐原幸恵と言う名を聞いて、記憶力にいい読者であれば、この物語の冒頭で紹介した
佐原靖男のことを思い出されると思います。泉の森公園のベンチに肩を落として座る50男を見て、そ
のイケメンぶりと男のすっかり憔悴したに様子に女ごころを揺り動かされ、すっかり彼に同情した由美
子が彼に声を掛け、おせっかいついでとばかりに彼のマンションまで付いて行き、そこで彼の妻幸恵の
失踪を知らされるのです。

佐原靖男が語る通りであれば、幸恵は夕餉の支度の途中で忽然と姿を消しているのです。警察には失踪
届けを出しているのですが、争った跡がないことなどから単純な家出人として警察は受け止めているよう
なのです。

この章では幸恵が失踪に至るまでの経緯を説明し、できれば事件の解決まで見届けたいと思っています。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その11)』
の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。    

また、文中登場する人物、団体は全てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきます。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字余脱
字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるようにしま
す。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した当該記事を読み直していただけると幸いです。

・(1)2014.5.8 文末にこの記事があれば、この日、この記事に1回目の手を加えたことを示しま
す。
・記事番号1779に修正を加えました。(2)2014.5.8 文頭にこの記事があれば、記事番号1779に二
回目の修正を加えたことを示し、日付は最後の修正日付です。ご面倒でも当該記事を読み直していた
だければ幸いです
                                        ジロー  


[2] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(266)  鶴岡次郎 :2015/01/13 (火) 16:12 ID:KJbTWW7o No.2637

幸恵の失踪

フォレストサイドハウスのような高級マンションでは珍しいことですが、ここへ引っ越して来てわずか
な間に浦上千春は隣人である佐原幸恵と急激に親しくなりました。互いに相手のことが気に入ったよう
で、親子ほどの年齢差があるにもかかわらず、実の親子でもここまでは無理と思われるほど互いに心を
許す仲になりました。

潮時が来ると、とめどなく男を求める異常な体のこと、売春のことはさすがに話せませんでしたが、独
身時代の乱れた男関係、そして、最近になって、昔の情夫、佐王子との関係を夫公認で再開したことな
ど、千春は幸恵にすべてを話しました。驚きながらも、決して非難するわけでもなく、幸恵は千春に一
定の理解を示しているのです。

この日も、幸恵は千春の家を訪問しています。今日は佐王子が来る予定日なのです。いつもであれば、
そのことを幸恵に告げ、千春は彼を一人で待つのですが、この日は何か目論見があるようで、彼が来訪
する予定時間まで幸恵を自宅にとどめておきました。

「幸恵さん・・、この人がこの間お話した、主人公認の私の愛人…、
女たらしで、Y市で風俗店を経営しているヤクザさんなの・・・」

とんでもない紹介の言葉に佐王子が苦笑しています。もちろん、以前から聞かされているので、幸恵は
驚いていません。

「佐王子さん・・、この方がお隣の幸恵さん・・。
淫らで、だらしがない私の後見人なの・・、
厳しいけれど、それなりに私の立場を認めて、女の道を教えて下さるの・・・」

幸恵が満面に笑みを浮かべ頭を下げています。佐王子も礼儀正しく対応しています。それでいて、なぜ
千春が幸恵と合わせたのか、そのわけを考えていたのです。

「保さん…、
私が全部話したから、
私と主人、そしてあなたとの奇妙な関係・・、
過去に関係した男達のこと・・・、
私の秘密をみんな、幸恵さんは知っているよ・・・」

千春の言葉に佐王子は驚いています。女同士の仲は佐王子にはなかなか理解できないようです。

「今日もこの人に抱かれることになる…、
この人わね…、
女にとって、とっても危険だけれど・・・、
それでいて、忘れきれない男・・、
一度この人の味を知ったら女は地獄に落ちるしかない・・・、フフ・・・・」

幸恵も、佐王子も笑いながら、顔を見合わせています。千春の紹介の言葉を聞いて、佐王子は二人の女
が、何でも話し合える特別の関係にあることを察知して、そんな人が千春の近所に居ることを心から喜
んでいたのです。幸恵は幸恵で、佐王子を見て、千春の夫、浦上がこの人ならと見込んで、千春の愛人
として選んだ人物であることを確認して、安どしていたのです。

「幸恵さん・・・、
先日ご相談を受けた旦那様のこと・・・、
この人なら、良い解決策を見つけてくれると思う・・、
幸恵さんさえよければ、思い切って、この人に相談してみてはどうかしら・・」

佐王子はようやく千春の企みを理解していました。この日、偶然の様に幸恵を佐王子に会わせたのは、
幸恵が今抱えている問題を、佐王子に直接相談させるためだったのです。


[3] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(267)  鶴岡次郎 :2015/01/19 (月) 14:14 ID:dDDMy9i2 No.2638

千春の提案に少し驚きながら、少し間をおいて、そしてどうやら納得した様子で、幸恵が何度も頷いて
います。そして、ゆっくりと口を開きました。

「そうね・・・、
私一人ではどうにもならないことだし・・・
お恥ずかしい話だけれど…、
お願いしようかしら・・」

幸恵は決心したようです。

「少しお待ちください・・、
自宅へ戻って、ご相談する資料を整えて、持ってきます・・」

少しの間をおいて、幸恵はなにやら大きな布製のバックを抱えて戻ってきました。

「主人のパソコンなんですけど…、
先日・・、偶然・・・、
こんな映像を見つけてしまったのです・・・・」

不慣れな指さばきで、ようやく幸恵は目的のファイルを開きました。

「私がパソコン教室へ通って、何とかパソコンを操れるようになったことを主人は知りません。
だから、主人は無防備にこんなファイルを保管していたのです・・・」

わずか10分足らずのクリップで、撮影日付から一ケ月程前に撮られたものであることが判ります。ど
うやらプロに近い撮影者が撮ったビデオで、はっきりした映像で人物の表情も良く判ります。

「さすがですね…、
こんな映像を見ても、佐王子さんは驚かないのですね…」

冷静に映像を見つめている佐王子の姿を見て、幸恵が思わず感嘆の声を出しています。幸恵から事の次
第を聞いている千春でさえ、今日初めて見る映像に眉をひそめているのです。

「ハイ・・・、
私にとってはこの種の映像はそれほど異常なものでありません・・。
商売柄、日に何度もこうした景色と遭遇することも珍しくありません・・」

「そうですか・・・、こんな景色は珍しくないのですか・・・、
それを聞いて、何となく嬉しくなりました…
主人はそれほど異常な男ではないのですね・・・」

安どの表情を浮かべ幸恵が微笑んでいます。


[4] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(268)  鶴岡次郎 :2015/01/20 (火) 15:48 ID:95FYPOco No.2639

幸恵がゆっくりと口を開きました。どうやら佐王子の態度を見て、信頼できる男だと確信した様子です。

「正直申しまして、こんな映像を見たのはこの歳になって初めてで、
本当に驚きました…。主人の人格を疑いました…。

誰に相談することも出来ないで、思い余って、千春さんにお話ししたのです・・・。
でも・・、佐王子さんの今の言葉を聞いて、
私が考えているほど、主人が異常な男でないと理解できました。
そして、あなたにご相談したことが間違いでなかったといまさらながら、
安どして、喜んでおります…」

幸恵の心の動きが良く判っているようで、佐王子は軽く頷きながら口を開きました。

「ご主人には、このことを話されたのですか・・・」

幸恵は黙って首を振っています。

「・・・で、奥様はこの件をどう処理したいのですか・・」

「・・・・・・・・」

佐王子が訊ねていますが幸恵は答を探している様子で、即答できません。おそらく、あまりに異常な出
来事で、このことを考え始めると正常な思考能力を失うようです。

「ご主人のことを許せないと思いなのですか…、
それとも、汚らわしいと思いなのですか・・・」

「良く判らないのです・・・、、
勿論、憎らしいと思います、裏切られたとも思います・・。
でも、それだけではないのです…。
何となく、あの人がかわいそうな気がしてくるのです・・」

「かわいそうだと思うのですか・・・?
ほう・・、面白い感想ですね・・・」

興味ありそうな表情で佐王子が幸恵を見つめています。

「こんな姿を見せつけられて、
幸恵さん…、
ご主人をかわいそうだと思うのですか・・」

少し怒気を込めた調子で千春が言っています。

「ゴメンナサイね・・、
千春さんが怒る気持ちはわかる・・、
私だって・・・、
初めてこの映像を見た時は、彼を憎いと思った・・・、
裏切られたとも思った・・・、」

「だったら…、
その怒りをそのままここでも吐き出さばいいのよ…、
私に言わせれば、一番かわいそうなのは幸恵さんよ…」

「ゴメンナサイね・・、言葉が少し足りなかったようで、
千春さんに誤解を与えたようだけれど、
その後、冷静になって考えると、
私は主人の行為をそんなに憎めなくなっているのよ・・・、

確かにこの映像の中では彼は異常だけれど、
冷静に考えると・・・、
この映像の中の彼は完全にオフ状態なのよね・・、
毎日ストレスの多い仕事をして、家では理想的な夫であり続けてきた。
そんなあの人が、時には羽目を外すことがあってもいいと思うの・・・。

可愛そうだと思うのは・・、
この映像の中で、主人が本当に楽しそうにしているからよ・・、
少なくとも、私はこんなことを主人にはして上げられない・・・、
こんなことが好きだったなんて、想像もできなかった…、
主人の好みを十分理解できなくて、申し訳ないと思っている・・」

「幸恵さん・・・」

千春が驚きと、幸恵への感嘆の思いを露わにしています。


[5] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(269)  鶴岡次郎 :2015/01/21 (水) 15:50 ID:v22NVHPs No.2640

どこかの娼婦宿で恥ずかしいプレイに溺れている夫の姿を見て、幸恵は自分がそのプレイを旦那にして
やれなくて申し訳ないと、意外な言葉を吐いているのです。その言葉を聞いて、興味深げに幸恵を観察
していた佐王子が、何かを感じ取った様子で、軽く頷いて、ここでゆっくりと口を開きました。

「奥様は、ご主人の好みに合うように、ご自身を変えたい・・、
そう思って、私に相談されたのですね…」

「ハイ・・・、
最初からそう思っていたわけではありません・・・、
こうして、千春さんや佐王子さんに愚痴を聞いていただいているうちに、
私の気持ちがはっきり判ってきました…。

佐王子さんに変身したいのかと聞かれて、
ようやく、私の気持ちがそこにあることが判りました・・!

出来ればそうしたいと思っています・・・、
主人が喜ぶ女になりたいと思います・・。
私のような女が、こんなことが出来るようになるでしょうか・・」

「女の人を男性の好みに合わせていろいろ指導することを、
私たちの業界では「調教」と呼んでおります。
私自身はこの言葉は嫌いですからあまり使いませんが、
勿論、この種の仕事の依頼もたくさん受け付けております・・」

「調教ですか・・」

「そうです・・・、
動物使いが手塩にかけて、動物を飼い馴らすときに使う言葉です。
愛人や妻を、好みの女に変えることにもこの言葉が流用されているのです」

「調教と言うからには、若くて、何も知らない動物が対象でしょう・・・、
私の様に、長年の澱が溜まった女は調教の対象にならないでしょう」

「今日お会いして奥様の人柄、性格が良く判りました。
結論から先に申しあげると、失礼ながら・・・、
奥様を旦那様好みの女性に仕立て上げるのはそんなに難しくありません、

三ケ月・・、いや、一ケ月でも可能かもしれません。

その期間、私どもの店に勤めていただき、一から訓練を受けるのです。
卒業の頃には、旦那様が泣いて喜ばれる女になっています。
多分、奥様であれば、このビデオの中の女など問題にならないほどに変貌します」

「本当ですか…、
そうだと、本当にうれしい・・・」

幸恵が涙を流すほど感動しています。

「一ケ月になるか、三ケ月かかるか、やってみないと良く判りませんが、ご自宅から通うことはできま
せん。24時間訓練となりますので、私の店に近いアパートに下宿していただきます。まさか、今から
修行に出かけるから当分家を留守にすると、ご主人に断わって出かけるわけには行きませんので、形の
上だけの話ですが、家出をしていただくことになります。

落ち着き先や当面の衣類や生活必需品は私の方で手配しますから奥様は身一つで家を出てください。そ
れに、この訓練に必要な経費はすべて奥様が私の店で稼ぎ出していただくのが前提になっていますので、
お金も持ち出す必要はありません」

佐王子はかなり具体的な内容を話し出しています。

「すべて、お任せします・・」

側に居る千春が驚くほど素直に、幸恵は佐王子の提案を全面的に受け入れているのです。


[6] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(270)  鶴岡次郎 :2015/01/22 (木) 16:43 ID:.46Wq8vU No.2641

幸恵の即答を得て、満足そうに佐王子が頷いています。いつも犯罪すれすれの仕事をしている佐王子は、
事に当たって自身の直感を何よりも大切にします。佐王子の計画に対して幸恵があれこれ注文を付ける
ようなら、ここまで進めてきた話ですが、危険を冒すほどのもうけ話でもないので、この話を打ち切る
つもりでいたのです。

しかし、驚くほど素直に佐王子の話に耳を傾け、誰が聞いても胡散臭い話だと思う説明を黙って聞き、
質問さえしないで全面的に受け入れているのです。佐王子に頼ると決めた以上、多少の不安があっても、
幸恵は彼の指示に従うと決めているようです。この態度に佐王子は好感を持ちました。彼女のために力
を尽くすつもりになっているのです。

「三日後には、私の方の準備を完了させます。
今日から数えて、四日後であればいつでもOKです。
身一つで家を出てください・・。

千春の電話で私を呼び出していただければ、私が迎えに参ります。家の中は、ことさら家出に向けて整
理整頓されない方が、奥様の気持ちをご主人がいろいろ考えることになり、その後に来る喜びが更に大
きくなると思います」

「判りました・・、ご指示通りにします。では四日後・・・、
そうですね、13日の午後四時を決行日時と決めます。
佐王子さん、千春さん、よろしくお願い申します・・・」

こうして、幸恵の失踪が決まったのです。そして、既にこの本の冒頭、「公園の男」の章で紹介したよ
うに、夕餉の支度の途中、幸恵は普段着のまま、まさに身一つで忽然と夫の前から姿を消すことになる
のです。


幸恵の夫、佐原靖男を泉の森で見かけて、そのあまりに落ち込んだ姿に同情した由美子は思わず声を掛
けました。遠目にもそれと分かるほどのイケメンでした。男性をこよなく愛する由美子ならずとも、女
なら誰でも関心を寄せるタイプの男でした。後でわかったことですが、見かけによらず歳を重ねていて、
50歳近くで、有名生命保険会社の役員で、社会的、経済的に恵まれた地位にいるのです。

公園で佐原と少し話し込んだ由美子はこのまま捨て置くことが出来ないと思いました、佐原を伴って親
友、美津崎愛が経営する公園の売店を訪ねました。そこで佐原は聞かれるままに妻、幸恵の失踪を二人
の女に話したのです。普通であれば家庭内の事件を今日初めて会った他人に話す佐原ではありませんが、
由美子と愛の優しさと人柄の良さに気を許したのだと思います。

事情を知った由美子と愛は出来る限りの支援と協力を佐原に約束しました。どうやら二人の女は佐原に
一目ぼれして、これほどの男を置いて失踪した幸恵が許せない様子で、その反動もあって、佐原にこと
さら肩入れしている様子です。いつの世も、良い男は得をするようにできているものです。

佐原も二人の女の申し出を快く受け入れました。妻の失踪でぽっかり空いた心の空間に二人の女のやさ
しさが心地よく流れ込み、隅々まで広がっていたのです。


その日を境に、何度か由美子と愛は連れだって佐原の自宅を訪問して、掃除、洗濯など家事を手助けし、
何くれとなく彼を励ましました。訪問を重ねる内に、意識しているかどうかわかりませんが、二人の女
は機会があれば佐原に抱かれても良いと思うようになっていたのです。しかし、二人にはそのチャンス
はなかなか訪れませんでした。・・と言うのも、二人はいつもそろって佐原家を訪問することにしてい
たのです。これは二人が暗黙で決めたルールでした。それは隠れて男を会うことを許さない女同志の鉄
のルールだったのです。二人は忠実にこのルールを守りました。このままだと、いつまで経っても佐原
と二人の女の仲は平行線のままだと思われたのです。

ところがある日、愛が風邪で倒れて予定していた佐原家の訪問に同行出来なくなったのです。


[7] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(271)  鶴岡次郎 :2015/01/23 (金) 15:33 ID:jbSi3RHo No.2642

愛から電話を受けた由美子はチャンス到来と思いましたが、もちろんそんな気振りを出すことはできま
せん。

「私一人では行けない・・・、
元気になったら一緒に行こう・・、それまでは・・」

「佐原さんは待っていると思う・・、
いつもあんなに歓迎してくれるのだから、誰も行かないとなると、
彼・・、きっとがっかりする・・、かわいそうだよ…。

もし・・、何かが起きれば、それはそれでいいのよ・・・、
由美子さんだって、嫌な相手ではないでしょう・・」

愛に背中を押されて、由美子は一人で佐原家を訪ねることにしたのです。この時点で、由美子はもち
ろん、愛も佐原と由美子の間に男と女の関係ができると確信していました。

佐原の自宅は泉の森公園の側にある高級マンション、フォレストサイドハウスの1613号室です。

マンションの玄関で佐原に連絡し、いつもの様に、彼が16階のエレベータホールに迎えに来てくれる
ことになりました。佐原の後に続いて薄暗い廊下を歩いている時、前方の部屋の扉が開き、男が一人出
てきました。このマンションを訪れて他の住人に会うのは珍しいことです。

その男は1614号室の扉を閉めようとして、何かを思い出したらしく、扉を半開きにして、部屋の入
口に立って少し声を高めて奥に居る住人に語りかけ始めました。どうやら、男は近づいてくる由美子達
の存在に気がついていない様子で、かなり気を抜いた様子で部屋の中にいる住人と話し始めたのです。
静かな廊下ですから、男から離れたところに居る由美子でさえ、はっきりとその言葉を聞き取っていま
した。

「先ほど約束したように、遅くなるかもしれないが・・、
今晩、必ず顔を出すから・・、
ああ・・・、夜遅く来ても、カードキーの発行は大丈夫だね・・」

「・・・・・・・・」

部屋の中にいる女性がその声に答えていますが、由美子にはその内容が聞き取れませんでした。男と部
屋に居る女性のやり取りから、その男が部屋の住人ではなく、訪問者だと由美子は推測していました。

これまで何度か紹介しているので、読者の中には、離れたところにいる男性の性的能力を測り取る能力
を由美子が持っているのを覚えておられる方がいると思います。由美子は男性に一メートルまで近づき
ました。由美子はびっくりしていました。その男の放つ体臭を嗅ぎ取り、その男の持つ凄い性的能力を
察知したのです。これほどの能力は由美子でさえ、片手で数えるほどしか経験したことがないのです。

凄い性的能力を持った男が失踪した幸恵の隣家から出てきたのです。そして今夜遅く再度訪問すると、
男は部屋の中にいる女、多分隣家の主婦に違いのないのですが、その女に告げているのです。

おそらく・・、いや確実に、その時隣家の旦那は留守で、何らかの事情で今晩も旦那は自宅へは戻って
来ないのです。その部屋の夫人は午前中、男と熱い一時を過ごし、それだけでは足りないで、夜、もう
一度、男を自宅へ誘いこむつもりなのです。

今耳にした二人の会話から、由美子はこれだけのことを推察していました。そして、その男が訪ねてい
た家が佐原家の隣家であることにある意味を見つけていました。由美子は幸恵失踪とその男とのつなが
りを漠然と感じ取っていたのです。勿論、このことは由美子一人の胸の中に秘め、佐原には話さないと
決めていました。


[8] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(272)  鶴岡次郎 :2015/01/25 (日) 15:54 ID:d1u0lomU No.2643

由美子と愛が何度か佐原家を訪ねる間に、佐原は幸恵失踪について、幸恵との夫婦仲とか、失踪理由に
ついて、彼女たちの質問に答える形で、かなり詳しく話しました。彼が言うには、幸恵の失踪理由につ
いて佐原は心当たり一つないと明言しました。夫婦仲は悪くなく、佐原の口から出た言葉ですからすべ
てを信じることはできませんが、女性問題で幸恵を悩ませたことは一度もないと断言しました。

一方、佐原から見ても幸恵にはこれと言って不満は無く、佐原から見た限りでは、特に悩みや問題を抱
えている様子はなく、趣味のパッチワークや買い物を楽しむ毎日で、平凡ですが、豊かで楽しい生活を
送っていたようなのです。強いて問題を上げれば、二人には子供がありませんので、若い頃はそれが唯
一の悩みで、時々そのことが原因で二人の仲が険悪になったこともあったのですが、互いに40歳を超
えた頃からは子供の居ない生活を楽しむ姿勢に変わっていたのです。
由美子の紹介で幸恵失踪の調査をすることになった寺崎探偵も失踪理由が判らなくて悩まされていまし
た。通常、主婦が家出する時は周到に準備を重ね、これからの生活に必要なものを小分けにして事前に
持ち出しているものです。ところが、幸恵の場合、文字通り身一つで家出しているのです。夕餉の支度
をしている途中で放り投げて家出していることから考えると、何かに憑かれてふらふらと家をでたとし
か思えない様子なのです。何者かに誘拐されたとも考えられるのですが、争った形跡が残っていません
から幸恵自身の意志で家出したと考えるのが妥当なのです。

このように幸恵の失踪理由が判然としないこと、家出に全く計画性がないことなど、幸恵失踪事件は判
らないことが多すぎるのです。そのせいか、一ケ月経った今、失踪届けを出している警察からも、調査
依頼をしている寺崎探偵事務所からも、芳しい報告はないのです。佐原は勿論、彼をサポートしている
由美子と愛はかなり焦り始めていたのです。


愛が風邪でダウンして、初めて一人で佐原家を訪ねたその日、いつもの様に居間、キッチン、洗面所の
掃除をすませて、それまで手をつけていなかった幸恵の部屋も掃除をしようと思って由美子は彼女の部
屋に入りました。その時、ある違和感を感じ取ったのです。幸恵の失踪直後この家を訪ねた時、佐原の
案内で幸恵の部屋に入った時と比べて何かが違う印象を受けたのです。

直ぐに気が付きました。あの時、壁に三枚ほどの明らかに外出着だと判る衣類がかかっていたのです。
おそらく、幸恵が普段着に着かえた後、外出着を洋服ダンスに入れないでしばらく室内に置いておいた
ものだったのです。それが今は無いのです。

誰かがその外出着をロッカーにしまい込んだのです。佐原がそんなことをするとは到底考えられません。
そして、さらに決定的なことを佐原が言い出しました。

「由美子さん・・・、
妻が居なくなって、気が付いたことがあります。
こう見えても、私は案外几帳面だと判ったのです・・。

妻が居る時は、それこそ縦の物を横にすることもしない、ぐうたら亭主でした。お恥ずかしい話ですが、
スーツやネクタイなどいつも居間に脱ぎ捨てていて、彼女から良くお小言を言われていたのです。

それが、彼女が居なくなってからは、ちゃんとロッカーに入れているのです。
酔っ払って帰って来た時でさえ、ちゃんと入れているのですよ・・。

まるで、衣類に羽が生えて、自分の意志でロッカーに戻っているように思えます。
いやいや・・、我ながら、たいしたものだと、自分を褒めてやりたい気分です。
ハハ・・・・・」

得意げに話す佐原の顔を見ながら、由美子の疑いは確信に変わっていました。

〈幸恵さんは時々家に戻っている…〉

幸恵の来訪をこの時、はっきりと由美子は確信していました。
@2015、1、27


[9] フォレストサイドハウスの住人達(その10)  鶴岡次郎 :2015/01/27 (火) 15:09 ID:m7g1CiKY No.2644
2015、1、27、記事番号2613の一部を修正しました。

あまり目立つことは避けている様子ですが、佐原が脱ぎ捨てたスーツやネクタイをこっそりロッカーに
戻したり、自分の部屋の中をそれとなく整理しているのです。以前の様子を良く知らない由美子はその
変化を知る手立てがないので、はっきりと断定できないのですが、おそらく幸恵は下着などかなりの生
活必需品を持ち出しているはずだと由美子は考えています。

そして、その気になって家の中を見渡せば、男の一人暮らしとは思えないほど小奇麗に保たれているの
です。それとなく幸恵が室内を整理整頓して、軽く掃除を済ませているのがそこ、かしこから感じ取れ
るのです。これほど確かな証拠があるのに、それまで幸恵と一緒に生活してきた佐原ならそのことに気
が付いてもいいはずですが、自分の脱ぎ捨てた衣類が、まるで一人歩きをして、ロッカーにもどったか
のように思い込んでいるのです。

〈彼女は無理に隠そうとしていないのかも・・、
あるいは・・、家に帰っていることを、
佐原さんに気が付いてほしいと思っているのかもしれない・・、

それにしても、これだけの証拠があるのに・・・、
男って・・・、なんて鈍感なんだろう・・・、
家出した奥さんが何度か戻っているのに気が付かないなんて・・・
でも・・、そんな佐原さんが可愛い・・・・〉

鈍感さにあきれながら、由美子はそんな佐原を愛しく思い始めていました。こうした男の弱さ、幼さを
見ると、由美子の中に居る男好きの虫が騒ぎ始めるのです。潤んだ瞳で由美子は佐原をじっと見つめて
いました。

妻に家出され、その妻が様子を見に昼間何度か戻ってきているのに、全く気が付かないのです。愚かし
さを曝し、それでもけなげに微笑むイケ面の佐原を目の前にして、由美子の女ごころは高ぶっていまし
た。

〈強がっているけど・・、
下着の着替えだって手探りで探しているに違いない・・、
朝起きた時、幸恵さんが居ないのを知り、涙しているかもしれない・・、
仕事を終えて帰ってきた時、家の灯りが灯っていないを見て・・、
家に入るのを止めて、酒場に戻る日も多いだろう…〉

佐原の一人暮らしを思って、由美子は心を痛めていました。出来ることなら抱きしめて慰めてやりたい
と思っているのです。

濡れてキラキラ光り、燃えるような光を放つ瞳を男に向けています、抑え切れない欲望が、女心が、身
体を燃やし始めているのです。女の全身から、妖しい気が漂い出ています。とっくに由美子は佐原を受
け入れるつもりになっているのです。

由美子の家からこのマンションまで歩いて数分の距離ですから、ことさら外出着に着かえることはしま
せん、今日の由美子は自宅でくつろぐ普段着に買物バックを手にしてこのマンションへ来ています。

ミニのスカートに、白のブラウスをつけて、若草色のスプリングコートを羽織ってやってきているの
です。ソファーで意識的に高く脚を組んだ生足がほとんどパンテイまで見えそうになり、白のブラウス
から、同色のブラが透けて見えます。

「幸恵が居なくなった当初はとても生活できないと絶望的な気持ちになっていたのですが、あれから三
週間も経つと、それなりに生活できることが判りました。
勿論不自由なことを上げればキリが有りませんが、そんなものだとあきらめれば、何とか成ることも判
りました・・・」

ティー・カップを手に、佐原が眼を細めて清楚な中に、怪しい色気を醸し出している由美子の全身を舐
めるように見ています。

由美子は勿論男の視線を意識していました。愛が急の発病で同行できないと判った時、男と二人きりに
なる危険を予知できたはずです。それでも由美子は一人でやってきたのです。そして、それなりの準備
をしてきているのです。男に抱かれることを意識して、出かけにシャワーを浴び、身体の隅々まできれ
いにして、派手な色彩を避けながらも大胆なカットの下着や衣類を身に着けてきたのです。


[10] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(274)  鶴岡次郎 :2015/01/28 (水) 16:33 ID:qwfySp1U No.2645

由美子の真正面に座り、紳士的な姿勢を崩さず和やかに話していますが、次の瞬間、佐原が由美子の側
に移動して、肩に手を掛けてくることだって起こり得るのです。そうなれば、由美子は眼を閉じて、佐
原の唇を待つつもりなのです。

「・・何かが起きても、誰にも判らないよ、
抜け駆けを今回だけは許すから、余計な心配をしないで、
私のことは構わないから・・・、
予定通り佐原さん家(ち)へ行ってちょうだい・・」

愛は由美子にそう言ったのです。

「これが私一人で行くとなると、主人が心配して、とてもそんなことは出来ないけれど、由美子さんな
ら大丈夫よ。ご主人は理解があるし、由美子さんが今まで積み上げてきた実績もあるし、何かあっても
誰も問題にしないよ。むしろ何かが起きた方が、由美子さんにとっても、佐原さんにとってもハッピー
よ・・・」

愛にここまで言われると、由美子はもう何も反論できませんでした。ただ、苦笑いして、佐原宅を一人
で訪ねることにしたのです。


ソファーに向かい合って座り、和やかにコーヒーを楽しみながら、由美子が全身の力を抜いて潤んだ瞳
を見せているにもかかわらず、佐原はそれらしい動きも気配も見せないのです。

先ほどから、佐原の股間がごく平静であることに由美子は気がついていました。由美子がその気になって
いるのに、反応を見せない男はごく稀です。佐原はその稀な例だと、悔しさよりも驚きの気持ちをこめて
由美子は佐原を見ていました。

〈・・・私の魅力が乏しいせいかしら・・・、
いや・・、そうでもなさそうだ・・・、
私の身体には一応の興味を見せている・・、
私の素脚に絡みつく彼の視線を十分に感じ取れる・・・、

それだのに・・・、なぜ・・・、
彼のモノは平静を保っている・・・。
彼の中に・・、彼の性衝動に・・、火が点いていない・・・
なぜ・・・?〉

目の前に座っている佐原の不可解な態度に驚きながら、それでも由美子は冷静に彼を分析していました。


〈幸恵さんのことで頭が一杯なのだ、
彼女を本当に愛しているのネ・・・、

でも・・、それだけではない・・、
何かが違う・・、

そうだ・・、もしかして・・・
燃え上がるためには、この男にはもう一つのキーが必要なのだ・・。

そうだ・・・、そうだった・・・、
以前、この種の男を私は見たことがある・・・・〉

由美子の中に突然ある発想が閃きました。男と女の愛の形をいろいろ経験し、異常な愛の形も沢山見て
きた由美子ならではの閃きでした・・。


突然由美子が立ち上がりました。かなり厳しい表情をしています。口をきっと結んだまま、佐原に一歩、
そして二歩近づきました。もう膝が接するほどに由美子は近づいています。ソファーに腰を下ろしたま
ま、驚きの表情を浮かべ佐原が由美子を見上げています。

次の瞬間、由美子が右手を高くかざして、いきなり平手で佐原の頬をかなり強く殴りつけたのです。
湿った破裂音が静かな室内に響いています。


[11] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(275)  鶴岡次郎 :2015/01/30 (金) 14:35 ID:D8XC2cMc No.2646

当然ですが、唖然として佐原は由美子を見上げています。

「佐原さん・・・!
どうしたの・・・、何も感じないの・・・?」

左手がひらめき男の右頬を打っています。

「こんなにいい女が側に居るのに、やる気を見せないなんて・・・、
だらしがないにも、ほどがある・・・、
しっかりして・・・、男でしょう・・・・」

叫びながら、右、左と由美子は佐原の頬を何度も平手でぶちました。見る見るうちに佐原の頬が赤く充
血しています。

突然の暴力行為ですから驚いてはいるのですが、女の平手を避けるわけでもなく、自分の手で防御する
わけでもなく、佐原はただ黙って殴られているのです。その視線は由美子の顔に向けられ、恍惚とした
表情を浮かべているのです。明らかに異常です・・、女も・・、男も・・・。

彼の股間が一気に勃起しているのを由美子は感じ取っていました。狙った通りの男の反応を確かめて、
女は満足げな笑みを浮かべています。これ以上ないほど勃起した男根を直に見るような気持ちに由美子
はなっているのです。一気に女は股間を濡らしていました。薄い下着を通り抜けた愛液が大腿部を濡ら
し、さらには素足に沿って愛液が足首のあたりまで流れ落ちているのです。

女が手を止めると、男の両手が伸びて女の腰を捉えました。そして一気に女を膝の上に抱き上げていま
す。そのまま顔を寄せて、男は女の唇に吸い付き、かぶりつく様にして女の唇を貪り始めました。うめ
き声を上げながら女も両手を男の首に巻き付け、男の舌を深々と受け入れ、舌を吸い込み、それに自分
の舌を絡めています。

男の手が伸び、女の股間に指が届き、濡れた下着を押し分けて、指が二本挿入されました。そこから広
がる快感に女は全身を震わせていました。しかし、次の瞬間、女は両手で男の体を突き放ち、右手で男
の頬を強くたたきました。

「何するのよ・・・!
そんなところを触るのはまだ早い・・!」

男は殴られたはずみでソファーから転げ落ちて、わざとらしく床に背を着けて、長々と体を投げ出しま
した。女がすばやくショーツを脱ぎ取り、男の顔に跨り、股間を男の顔面に押し付けています。

「どう・・、
お前にはこれがお似合いよ…」

鼻と口をふさがれ、男が両手、両脚をばたつかせています。女は全体重を男の顔面にかけています。男
は必死で舌を使い秘唇を舐めています。

「ひえ・・・、ああ・・・ん・・・、
ああ・・・ン・・・、負けないからね・・、
こうしてやる…、どう・・・」

発射音が響き女の股間から大量の液体が噴出して男の顔面、そして板敷の床を濡らしています。

「ムウ・・・・・、フッ…」

男はそこで悶絶しました。男は両手両足を長々と伸ばし、胸を上下に大きく動かせています。女がゆっく
りと腰を持ち上げました。そして、そこで女も力尽きたようで、男の側にバッタリと倒れ込みました。
凄い刺激を受けてさすがの由美子も気が遠くなるほど、深々と逝ってしまったのです。

女の放った尿が一面に広がった板敷フロアーの上に男と女は力尽きたように倒れ込んでいます。女の身
体も、男の身体も尿でしとどに濡れています。


[12] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(276)  鶴岡次郎 :2015/02/02 (月) 15:36 ID:e2n/1Mjw No.2647

あまりに強い刺激を受けて、男も女も一気に頂点に駆け上がり、男は不覚にも精を吐き出していたので
す。由美子の放った尿の中で二人はほとんど気を失って重なり合うようにして倒れ込んでいたのです。
覚醒をした時、女はともかく50男である佐原には由美子に挑みかかる力は残っていませんでした。

シャワーを浴び、幸恵のガウンを借りて、すっきりした表情でソファーに腰を下ろしています。佐原も
シャワーを浴び、ガウンを羽織って由美子の真正面に座っています。由美子の衣類は水洗いをして乾燥
機に入っています。衣類が乾燥するまでの一時間余、由美子はこの家に足止めされることになります。
裸体にガウンを羽織った男と女が一時間以上同じ部屋にいることになるのです。

全身にけだるさを感じながら、挿入に至らなかった不満が二人のどこかに残っている様子です。裸体に
ガウンを羽織っただけの姿で向かい合っている事実も、二人の心をくすぐっていました。

男はお茶を飲みながら、自身の体力の回復状況を測りながら、仕掛けるタイミングをゆっくりと狙って
いるようです。女はゆったりと落ち着いた様子でお茶を飲んでいます。男が回復すれば何時でも対応可
能なようです。

「佐原さん・・・、
お隣の・・、そう・・、1614号室の住人とは親しいのですか・・」

「エッ・・、1614号室ですか・・・、
浦上さんの旦那さんとは、一、二度顔を合わせたことがあります。
確か、大手商事会社に勤めておられると聞いています。

家内は奥さんと親しくしているようで、暇を見ては浦上さん宅へお邪魔しているようです。それと言う
のも、家には子供が居ませんから、家内は浦上さんのお子さんをまるで孫のように可愛がっているので
す。

・・で、そのことが家内の家出と何か・・・」

「いえ・・、それだけ親しいのであれば・・、
もしかして・・・・、
旦那様の知らない奥様の昼間の顔をご存知かもしれないと思ったのです」

「そうですね…、
そのことには気が回りませんでした・・。

警察以外の方に妻の失踪を話したのは由美子さんと愛さんだけですが、
確かに、浦上さんの奥さんが何か事情を聞いている可能性はありますね・・
後で、この後で・・、
由美子さんと別れた後・・・、
事情を話して、何か情報をお持ちでないか確かめます・・」

貴重なアドバイスなのですが、あまり気乗りのしない調子で佐原が答えています。

「先ほどこちへ訪ねてきた時、廊下で隣の家から出てきた男の方を見ました・・、
あの方が旦那様ですか・・・・」

「ああ・・、あの方・・・、
あの方は、旦那さんではないですね…、
浦上さんはもっと若くて、身長が高い方です・・・」

佐原は廊下ですれ違った男のことを全く気にしていない様子です。


[13] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(277)  鶴岡次郎 :2015/02/03 (火) 15:18 ID:q0ovvxaU No.2648
幸恵の失踪に関連が濃いと由美子がほのめかしているのに、隣家の話題に佐原はそれほど関心を寄せな
いのです。どうやら目下の佐原の関心事は別のところにある様子です。由美子の質問が途絶えると佐原
が待っていたかのように口を開きました。

「ところで・・・、
由美子さん・・・、
私のこと・・・、どうして判ったのですか・・?」

「エッ・・、何が・・?
ああ・・、そのことですね・・・、
佐原さんが変態だと、どうして判ったのかという質問ですね?」

由美子がにっこり微笑み際どい言葉を発しています。

「変態とは酷い言い方ですね・・」

「だって・・、そうとしかいえないでしょう・・、フフ・・・、
良い女が目の前にいるのに、一向に手を出さないでいながら、
打(ぶ)たれて、おしっこを掛けると、一気に燃え上がったのよ・・・、
これは立派な変態でしょう…、フフ・・・・」

「まあ・・、そう言えばそうですが・・、
これには理由(わけ)があるのです・・。
話せば長い話になるのです・・」

情欲に中々火が付かない身体になった理由を佐原は由美子に告げるかどうか迷っている様子です。

「いいのよ・・、今・・、無理に話さなくても・・、
誰にだって他人に話したくない秘密の一つや、二つはある。
その話は、もう少し落ち着いた時、
その気になった時、ゆっくり聞かせてください・・」

「そうですね・・、
私の話はそんなに楽しい話でなく、気が滅入ることになりますからね…。
私の話よりも、由美子さんのことを聞かせてください。
どうして・・、私の妙な癖に気が付いたのですか・・・?」

「私の情夫は的屋の親分だと以前教えたでしょう…」

「そうでしたね・・、以前、愛さんのご自宅へ伺った時、その話を聞きました。
あの時以来、由美子さんの武勇伝には興味を持っていて、出来れば由美子さんからその話を直にたっぷ
り聞きたいと思っていたのです」

「武勇伝なんて・・、そんな大げさなものではありません…。
ただ、普通の女の人より、少しだけたくさんの男を知っている程度です・・」

「ご謙遜ですね・・、
たくさん男に抱かれただけでもすごいことですよ、
中には随分と珍しい癖を持った男達もいたのでしょうね・・、
由美子さんのことだ、いろんな男との間に・・、
さど・・、激しい攻防があったのでしょう・・・」

ガウンの下で佐原の男根が勃起し始めたのを由美子は感じ取っていました。どうやら癖のある男達に由
美子が弄ばれている情景を妄想して股間を熱くしている様子なのです。

「佐原さん・・、何か嫌らしい想像をしているでしょう…、フフ・・・・、
男達にいいように弄ばれ、犯されて・・、
悶えている私の姿を妄想しているのでしょう・・、

そうよ・・、いろいろな男に抱かれた・・・、
とても数えきれないほどよ・・。
怖い男、上手な男、変な男・・、でもみんな可愛い・・・」

遠くを見るような表情を浮かべて由美子が語っています。由美子の上を通り過ぎた数知れない男達の顔
を一人一人思い出しているのかもしれません。


[14] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(278)  鶴岡次郎 :2015/02/04 (水) 12:23 ID:JOavCgqE No.2649
通り過ぎて行った男達の顔、その姿を頭に描き、うっとりと表情を緩めている由美子を見て、佐原は少
し妬ける気持ちになっています。

「由美子さんとはもっと早く会いたかったな・・・、
たくさんの男の中には私のような変態もいたのですね…、
それで、私を一目見て、こいつは変態だと勘づいたのですね…」

「そうとおりよ・・・、
普段は紳士的なふるまいをする人が、
ベッドではがらりと変わるのを何度か見て来た・・

この人も・・、もしかして、そうかな・・と疑った・・、
それを確かめるため、頬を打(ぶ)ってみることにした・・・、
間違っていれば、謝るつもりだった・・・」

「・・・・・・・」

「ところが・・、打(ぶ)たれているのに・・、
アソコを・・・、 いえ・・、恍惚とした表情を浮かべているのを見て、
女から苛められるのが好きな人だと思った・・・・」

「頬を打たれながら、由美子さんに私の癖を気づかれたと悟りました。
そうではないふりをするつもりでしたが、体が動きませんでした・・。
由美子さんにぶたれて、私は夢心地になっていたのです・・」

「そのようね・・、
じっと耐えているのを見て、MもM、真正のMだと判った。
それなら、最後まで攻めて、本音を聞き出すことにしたのです・・」
 
「実を言うと・・、私は自分の変な癖を凄く恥じています・・・。
こんな体になった理由はそれなりにあるのですが、そのことも含めて、
私はこの件はひたすら隠し通して来ました・・」

「そんなに隠す必要はないと思う・・。
威張れることではないけれど、
かといって、そんなに恥じることでもない・・・・・・・」

由美子が首を傾けて、不審そうな表情で言っています。
 
「由美子さんは不思議な人ですね・・、
秘密を知った後も、軽蔑するどころか、
恥ずかしい癖を持った私を一人前の男として扱ってくれています。
今となっては、あなたに秘密を握られたことをむしろ喜んでおります」

「私だって、若い頃は変態じみた行為を好む男は正直言って嫌いだった。でもある時から考えを変えた。
裸の付き合いをすると相手の性格が見えてくると言うでしょう。セックスは文字通り裸になって、全身
を濡らし、互いに喘ぎながら、我を忘れて絡み合うものでしょう、これ以上の裸の付き合いは他にない。
セックスをすると普段の付き合いでは見えないものが見えてくることに気が付いたのです・・。

女を抱く時、男はその女に普段は見せない彼の本質をさらけ出すものだと気が付いたのです・・。乱暴
な男、変態じみた抱き方をする男、優しく抱いてくれる男、それぞれ特徴があるけれど、共通して言え
ることは、その瞬間、男達は全てをさらけ出しているのよ・・。

抱いた女だけに見せる姿に、その男が生きて来た歴史が隠されているのだと思えるようになったのです。
そんな男達を可愛いと思った。どんな男であれ、その瞬間、私だけに本音をさらけ出している相手に優
しく接するべきだと考えるようになったのです・・」

「そうですか・・、それで良く判りました…。
男と女が裸になって絡まり合うと、意外と本音が出るのですね・・。
由美子さんはそうした男の本音を正しく理解し、
尊重したいと考えているのですね・・・」

「・・・・・・・・」

由美子が微笑みを浮かべて黙って頷いています。


[15] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(279)  鶴岡次郎 :2015/02/09 (月) 15:35 ID:WrBNfkg2 No.2650

変態癖を由美子に知られた直後はどこか怯えている様子が見え、由美子の言動に必要以上敏感に反応し
ていたのです。ところが、変態癖を持つ男にはそれなりの事情があるのだと理解を示し、佐原の行為を
黙って受け入れると言う由美子の話を聞いたせいでしょうか、佐原の表情にゆとりが戻り、普段通り、
出来る男の表情を取り戻しています。

「由美子さんのお話を聞いて、何か憑き物が落ちた気分です。
そんなに恥じることではないと自分に言い聞かせているのです・・。
これからは、この妙な癖との付き合い方を、
私自身、少し考え直すべきかなと思い始めています・・」

「そう・・、それが良いと思います…、
色々な愛の形があっても、いいのだと思います・・」

どうやら、由美子は佐原の心の闇に一筋の光明を投げかけたようです。

「ところで・・、
少し立ち入ったことを聞いても良いですか・・」

「はい・・、何でも聞いてください…」

「佐原さんの変態癖を、奥様はご存じなのですか・・・?」

「・・・・・・・」

黙って佐原が首を横に振っています。

「そう・・・」

由美子がそこで口を止め、何事か考えているようすです。

「奥様の家出に心当たりはないと、先ほど聞きましたが・・、
佐原さんの変態癖を奥様が知ったことが原因だと思いませんか・・」

「ハイ・・・、最初はそうかもしれないと思いました・・、
しかし・・、私の変態癖を知り、生理的な嫌悪感を持ったとしたら、
家出をするより、離婚を彼女なら選びます。
中途半端なことはしない、あいつはそういう女です。

仮に、100歩譲って、嫌悪感と怒りに任せて家出をしたとしても・・、
家出をする前に、私へ一言あっても良いと思います。
書置きを残すことだって出来たはずです…。
幸恵ならきっとそうするはずです…。

それで・・、
何も言わないで家出したのは、別の要因があると考えたのです・・。
多分・・、幸恵は私の奇妙な癖に気付いていないと思います・・」

すこし自信なさげに、それでも佐原は言葉を選びながら話しました。どうやらこのことでは相当悩ん
だ末、今、口にした結論に到達している様子なのです。


[16] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(280)  鶴岡次郎 :2015/02/11 (水) 14:56 ID:pY0Ejyko No.2651

佐原夫妻には子供がなく、幸恵は実家からかなりの財産を相続し、経済的な理由で佐原にしがみついて
いる必要性は何もありません、夫の変態癖に嫌悪感を持ち結婚生活が続けられないと判断すれば、幸恵
の性格から考えて家出より離婚を選ぶはずだと佐原は考えたのです。

「そうですね…、
確かに・・、おっしゃることには一理あります…。
それでも・・、私は・・・・」

「由美子さん・・・、もういいんです…。
幸恵のことを気遣っていただくのは本当にありがたいのですが・・、
これ以上、由美子さんや、愛さんに・・、
幸恵のことでご迷惑をかけることはできません・・。

皆さんのご協力もあって、
警察へも、探偵事務所へも、打つ手は打ちました。
いずれ、結果が出ると思います・・。
それまでは・・、少し静観してはどうかと思っています…」

「・・・・・・・・」

かなり強い調子で佐原が由美子の言葉を遮りました。幸恵のことを話題にしたくない様子を佐原が見せ
ているのです。佐原の強い拒否反応を見て由美子はたじろいでいました。

「せっかくご親切に、心配していただいているのに、
私としたことが・・、つい興奮して、つれない返事をしました。
お許しください・・」

強い言葉で由美子の心配を一蹴したことを佐原は謝っています。

「いえ、いえ・・・、私こそ・・・、
お辛い佐原さんの気持ちを考えないで・・、
思い付いたままをしゃべってしまいました…。
心無いことをいたしました。お許しください…」

幸恵失踪の件では最初から気を使い、言葉の端々まで気配りしたつもりだったのですが、佐原は由美子
の気づかいを煩わしく思い始めているのです。どんなに気を使っても、当事者以外立ち入ることのでき
ない領域が夫婦の間にあるものだと由美子はいまさらのように反省していました。

「由美子さんと愛さんのには本当に感謝しております。
もし・・、お二人に会っていなければ・・・、
多分・・、私はもっと落ち込んで、
毎日の勤めも出来ない状態に陥っていたと思います・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

由美子たちのおせっかいを佐原はそれほど嫌っていない様子です。先ほどは幸恵失踪の話題を一方的に
打ち切っておきながら、その口が渇かない内に、由美子と知り合いになったことに感謝しているのです。
当惑を隠しきれない表情で由美子は佐原を黙って見つめていました。由美子が当惑していることなど気
にしない様子で佐原は饒舌にしゃべり始めました。

「由美子さん・・、正直に私の気持ちを言います…。
幸恵の失踪はそれ自体私にとって大きなショックですが・・・、
こうして由美子さんとお知り合いになったことは、
私にとって大きな収穫であり、喜びです・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

佐原の気持ちを測りかねていた由美子はここへ来てようやく佐原の本心を理解していました。先ほど由
美子の言葉を強い調子で遮った時、最愛の妻、幸恵のことをこれ以上話題にするのが辛いのだと佐原の
気持ちを思いやった由美子でしたが、しかし、どうやらそうではないことに気が付いたのです。


[17] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(2(281)  鶴岡次郎 :2015/02/12 (木) 15:11 ID:a72mw.nw No.2652

佐原の表情をじっと見つめていた由美子は、ようやく彼の男心を理解していました。

〈なぁ・・んだ・・・、
私のおせっかいを煩わしいと思っているわけではないのだ・・・、
奥様の事件の縁で、私と会えたことを心底から喜んでいる・・、
彼は・・、先ほどの戯れの続きをやりたいのだ・・・、
今は、奥さんの心配より、私と遊ぶことに集中したいのだ・・・・
それで、私の言葉を途中で遮ったのだ…、
奥様のことを話題にするのが耐えられないと彼が感じていると心配したけれど、
そうではなかった…、
そうなら・・、そう言いなさいよ・・、余計な心配をしたわ…〉

佐原のスケベ心が判り、由美子は内心でにんまりとしていました。妻の行方が分からないこの時期に、
他の女に気を移すのは不謹慎と言えばこれほど不謹慎なことはないのですが、男と女の間には通常の条
理で割り切れないことが起こるものなのです。由美子はそんな佐原の男心を心のどこかで許し、受け入
れていたのです。

「少しでも佐原さんの気が休まればいいと思っているのです・・
私で出来ることなら・・、何でもおしゃってください・・・」

情熱的に由美子を見つめる佐原の視線の強さにおされながら由美子が口を開いています。甘い顔を見せ
れば、男がそこにつけ込むのを十分承知をした上で、誘いの言葉を出しているのです。二人の間には気
を許しあった男と女の雰囲気が再び戻ってきています。

「正直申しあげて・・・、
ここまで由美子さんにお世話になるとは思ってもいませんでした。
妻以外の女性にここまで甘えた経験がありません。
由美子さんには、どうお礼を言っていいか判りません…」

由美子はただニコニコ笑って佐原の言葉を聞いていました。

「夢にも思わなかった聖水をいただき、
気が遠くなるような悦楽を与えていただきました・・・。
おかげで、人生捨てたものではないと思える気がしております・・。
明日からの仕事へむけて、更に、やる気が出てきました…」

「ああ・・、そのことは言わないでください…、
少し調子に乗り過ぎました・・、
佐原さんを元気づけたい、その気持ちが強すぎて・・、
後先を考えないで、はしたないことをしてしまいました・・。
普段はあんなことは・・、絶対しないのよ…、ゴメンナサイ…」

おしっこのことを由美子は少し恥じているようで、さすがに頬を染めて語っています。

「いえ、いえ・・、私としては大歓迎です・・。
おしっこを顔面に浴びて、その香りと、とろけるような味、暖かさに、
私はしびれていました・・。
本当に気持ちよくて、ほとんど気を失っていました・・」

そのことを思い出したのでしょう、恍惚とした表情で目を閉じて語っています。由美子は気が付いてい
ました。男根がむくむと立ち上がり、もう少しで十分になる状態なのです。

「実のところ、今までおしっこを浴びた経験が二度あります。
その時はプロの女性でした、ただ、その時は体に浴びただけで・・・、
顔面に浴びて、腹いっぱい飲んだのは今日が初めてです・・」

「・・・・・・・・・」

興奮で顔を真っ赤にして佐原は話しています。由美子はただニコニコ微笑んで話を受け止めていました。


[18] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(282)  鶴岡次郎 :2015/02/13 (金) 17:24 ID:KJbTWW7o No.2653

ここまで話が進むと、もうためらう理由はなくなりました、男は一気に攻勢に出るつもりのようです。
何事か決心をした真剣な表情を浮かべ、由美子をしっかり見据えています。女はそんな男の様子を余裕
で見つめかえしていました。

「出来ることなら・・、
もう、一度・・、もう一度だけ・・、
お願いしたいと思っているのです・・
あのしびれるような感覚を・・、
もう一度・・、お願いします…」

テーブル越しに手を伸ばし女の手を握り、男が迫っています。

「ダメ・・、ダメ・・、
先ほどはあなたを試してみるつもりだったからできたけれど…、
今となっては・・、とても恥ずかしくて・・・、
もう・・、出来そうもない…」

「そうですか…、
そうですよね・・、
他所の奥様にそんな破廉恥なことお願いできませんよね・・・
変態男の相手をするのは嫌ですよね・・」

「変態が嫌・・と、言うわけではないのよ・・・、
ただ・・ね・・、判るでしょう…」

「もし・・、
もう一度由美子さんの聖水を浴びることが出来るのなら・・・、
私はその場で殺されても、かまわない気持ちです・・・」

「あら、あら・・・、
どうしたのかしら・・、困ったわね・・・」

由美子の手を握りしめたまま、思いつめた様子を佐原が見せています。もう・・この瞬間・・、妻、幸
恵失踪の問題は佐原の頭の中では小さな存在になっている様子です。今は、由美子のことで頭がいっぱ
いの様子なのです。佐原の股間がこれ以上は無理と思えるほど勃起しているのを由美子は感じ取ってい
ました。

「あなたの聖水を浴びた私は永久に貴女の僕(しもべ)です・・・。
貴女を私のモノにしたいなどと・・、決して欲張りません・・・。
ただ、二人きりの時は、できれば・・、私の女王様でいてほしいのです・・」

50男の図々しさを前面に出して、佐原が迫っています。笑みを浮かべたまま由美子は男を見ています。
由美子自身も先ほどから股間を濡らし始めているのです。ここが潮時と見たのでしょう、どうやら由美子
もその気になった様子です。

「私も・・、あなたのことは大好きよ・・・、
あなたを元気づけることであれば・・、
女王様でも、乞食でも、何にでもなるわ・・・、
・・・で、二人きりの時・・・、
私はあなたのことを何と呼べばいいの・・」

すこし言葉改めて、芝居がかった口調で由美子が訊ねています・・。

「靖男・・と、呼んでください・・」

ソファーから立ち上がり、女王様の前に出たナイトの様に床に片膝をついて深々と頭を下げています。
ガウンの前が開いて、下半身が露出して、かなりの大マラが顔を出しています。目ざとくそれに視線を
走らせ、由美子は体を熱くしていました。

「靖男・・・!
私の足先を舐めなさい・・」

ソファーに座ったまま左足を佐原の顔の前に差し出しています。男が恭しく両手で足をささげ持ち、指
先を口に含んでいます。指の間に舌を入れ、足指の間を丁寧に舐め始めました。

女の足を持ち上げているので、ガウンの前が開き女陰が顔を出しています。

男の唇が足先から、ふくろはぎ、そして大腿部へと移っています。女は耐えがたい喜悦の表情を浮かべ
ています。男が高々と足を持ち上げているので、女陰は全身を曝し、おびただしい愛液を噴出させてい
るのです。


[19] フォレストサイドハウスの住人達(その10)283)  鶴岡次郎 :2015/02/18 (水) 13:33 ID:0KIewlNA No.2654

突然・・、女が空いていた片方の足を使って男を蹴飛ばしました。片膝をついて女の大腿部を舐めつく
し、もう少しで女唇に舌が届くところまでたどり着いた男は、女の攻撃を受けて、もろくも両手両足を
天に突き出す格好で床に背を打ち付けています。勃起した男根が大きく揺れているのです。

女はすばやく立ち上がり、男の腹に右足を載せて体重をかけています。踏みつけられたカエルの様に男
は無様な姿で四肢を震わせています。はねのけようと思えば男の力で、簡単に由美子の足を払いのける
ことが出来るはずですが、佐原は踏みつけられた姿勢を保っています。

「私が欲しいの・・・、
ここに入れたいの・・・」

ガウンを脱ぎ捨て全裸になった女が、右手の指を巧みに使って女唇を開いています。見上げる男の視線
が愛液を滴らせている女陰を捉えています。

「ああ・・、由美子様…、
下さい・・、恵んでください・・・、
由美子様のご聖水を、もう一度・・、いただかせてください・・・・」

両手を突き出し、哀れな声を張り上げています。

「そんなに欲しいの・・・?
さあ・・、口を開けて・・・」

両手を突き出したまま、いっぱいに口を開いています。女が男の顔の上に跨り、腰をゆっくり落として
います。顔面10センチの処で腰が留まりました。男の顔を見下ろし、女唇が怪しくうごめいています、
滴る愛液が男の顔面を濡らしています。

「アウ…ゥ…」

男が首を持ち上げ女陰にかじりつきました。激しい痛みとそれを上回る快感で由美子が首を反らして悲
鳴を上げています。そして、そこで堪え切らなくなったのでしょう、かなりの勢いで女陰が男の顔面に
落下しました。男の悲鳴が女陰に吸い込まれています。 

落下の衝撃で女の尿栓が緩んだのでしょう、かなりの水流の液体が男の顔面に降りかかっています。む
せびながら男は必死で液体を飲み込んでいます。大部分の液体は男の口から溢れ出て床に流れ落ちてい
ます。

先ほどは、予想外の攻撃を受けてここで男は不覚にも逝ってしまい、大量の精を吐き出しリタイアーし
たのです。その学習効果のせいでしょうか、男根の先端から透明な液がかなり溢れ出ていますが、今回
は何とか踏みとどまっています。

男は女の腰を両手で支えて、体を反転して女の体をやさしく床に寝かせました。そして、両手、両脚、
舌を総動員して女の全身を愛撫しています。攻守が逆転して、女がうめき声を上げながら、四肢を天井
に突き上げています。女の表情を確かめながら男は余裕で攻めています。いよいよ、由美子と佐原の本
格的な戦いが始まるのです。


[20] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(284)  鶴岡次郎 :2015/02/25 (水) 16:00 ID:d1u0lomU No.2656

翌日、由美子は親友の愛の病気見舞と成果報告が目的で、愛の家を訪問しています。愛の風邪はインフ
ルエンザではなく単純なカゼであったようで、医者が処方した薬を飲んで丸一日寝ていたのが効果を発
揮して、由美子が訪問した時はもう床を払って、家事を始めるところでした。

お茶を飲みながら昨日の成果を由美子は愛に報告しました。幸い愛の夫、美津崎一郎は所用で家を空け
ていて、女二人気兼ねなくガールズトークが出来るのです。

二度目の聖水を顔面にかけたところまで話したところで、愛の反応を見るつもりなのでしょう、由美子
が口を止めました。

「相変わらず過激なことをするわね…、
うらやましいけれど・・・、
とても私には真似が出来ない・・・。
・・で、その後はどうなったの・・・。
当然、たっぷり、やったのでしょう・・・」

由美子の淫乱ぶりにあきれた表情を隠さないで、愛がやや興奮した様子を見せながら、問いかけている
のです。

「ええ・・、
それから3時間、たっぷり・・・」

「そうなんだ・・、
エンジンがかかれば・・、
彼・・、普通のセックスが出来るのネ・・」

「そうよ・・、普通と言うより・・
私の知る限りではかなりのテクニシャンで、
持ち物も素晴らしい・・・、
帰りの道を満足に歩けないほど久しぶりに逝かされた・・」

「キャ・・ッ・・!
狡い・・、ズルイ・・」

女同士、昼下がりの遠慮のない会話です。10代の女のようにはしゃいでいるのです。

「その気にさせるには、彼をいじめる必要があったのね…、
道理で・・、彼の家を訪ねた時・・、
気を引くつもりで、下着を見せたり、乳房をチラ見させたのだけれど・・
彼の反応は薄かった・・・」

「そうよ・・、愛さんたら・・・、
珍しくミニスカートを着けてきて・・、
ソファーでお茶をいただいている時、スカートの奥をちらつかせたり・・、
胸を広く開けて、ほとんど乳房の全貌を見せつけたりしていた・・、
あの時、愛さん・・、ブラをしてなかったでしょう・・」

「判った・・・?
洗面所でブラを外したのよ・・、
だって・・、由美子さんに負けたくないと思ったのよ、
由美子さんは最初からノーブラで過激なショーツを着けていたでしょう・・」

「ウフフ・・・、バレていたのね…、
お相子だね…、
実はね・・、彼が一向に手を出さないから・・、
それならこちらから仕掛けようと思ったのよ・・」

二人の女はそれぞれに佐原にお色気攻勢をかけていたのです。


[21] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(285)  鶴岡次郎 :2015/02/26 (木) 13:23 ID:XngfDN4. No.2657
お色気攻勢をかけたことあっさりと認めた由美子の言葉に愛が笑みを浮かべて頷いています。

「でも・・、結局・・、由美子さんの仕掛けも、
私のせい一杯の媚も空振りだった・・、
彼・・、二人のお色気攻勢には気が付いていたのは確かよ…、
それなりの興味を見せて、チラチラと私の体を見てくれてはいたけれど・・・、
手を出さないどころか、いやらしい冗談一つ言わなかった…」

「結局・・、あの時・・・、
私たちは彼の固い鎧を脱がせることが出来なかったのよ・・」

「鎧・・?
それ何・・・?
まさか、男のアレに兜をかぶっているってこと・・・?」

「バカね・・、そんなはずがないでしょう…、
精神的な鎧のことよ・・、
彼は心に鎧を被っているのよ・・」

「判らない・・・、もう少し判るように説明して・・」

「家の主人もそうだったけれど、
一流企業の会社重役を務めるような出来る男たちは、
毎日、私たちの想像を超えるストレスに体を曝しているのよ、
彼らはその大きな重圧に負けないよう固い鎧を着けていて、
家に帰ってもその鎧を脱ぐ余裕がないのだと思う・・」

「そうか・・、私たちがおっぱいを見せたり
下着をちらつかせたりする程度の刺激では、
彼は堕ちない修行を積んでいるのね・・、
強い自制心を働かせて、あらゆる誘惑に溺れないよう注意しているのね・・。
いきなり、頬を殴られ、おしっこを直接顔面に浴びるほどの刺激を受けないと、
彼は鎧を脱がなかったと言うことね…」 

「ええ・・、多分・・・、そうだと思う・・・
普段はあの通りまじめ一本で会社勤めをしていて、
宴会の席などで出会う女にも、目をくれない固い男を通していると思う。

そうした生活に疲れると、佐原さんはどこか秘密の場所で、こっそり・・、
彼のM性を満足させる遊びを楽しんでいるのだと思う…、
その時だけ、本来の欲望を彼は自由に発揮できるのだと思う…」

「私たち二人のお色気攻勢にも落ちなかった彼だけれど、
由美子さんがおしっこを掛けて彼の鎧を力ずくではぎ取ったから、
その後は、自由に由美子さんの体を楽しむことが出来たのね・・、
やっぱり、由美子さんは凄い・・・、
彼の本性を見抜いて過激な攻めを実行した由美子さんは凄い・・・」

由美子の説明を聞いて愛は盛んに感心しています。

「私は気が付かなかったけれど、由美子さんは気が付いた・・・、
・・と言うことは、いつも側に居る幸恵さんだって…」

何かが頭にひらめいたようで、愛がここで口を閉じ、じっと由美子を見つめています。

「ああ・・、そうか・・・、
判った・・!」

何かに気が付いた様子です、瞳を輝かせて大きな声を出しています。

「私、大変なことに気が付いた・・・。
幸恵さんの失踪の理由(わけ)がなんとなく見えて来た・・」

「そう・・、愛さんも気が付いたのね…」

由美子も同じ思いらしく、にっこり微笑んでいます。


[22] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(286)  鶴岡次郎 :2015/02/27 (金) 14:11 ID:m7g1CiKY No.2658
「良いい!
私の考えを話すから聞いて・・・、

幸恵さんは佐原さんの変態癖にある時気が付いた・・・、
そのことを知って、嫌気がさして・・、・・と言うより、
変態癖そのものより、そのことを口実にして、
他の女と遊んでいることが許せなくなったのよ、

それで・・、離婚覚悟で家を出たのよ・・。
きっとそうだと思う・・」

思いついたことを愛が興奮した口調で話しています。

「佐原さんは幸恵さんの失踪理由が判らないと言っていたけれど、
本当にそうかしら…、私は違うと思う・・。

彼の変態癖が高じて浮気に走っていたとすれば、
幸恵さんにとって、このことは家出の大きな理由になる。

佐原さんは本当に、幸恵さん失踪の理由に気が付いていないのかしら…、
一緒に住んでいたのだから、
彼女の様子からある程度の心当たりはあるはずだと思うけどね・・・」

「私もそう思ったから、それとなく佐原さんに聞いてみた・・・、
でも、幸恵さんは気が付いていないはずだと佐原さんは言い張るのよ・・、

もし・・、気が付いていたのなら、黙って失踪するはずがないと言うのよ、
勝気な幸恵さんの性格を考えると、
泣き寝入りして家出することなど考えられなくて、
佐原さんの変態癖を直接追及するか、
それが出来なくても置き手紙を残すはずだと言うのよ・・。

もっともな意見だと思ったけれど・・・、
それでも幸恵さんの失踪に佐原さんの変態癖が直接に、
あるいは間接に、絡んでいると私は思っている・・・」

「わたしもそう思う・・・、
ねえ・・・、どうだろう・・、
幸恵さんの失踪は佐原さんの浮気が原因だと彼に教えてやろうよ・・、
彼だって、私達から言われれば、踏ん切りはつくと思う…、
そうすれば、そのことを踏まえて彼なりに行動すると思う…」

「それは出来ない・・・、
佐原さんが浮気をしていると断定する証拠がない・・、
判っているのは、佐原さんが変態癖を持っていることだけよ、
変態癖と言っても、離婚の対象になるほどものではないしね…、
他の女と遊んでいると想像できるけれど、何も証拠がない・・。

仮に、佐原さんの変態癖が原因だとして、
そのことで幸恵さんがどのような問題を抱えていたのか・・・、
変態癖そのものに嫌悪感を持ったのか…、
あるいは・・、他の女と関係を持ったことが許せないのか…、

そして、一番大切なことなんだけれど…、
家出することで、幸恵さんが問題をどう解決するつもりだったのか、
何が目的で失踪したのか、そこのところが私には判らない…、
賢明で、分別のある年齢に達している彼女が、やみくもに家出するはずがない、
彼女なりに何らかの勝算があったはずだと思う…。

何も判っていないこの状態で、早合点して、幸恵さんの家出は佐原さんの浮気だと決めつけ、
佐原さんを刺激するのは危険だと思う・・。
ここは、女同士・・、
彼女の置かれた立場と彼女の考えを尊重すべきだと思う、
軽率な動きをすると取り返しのつかないことになる・・」

「そうね…、幸恵さんの気持ちが大切ね・・
離婚など、全く考えていない可能性だって高いからね…、
私たちが下手に動いて、無理やり別れさせることになっては、
それこそ取り返しがつかないからね・・・」

「幸恵さんに会うことが出来れば一番良いのだけれど」

「そうね・・、彼女に会うことが出来ればいいね・・、
どこに隠れているのだろう・・」

二人の女の会話はここで行止まりました。顔を見合わせ大きな吐息をついています。


[23] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(287)  鶴岡次郎 :2015/03/02 (月) 14:52 ID:5pw./shk No.2659
珍しく、二人の女の口が止まったままです。

「幸恵さん失踪の真相解明に一歩近づいたけれど、
私達が掴んでいる情報だけでは、動きようがない・・
しばらくは静観するより他に手はないようね…」

あきらめた口調で由美子がつぶやきました。

「うん・・・、仕方ないね…、
今日、私たちが話し合ったことは佐原さんには当分伏せておいて、
しばらくは・・、佐原さんを慰めることに専念しよう・・・
私も・・、おしっこを掛けてみようかな・・、フフ・・・・」

「それが良いかも・・、
次は愛さん一人で行くといいよ・・
佐原さんもきっと喜ぶと思う…」

由美子が真顔になって言っています。

「ちょっと・・、冗談よ、冗談・・・
そんなこと主人が許すはずがありません・・、
とても由美子さんの真似は出来ません…」

「それも、そうだね・・、ハハ・・・・」

「そうよ・・、残念だけれど・・・、フフ…、
それにしても、残念ね…、
ここまで真相に近づいていながら、
佐原さんを助けることが出来ないなんて…」

「・・・・・・・・」



週末に二人そろって佐原を訪ねる計画は今まで通り続けることを確認してその日二人は別れました。迷
いに迷ったのですが、由美子は結局、幸恵が時々自宅へ戻っている重要な事実を愛には教えませんでし
た。愛の性格を考えると、そのことを知れば、佐原にその事実を伏せたまま平然と彼と面談することが
難しいと判断して、その事実を由美子の胸の中にしまっておくと決めたのです。当然のことながら、佐
原には当分の間その事実を隠しておくべきだと由美子は考えているのです。


佐原から幸恵探索の依頼を受けた寺崎探偵事務所の調査も暗礁に乗り上げていました。熟年夫妻のトラ
ブルですから、案外簡単に解決すると思っていたのです。幸恵が身を隠しそうな親戚縁者、友人達を当
たればすぐに幸恵を探し出せると踏んでいたのです。ところが依頼を受けてから一週間、そして三週間
経っても幸恵の姿はどこにも見当たらなかったのです。

ここへ来て寺崎探偵は幸恵失踪の理由が単純な夫婦間トラブル、例えば夫に女が出来たなどの理由でな
いとようやく悟り始めていました。

幸恵失踪から8週間が経過しました。さすがにニケ月も不在が続くと幸恵の親族も騒ぎ始めてきました。
佐原も焦り始めていました。当然寺崎探偵へもきつい追及が来ることになるのです。


[24] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(288)  鶴岡次郎 :2015/03/08 (日) 16:09 ID:XdQwC.hk No.2660

ここは鶴岡の自宅です。寺崎探偵は都心の事務所を出て、まっすぐにここへやってきたのです。事前に
何も連絡を入れていませんでしたが、いつもの様に、鶴岡も、由美子も笑顔で彼を迎えてくれました。

「酒癖の悪い俺を避けて、旦那は早々と書斎に籠ってしまったし・・、
由美子さんは、私を見捨てて、台所仕事・・、
哀れな寺崎探偵は一人寂しくグラスを舐めています…」

ウイスキー・グラスを傾けながら寺崎が何事かぶつぶつつぶやいています。言葉とは裏腹にご機嫌の様
子です。独身の気軽な身ですから、月に二度は鶴岡家にこうして顔を出す寺崎です。夕食を食べてその
まま帰るか、泊まり込んで翌朝事務所へ直接出勤したりしているのです。

この日も、夕食が終わった後、一人食卓に残って、ウイスキーを舐めながら、キッチンにいる由美子を
チラチラ見ながら独り言をつぶやいているのです。酒があまり飲めない鶴岡は早々に切り上げて、自室
へ逃げ込んでいます。

「由美子さん・・、佐原さんから聞きましたが・・、
あなたと愛さんは頻繁に佐原さん宅を訪ねているようですね・・。
彼・・、私のことで何か苦情を言っていませんでしたか・・・」

「・・・・・」

「えっ・・、何も聞いていない…
そうですか、それならいいのですが・・・

実は最近、佐原さんから、未だか未だかと・・、
かなり強く追及されているのです。
失踪から二ケ月ですからね・・、旦那にすれば当然です・・。
由美子さん・・、何か手がかりになるモノを掴んでいませんか…」

本当に困っているのか、藁をも掴む心境になっているようで、由美子への質問に本音が見え隠れしてい
るのです。普段なら仕事のことは親しい鶴岡夫妻にも、絶対話さない寺崎ですが、由美子の紹介で幸恵
失踪の調査を佐原から頼まれたので、この件では由美子に相談しても良いと思っている様子です。

由美子がエプロンで手を拭きながらキッチンから出てきました。台所仕事が一段落ついたので、寺崎の
相手をするつもりのようです。笑みを浮かべて寺崎の前に座りました。

「幸恵さんの調査が行き止まっているようね…、
ねえ・・、私・・・、いい情報を握っているの…
まだ誰にも話していないことだけれど、寺崎さんの出方次第では話してもいいわ・・、

私の握っている情報を話すには一つ条件があります・・、
この条件を聞いていただけないのであれば、話せません・・」

胸の広く開いたワンピースを着けていて、家にいる時の習慣で、いつもの様にノーブラです。小ぶりの
乳房が見え隠れしています。夜ですから朱に近い濃い唇を作っています。

〈相変わらずそそる女だ・・・、
俺には抱かせてくれないけれど、
毎日のように違う男がこの女を抱いているのだろう・・、
男達の粘液がこの女の妖しさを育ているのだ…〉

淫らな妄想をしながら、酔眼を凝らしてじっと由美子を見つめています。

「ネエ・・、寺崎さん・・・、
聞いているの・・?」

「エッ・・、ああ・・、条件ね…、
どんなことだろう・・、
由美子さんの頼みであれば、不肖、寺崎探偵、火の中、水の中・・・」

「ああ・・、酔っぱらっているのね…、
大切な話なのよ・・・
酔っ払いには聞かせたくない話なの…。
さあ・・、これを飲んで、気を引き締めてちょうだい…」

由美子の言葉の調子が少し違うことを察知した寺崎の表情が少し変わっています。姿勢を正し、笑みを
消し、寺崎は由美子の顔をまっすぐに見ました。そして、由美子の差し出すコップを受け取り、冷たい
水をゆっくりと喉に流し込んでいます。寺崎の喉仏がゴクリゴクリと蠢いています。口には出しません
が、男の喉仏が動くのを見るのが由美子は大好きです。性的な興奮さえ感じるのです。


[25] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(289)  鶴岡次郎 :2015/03/17 (火) 11:59 ID:g4PEckBk No.2661
喉仏を見て女が興奮していることなど全く気が付いていない男は一気にコップの水を飲みほし、大きな
吐息を吐き出しました。

「ああ・・、美味しい・・・、
これですっきりしました。頭もさえてきました…。
さあ・・・、準備は整いました・・・、
さて・・・、由美子さんの条件とやらをまず聞かせてください・・」

「いいわ・・、私の条件を話すわね…。
私が掴んでいる情報を知れば、
幸恵夫人の隠れ家を簡単に突き止めることが出来ると思う・・・。
そうすれば、寺崎さんであれば二、三日で事件を解決できると思う。
このことを十分承知してほしいの、それだけの価値がある情報だから…」

「大変な自信ですね・・、
興味がわいてきました・・・。
その条件とやらをまず聞きましょう・・・」

無意識に手を伸ばし、ウイスキー・グラスを持ち上げていたのですが、途中で思いとどまり、テーブル
に戻し、姿勢を正しています。

「簡単な条件よ・・、
幸恵夫人を見つけたら、真っ先に私に知らせてほしいの・・、
そして、私が彼女と話をする時間が欲しい、30分で良いわ・・、
その後、ご主人に知らせるなり、彼女を連れて帰るなり、自由にしても良い。
どう・・、簡単な条件でしょう・・」

由美子の表情を寺崎は読み取ろうとしています。由美子はただニコニコと笑っているだけです。

「奥様もご存じだと思いますが、我々探偵には依頼者に対して、その方の秘密を誰にも洩らせない守秘
義務があります。その守秘義務を破るようでは、私の仕事は成り立ちません。

奥様が出された条件はその守秘義務を放棄せよと言うのに等しいのです。
どんなにおいしい情報でも、守秘義務を放棄する価値はありません・・・」

かなり真剣な表情を浮かべ寺崎が語っています。予想出来た寺崎の反応なのでしょう、笑みを浮かべた
由美子の表情は変わりません。

「判りました。おっしゃる通りだと思います。
私が提示した条件は間違いでした。
寺崎さん・・、先ほど言ったことは全部忘れてください・・・」

「いや・・、そう簡単に引き下がられると困ります・・、
由美子さんの情報は喉から手が出るほど欲しいし・・・、
しかし・・、守秘義務は守り切らなくてはならないし・・・
ああ・・・、困ったな・・・」

あっさり条件を撤回した由美子の態度に寺崎が慌てています。思わずテーブルの上にあるグラスを取り
上げ、琥珀色の液体を喉へ一気に流し込んでいます。


[26] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(290)  鶴岡次郎 :2015/03/19 (木) 15:44 ID:ifXyHM4I No.2662

寺崎の困っている様子を、笑みを浮かべて見ていた由美子が悪戯っぽい表情で口を開きました。

「寺崎さん・・・、
私を雇ってくださいませんか・・
臨時雇いで構いませんから・・・・」

「エッ・・、
由美子さんを家の事務所で雇うのですか・・・。

う・・・ん・・・・、
参りました・・・。
その手があったのですね…、

由美子さん・・、
そのアイデアはあなた一人の考えではないでしょう・・」

「ハイ・・・」

「あの野郎・・・、
ご主人ですね、そんな悪知恵を由美子さんに与えたのは・・」

「・・・・・・」

由美子が笑いを押さえながら、黙って頷いています。


寺崎に出す条件を鶴岡に話したところ、守秘義務を盾にして寺崎が要求を飲まないことを指摘されたの
です。どうしても幸恵夫人と話がしたいのであれば、探偵社に雇われて、寺崎の部下になれば、由美子
の計画通り、幸恵が発見された時、真っ先に話をすることが出来るとアドバイスを受けたのです。

「判りました・・、良いでしょう・・・。
今、この瞬間から、奥様を私の事務所の臨時職員に採用します。
そして、早速、佐原幸恵さんの捜査をあなたに命じます。
これで良いですね・・、

さあ・・、情報を全部吐き出して下さい・・」

佐原と寝たことも含め、由美子は掴んでいる情報をすべて寺崎に話しました。手にしたウィスキー・グ
ラスが空になったのも気づかない様子で寺崎は熱心に耳を傾けていました。

「そうすると・・・、あのマンションを張っていれば、忍び込んでくる夫人を発見することが出来るの
ですね、彼女の後をつければ簡単に居所を見つけ出せるはずです。

また、隣の奥さんを訪ねてくるそのヤクザも相当怪しいですね・・、
由美子探偵員の勘を信じて、その男も捜査の対象にしましょう・・
幸恵さん失踪に彼が絡んでいる可能性は高いですね、
おっしゃる通り、数日ですべて明らかになると思います…。

それにしても、これだけの情報を短期間に掴んでくるとは…、
素人にしておくのはもったいないですね…、
それに、真実を探るためとはいえ・・、
その熟した身体を何度か佐原に与えたのでしょう…
普通の女性では由美子さんのような思い切ったことはできません・・

奥さんのような探偵が居れば、私の事務所はもっと繁盛すると思います。
どうです・・、臨時ではなく、正式に家の職員になりませんか・・
ハハ・・、そうすると、Uさんが怒りますかね・・・」

「彼に抱かれたことは主人にも、Uさんにも内緒よ…、
この手以外真実を探る方法がなかったのは事実だけれど、
一方では、彼が好きで、抱かれても良い気になっていたのも事実よ・・・
決して褒められたことでないのは判っています・・」

「勿論・・、彼に抱かれたことを私は決して褒めていません・・・、
これはやきもち半分の、もてない男の独り言ですが、
何度も抱かれたのは・・、やはり、やり過ぎだと思いますよ・・
情報を掴むためであれば一度でいいのです・・・、
何度も、何度もやるのは行き過ぎです・・・・・
これから先は、止めてくださいね…」

「ハイ、ハイ・・・、
止める努力をいたします…」

冗談とも、本音ともつかない寺崎の言葉に、由美子が艶然と笑って答えています。どうやら、佐原家通
いは続けるつもりのようです。


[27] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(291)  鶴岡次郎 :2015/03/20 (金) 13:57 ID:mHYEMAmA No.2663

由美子の情報を得た寺崎探偵事務所の調査は目覚ましい進捗を遂げました。幸恵の仮住まいであるY市
内にある1DKのアパートは直ぐ見つかりました。佐原家の隣、浦上家の主婦、千春、31歳と密会して
いた男の素性もすぐ判りました。

Y市で中規模のソープを経営している男で、名は佐王子保、50歳過ぎで、業界ではかなり有名な竿師
であることが判明したのです。そして、驚いたことに家出した幸恵は佐王子の経営するソープで熟年
ソープ嬢として働いているのです。由美子の直感がまさに的中したのです。

佐王子の後をつけた探偵事務所の調査員は、さらに予想外の事実も掴みました。千春以外に、フォレス
トサイドマンションの住人である複数の女性宅を佐王子が昼間、おそらく当主の留守を狙って、訪問し
ていることが判ったのです。そこで数時間過ごしていることから考えて、それらの女性と佐王子が男女
の関係を持っていることは疑いの余地はないのです。

〈佐王子ほどの竿師が、ただの浮気で女を抱くはずがない・・、
彼に抱かれた女たちを商売に利用するつもりだ…
幸恵夫人の様に、彼女たちをいずれ自分の店で働かせるつもりなのか・・・〉

調査員の報告を聞いた寺崎は最初そう考えたのです。

〈しかし・・、単純にそう考えるのはすこし早い・・、幸恵もそうだが・・、
あのマンションの住人であるセレブな女たちが易々とソープに身を落とすだろうか・・、
幸恵の様子を見る限り、監禁されている様子はない、自由に泳いでいる・・。

金で縛るとか・・、それとも、恥ずかしい写真を公表すると脅かすとか・・・、
佐王子の体で女を取り込むとか・・、最悪ケースとして薬物を使用することも考えられるが・・、
幸恵の場合に限ってみても、そのいずれでもなさそうだ。むしろ、幸恵の自由意思で佐王子の店で働い
ているように見える・・・〉

この時点で、佐王子に強制されてソープ勤めを始めたのか、あるいは幸恵自身の自由意志でその仕事を
始めたのか、寺崎はそのいずれの可能性も否定できずにいたのです。またマンションの他の女と関係を
持っている佐王子の真の目的がどこにあるのかも寺崎は掴み切れていませんでした。しかし、幸恵の居
所を見つけ出す依頼主の要望は達成したことになりますので、寺崎はそれ以上の捜査を中断することに
しました。そして、依頼主への報告に先立って由美子との約束を果たすことにしたのです。

由美子は寺崎探偵事務所の一所員として寺崎所長のお供をして幸恵のアパートを訪問しました。厳密な
ことを言えば、依頼者佐原の了解を得ないで調査対象である幸恵に探偵が接触するのは離反行為なので
すが、寺崎の判断で決行することになったのです。

その日、事前に調べた通り幸恵はオフの日で朝から洗濯や、部屋の掃除をしていました。午前10時ご
ろ寺崎と由美子が幸恵のアパートのドアーをノックしました。アパートは二階建ての木造住宅で6家族
が暮らしていて、一階が子供のいる家族用、二階が独身者用に使われていました。

ドアーを開け、寺崎と由美子の姿を見た幸恵は一瞬不審そうな表情を見せましたが、次の瞬間には二人
の身分も、二人の訪問目的も分かったようで、笑みを浮かべて室内に招き入れました。

6畳の居間兼寝室、4畳半のダイニングキッチン、その他にふろ場と便所、半畳足らずの玄関が備わった
典型的な独身者用のアパートでした。広くて、豪華な幸恵の自宅とは比べようもありませんが、整理整頓
が行き届いていて、住みやすい雰囲気でした。


[28] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(292)  鶴岡次郎 :2015/03/21 (土) 14:43 ID:OhXCPSZ6 No.2664

6畳間に置かれた折りたたみ型のテーブルを囲んで三人が対面しました。寺崎が名刺を出し、佐原の調
査依頼を受けて、ようやく幸恵の居所と、彼女の勤務先を突き止めたことを告げました。どうやら幸恵
は二人の来訪を予想出来ていたようで、慌てたところもなく、緊張もしていない様子です。むしろ、こ
れから幸恵との大切な対話が控えている由美子がかなり緊張している様子なのです。

「そうですか・・、お店のことも調査済みですか・・・
それであれば、私があの店で何をしているのかも全てご存知なのですね・・・。

あれから二ケ月ですね…、
もっと早く見つかると覚悟していたのですが・・、
正直言って、意外と遅かったと思っています…」

寺崎の説明を受けて、幸恵がにっこり微笑みを浮かべて答えました。ソープ勤めを恥じたり、隠そうと
する様子は見せませんでした。
普段着の花柄模様のワンピースを身に付けて、口紅だけでほとんど化粧をしていません。さすがに良家
の奥様然とした雰囲気を保っていて、清楚な美人です。初めて幸恵に会った時から、佐王子は親しい気
持ちになっていたのですが、それはどうやら幸恵の雰囲気、顔だちが由美子に似通っていることが原因
だと納得していました。 

「佐原様よりは奥様の無事と、居どころを見つけるよう依頼されております。その意味で、私どもが受
託いたしました調査依頼そのものは完了いたしております。本日中に調査結果を佐原靖男様に報告する
予定です。

本日こうしてお伺いしたのは、ここに控えております調査員の鶴岡由美子がどうしても幸恵さんとお話
がしたい、ご主人に調査結果を提出する前に、幸恵さんのご意見を聞きたいと申しますものですから、
少し異例ですが、幸恵さんに面談することにいたしました。

本日お話しいただく内容は、幸恵さんのお許しがない限り、佐原靖男様には報告しないことを約束いた
します・・」

「鶴岡由美子と申します…」

寺崎の紹介を受けて由美子が深々と頭を下げています。由美子の表情、そして全身を幸恵がゆっくり見
ています。今日の由美子は紺のテーラドスーツに白のブラウスと言った典型的なビジネススタイルです。

「きれいな方ですね・・、そう言っては何ですが・・・、
探偵事務所には不似合いなほど優しい雰囲気をお持ちですね、
私からどんなことを聞きたいのですか・・?」

由美子に好印象を持ったようで優しい表情で由美子に声を掛けています。

「調査依頼を受けましてから、佐原様とは数回お会いして、親しくお話を伺う機会がありました。お会
いする度に、佐原様の素晴らしい人間性に惹かれて行きました。一人の男性としても素晴らしい方だと
思っています・・・」

「佐原のことをそんなに褒めていただいてありがとう・・・、 
貴女の様に素晴らしい方に褒められるとうれしい・・・」

幸恵はじっと由美子を見つめています。そしてにっこり微笑み、打ち解けた様子を見せています。

「今気が付いたのですが・・・、
由美子さん・・・、あなたは佐原が好きなタイプの女性です・・。

上品で、理知的で、それでいて、得体の知れないお色気が全身からあふれ出ている。多分・・、どんな
男でもあなたに惹かれると思いますが、佐原も間違いなくあなたに惹かれていると思います。

ご存知の様に、固い性格で本音を絶対見せない人ですが、
惚れた弱みで、由美子さんには隙を見せたのでしょうね・・」

「・・・・・・」

幸恵の問いかけに由美子は肯定も否定もしません。ただ笑っているだけです。


[29] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(293)  鶴岡次郎 :2015/03/23 (月) 13:22 ID:mcsKUbGI No.2665
黙って笑みを浮かべている由美子をじっと見つめながら幸恵は女の勘を総動員して、佐原と由美子の関
係を探っていました。

〈ひよっとして・・・、二人は既に深い関係に・・・・
いえ、いえ・・、そんなことはないわね…、
佐原に限って・・・、そんなことはしないはず・・・・
でも・・・、この由美子さんが迫れば、彼だって男・・・、
絶対、起こり得ないことではない・・・、
いや・・、いや・・、
浮気相手の妻の前に、平気で顔を出せるほど由美子さんは厚顔な女ではないはず・・〉

頭をよぎった疑惑を慌てて振り切っています。

佐原と由美子が既に男と女の関係を持っていることを知っている寺崎探偵は幸恵の沈黙の意味を悟りひ
やりとしていました。もし幸恵がその疑惑を言葉に出せば、由美子のことです、幸恵の質問に答える形
で、あっさり佐原と寝たことを告白する可能性もあると寺崎は案じているのです。

「ところで・・、
佐原は私のこと、何か言っていましたか…
あなたになら、他の人には言わないことも漏らしたと思うのですが・・・」

「奥様の家出の原因には心当たりが全くないと言っておられました。
私が拝見する限り、ご主人は奥様のことを信頼し・・、
心から、愛されている様子でした。
今でこそ、多少は元気になっておられますが、
事件直後は傍で見ているのもつらくなるほど、ご主人は憔悴されていました…」

「そう・・・
由美子さんにはよほど気を許しているのですね…、
他人に憔悴したところを見せるなんて珍しい・・・。
悲しい時や、弱ったところを人に見せたことはありません・・・、
まるでライオンのように、いつも戦いの姿勢を崩さない人ですから…」

一瞬悲しそうな表情を浮かべ幸恵が答えています。そして、視線を落とし、何事か考えに耽っているの
です。幸恵が口を開くまで、寺崎も、由美子もじっと待ちました。

しばらくして・・、幸恵がゆっくり顔を上げ、由美子と寺崎の顔を見て、口を開きました。彼女なりに
心の整理が出来た様子です。

「所長さんのお話では、佐原から依頼を受けた調査は既に完了していて、
後は報告書を提出するだけだとのことですね・・・、
それにもかかわらず、貴女は探偵業務のタブーを破って調査対象の私を訪ねて、ここへ来られました。
どうしてそんなことをしたのでしょうね・・」

ある程度まで由美子の訪問目的に見当をつけている口調で笑みを浮かべて質問しているのです。

「正直に申し上げます。
佐原さんの様な素晴らしい方から離れて、黙って家を出られた奥様はどんな方だろう・・、
そしてどんなお考えを持って家を出られたのだろう・・、
家出の先に何を目指しておられるのだろう・・と、素朴な疑問を持ちました。

よろしかったら、家出をされた理由とその目的を教えていただきたいと思って参上した次第です・・・」

「すごく素直な言葉ですね…、
理想的に見える素晴らしい夫を捨てたバカな女の顔が見たい・・、
何不自由ない理想の家庭を捨てた女の本音が聞きたい・・・と、
おっしゃるのね・・・。

どうやらあなたはその答えにおおよその見当は付けている様子ですね・・、
少なくとも、私が男を作って失踪したとは疑っていない…、
どう・・、間違っていないでしょう・・」

「・・・・・・」

由美子が黙って頷いています。

「どんな理由で失踪したにしても、
このまま報告書をまとめれば・・・、
私が圧倒的に不利になると考えたのね・・・、
私を救うつもりでここへ来たのですね・・
貴女の優しい思いやりに感謝します。
改めてありがとうと、申し上げます・・・」

「・・・・・」

由美子は黙って幸恵を見つめていました。賢明にも幸恵は由美子の目的を察知していたのです。


「あなたに習って、私も出来るだけストレートに答えます。
そして、今から答える内容を佐原に伝えるかどうかは、
由美子さん・・、あなたの判断に任せます。
好きなように取り扱っていただいて、私は構いません・・」

幸恵も、由美子も笑みをたたえた表情を変えていません。二人の女は互いに本音を吐き出す相手として
不足はないと思った様子です。寺崎は二人の女の息詰まるようなやり取りを黙って聞いていました。由
美子が暴走しそうであれば止めるつもりでいたのですが、このまま話し合いを続けて良いと判断した様
子です


[30] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(294)  鶴岡次郎 :2015/03/25 (水) 17:45 ID:oh6YFDgM No.2666

それから20分ほど二人の女は語り合いました。互いにこの人ならとの思いがあるのでしょう、失踪の
理由とその目的を幸恵が淡々と語り、時々短い質問を入れながら由美子は熱心に説明を聞きました。寺
崎は口を挟まないで、時々手帳にメモを落としていました。

「これで私の言いたいことはすべて話したわ・・・。
他に何か聞きたいことはある・・・?」

「何もありません・・、
本当にありがとうございました・・。
奥様は私が思っていた通りのお方でした・・」

二人の女は期せずして両手を握り合い、微笑みあっていました。

「今日の話し合いの結果は、ご主人には伏せておきたいと私は思っています。
できれば、奥様も私達とここで会ったことは内緒にしていただけるとありがたいのですが・・・、

そうですか・・、ありがとうございます・・・」

由美子の言葉に幸恵が微笑みで答え、軽く頷いていました。

「この後、奥様の勤務されているお店のことや、そこでの仕事の内容を、何も隠さず、事実をありのま
ま報告書にしたためて、佐原靖男様に本日中に提出する予定です。勿論、先ほどお話しいただいた家出
の真相に関しては、鶴岡由美子が言った通り報告書には何も書きません。

報告書を受け取った佐原靖男様が、その後どのような行動をとられるか私には予測できませんが、佐原
靖男様からご下問があれば、奥様のお店にお客として訪ねることを進言するつもりです。それでよろし
いでしょうか・・・・」

「ハイ・・・・・」

寺崎の言葉に幸恵が笑顔で頷いています。どうやら幸恵自身もそのことを望んでいる様子です。

「もし・・・、ご主人がお店に訪ねてこられたら・・・、
奥様はどのように対応されますか、参考までに聞かせてほしいのですが・・」

「ホホ・・・・、難しい質問ですね・・、
相手の出方次第ですが・・・、
今言えることは、通常通り・・・、
普通のお客様と同じように対応できれば最高だと思っています。
出来るどうか判りませんが、そうできればいいと思っています・・」

「最高です・・・、そうしていただくことが出来れば・・、
わたしから、何も申し上げることはありません・・・。
由美子さん・・、あなたの意見は・・・?」

「勿論、奥様の考えに120%賛成です・・」

幸恵に見送られて寺崎と由美子はそのアパートを辞しました。幸恵も由美子も、そして寺崎も晴れ晴れ
とした表情を浮かべていました。


[31] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(295)  鶴岡次郎 :2015/03/31 (火) 15:42 ID:JIpa2gxI No.2668
その日、佐原は珍しく休暇を取っていました、どうやら午後から私用の予定が入っている様子です。朝
からそわそわして、ゆっくりと進む大時計の針を恨めし気な表情を浮かべて見つめているのです。

トーストと目玉焼きの遅い朝食を済ませた佐原は食器を流しに置いて、居間に戻りました。新聞を取り
上げても活字が頭に入りません。テレビをつけてもこの時間の番組は佐原には馴染みがなく、直ぐ飽き
が来るのです。仕事をしない午前の時間の流れがこんなに緩やかなものだと改めて認識していました。

ようやく予定していた午後二時になりました。自宅前の公園駅から私鉄に乗って30分、Y市の中央駅
に着きます。そこで地下鉄に乗り換えて5分、Y市の繁華街駅を降りて徒歩8分、繁華街から少し離れ
たところにその店はあるのです。

住宅街と飲み屋の連なる商店街の境目あたり、その店のある雑居ビルがひっそりと佇んでいました。常
連客に判ればいい程度の小さな看板が路上に置かれていて、その小さな看板に灯りが入り、その店が営
業中であることを示していました。

狭い階段を上り二階にあるその店の正面玄関に着きました。そこにようやく女たちの顔写真を並べたウ
インドウが置いてありました。その写真の中から幸恵の顔を探し出し、源氏名を確かめました。驚いた
ことに幸恵は実名で店に出ていたのです。彼女を知っている人がその写真を見れば佐原幸恵であること
が容易に判ります。どうやら幸恵には素性をことさら隠す意図はない様子です。

〈ここに潜んでいることを隠そうと思っていない…、
僕に知られることは勿論、知人に知られることも、恐れていない・・、
むしろ、ここに居ることを知ってほしいと思っている様子さえ感じられる…、
僕への恨みがそれほど強いと言うことか・・・、

体を売っていることを知人たちに知らせることで、
彼女自身激しく辱めて、そのことで私を強く罰するつもりだ・・、
おそらく、この事実が公になれば、役員を辞任することになる・・・、
実に巧妙なリベンジ作戦だ…〉

幸恵がこの世界に入った決意の程を感じ取って、胸が痛くなる思いを佐原は噛み締めていました。

扉を開けました、そこは畳一枚ほどのスペースがあり、粗末なカウンターの向こうに立つ、白いシャツ
に黒いベストを着た30過ぎの律儀そうな店員が愛想のいい声を上げて佐原を迎えました。迷わず幸恵
を指名すると、以前に指名したことがあるか否かを尋ねられ、初回だと答えると、店員は少し考えるふ
りをして、今の時間、幸恵は対応可能だが、彼女は特殊プレイが得意なので、普通プレイを希望するの
なら、別の女を選択する道もあると、親切に教えてくれました。

「特殊プレイとはどんなことが出来るのだ・・」

「ハイ・・、家の子は全員、お客様の希望に沿って、どのようなプレイも可能ですが、それでもそれ
ぞれ、最も得意にしているプレィ・スタイルがあります。

幸恵さんは女王様役が得意です・・。

彼女を贔屓にされるお客様は女装されることが多くて、その姿で女王様の苛めを受けるのです。こうし
たプレイがお好みなら、ぜひ彼女をお選びください・・。
どうされますか・・」

「彼女でお願いする・・。
女装して苛められるプレイを希望する・・」

「承知しました・・。
1号室が衣装ロッカーになっております、お好きな衣類をお選びください。
着替えは彼女の部屋、4号室でお願いします・・」

カウンターの男はにこりともしないで事務的にこなし、料金と引き換えに部屋番号札を手渡しました。


[32] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(296)  鶴岡次郎 :2015/04/01 (水) 17:14 ID:oUVvBtsQ No.2669

既に女は部屋で待っていました。男が部屋に入ると、はっとした表情で男を見つめていましたが、直ぐ
に気を取り直したようで営業用の笑みを浮かべ恭しく一礼しました。

驚いたのは男の方です。店のショウウインドウで見た幸恵の顔を頭に描いていたのですが、白髪交じり
の長い髪を肩までたらし、灰色の長襦袢らしきものを羽織り、そこだけが異常に目立つ真っ赤な唇をし
てにっこり微笑んでいるのです。どうやら、ことさら老けたメイキャップを施しているらしく、しわが
目立ち、暗い肌の色なのです。

魔法使い、いや・・、今流行の妖怪砂かけ婆・・、女の姿を一目見て、佐原そう思いました。それでも
清楚な美人である幸恵の面影は色濃く残されていて、奇怪な中に妖艶な魅力が醸し出されているのです。
抑えた照明に照らし出された女の妖しい姿に佐原は我を忘れて見惚れていました。

「ご無沙汰いたしております…、
何時かは、いらっしゃると思っていました…。
ご存知だと思いますが、ここでも幸恵の名前で働いています・・」 

佐原の今日の来訪を予め知っていたような冷静さを見せて、幸恵が挨拶をしています。カウターからの
連絡では初めての客で、50歳ほどの温厚な紳士で、女装でのプレイを好む客だと連絡があったのです。
幸恵にはこの種のお客が一番多いのです。いつもの様に準備を整え、客を出迎えたのです。まさか、佐
原が現れるとは思ってもいなかったのです。

佐原の顔を見て驚いたのは一瞬の間で、懐かしさが込み上げて来て、優しい気分になっています。
寺崎と由美子に出会って以来、佐原と対決するこの日が突然やってくるとの覚悟は出来ていたのです。
佐原の顔を見て、この日が来ることをずっと待っていたことに幸恵は今更のように気が付いていました。

「どうなさいますか・・・、
このままプレイを続けることも出来ますし・・・・、
ここでお話をして時間を過ごすことも出来ます…、
どちらにしても、同じ料金です・・・」

幸恵の優しい声を聴いて、ようやく佐原は我を取り戻しています。

「ああ・・・、そうだな・・・、
少し話がしたい・・、
それにしても、ウイッグとメイキャップの効果は凄いね・・、
すっかり様子が変わって見える…」

「お気に入りませんか・・・、
この店の主人・・、私たちは親方と呼んでいるのですが・・、
その親方の指導で、最初からこの姿で店に出るようにしています…。
案外評判が良くて、ここでは売れっ子なんですよ・・・」

「いや・・、そうだろうね・・・、
僕にとってもかなり魅力的だよ・・、
普段の幸恵もいいが、その姿も素敵だ…」

「ありがとうございます・・・」

「僕が訪ねてきたことに、あまり驚いていない様子だが・・・、
僕が探偵を使って調べることは予想していたのだろうね・・」

「ハイ・・・、
もっと早く見つけていただけると思っていました…」

幸恵の言葉に佐原が何度も頷いています。行方をくらましたものの、幸恵はことさら隠れるつもりはな
かったのです。その証拠にこの店のショウウインドウには幸恵の写真を飾り、実名で店に出ているので
す。出来るだけ早く佐原が幸恵を見つけ出し、最終決着をつけることが幸恵の望みであったのは確かな
のです。その意味で、幸恵が言う通り、ニケ月近く幸恵を見つけ出すことはできなかったのは佐原の失
策と言えます。


[33] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(297)  鶴岡次郎 :2015/04/02 (木) 15:04 ID:5pw./shk No.2670

「ところで突然家出をした理由だが・ ・・、
もしかして・・・、
僕のパソコンを覗いて、僕の汚い性癖を知ったということかな・・・」

「ハイ・・」

「う・・・ん・・・、
やはりそうだったか・・・、
お前の家出を知った時、あの動画が原因だと先ず疑ったのだが・・、
お前がパソコンを使えないと知っていたから・・・、
先ず秘密がバレる心配はないと思っていた…」

「あなたがパソコンを使っているのを日頃から見ていて、私もやりたいと思って、
市が主催したパソコン教室へ内緒で通っていました。
それで、あなたのパソコンを時々覗くようになっていました・・」

「パソコンを勉強していたとはね・・、
一緒に住んでいても案外判らないものだね…、
動画を見た時はびっくりしただろう・・・」

「はい・・・・、
最初はびっくりして・・・、
正直言って・・、
とてもあなたに付いて行けないと思いました・・・
私自身の身の振り方を何とかしなくてはいけないと焦りました・・・・」

「そうだろうな・・、
どんな女でもあの動画を見れば一緒に居たくないと思うはずだ・・・。
何しろ、亭主が女装して、全裸に近い女の手で縛り上げられ・・、
その女からむち打ちを受けて、嬉しそうに悶えているのだからね…」

「・・・・・・」

「私の奇妙な性癖を幸恵に知られるにしても、
あのビデオを見られたのは最悪だった…、
私の不注意から、幸恵に辛い思いをさせてしまった・・・、
言い訳はしない・・・、この通りだ・・・」

「・・・・・・・・」

深々と佐原が頭を下げています。慈愛に満ちた表情で幸恵が佐原を見つめています。

「あの動画を見つけた後、
私一人ではどうすることも出来ないし・・・、
事が事だけに相談する人もいなくて、ただ悩んでいました。

お隣の千春さんご存知でしょう…、
千春さんは若いけれど、男と女の問題については、
私など足元に寄れないほど経験豊富なんです・・・。
彼女なら、いい知恵を出してくれるかも知れないと思いつきました・・。
それで思い切って彼女に相談したのです・・・」

「エッ・・・、
他人にあのことを話したのか・・」

「ハイ・・・、動画も見せました…」

「・・・・・・」

驚きで佐原は次の言葉が出せなくなっていました。


[34] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(298)  鶴岡次郎 :2015/04/03 (金) 16:50 ID:TCW1lzl2 No.2671

いくら親しい仲でも他人にあの動画を見せることなど佐原の常識ではありえないことなのです。佐原の
中に妻への怒りがこみ上げていました。

〈なんてことをするのだ…、
選りによってお隣さんにあの動画を見せるとは…
取り返しのつかないことをしてくれた…

動画をネタにして、恐喝される心配だってある・・、
そうでなくても、これでお隣さんと顔を合わせることが出来ない…〉

外では温厚な人柄で知られていて、その評判を維持するため我慢に我慢をかさね、感情を爆発させるこ
とはないのですが、その反動で佐原は家庭では幸恵に対して暴言を吐くことが多いのです。

この場面でも、負い目がなければ厳しく幸恵を叱りつけるところですが、ぐっと我慢しています。

〈危ない・・、危ない・・・、
危うく幸恵を怒鳴りつけるところだった・・・、
そんなことをすれば、売り言葉に買い言葉で、
幸恵だって黙ってはいないだろう・・、
そうなれば、二人の仲は修復不能になるところだった・・〉

怒りを鎮め、収拾策を巡らしていると、冷静に事態を見極めることが出来ることに佐原は気が付いてい
ます。怒りにまかせて、幸恵を怒鳴りつけていれば、互いの燃え上がった感情に油を注ぐことになり、
つい暴力をふるい、取り返しのつかない事態になっていたかもしれないのです。

〈元を質せば僕のせいだ…、
捨てないで、動画をパソコンに保存していたのが悪いのだ・・、
考えてみれば、ちょっと恥ずかしいことだが、
犯罪行為を隣人に見られたわけではないから・・、
大騒ぎすることはない・・・
しかし、女同士の付き合いとは判らないものだ、
亭主の恥かしい動画を見せるのだからな・・・〉

かっとなった後、冷静になって考えると、女同士の付き合いではそうしたこともあるのかと、まるで他
人ごとの様に、妙に感心する余裕さえ出てきたのです。何事にも失敗を許さない、以前の厳しい佐原で
は考えられない態度です。どうやら、幸恵の失踪事件が佐原を成長させたようです。

「・・・で、お隣さんの反応はどうだったのだ・・」

自身の罪を棚に上げて、動画をお隣さんに見せたことを追求する口ぶりになっています。

「大変なことになった・・、相談に乗ってほしい・・と、
そう言って彼女に動画を見せました。

千春さんは平然として最後まで動画を見ていました。
あまりに冷静な千春さんを見て、私は拍子抜けした気分でした。
私はその気持ちを正直に千春さんに伝えました。

千春さんはにっこり微笑んで・・、
何も知らない私が動転するのは当然だけれど、
男と女の間では、こうした戯れは決して異常なことでなく、
むしろ良くあることだと教えてくれました。
その言葉で私は随分と慰められました・・・。

正直に申し上げます。
動画を見た直後は、私は生きてゆく気力さえ失っていました。
今日こうしてあなたと何とか向き合っていられるのは・・、
すべて・・、千春さんのおかげです。
もし彼女のアドバイスがなければ、
多分・・・、私は・・、酷い誤解をしたまま・・・・」

ここで幸恵は言葉を飲み込み、大きく深呼吸しています。その時のことを思い出したのでしょう、こみ
上げる大きな感情のうねりをゆっくりと飲み込んでいる様子です。

幸恵の様子を見て、結果として千春に相談したことは正解であったと佐原は気が付いていました。誰に
も相談できないまま、一人で問題を抱えていれば、幸恵の精神は崩壊していたかもしれないと佐原はよ
うやく気が付いていたのです。


[35] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(299)  鶴岡次郎 :2015/04/06 (月) 11:31 ID:P8j6s6.Y No.2672
なぜソープに身を沈めたのか、それが佐原の中で一番肝心な、そして一番大きな疑問でした。佐原への
あてつけ行為だとしても、いきなりソープ勤めを選び、その計画を実行するのは、幸恵一人の知恵では
無理だろうと思っていたのです。千春の登場で佐原は幸恵失踪の影に千春が居ると察知しました。そこ
で、思い切って質問することにしたのです。

「千春さんがこの店に勤めることを薦めたのか・・・」

「この仕事を選んだのは私一人の考えで、誰かに勧められたわけではありません。
あの動画を見て、あなたがあのような行為が好きだと判り、
考えに考えた末、思い切って、ソープの仕事をすることにしたのです。

そのことを千春さんに告げると、佐王子さんと引き合わせてくれたのです。
佐王子さんはこの店のオーナで千春さんとは古くから知り合いで・・・、
・・と言うより、親方は千春さんの愛人なのです・・。

親方との関係は千春さんのご主人も認めています。
三人の関係はとても複雑で、私には良く判りません・・。

その方にも、動画を見せ、ソープで働きたいと伝えました。
その方はちょっと考えた後・・・、
詳しい事情は何も聞かないでいろいろ便宜を図ってくれました。
お陰で、家出をした翌日からお店に出るようになりました…」

幸恵は淡々と話しています。それでも、なぜ、ソープで働くことにしたのか、肝心のその理由は明確に
は話しませんでした。この場でその理由を明らかにしないのは、佐原への心遣い、優しさなのだと佐原
は理解していました。


幸恵がY市の佐王子の店で体を売るに等しい仕事をしていると、寺崎探偵事務所から報告を受けた時、
びっくりしましたが、佐原はそれほど意外だとは思いませんでした。パソコンの動画を見た幸恵がリベ
ンジ(報復)のためその店で働くことを選んだと佐原は受け取ったのです。

日頃は優しく、大人しい女性ですが、芯の強いところがあり、酷い仕打ちで佐原に裏切られたと判れば、
リベンジのため自分の体を売ることだってやり遂げる女性だと佐原は考えたのです。

そして、そうした突飛な行動の裏に千春と彼女の愛人である佐王子が存在することを佐原は幸恵から教
えられたのです。おそらく、千春も、佐王子も、幸恵から詳しい説明を受け、彼女に同情して、リベン
ジに肩を貸す気持ちになり、協力を申し出たのだと佐原は考えたのです。

実は、寺崎探偵事務所は幸恵と面談して、千春の存在も、佐王子と幸恵の関係も、全て知っていたので
す。しかし、佐原に提出した報告書にはそのことは一切書かなかったのです。佐原は幸恵から始めて千
春と佐王子の存在を知らされたのです。 


「お前からいろいろ説明を聞いて、
お前の家出の真相がようやく理解できた。
全ての背景が判っても、お前を非難する資格が僕にないとの思いは変わらない。

本来であれば真っ先に頭を下げ、お前の許しを請うべきだったが、
つい・・、いろいろな質問を重ねてしまったことを許してほしい・・・
幸恵・・・・」

ここで佐原は姿勢を正し、床に両手をついて、深々と頭を下げました。突然のことですから、幸恵は
びっくりして佐原を見つめています。

「君に対して僕は酷いことをしたと思っている・・。
決して許されることではないと思っている・・。
改めて、心からお詫びをしたいと思っている…」

「・・・・」

床に頭が着くほど深々と頭を下げる佐原に幸恵が優しい視線を送っています。


[36] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(300)  鶴岡次郎 :2015/04/08 (水) 14:39 ID:XdQwC.hk No.2673
深々と頭を下げて心から謝った、ここで佐原は止めておくべきでした。しかし、黙って家出をして、あ
ろうことかソープに身を沈めた幸恵に対して、抑えきれない不満、怒りが、心の隅のどこかに存在して
いたのでしょう、抑えに抑えていたにもかかわらず、最後になって図らずもそれが吹き出てしまうので
す。多分、準備していた佐原のシナリオにはないセリフを吐き出すことになったのだと思います。

下げていた頭をゆっくり持ち上げ、幸恵の顔を見つめて、佐原はゆっくり口を開きました。

「しかし・・・・、
俺が酷いことしたからと言って・・・、
お前が自分の体を汚すことまでしなくてもよかったと思う・・
それでは・・、あまりにお前が哀れだ…
僕の秘密を掴んだ時、そのことを一言、言ってくれればよかったのだ・・
話し合いで解決することだって出来たはずだと思うのだが・・・・」

「・・・・・」

それまで佐原の謝りの言葉に笑みを浮かべて耳を傾けていた幸恵ですが、次の瞬間、はっとした表情を
浮かべ、息をのみ、佐原を見つめる瞳に、見る見る内に涙が溢れ出ています。彼女の表情を見て、佐原
は言い過ぎたことにようやく気が付いていました。

「ゴメン・・、ゴメン・・・、
ああ・・・、なんてことを言ってしまったのだ…、
こんなはずではなかったのだが・・・
お前を非難するつもりなど、最初からなかったのに・・・」

「いえ・・、良いのです。
あなたからどんなにひどいことを言われても、
それは当然だと思います・・。
私は堪えなけれがいけないのです…」

幸恵にとっては、佐原の非難の言葉は十分に予想できた内容でした。無謀な幸恵の行動を何時、非難さ
れるか怯えていたのです。それがこの場で出てきたのです。

大きな声で反論することを予想していた佐原の予想は裏切られました。幸恵は抑えた調子でゆっくりと
口を開きました。

「あなたのおっしゃることは正しいと思います。
でもこれだけは言わせてください・・・」

涙を浮かべた瞳をいっぱい開いて、幸恵は佐原を見つめています。佐原はその視線に堪えられなくて、
目を逸らし、下を向いています。こんな時、激しく罵倒された方が佐原には良いのです。冷静に対応さ
れると佐原自身の愚かさが浮き彫りになるように感じられるのです。

「今なら・・・、
冷静に考えることが出来る、今なら・・・、
あなたのその言葉が正しいと、私も思います・・・」

ここで言葉を飲んで幸恵は佐原をじっと見ています。幸恵の言葉が止まったので佐原が視線を上げまし
た。佐原と幸恵の目が会いました。幸恵が何を言い出すのか混乱した佐原の頭では全くわからないので
す。ただ、ただ・・、幸恵の怒りがこれ以上膨張しないことだけを祈っていたのです。


[37] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(301)  鶴岡次郎 :2015/04/09 (木) 15:46 ID:ufdy0c1A No.2674

佐原をじっと見つめて幸恵がゆっくり口を開きました。

「でも・・、あの時は・・・
それ以外の選択肢が私には考えられなかったのです・・・、
それほど私は追いつめられていたのです・・・・

あのビデオを見て、あなたの喜ぶ姿を見た時、
私の存在そのものが否定されたと思いました・・・、
何とかしなくてはいけないと思ったのです・・・・」

「そうだろうな・・・
僕は酷いことをしたのだからな・・・
お前が途方に暮れ、正常な判断ができなかったのは当然だ、

先ほどはうっかりお前の行為を責めてしまったが・・、
お前を責めるつもり気など最初から持っていないのだ…、
悪いのは僕で、お前には何の落ち度もない・・、
改めて謝りたい・・、この通りだ・・・・」

佐原はすっかり落ち込んで、深々と頭を下げています。

「そんなに頭を下げないでください・・・、
今、冷静に考えれば、別の道もあったと思っています・・、
謝らなくてはいけないのは、むしろ私の方です・・・・」

「お前に謝る理由はない・・、
悪いのは僕だ…」

「いえ・・、私こそ…
あなたに無断で、この店で働くことにしたのですから・・
結果としてあなたを裏切り、私自身を汚しました…」

「いや・・、そうさせたのは僕だ・・・、
僕の方が悪い・・・」

「いえ・・、私の方こそ…
もっと冷静に考えるべきでした…」

二人は互いに頭を下げ合っています。

「これでは切がありませんね…」

「そうだね・・、両者痛み分けとするか・・
どうだろう・・・、
全て、無かったことにして、元の鞘に戻るとするか…」

「エッ・・、今・・、なんと言いました・・・・。
許してくれるのですか・・・」

「ああ・・、
お前さえ良ければ、戻ってきてほしい…」

「そんな・・・、
許されるとは夢にも思っていませんでした・・、
本当にいいのですか・・・」

許すと言う思いがけない佐原の言葉を聞いて涙ぐみながら無理に笑みを作ろうとしています。

「うん・・、
この店に来た最初から・・、
僕はお前との仲を元に戻すつもりだった・・
その考えは今も変わりない・・・・」

「本当にいいのですか・・・
元々、あなたが嫌で家出をしたわけではなかったので、
もっと早い時期に見つけ出していただいていれば・・・、
事情を話せば、私のわがままを受け入れていただき、
少し汚れたけれど、この程度なら我慢できると認めていただき・・・、
お許しが出て、元の鞘に収まることが出来ると期待しておりました…」

「・・・・・・・」

幸恵の言葉に、佐原が、そうだろう・・と言う表情を浮かべ、何度も頷いています。

「でも・・、一ケ月経ち、二ケ月経ってもあなたは現れませんでした。
私は見捨てられたと悟りました…。

自身の愚かな行為から出た結果とはいえ・・・、
私は戻るべき道を失ってしまったと思いました・・

今日・・、あなたの顔を見た時、うれしかったけれど・・・、
遅すぎたと・・・、心中で泣いていました・・。
戻るにはあまりにも、この世界にどっぷりつかってしまっていたからです。
こんなに汚れてしまっては、あなたの傍に戻れないと泣いていました・・。

まさか・・、許していただけるなんて・・・・、
夢のようです・・、

本当にいいのですか…、
こんなに汚れはてた私を許してくれるのですか・・」

涙をあふれさせ、幸恵は必死で尋ねています。笑みを浮かべて佐原が何度も、何度も頷いています。
そして、ゆっくりと幸恵を抱きしめました。

「うれしい…」

佐原の体を力いっぱい抱きしめて、声を上げて幸恵は泣いていました。
2015.4.10(@一部修正)


[38] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(302)  鶴岡次郎 :2015/04/10 (金) 12:03 ID:1NcWJPlI No.2675
2015、4、10、 記事番号2674に一部修正を加えました。再読いただければ幸いです。


女を抱きしめていた手を緩め佐原が女の顔を真正面から見ています。ほとんど唇が接触するほど二人は
接近しているのです。笑みを浮かべて男が囁きました。

「そうと決まれば・・、
せっかくの準備を無駄にしたくないね…、
ここで楽しませていただくか…」

「はい・・、そうさせてください・・・、
修行の成果をあなたに見ていただくのを楽しみにしていました。
わずか、ニケ月足らずの修行でしたが・・、
親方からも・・、
ご指導いただいたお姉さん達からも、
何時、卒業しても良いと言われています・・・。
私・・、才能があると言われているのですよ・・・・」

「えッ・・・?
修行・・・?
卒業・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

愕然とした表情を浮かべ、言葉を失い、佐原がそのまま凍り付いたように幸枝を見つめています。不審
そうに笑みを浮かべて女は男の顔を見ていました。

「そうか・・・・、そうだったのか・・・・、
幸恵・・、もしかして・・、お前は…」

驚愕の表情を浮かべ、女の体から手を離し、一、二歩後退して、その場に崩れるように床に膝を着けま
した。そして膝に両の手を着いて、幸恵をじっと見上げています。無邪気に笑みを浮かべていた幸恵が
夫の突然の変貌に驚き、狼狽えています。

「そうだったのか・・・、
ああ・・・、僕は大変な思い違いをしていた…
そこまでは考えられなかった・・・・・」

がっくりと頭を垂れて、佐原は両膝に両手をついて肩を落としています。これまでこれほど落ち込んだ姿
を幸恵に見せたことはないのです。

「どうしたのですか・・・?
私・・・、何か気に障ることを言いましたか…」

夫の急変に幸恵は動転して、彼の言葉をほとんど理解していませんでした。それで、夫の急変が自分の
心無い言葉のせいかと幸恵は考えたのです、しかし、どう考えても思い当たることはないのです。

「ああ・・・、匂いですか・・・、
匂うんですね…、
嗚呼・・・、どうしょう・・」

幸恵はあることを思い出していました。この世界に入った時、先輩から教えられたことがあるのです。

「この世界に長く居ると、いつの間にかソープの匂いが体に染み込むもんだよ・・、
いくら外見を飾っても、判る人が嗅げば・・、
その世界の泥水にどっぷりつかった女であることがバレちゃうんだよ・・、
幸恵さんも、そうなる前に足を洗いな…」

わずか二ケ月とはいえ、この世界にどっぷりつかり込んでいる幸恵は、消すことが出来ない〈娼婦の匂
い〉をすでに発散させるようになっていると危ぶんでいるのです。

〈匂う…、汚れ果てた匂いだ・・、
贔屓にしていたあの女もこんな匂いをさせていた…
ここまで堕ちているとは思ってもいなかった…〉

かって買った娼婦と妻の匂いに共通点を認めて、妻の実態を改めて認識した佐原は、妻が遠くへ去った
こと悟り、大きなショック受け、その場に跪いたのだと幸恵は考えたのです。

おろおろして夫の肩に手を触れようとして、触れてはいけないものに触れたように慌てて手を引っ込め
ています。汚れはてた体で夫に触るべきでないと、妻はとっさに悲しい判断をしたのです。


[39] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(303)  鶴岡次郎 :2015/04/11 (土) 16:19 ID:phoC0qA. No.2677

傍から見ていると二人の会話は全くかみ合っていないのですが、そのことに二人は全く気が付かないの
です。幸恵と同様、佐原も幸恵の言葉を理解できないほど混乱していたのです。幸恵のつぶやきに耳を
傾ける余裕が無かったのです。男と女も相手を思う気持ちが強すぎて、肝心の相手の言葉を少しも聞い
ていなかったのです。

「幸恵・・・、
お前は・・、
変態趣味の僕を捨てたのではなかったのだね・・」

「変態趣味・・・?
あなたを捨てる・・・?

嗚呼・・・・、そうだったの・・・・
私が嫌いになったのではないのね・・・・」

ここへ来てようやく、男の言葉に耳を傾ける余裕が女に出来た様子です。女の心配したことではなく、
男は意外なことを女に語っているのです。

「僕のことを思って苦界に身を落としたのだね・・、
こんな恰好までして、好きでもない男に抱かれてきたのだね…
全ては、僕の変態趣味を満足させるための修行だったのだね…」

「・・・・・・」

床に座り込み、膝に両手を着いて、幸恵を見上げて涙をあふれさせながら、佐原は声を絞り出すように
して話しています。責められているのでないと察知した幸恵に更に余裕が出来ています。男の言葉に
こっくり、こっくりと女は何度も頷いています。

「幸恵・・、お前と言う奴は…、
薄汚い僕の好みを満足させるため、この世界に入ったのか・・・
そうだったのか・・・・」

頭を垂れ、佐原はじっと考え込んでいます。そして、ゆっくりと頭を上げました。ひと時の興奮が去り、
いくらか、男も冷静さを取り戻している様子です。

「僕は大きな誤解をしていたようだ・・・、
てっきり、裏切った僕に仕返しをするため、
見せしめのため・・、
お前はここで体を売っていると思い込んでいた…」

「そんな・・・、
そんな・・・、仕返しだなんて・・、
一度もそんなことは考えたことがありません・・」

全身を振って夫の思い込みが間違いであることを妻は示そうとしています。佐原が笑みを浮かべて頷い
ています。

「ああ・・、判っている・・・、
今やっと、幸恵の本心が判った・・・。

それにしても・・、ビデオを見て・・、
僕のことを汚いとは思わなかったの…?
軽蔑されても当然の俺をなぜ許したの?…」

「汚いなんて一度も思ったことはありません・・・、
ビデオを見て、びっくりして、戸惑ったことは確かです・・。

でも・・、普段のあなたを良く知っている私には、
ビデオの中のあなたはただ戯れているだけだと判っていました・・。
あの姿があなたの全てだなんて、思うはずがありません…。

それに・・・、
お隣の千春さんも男女の仲ではごく普通のことだと言ってくれました・・・」

「・・・・・・・」

言葉もなく佐原は幸恵を見つめ、じっと彼女の言葉を噛み締めていました。


[40] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(304)  鶴岡次郎 :2015/04/14 (火) 12:36 ID:gJ5zJFG2 No.2678
体から立ち上がる娼婦の匂いを夫に悟られたと妻は不安と絶望感を抱き、一方夫は、隠れて変態的な買
春をしたことへの仕返しのため妻が売春婦に身を落したと受け止めていたのです。互いに相手の気持ち
を誤解していたことを知り、幸恵はすこし落ち着きを取り戻しています。そして、愚かな誤解をしてい
た夫に女の本当の気持ちを語り聞かせるべくゆっくりと話し始めました。

「ゴルフも、囲碁も、釣りも、あなたの好きなことを私は何もできません・・、
私はいつもあなたに一方的に可愛がられているだけです・・。
パソコンを習い始めたのも、あなたとの会話の足しになればと思ったからです・・」

幸恵の語りを聞きながら、佐原は徐々に冷静さを取り戻していました。自身の気持ちを切々と語る妻を
かわいいと思えるほど余裕を取り戻していたのです。

「ビデオの中であなたがとても楽しそうにしているのを見て・・、
あの女に強く嫉妬しました・・。

あなたをこんなに喜ばしたことが一度もない・・、
愛しているあなたを喜ばせたい・・・、
この女に負けたくないと思いました…。

出来ることなら、ビデオの中に居る女の様に振る舞いたいと思いました。
でも・・、私にはできないことは最初から分かっていました・・。

千春さんの紹介で出会った親方が、お店で修業すれば、
私でもビデオの中の女のように成れると保証してくれました。
私はびっくりしました・・。

あなたを喜ばせることが出来るのなら、私はどうなってもいい・・・、
そう思うと、後先のことは考えないで・・・、
夢中でこの世界に飛び込んでいました・・・」

「・・・・・・」

佐原は黙って幸恵の言葉を聞いていました。あふれ出た涙が頬を伝わり、男の顎から床に落ちていまし
た。

「それでも、知らない男達に毎日抱かれていると・・、
ふと・・、
平凡だけれど、何も後ろめたさが無かった昔の生活を思い出し、
こんなことをしていては・・、
こんなに汚れてしまっては・・、
とてもあなたの処へ戻れないと・・、
後悔と罪悪感に苛まれることが多くなっていました・・」

佐原の前に座り込み、幸恵も涙をあふれさせながら話しています。

「今日・・、あなたの顔を見た時・・・、
これで、全てが終わったと思いました・・。
修行の成果をあなたに見せて・・、
その後、黙って、今度こそ、絶対見つからない処へ、身を隠すつもりでした。

あなたは許すといってくださいましたが・・・、
私がこのニケ月してきたことを考えると・・・、
元に戻れるとは思っていません・・。
このまま、捨てられても文句は言えないと思っています・・」

覚悟を決めた表情を浮かべ幸恵は佐原の顔をまっすぐに見ていました。どうやら、幸恵は、自身の犯し
た罪を考えると、許されるべきでないと覚悟を固めている様子です。


[41] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(305)  鶴岡次郎 :2015/04/15 (水) 14:10 ID:AKg2Rbu2 No.2679

覚悟を決めているのでしょう、さわやかな表情で幸恵は口を開きました。

「これだけは絶対言わないでおこうと思っていたのですが・・・、
このまま別れることになれば、その機会もなくなると思いますので、
正直に申します…。

あなたのためだと思って、この世界に入りましたが・・、
途中から・・、この世界に居ることが好きになっています…。

毎日たくさんの男にちやほやされ、
抱かれて、喜悦の限りを味わい・・、
このニケ月間、私は幸せでした…」

佐原を喜ばせる技を身に付けたいと思って、ソープの世界に入ったのですが、たくさんの男達の愛撫に
溺れ、佐原を喜ばせる技を身に付けるという最初の目論見をとっくにクリアしているにもかかわらず、
幸恵は店を辞めなかったのです。もし、佐原が現れなかったなら、行き着くところまでこの世界で生き
てゆく覚悟さえ固め始めていたのです。この世界の水にどっぷりつかり、この世界で生きてゆくことに
生きがいさえ感じ始めていたのです。

「私は…」

「幸恵・・、
もう良い・・、もう良いんだ・・・、
もう・・・、何も言わなくても良い・・」

佐原がやさしく幸恵の言葉を遮りました。

「お願いだ・・、
僕の処へ戻ってきてほしい・・・」

「あなた…、
本当にいいのですか・・・・」

「・・・・・・・」

佐原は黙って幸恵を抱きしめました。二人はその場でしっかりと抱き合っていました。


しばらく抱き合っていたのですが、佐原がゆっくりと幸恵から体を離し、彼女の頬を両手で挟み込み、
囁くように口を開きました。

「幸恵・・、
いけないことをしてきた僕を懲らしめてほしい・・」

佐原が熱い目をして幸恵を見つめ、声を弾ませながら話しかけています。かなり興奮している様子です。
佐原の中でM男が首をもたげ始めているのです。

幸恵がゆっくり立ち上がり、佐原を見下ろしています。欲情する男を見て、どうやら幸恵の中にS老女
の魂が戻ってきた様子です。

「ああ・・、老女様・・、
悪い私に罰を与えてください…」

着ていた衣類をその場で脱ぎ取り、ショーツ一枚になり、幸恵の・・、いえ、老婆の手を握り佐原が懇
願しています。

男の手を振り払い、かなりきつい表情を浮かべ老女が口を開きました。

「薄汚い奴だ・・、裸では目障りだ・・、
これを着なさい・・、これがお前のような男にはお似合いだ・・」

老女がそばにあったワンピースを男に投げ与えました。花柄模様のミニのワンピースです。嬉々として
男がワンピースを身につけています。

「その汚いショーツを脱ぐんだ・・・」

男は言われたとおりその場でショーツを脱いでいます。その場に跪いた男のミニのワンピースの裾を持
ち上げ、勃起した男根の先端が老女を睨みつけています。

「その気になって・・、
一人前に、汚いチ○ポを立たせている・・・、
いやらしい奴だ…」

女が足を上げて男の肩を軽く蹴り、男が大げさな身振りで床に仰向けに倒れ込んでいます。老女が男の
体を踏みつけています。体重を加減して足をのせているのですが、ワンピース姿の男は大げさに四肢を
ばたつかせて大声を上げています。ガウンの下に老女は下着を着けていません、久しぶりに妻の股間を
見た男は更に興奮しています。

男も女も手慣れた様子で演技をしています。男にとっても女にとっても初めての演技相手ですが、二人
にとってはこうしたプレイは何度も繰り返してきた慣れた芝居なのです。

それから一時間余り、あたりに響くような喜悦の声を張り上げて二人はたわむれました。何度か挿入し、
女が数回逝った後、男が最後に女の中に精液を注ぎ込み、さしもの長い戦いも終わりを迎えました。二
人にとって、生涯最高のセックスになったことは疑う余地がありません。


[42] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(306)  鶴岡次郎 :2015/04/16 (木) 17:18 ID:VmfSd7pU No.2680

着替えた幸恵がロビーで待っている佐原のところへやってきました。淡い色のワンピースにカジュアル
シューズのごく普通の主婦の姿です。

「親方にお別れの挨拶をしてくるわ…」

ロビーの側にある店長他スタッフの控室に通じるドアーの方向へ向かおうとした幸恵の手を佐原が捉え
ました。

「今・・、
急いで辞めることはない・・」

握った手を離さないで、笑みを浮かべた佐原が幸恵に優しく語り掛けています。

「エッ・・・
今・・、何と言った・・・?
辞める必要はないといったわね…、
本気なの・・・?」

びっくりした表情で幸恵が佐原を見つめて、問いかけています。

「僕はどちらかと言うと・・、
この店で働き続けてほしいと思っている・・。
勿論、お前が辞めたいと望んでいるのなら、話は別だが・・・」

「それでいいの・・・、
会社に知れると大変なことになるよ・・」

「ハハ・・・、勿論、会社や近所に知られては困るよ…、
奥さんがソープ勤めをするほど旦那の稼ぎが少ないと思われると、
僕の立場がなくなるからな・・・・・
そこのところは、隠し通してほしい・・・・」

「もう・・、そんなことを言って・・・、
本当にいいの、本気にするよ・・、
あなたが許してくれるなら・・・・、
私はこのまま、この仕事を続けたい・・」

「なら・・、そうするといい・・・、
僕もここで働く幸恵が好きだよ・・」

「うれしい・・、
なんだかすべてが思い通りになって・・・、
夢を見ているみたい…」

思ってもいなかった展開で幸恵は興奮して、はしゃぎ気味です。彼女がはしゃぐのは無理がないと思え
ます。思えばこのニケ月間、それまでは夢にさえ見たことがなかった世界に身を投じ、日ごとに違う男
に抱かれ、驚きと悦楽を交互に味わい、そして、アパートに戻れば、不安、焦燥、後悔と・・、ありと
あらゆる感情の荒波に曝され続けてきたのです。並の女性なら、堪えきれなくて、佐原の元へすごすご
と戻る道を選ぶか、誰も知らない土地へ逃げて行ったと思います。よく堪えたといえます。

一方、妻の喜ぶ姿を見ながら、佐原は複雑な気持ちで幸恵を見つめていました。

〈想像した以上に幸恵はこの世界に溺れこんでいる様子だ…、
もし・・、ここを辞めて元の生活に戻しても、
今の様子では、いずれここへ戻ることになるだろう・・、
その時は多分・・、離婚届を残して家出をするだろう・・・。

僕たちが選んだ道だ、どんなことになろうとも、
幸恵を守り、二人で新しい世界を開くのだ・・・〉

幸恵の仕事を続けさせると決断した佐原は、今、未知の世界に一歩踏み出したことをしみじみと噛みし
めていました。


[43] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(307)  鶴岡次郎 :2015/04/17 (金) 17:09 ID:MO/eS5cg No.2681

「お言葉に甘えて・・、
そうさせていただきます…。
勝手なことばかりして、本当に申し訳ありません・・。
でも・・、本当に・・、うれしい…」

幸恵が深々と頭を下げています。

「そうだ・・・、今日のことを親方に報告してきます。
あなたが来たことは親方に伝わっていると思うから・・、
あれでいろいろ気を使う人なのよ・・、
心配していると思うから事の顛末を報告してきます・・」

佐原に背を向けて店長室の方向を一歩踏み出した幸恵がそこで突然立ち止まり、振り返り、かなり高い
声で佐原に声を掛けました。

「そうだ・・、
せっかくだから、あなたも親方に会ってほしい・・・
会えばわかると思うけれど、中々の人物よ・・・」


ドアーをノックすると、内側から扉が開いて、満面に笑みを浮かべた佐王子が佐原夫妻を迎え入れま
した。

「ご主人が来ておられると聞いておりまして・・、
どんな様子かと、少し心配しておりました…。
お二人でここへ顔を出されたということは、悪い話ではないようですね・・」

二人が部屋に入ってきた様子から、事の展開を佐王子はある程度まで読み切っていたようです。

幸恵が手短に事の経過を報告しました。佐王子は何度も頷きながら、上機嫌で聞いていました。

「今、幸恵が報告しましたように、私達夫婦は元の鞘に収まります。
元をただせば私の悪い癖が原因ですから、今回のことに関しては、
幸恵には感謝こそすれ、不満も、怒りも何もありません。
佐王子さんには随分とお世話になりました。改めてお礼申し上げます」

佐原が心から佐王子にお礼を言っています。

「そんなに丁寧にお礼を言われると、どうお応えしていいか戸惑います。
奥様をこの店で働かせている張本人ですから、ご主人がお見えになったと聞いた時から、
一、二発殴られるのは覚悟していたのです。それが、事もあろうにお礼を言われるとは・・。

こんな商売をしていると、人様から感謝されることが少ないのです。
当然のことですが、店で働く女の子のご主人とはこうして会うことさえも稀で、
まして、ご主人からお礼を言われたことは一度もありません。
逆に、脅かされたり、泣かれたりするのはいつものことですが・・・、
ハハ・・・・・」

佐王子が笑い、二人も笑みを浮かべています。

「ところで・・、
幸恵さんはここの勤めを続けたいと希望され、
ご主人もそのことを認めていらっしゃるとのことですね…」

「はい・・、
幸恵がその気になっていますから、好きにさせようと思っています。
いえ・・、正確にいうと・・・、
私自身も・・、幸恵がこの商売をつづけることを望んでいます。
お笑いください・・、
そのことを考えるだけで酷く妬けるのですが・・、
その刺激を考えると、興奮するのです・・・・」

ソープの店主が相手ですから、何も隠さないで恥ずかしい性癖を佐原は隠そうとしていません。

「そうですか・・・、
やはり・・、仕事をつづけるつもりですか・・・・・、
困りましたね…」

簡単に仕事の継続を認めてくれると思ったのですが、意外に難しい顔をする佐王子を見て佐原と幸恵が
不安そうな表情を浮かべています。


[44] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(308)  鶴岡次郎 :2015/04/20 (月) 11:14 ID:qmsjrXpY No.2682
佐原と幸恵の顔をちらと見て、直ぐに視線を外し、テーブルからコーヒー・カップを持ち上げ、中の液
体を一口、口に含み、不味そうな表情をうかべています。

「いえね・・、
幸恵さんがここでの勤めを続けていただくのは、正直言ってありがたいことです。
幸恵さん目当ての常連客もかなりいて、
これから先、ひいきの客がもっと増えるのは確実です・・」
 
「・・・・・・」

それなら何も問題ないだろうと、佐原も幸恵も胸をなぜおろしています。

「ご主人のためソープの技術を身に付ける大きな目的を持って身一つで家を出た幸恵さんは、アパート
代を含めた生活費を稼ぐ必要もあり、これまでは、本当に良く頑張りました。

体の調子が悪い時、嫌なお客の相手をする時、どんな時でも幸恵さんは笑顔で接客してくれました。そ
れだからこそ、トップグループに入るほどの売り上げを上げることが出来たのです。

元の裕福な家庭に戻り、稼ぐことが目的でなく、遊びが目的でこの商売をやることになると、以前のよ
うな接客が出来なくなるのが人の常です。幸恵さんに限ってそんなことはないと、私も思いたいのです
が、心配は残ります・・・」

話の途中から幸恵の表情が変わりました。穏やかに話しているのですが、佐王子の一言、一言が幸恵の
体を刺し貫いているのです。

「悪いことは言いません、旦那様と和解できた今が足を洗うチャンスです。
どんな職業でも未練を残しながら引退するのが良いのです。
どうにも動きが取れなくなってからでは遅いのです。
ここでのニケ月間は夢を見たと思ってください・・」

ここで佐王子は口を閉じ、二人の表情をじっと見つめています。幸恵は下を向き何事か考えに耽ってい
る様子です。佐原はしきりに頷いています。二人の様子を見た佐王子は彼らの反応に手ごたえを感じ
取った様子で、更に言葉を続けることにしたのです。

「今から話すことは、素人の方には話したくないことなのですが、事がここまで来ると黙って居るわけ
にはまいりませんので、思い切って話します。かなり衝撃的な話ですので、ここで聞いたことは、決し
て口外しないでください・・、宜しいですか・・・?」

「・・・・・・」

佐原と幸恵が不安そうな表情を浮かべ、それでもこっくりと頷いています。

「良いでしょう・・、それでは話します・・・。

たくさんの男と接して経験した悦楽の記憶は幸恵さんの体のあちこちに残り、幸恵さんをこれから先、
悩ませると思います。

ストレートに言えば、旦那様がどんなに頑張っても、それだけではとても我慢できない状態が続くの
です。男欲しさに体が悶え、その苦しみはそれを経験した者でないと判らないと言われています。

それでも・・・、幸恵さん・・・、
堪えてください・・、我慢するのです・・、禁断症状に堪えてください。
ただ堪えるのです・・、これがまず大切です。

旦那さん・・・、幸恵さんを十分サポートしてください。
あなただけが幸恵さんを救うことが出来るのです・・、

体に残されたここでの傷跡は、それがどんなに強くても、幸恵さんの場合であれば6ケ月後には跡形も
なく消え去ると思います。しかし、ここで働く期間が増えればそれだけ、体に残る傷跡は深くなり、そ
の傷跡が消えるまでにより長い時間を必要とします。辞めるのであれば、出来るだけ早く辞めるのが良
いのです。

長年ここで働いていて、拭い取れないほど深く悦楽の記憶が刻み込まれた女達をたくさん知っています
が、そんな女たちは結局この仕事から生涯足を洗うことが出来ないのです。それが幸せだと思える女は
良いのですが、この商売から足を洗いたいと思いながら、それが出来ない女は哀れですね・・・、私は
そんな女を沢山見て来ました。幸恵さんにはそんな思いをさせたくないのです・・・・」

幸恵は先ほどから何事か考えに耽っていて、この大切な話は途中から彼女の耳には届いていない様子で
す。幸恵に比べて佐原の反応は際立っています。大きな衝撃を受けた様子です。唖然として、質問も、
反論もできない状態です。


[45] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(309)  鶴岡次郎 :2015/04/22 (水) 15:50 ID:HzBDHctU No.2683

淡々と話していますが、良く聞けば驚くべきことを佐王子は言っているのです。わずか二ケ月あまりの
経験でも幸恵の体に刻み込まれた娼婦の傷跡はそれが消え去るまでに6ケ月も必要だと言っているので
す。もし、幸恵がこの先数年にわたりその商売を続ければ、佐王子の計算に従うと、幸恵は仕事を辞め
た後、十数年間、体の記憶に悩まされ続けることになります。その間禁断症状に堪えきれなくて、また
その仕事に舞い戻ることになれば、負の循環が始まり、生涯その仕事から足が洗えなくなるのです。一
度、この世界の泥にまみれると、大方の女は生涯娼婦を続けることになると佐王子は警告しているので
す。

「この仕事を続けるべきでないと・・・、
もし続けるつもりなら・・・、
遊び心を捨てて、生涯この仕事と付き合うつもりでやれ・・・、
佐王子さんはそう言っているのですね…」

苦し紛れに佐原が佐王子の言ったことを要約して確認しています。佐王子の言葉が理解できないから質
問しているのではありません、そうでないと言ってほしいのです。

「・・・・・・・・」

佐原の質問に佐王子が黙って頷いています。冷酷な佐王子の反応を見て、佐原はがっくり肩を落として
いました。


佐王子の警告は十分説得力のある内容で、反論は勿論、異議さえも、佐原は申し立てることはできない
のです。残された道は、ここで足を洗うか、生涯、娼婦を続けると覚悟して仕事を続ける、この二つに
一つしかないのです。

娼婦を辞めることにすれば簡単ですが、幸恵が納得しても彼女の体がその決定に従えなくなっているの
を佐原は知っているのです。かといって、生涯、妻に娼婦を続けさせる決断が佐原にはできないのです。
何事にも決断の早い佐原が珍しく迷いを見せているのです。

迷い、苦悩している佐原の側で、幸恵は顔面を紅潮させ、息遣いを荒くしています。どうやら佐原とは
別のことで悩んでいる様子です。何事か必死で考えている様子です。ようやく考えがまとまりました。
何事か決心した良い表情をしています。

テーブルに着くほど深々と頭を下げて、緊張した面をゆっくり上げて、幸恵は静かに語り始めました。

「親方・・・、
申し訳ありませんでした・・・、
私の考えが甘かったのです・・・、
親方や、お姉さん方から教わったことをすっかり忘れていました・・・。

『ここへ来るお客様方は、女の体だけでなく、
出来れば、女の心まで買取りたいと高い金を支払っているのだ・・。
私達は、その期待に応えなければいけない、それがプロだ・・』と・・・、

そう教えていただきました・・・」

幸恵の言葉に佐王子が満足そうに頷いています。

「お見通しの通り、私は・・・、何人もの男に抱かれたい・・、
体に刻み込まれた悦楽の思い出を今は捨てることが出来ない・・、
その思いが強くてこの仕事を続けたいと願い出たのです。
要するにスケベな女なのです・・。

そんな気持ちでこの仕事を続ければ、お客様を欺くことになり、真剣に仕事に取り組んでいる他のお姉
さんたちを冒涜することになることにも、気が付いていませんでした。浅はかな考えを持った女をお許
しください・・・・」

佐王子の顔をしっかり見て、緊張した面持ちで幸恵が謝っています。この仕事を続けると決めた時、悦
楽を求めて、楽しめるだけ楽しんで、嫌になれば止めればいいと幸恵は安易に考えていたのは確かなの
です。そんな幸恵の安易な考えを佐王子は簡単に見抜き、手ひどい叱咤の言葉を与えたのです。佐王子
の言葉で幸恵は親方や姉さん達から教わったことをようやく思い出していたのです。

「いや・・、いや・・、
それが判ったのであれば、これ以上私から言うことは何も無い・・、
それで・・、仕事は辞めるのだろう・・・?」

「いえ・・・、
続けさせていただきたいと思っています…」

「・・・・・・」

ちゅうちょしないで答える幸恵の言葉に二人の男が声さえも出せない状態で、驚きの表情を浮かべじっと
幸恵を見つめているのです。


[46] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(310)  鶴岡次郎 :2015/04/24 (金) 11:17 ID:fru7q2xM No.2684
ここまでの流れを読む限り、幸恵は仕事を辞めると言い出すはずだと、二人の男は確信していたのです。
うまい具合に展開したと密かに喜んでいたのです。二人の男が驚いていることなど全く関心がない様子
を見せて、幸恵は畳み込むように話をつづけました。

「親方・・・、
勝手を言って申し訳ありませんが、
一週間に二度ほど、
日に3人から5人ほどのお客様に仕えるペースで、
仕事をさせていただくとありがたいのですが・・・、
いかがでしょうか…」

「できない相談ではないが…」

「その条件でよろしくお願い申します。
勿論、お店には迷惑をかけないよう・・、
これまで以上にまじめに勤めます・・。
年を取って、仕事をつづけることが無理だと思った時、
親方からそう言ってください。
それまで、私から引退を申し出ることはしないつもりです・・・」

生涯、娼婦としてこの店で働くことを申し出ているのです。既に十分腹を固めている様子で、気負いな
く、淡々と幸恵は説明しています。佐原はもちろん、佐王子も幸恵の気迫に押しつぶされたような状態
で、黙りこくって、ただ話を聞いているのです。

「あなた・・・、
この仕事続けても良いとあなたからお許しを得たことをいいことに、
生涯この仕事続けるなどと、
勝手なふるまいをしたことを許してください…。
本来であれば、先にあなたのお許しを得るべきでした。

先ほど、親方からこの仕事の心構えを改めて教えられ、
この仕事続けたいと思う私の心に、もう一度、問いかけました…。
そして・・、決心したのです…」

きりっとした表情で、何者の反対も押し切る決意を見せているのです。彼女の顔を見ただけで佐原は闘
争心を完全に失っていました。

「私はこの仕事が好きです・・・、
勿論、あなたの妻であることはこの仕事よりもっと大切です…。
妻とこの仕事が両立できないのであれば、
迷いなく妻の地位を選びます・・・・。

難しいと思いますが、あなたの理解と協力があれば・・、
良い妻でいながら、この仕事をつづけることが出来ると思います。
ご迷惑をかけないよう、努めます…。
勝手なことばかり申し上げますが、どうか願いを聞き届けて下さい・・」

これだけを一気に語り、深々と幸恵が頭を下げています。男二人顔を見合わせて、申し合せたように大
きな吐息を吐き出しているのです。ここまで畳み込んで説明されると、二人の男には選択肢はそんなに
ありません。

「仕方がないね・・、
元々・・、この仕事をすることに反対するつもりはなかったのだが・・・、
正直言って、生涯この仕事を続けることになるとは思ってもいなかった。

お前が覚悟を決めたのなら、僕は出来るだけ援助することにする・・。
人生は一度だけだ…、
今なら、やりたいことが出来る時期だよ・・・、
思い切り・・、やってみることだ・・・・」

悲壮な覚悟を決めた表情を浮かべ佐原が、絞り出すような声を上げて幸恵に告げました。

「あなた…、
それほどまでに・・・・、
そんなに思いつめられると・・、私・・・・
いえ・・・、そのことは後で・・・・

いろいろ申し上げたいことはありますが、ここでは先ず…、
あなたのお許しを得たことに感謝申し上げます…」

佐原に何か言い残したことがある様子ですが、この場では素直に頭を下げて、幸恵は夫にお礼を言って
います。生涯、娼婦勤めをすると、これから先の運命を決める大きな決断をした割には、幸恵は比較的
冷静です。それに比べて佐原は、戦士を死地へ送り出すような硬い表情を浮かべているのです。


[47] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(311)  鶴岡次郎 :2015/04/27 (月) 14:10 ID:/pBdBjhs No.2685

緊張した表情のまま、少し充血した瞳を佐王子に向け佐原が頭を下げました。ここでも最後までいい夫
の役目を果たすつもりのようです。

「佐王子さん・・、お聞きのような次第です・・・。
私からもお願い申します。
妻のわがままを聞き届けていただきますか・・、

万が一、ご迷惑を掛けるようなことが起きれば・・・、
私が責任を持って対応します・・。
よろしくお願い申します…」

苦しそうな表情を浮かべつつ、それでも明瞭な言葉で佐原は語りました。そんな夫を幸恵は涙を浮かべ
て見つめていました。

「そうですか・・、
お二人がそこまで言われるなら、私に反対する理由がありません。
今まで通り働いてください。
勤務時間の調整はいつもの様に、フロント係と調整してください。
多分、幸恵さんのご希望に沿った形でシフトを組めると思います。

ところで、アパートの方はどうしますか・・、
当然・・、ご自宅からの勤務となりますよね・・」

「できればアパートの方も今のまま使いたいのですが・・・、
勤務予定日の前夜アパートに来て、翌日、仕事をするようにしたいのです。

朝、あのアパートで目覚めて、そしてそこから直接お店に出勤する、
このルーチンだと仕事をする気分が高まると思います。
自宅からだと、どうしてもその気分になるまで時間がかかりますし・・
それに・・、自宅から真っ直ぐお店に来るのは・・、
そうはいっても・・、気が引けますから・・・・」

「なるほど・・、心構えの問題ですか・・・、
確かに・・、ご自宅とこの店では環境に差があり過ぎますからね・・・。
私もその選択が正しいと思います。
費用は余計に掛かりますが・・、
幸恵さんにとって、それは問題ではないでしょうからね…、

ご主人にはそれなりのご不自由を掛けるでしょうが、
週に二日か三日の外泊ですから、なんとか我慢できるでしょう・・、
いやいや・・、これは余計なことを申し上げました。
その件はご夫婦で話し合ってください。私の方はどちらでも対応可能です・・」

勿論、佐原は幸恵のアパート暮らしに反対しません。こうして幸恵の希望通り事が運ぶことになりまし
た。三人の話し合いは終わりました。その日、幸恵は仕事の予定を切り上げて佐原と一緒に久しぶりの
自宅へ戻ることになりました。


店を出て、階段を降り、ビルの外へ出ると、もう夕闇が迫っていて、繁華街の店々には照明が入り、仕
事を終えた顧客たちを迎える体制が整っています。背の高い佐原の左腕にぶら下がるようにして、幸恵
が腕を絡めて楽しそうに話しながら店を後にしています。二人の背を佐王子が見送っていました。

「あれだけ脅かせば、てっきり辞めると思ったのだが・・・、
仕事をつづけることになるとは…、
女の考えることは本当に判らない…、
俺としたことが女の気持ちを読み切れないなんて・・・、
まだまだ修行が足りないね…」

幸恵が下した仕事続行の決断は少なからず佐王子を驚かせたようです。二人の仲睦まじい後姿を見送り
ながら、佐王子はぶぜんとした気分で呟いていたのです。


「お前・・、本当に・・、
一生あの仕事を続けるつもりなの・・」

店から離れると佐原が一番気になっていることを質問しています。

「そんなわけないでしょう・・、
一年も勤めれば、珍しさが消えて、飽きが来るでしょう…、
そうなれば、さっさと辞めるつもりよ…」

「しかし・・・、佐王子さんは大変なことを言っていた・・・・、
その気になっても女の体が許さなくなるのだろう・・、
お前の体が男なしでは生きて行けなくなるのだろう・・・、
辞めたくても、辞めるにやめられなくなるだろう・・・、
そうなったら、本当にかわいそうだよ・・」

「バカね…、
あの言葉を本気にしたの・・・、
あきれた・・・、
あれは女をバカにした言い分なのよ・・、

もしかしたら・・、
私を辞めさせたい佐王子さんの親心かもしれない・・、

いずれにしても、あれは佐王子さんが私達をひっかけるつもりの言葉よ、
ちょっと・・、考えて見たら判るでしょう・・・」

頭ごなしに幸恵に言われて、佐原はきょとんとして半信半疑の表情を浮かべていました。


[48] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(312)  鶴岡次郎 :2015/04/28 (火) 14:38 ID:NYI85yYA No.2686

「まだ判らないようね・・」 

笑みを浮かべて男の顔を見上げた幸恵が少し声を高めて話し始めました。、

「体を売る仕事をしたり・・・、
奔放な性生活を経験すると・・・、
セックスの味が忘れられなくなり・・、
その女は奔放な生活から抜け出せなくなると・・、
佐王子さんはそう言っているのでしょう・・・」

「そうだね・・・・」

「もし・・、彼の言っていることが真実なら・・・、
セックスの良さを知った女は、体の要求に心が負けて・・、
娼婦としてしか生きて行けないことになる・・・。
もしそうであれば、この世は娼婦で溢れかえることになる・・・、
でも・・、周りを見れば、慎み深い女がほとんどで、
そうなってはいないでしょう・・」

「うん・・・、確かにそう言われるてみると・・・、
あの時は、佐王子さんの説明に反論できなかったけれど、
お前に言われて冷静に考えると、
佐王子さんの理論展開には現実味が少し欠ける気がしてきた…」

「昔、娼婦だった人も、乱れた生活をしてきた人も、足を洗った後、大部分の女は大人しく、上品に暮
らしているはずよ。あの店のお姉さんたちに聞いた話だけれど、昔働いていた女の子の多くが、お金を
貯める目的を果たした後、あの商売から足を洗って、結婚して楽しい家庭を作っている人が多いと言って
いた・・」

「そうなのか・・、佐王子さんに騙されたのか…、
お前はそれが判っていて、騙されたふりをしていたのか・・・。
僕はてっきりお前が本気で生涯あの仕事に打ち込む決心をしたと思い込み、
これも運命なら仕方がない、行けるところまでお前に付いて行く・・・、
そんな悲壮な決意を固めていたのだよ・・」

「判っていた・・・、
佐王子さんの言葉を聞いて、あなたが迷っていたのは判っていた・・、
私が・・、それでも、この仕事を続けたいと言った時、
あなたは泣きそうな表情を浮かべていた・・、
それでも、あなたは反対しなかった・・・。
例え私が娼婦に落ちても、私を見守り続ける意思を見せてくれた・・・。
本当にうれしかった・・」

幸恵は涙を浮かべていました。絡め合った腕と腕を通じて二人の血液が音を立てて交流しているような
気分に二人はなっていました。

「ところで・・・、
アパートを引き払わなかったのは、他に理由があるだろう…」

「判った…?」

「そりゃ分るよ・・、
これでもお前の夫を続けて長いからね…
仕事をする心構えを養うため、あのアパートを借りると言っていたが、
何か他に、別の計略があるはずだと思った・・・」

「・・・・・・」

夫にすべてを話そうか、このまま黙って居ようか、幸恵は迷っていました。企みを秘めた悪戯っぽい顔
をして、下から夫の顔をうかがっているのです。

「お前・・、
あのアパートに男を迎え入れたことがあるだろう・・・?」

「・・・・!」

突然の質問に幸恵が慌てています。


[49] フォレストサイドハウスの住人達(その10)(313)  鶴岡次郎 :2015/04/29 (水) 18:15 ID:Hij4gZ/E No.2687

「やはりそうなんだね・・、
お前は隠し事が出来ない質だから・・、
顔に書いてあるよ・・、
あのアパートで何人かの男に抱かれたね・・」

「すみません・・・、
仕事の流れで・・、つい・・・、
他の場所で会うよりは罪が軽いと思って…
別の部屋にいる姉さん達も盛んにやっていたので…
つい・・、その気になって、やり始めたら、止められなくなって・・、ずるずると・・・。
本当にすみません・・・・」

上から見ている佐原の優しい視線にほだされて、幸恵は素直な気持ちになって白状しています。笑みを
浮かべた表情を変えないで、佐原が頷いています。

「まあ・・、仕方がないよ・・、
仕事をうまく回転させる上で、接待は欠かせないからね・・、
ところで・・・、
当然・・、佐王子さんも迎え入れたのだろう…」

「・・・・・・」

さりげなく一番気になっていることを質問しています。話したくない急所を突かれて幸恵はまた返答に
詰まっています。それでも、ここまで話が展開すれば隠しても無駄だと思った様子で、素直に話し始め
ました。

「何でもお見通しなんですね…、
ハイ・・・、
最初の頃・・、私の様子を見に来て、そのまま・・・、朝まで・・、
でも・・、最近は全く来てくれません・・。
私は拒否していないのですけれどね…」

初めて店に出た頃、幸恵の身を案じて、佐王子は幸恵のアパートを何度か訪ねて、部屋で仕事のマナー
などをみっちり教え込んだのです。そのかいあって幸恵は数日でその仕事になれることができたのです。
しかし、仕事が順調に進み始めると佐王子が幸恵のアパートを訪ねることはなくなっていたのです。

「よく出来た雇い主だね…、
店の子とは厳しく一線を引いているのだね…」

「そうね・・・、
そんなに厳しく線を引く必要はないと思うけれどね・・」

どうやら佐王子がアパートに来ないことで、幸恵は多少不満を持っている様子です。幸恵の言葉が聞こ
えないふりをして、佐原は次の話題に移りました。

「二つの生活拠点を持つことになれば、お前も忙しくなる・・、
身体が一番だから、無理をしないようにするといい・・、
週に三日程度、自宅に居てくれれば、僕は構わないから・・」

「ありがとうございます…」

「アパートに男を迎えることも、無理に制限する必要はない・・、
流れに任せて、今まで通りやると良い・・、
あのアパートにいる限り、お前は独り身だと思えばいい・・。
僕も時々部屋へ通うことにするよ・・、
その時は、安くしてほしいね・・、ハハ・・・・」

「ハイ、ハイ・・・、
承知しました・・・。
私・・、売れっ子だから・・、必ず事前予約してね・・、
嘘、嘘・・、
あなたならいつでも歓迎よ、他の客を追い出すから・・」

二人は体をぶつけ合ってふざけています。

「ただ・・、判っていると思うが、
若い男に騙されて・・、
突然、僕を捨てるのだけは勘弁してほしい・・、
出来ればそうなる前に、丁寧に教えてほしい・・・、
ハハ・・・・」

「もう・・・、
そんなこと・・・、考えたこともありません・・。
それより、あなたこそ・・、.
以前の様に他の店に行かないでくださいね、
その気になったら、店へ来て、私を指名してください・・、
特別に、お店以外でも指名に応じますから・・、フフ…」

自宅がある公園駅に着くと、二人は大きな声を出して、笑いながら家路をたどりました。星がこうこう
と輝き、明日も晴天が予想される空模様です。


[50] 新しいスレへ移ります  鶴岡次郎 :2015/04/29 (水) 18:20 ID:Hij4gZ/E No.2688
新しいスレを立て、新しい章へ移ります。ジロー


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