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一丁目一番地の管理人(その29)

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2012/06/16 (土) 14:20 ID:jmbiKYhs No.2250
朝森の所へ戻ってきた敦子はむしろ積極的に、朝森にとって空白の半年あまりのことを語りつく
しました。露天商の仲間に竹内ともども拾われて、彼らと家族同様の、いやそれを越えた関係を
築き、敦子は明らかな変貌を遂げていました。敦子自身その変化を自覚していて、新しい彼女自
身に誇りさえ持ち始めていたのです。

敦子にとって、朝森と一緒に暮らすことが最大の願望でした。そして心身ともに変貌し、成長し
た彼女を、彼が受け入れてくれるなら、この上の幸せはないと思っていたのです。しかし、一方で
は、いかに朝森でも、男に抱かれると心と身体が分離して、その瞬間、夫を忘れ、相手の男に惚
れて、堕ちてしまう敦子の体質を、易々と受け入れることは難しいだろうと、敦子は観念してい
たのです。

自身の特異体質を抑え朝森についてゆくか、自分に忠実に生きるため、朝森の下を去るか、敦子
は大きな賭けをするべく、敦子を大きく変貌させた半年の経験とその特異体質の片鱗を夫、朝森
に曝しだしたのです。

結局敦子の賭けは、見事に成功しました。異常な経験を積んで変貌し、成長した敦子を、朝森は
むしろ喜んで受け入れたのです。物語はいよいよ最終章に入ります。最期までご支援下さい。


毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その
11)』の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。    

また、文中登場する人物、団体は全てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきま
す。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字
余脱字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるよう
にします。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した記事を読み直していただけると幸
いです。

  ・ 文末に修正記号がなければ、無修正です。
  ・ 文末に(2)とあれば、その記事に二回手を加えたことを示します。
  ・ 1779(1)、文頭にこの記号があれば、記事番号1779に一回修正を加えたことを示します。
                                      
                                      ジロー


[9] 一丁目一番地の管理人(429)  鶴岡次郎 :2012/06/26 (火) 11:51 ID:ZxWy6BWo No.2258

由美子の優しさに溺れ、彼女の豊潤な体に包まれて、社会的な地位や、男の意地を捨て、女に逃
げられた男の弱さを曝して、伍台は取り留めなく話しました。それまで誰にも言えず、澱のよう
に心の底に溜まっていた恨み、悔しさ、未練、怒り、そして後悔などなど、伍台は堰を切ったよ
うにそうした感情の澱を吐き出したのです。

由美子は根気強く聞きました。しかし、決して伍台の繰言に同調したり、慰めを云ったり、喜美
枝の行為を非難したりしませんでした。ただ、伍台の愛撫に狂い、悶え、彼の肉棒を深々と女陰
にくわえ込み、泣き叫び、全身を痙攣させて女の喜びを爆発させ、セックスに悶える女の性を、
女の凄まじい業を、伍台に見せ付けたのです。

伍台にとって由美子は人生で二番目の女でした。そのことを由美子は直ぐに察知して、知ってい
る全ての閨の技を駆使して伍台を翻弄しました。

可憐で清楚な女性象を大切にしてきた伍台にとって、ベッドで悶え狂う由美子は想像さえ出来な
い女性像でした。最初は途惑い、あきれましたが、決して、嫌悪感を感じている様子ではありま
せんでした。

由美子との逢瀬を重ねるにつれ、50歳を過ぎた伍台は、初めて女を知ったように由美子に溺れ
ました。夫以外の男に抱かれ、セックスに溺れきって、喜悦の声を上げ、のた打ち回る由美子を
見て、「可愛い・・、愛しい・・」と思うようになっていました。

一年近く二人の関係は続きました。伍台にとって由美子とのセックスは彼の人生観を変えるほど
のものでした。口には出しませんが、伍台にとって、妻とのセックスが子供の遊びに思えたはず
です。

〈セックスがこれほど楽しく・・、奥が深いモノだとは・・・
喜美枝とのセックスでは、想像さえ出来なかった・・・。

・・・ということは・・・・。

あの男に抱かれた喜美枝も同じ様に感じていたはずだ・・・〉

由美子の手でセックスに開眼した伍台は、同じ思いを妻、喜美枝もイタリア男の腕の中で感
じ取ったはずだと、心に痛みを感じながら、冷静に分析できるようになっていたのです。


イタリア男の体に溺れた妻、喜美枝の乱れる姿を想像して、当初は汚らわしいと軽蔑していた伍
台ですが、由美子と深い関係になり、奔放に振舞う由美子を見て、女の性の本質を理解するよう
になり、伍台の中に大きな変化が起きていたのです。


〈・・喜美枝も由美子さんと同じ女だ・・、
あのイタリア野郎に・・、いいように弄ばれて・・、
彼の腕の中で、由美子さんと同じ様に乱れたはずだ・・。

男の私でさえ、これほどまでに由美子さんのセックスに溺れている、
女の感性は男の100倍以上だと聞く、
そうであれば、喜美枝があの男に溺れきった事情が良く判る

この味を知ってしまったら・・・、
僕とのセックスで味わえなかった喜悦を知ってしまったら・・、
もう・・、僕の所へ戻る気持にはなれなかったろう・・・

喜美枝は先ずセックスの虜になり、心まで取り込まれたのだ・・
想像も出来ない欲望の嵐に弄ばれて、喜美枝は道を踏み外したのだ。
いや・・、欲望に忠実に生きる、生き物本来の道に戻ったのかもしれないが・・・

いずれにしても、あの男と生涯一緒に暮らせるとは思っていなかったはずだ、
その先に地獄が待っていると判っていても、
行けるところまで行くつもりだったのだろう・・。

女の性の凄まじさが、想像を超えた凄さが、今の私には良く理解できる・・〉

イタリア男の体に溺れ、二児の母である立場をも捨てる覚悟で、離婚を決意した喜美枝の気持
ちを、伍台は理解できるまでに成長していたのです。


[10] 一丁目一番地の管理人(430)  鶴岡次郎 :2012/06/29 (金) 14:55 ID:TG6nkVw6 No.2259

伍台のセックス観が大きく変わった頃、土手の森殺人事件が起きたのです。そして、この頃から
由美子を抱きながら語る伍台の繰言が少し変わっていました。由美子はこの時を待っていたので
す。


この日、都内のホテルでデートした由美子はある決意を固めて、伍台に抱かれていました。

「喜美枝はイタリア男のテクニックに騙されたのだ・・、
どんな女でも、イタ公の手にかかれば、イチコロだよ・・
喜美枝一人だけが、悪いと思えない・・・
イタ公の下へ喜美枝を走らせた責任の大半は僕にある・・・」

激しい情交が終わり、心地よく疲れた裸体をベッドに投げ出して、伍台がいつものように喜美枝
を思って繰言吐き出し始めました。いつもは笑って聞いている由美子がこの日、初めて反応しま
した。

「体験したことはないけれど、イタリアの伊達男は凄いんだってネ・・・ェ・・。
優しくて、スケベで、逞しくて、何よりも、女と遊ぶのが大好きな人種らしい。

喜美枝さんがその男に溺れたのは、おなじ女である私には、良く判る・・。
申し訳ないんだけれど、燃え始めると、
燃え尽きるまで、女は自分の力ではその火を消せないの・・・。

男がイタリアに逃げて、熱病から冷めた時、
喜美枝さんは失ったものの大きさに、改めて気が付いて、自身の軽率さと、
イタリア男の体に溺れたインランな自身の身体を呪ったと思う・・・」

珍しく反応した由美子の応援歌を伍台は気持良さそうに聞いていました。信頼している由美子が
証言すると、喜美枝の行為が伍台の中で、徐々に正当化され、由美子の言葉が心地よく彼の心に
響いていたのです。

「伍台さん・・・、
女はネ・・、追い込まれた時・・、寂しい時・・
自分でもどうにもコントロールできない衝動に取り付かれることがあるの・・。

その対象が、男である場合もあるし、時には買い物であることもある・・。
判っていても、今まで築いたモノを全て失うことになると、判っていても、
その衝動に身を任せる以外、他に動きが取れないことがあるの・・。

喜美枝さんの場合はそれが、イタリア男だった・・・。
私の場合は、若い男と買い物だった・・。

熱病から冷めた時、女は自らの身体を抹殺したいほど、落ち込んでしまう・・。
そんな時、手を差し伸べてくれる人がいれば、女は本当に救われる。

私は主人に救われた・・・・。
私を救ってくれた主人は私にとって特別の男性(ひと)。
この先どんなことがあっても裏切ることは出来ない。
私の心は、生涯主人のものです・・」

由美子の話を素直な気持で伍台は受け入れていました。そして、由美子を救った鶴岡と同じこと
が、自分に出来ないはずがないと思い始めていたのです。こんなところでも、男は競争心を刺激
されると、その気になるのです。鶴岡と伍台は大学の同期で、活動舞台は違いますがいわばライ
バル関係です。由美子の狙い通り、伍台はやる気を興しているのです。

「喜美枝さんは・・、私とは違って、自分の力で立ち直った・・・。
子育てに自らを埋没することに生きる道を見つけた。
立派だと思う・・・、私には多分・・、出来ないと思う・・・。

でも・・、女の心を救えるのは、優しい男の手だけなの・・。
身体は立ち直っても、喜美枝さんの心の傷は癒えていない・・。
喜美枝さんは、今でも伍台さんを待っているはず・・・」

由美子の言葉に新しい真実が含まれていたわけではありません。既に、伍台は自身でも由美子と
同じ結論に行き着いているのです。それでも、改めて由美子の口からそのことを聞くと、新鮮に
想えるのです。


[11] 一丁目一番地の管理人(431)  鶴岡次郎 :2012/07/02 (月) 11:45 ID:mtDQVfao No.2260

「伍台さん・・、
私のことをインランだと思うでしょう・・・
男を漁りを続ける私を、スケベーだと思うでしょう・・。

それでも、主人も、Uさんも私を大切にしてくれる。
伍台さんだって、こうして、毎月私を抱いてくれる、
もし、これが逆の立場だったら、私は焼もちを妬いて黒焦げになっている。

そんな男達を本当に立派だと私は感謝している・・。
私へそそがれる男達の愛情がなかったら、多分、私は生きてゆけないと思う、

こんな私だけど・・、どうしょうもないほどインランだけど・・、
男達を思う気持の強さでは誰にも負けたくないと思っている。

これと言って特長のない私に出来ることは、
私自身の気持ちをごまかさないで、
一生懸命、私で有り続け、男達に尽くすことだと思っている・・。

こんな私・・、嫌い・・・?」

「・・・・・・・」

裸体で抱き合ったまま、由美子の右手が伍台の陰茎を握り、彼の指が女の亀裂に触れ、優しくそ
こを刺激している中で、由美子が少し真面目な表情で伍台に囁いています。

返事の代りに伍台が由美子を強く抱きしめています。

「ありがとう・・、伍台さん・・
いつか言おうと思っていたことだけれど、
役所にいる伍台さんも凄いけれど、夜の伍台さんはもっと凄いよ・・・」

由美子が伍台を煽て、彼の頬にキッスをしています。伍台が苦笑しています。

「私・・・、思うんだけれど・・・、
喜美枝さん・・・、イタリア男に開発しつくされて・・、
昔の、清純で、大人しい女から脱皮して、
今の私と同じように、とんでもなく、インランな女に変わっていると思う・・・、

伍台さんはそう思わない・・・?
そんな喜美枝さんを、その気になれば、自分のモノに出来るのよ・・、
楽しいことだと、思わない・・・?
それとも、インランな喜美枝さんは嫌い・・・?」

突然の質問に、伍台がびっくりしています。しかし、彼の陰茎は正直に反応して、むくむくと、
立ち上がり始めたのです。伍台がインランな喜美枝を歓迎している証です。由美子は凄く喜んで
いました。

「アラ・・アラ、アラ・・・
伍台さんたら・・、喜美枝さんのことを思ってこんなに勃起して・・
悔しい・・、

インランに変貌した喜美枝さん・・、いえ奥様を抱きたいのでしょう・・
このことを知ったら彼女喜ぶと思う・・、
今頃、この剛棒に恋焦がれて、彼女自身を指で慰めているかも・・・、
フフ・・・・、

伍台さんなら、インランな喜美枝さんをメロメロにすることが出来ます。
間違いなく、この剛棒でイタリアの伊達男を忘れさせることが出来ます・・・。

私をメチャメチャに弄んだように、
喜美枝さんを抱いてあげて・・・、ああ・・・・」

彼女自身の言葉に興奮した由美子が身体を伍台にこすり付けています、男がうれしそうに微笑ん
でいます。

「でも、今日のところは、私が先に、食べることにするわ・・・・
いただきます・・ゥ・・、フフ・・・・・」

伍台の肉棒を握り締め、彼の上に身体を乗せ、両脚を拡げて、右手で器用に、肉棒を亀裂に導き
いれました。そして、由美子は一気に天国へ持って行かれました。


[12] 一丁目一番地の管理人(432)  鶴岡次郎 :2012/07/04 (水) 14:19 ID:MoTGiKt. No.2261

自室の椅子に深々と身体を沈めて、一週間前、都内のホテルで過ごした由美子との会話を昨日の
出来事のように伍台は思い出し、身体の一部を勃起させていました。この現象は由美子を思って
のことに違いないですが、一方では由美子の奔放に乱れる姿に、喜美枝を重ねていることも確か
なのです。


喜美枝が女の性に目覚めてイタリア男に走った訳を、由美子は彼女のカラダで伍台に教え込も
うとしていることを、賢明な伍台はある時点から察知していました。そして、伍台は積極的に由
美子の仕掛けに乗っていたのです。

それでも、一年余りの付き合いの中で、由美子が喜美枝のことを話題に出すことはなかったの
です。伍台が喜美枝の繰言を繰り返しても、決してその話題に乗ることはなかったのです。そ
れが、この日は違いました、由美子は積極的に喜美枝の立場を擁護したのです。伍台にその言葉
を受け入れる素地が出来たことを由美子は確信していたのです。


シャワーを浴び、由美子は気だるい身体にガウンをまとい、伍台に向かい合う形でソファーに腰
を下ろし、彼が準備したビールを一息に飲み干しました。乾いた喉に、黄金色の液体が染み渡って
いました。

「伍台さん・・・、喜美枝さんのことで少し話をさせてください。
勿論、貴方ほどの方に私からあれこれ、申し上げることは何もありません・・・、

全てを理解したあなたがこれから先、喜美枝さん受け入れるのか、
あるいは、永久に受け入れを拒否するのか、それはあなたのお心次第です。

ただ、男と女の問題ではあなたより経験がある私から、
一つ申し上げておきたいことがあります。よろしいでしょうか・・」

少し態度を改めて由美子が、伍台を真っ直ぐに見つめて話しています。真面目な表情で・・と
言っても、ガウン一枚を羽織った由美子の膝が割れて、黒々とした陰部が顔を出し、胸元では、小
ぶりの乳房がほとんど露になっているのです。

腰にバスタオルを巻いた伍台が笑みを消して由美子を見つめています。彼の股間には少し萎えた
肉棒の先端が顔を出しているのです。

「スケベな私に一年余り付き合ってくださったことに先ずお礼申し上げます。

この一年余りの経験は、伍台さんには驚きの連続だった思います。
でも、これが多くの女の本音だと申し上げて、それほど大きな間違いでないと、
私は自負しております。

大方の女は、殿方が想像されているよりは、はるかにスケベーで、インランなのです。
これは喜美枝さんにも当て嵌まります・・・」

伍台が苦笑いをして頷いています。

「ご存知のように、人が人を恋する気持は移ろい易いものです。
喜美枝さんに激しい愛情を感じる瞬間がきっと来ると思います。

その時、その感情だけを信じて、彼女が過去に何をしたか、全て忘れて、
一歩踏み出すべきだと思います。

二人の仲にとって重要なのは、過去ではなく、これから先のことなのです。

男と女の仲には、目に見えない潮時があって、
その瞬間を外すと、互いの気持がどんなに強くても、恋は実りません。
男と女の関係は、考える対象ではなく、感じ取るものだと思います・・」

伍台の表情から笑みが消え、真剣な面持ちで由美子を見つめています。

「失礼を承知で勝手なことを言わせていただきます・・、
伍台さんは考えすぎです・・・。

伍台さんと喜美枝さんの仲にも、
これから先、『今だ・・』と、感じる潮時が必ず訪れるはずです。
その潮時を逃さず、深く考え込まないで、先ず一歩前へ船出してください・・」

由美子はそれだけを言って、ゆっくり立ち上がりました。そして伍台に背を見せ、ショーツをつ
け、ブラを身につけました。屈みこんだ由美子の股間から、女陰が鮮やかに、そのピンク色の襞
まで見せていました。その後姿を伍台がじっと見つめていました。

男の視線を十分意識しながら、ブラウスとスカートを着けて、由美子が振向き、ニッコリ微笑み、
黙って頭を下げ、伍台に再び背を向けて部屋の入口へ向けてゆっくりと歩み始めました。

「由美子さん・・、
また会えますよね・・・」

由美子が振向き、謎めいた笑みを浮かべ、少し首を傾けました。そして、再び背を向けて、今度
は全てを振り切るようにして足早に歩みはじめ、ドアーを開け、部屋の外へ出て行きました。バ
スタオルを腰に巻いたままの伍台は由美子の後ろ姿を何時までも見つめる姿勢を保っていました。


[13] 一丁目一番地の管理人(433)  鶴岡次郎 :2012/07/05 (木) 14:42 ID:t./wY4r6 No.2262
一週間前の熱い思い出の中に埋没していた伍台がゆっくり立ち上がり、薄暗い執務室の天井を見
上げ、しばらく考える様子を見せ、そして、何事かを決めたようで、背広の内ポケットから私用
の携帯電話を取り出しました。公用の携帯電話は庁内にいる限りは秘書の机上に置かれているの
です。

「由美子さんが言っていた潮時が来たようだ・・・」

柏木から聞かされた朝森とその妻敦子の話が、伍台の心に火を点けていたのです。今が潮時だと
感じ取っていたのです。伍台はメモリーに入っている相手先を呼び出しました。直ぐに反応があ
りました。

「ああ・・、喜美江・・・、
僕だ・・・

子供たちは元気か・・、ああ・・、そうか・・・、
お義父(とう)さんも、お義母(かあ)さんも・・、それは良かった・・・。

ところで・・、今日の夜、時間が空いているか・・?
うん、一緒に飯でも食べようと思うのだが・・、

そうか・・
では・・、夜の7時、赤坂の・・・」

プチ・フランスレストランの名前を伝えて、伍台が電話を切ろうとしました。

「待って・・・、もう少し話して下さい・・・。
何故・・、どうして・・、私を誘う気になったのですか・・、

あの時以来、私は、あなたの誘いをずっと待っていて、
今、とっても幸せですが・・、
この幸せが消えるのが恐いのです・・・。

良かったら、私を誘った訳を教えてください・・・」

幸せが泡沫〈うたかた〉のように消えないか、それが心配で、喜美枝は勇気を振り絞って質問し
たのです。

何か行動する時、喜美枝が想像も出来ないほど考え抜き、準備を整えて行動に移す人で、決して
その場の思いつきで行動しない人だと、伍台を理解しているのです。今度の誘いも、伍台には
それなりの深い考えがあってのことだと推測したのです。

最悪のケースを考えると、何時までも他の再婚話を断り続け、あれ以来従順な姿勢を見せて、
じっと待っている喜美枝に、伍台のところへ戻る可能性がないことを告げる為に、最期の晩餐に
誘ったとも受け取れるのです。

このまま不安な気持ちを抱いて夜まで待てない、最後通告を受けるのなら、早い方がいいと覚悟
を決めて、喜美枝は勇気を振り絞って声を出したのです。

「う・・・ん・・、
喜美枝を誘った理由(わけ)か・・・

そうだな・・、それほど深い魂胆があるわけではない。
ある事件が起きて、最近、それは無事解決したのだが・・、
その事件の渦中に若い夫婦がいて・・、彼らは容疑者じゃないのだが・・、
偶然のめぐり合わせで、若い妻は、殺人事件の第一発見者となった・・」

むしろのんびりした語り口で伍台が話し始めました。もったいぶって、回りくどく伍台が話す時
は、彼が考えに考え抜いて、ある結論に到達した証であることを喜美枝は良く知っています。今
回はどんな決論に行き着いたのか、喜美枝はそれこそ、息を詰めて次の言葉を待っていました。


[14] 一丁目一番地の管理人(434)  鶴岡次郎 :2012/07/06 (金) 14:04 ID:De6rmYmo No.2263

「その若い妻は中年過ぎの男、禿で背の低い会社社長と浮気を続けていた。ところが不況の波を
もろに受けて、その中年過ぎの男が経営していた会社が倒産し、彼は債権者の追及を交わすため
に、夜逃げすることになった。その中年男は若い情婦に夫の下へ帰るように告げた。しかし、そ
の若い情婦は、何故か、若くて将来性豊かで、イケ面の夫を捨て、禿で背の低いその男を選び、
男の逃避行に同行した。

決して、夫に不満があったわけではなく、その中年男に惚れ抜いていたわけでもなかった。これ
は私の想像だが、忙しい夫の愛情が途切れたチョッとした隙間に、50男が割り込んだ来て、い
つの間にか若い妻の心を・・、いや・・、多分、彼女の肉体を、わしづかみにしていたのだと思
う。

一方、女は・・、一緒に逃げても行く末には破局以外ないと判っていながら、その男を捨てる気
になれなかった。男との情事に溺れていたことは確かだが、それだけで女が男と行動を共にする
とは思えない。多分、今、中年男を助けることが出来るのは、この世で彼女しかいない、これは
人生の定めだと彼女自身の気持ちを追い込んだ結果、その男についてゆくことにしたのだと思う」

伍台の話を聞きながら、喜美枝の弾んだ心は急速に冷えていました。事件に登場した若い夫婦の
エピソードを語りながら、喜美枝が犯した罪を伍台が、今まさに追求していると喜美枝は自覚し
ていました。この話の筋であれば、決定的な離別の言葉が伍台の口から発せられるはずだと、喜
美枝は覚悟を固めていました。

喜美枝の浮気相手も40歳を過ぎた、禿で小男のアラブ系イタリア人だったのです。喜美枝の気
持を思ってかなりひいき目にその男を評価しても、イケ面で、高級官僚である伍台と二人の子供
を捨てて走るほどの男とは、とても思えない人物なのです。そしてそんな男の甘い言葉に乗って
抱かれ、気がついた時は深みに嵌っていたのです。週に何度も呼び出しを受け、このままではい
ずれ夫、伍台にバレることになると、喜美枝は最後の覚悟を固めました。

ある日、『・・彼無しでは生きてゆけない・・』と、伍台に告白し、離婚を申し出たのです。伍
台は勿論、その話を聞いた喜美枝の父母もびっくりしました。
確かに夫婦の間に隙間風が吹いていて、その上伍台が単身赴任することになり夫婦の危機が見え
ていたのは事実だったのです。しかし、そうしたことは長い夫婦生活の間ではよくあることで、
決定的な離婚にまで発展するほど深刻な状態でないと伍台も喜美枝の両親も思っていたのです。

喜美枝は周囲が驚くほどの執念を燃やして離婚を要求しました。その様子を見て伍台は寄りを戻
すことをあきらめ、自らかってでて喜美枝の両親を説得したのです。しかし、いざ離婚が成立す
ると、それで全ての問題にケリが付いたように喜美枝はその男と会うことを避けるようになった
のです。浮気相手がイタリアに帰った時も、あらかじめその筋書きを知っていたかのように平然
としていました。

そして、一番奇妙なことは、あれほどイタリア男に執着した喜美枝が、離婚後は全く男に無関心
になり、まるで求道者のように子育てに熟れた身体を埋没したのです。

このように、喜美枝の離婚劇には不可解な点が多いのです。このことに、勿論伍台も、由美子も
気付いていて、〈・・彼女は未だ明らかにしていない何かを、隠しているはず・・〉と思ってい
たのです。しかし、結局、喜美枝があれほど頑なに離婚を要求したその理由は知るまでに至って
いなかったのです。


伍台の口から決定的な別れの言葉がいつ出るか、おどおどして聞き耳を立てている喜美枝の気持
を知ってか知らずか、電話の向うで伍台はゆっくりと話を続けています。

「一方、妻に裏切られた若い夫は、本音は、妻を求めていながら、彼女の後を追おうとしな
かった。多分、若い夫が真剣に妻の行方を追えば、その若い妻は進んで夫の前に姿を現したに違
いないと私は思っている。しかし、男は動こうとせず、女も夫に連絡を入れなかった。若い二人
の意地の張り合いがこの問題の解決を長引かせたといえる。

このまま進めば、若い夫婦の仲は完全に終局を迎えていたはずだ。
幸い、その50男が、ある事件を契機に目を覚まし、半年後に彼女を解放した・・。
女は、迷わず夫のところへ戻ってきた。多分、勇気のいる行動だっただろう・・・」

矛先の向きが変わってきたことを喜美枝は敏感に感じ取っていました。彼女の身体が緊張と興奮で
で小刻みに震え始めていました。

「夫は黙って、彼女を迎え入れた・・。
何よりも彼女が大切だと思っていたからだ、

夫も、妻も、大きな回り道をしたが、
おそらく、二人の間には以前より深い絆が出来たと思う・・。

この若い夫婦を見て、僕は教えられた。
互いの犯した罪を認めながら、その罪の意識を何時までも引きづるのではなく、
新たな道を切り拓こうとしている若い夫婦の行動に文句なく脱帽した。

私にこれから先、どれだけの人生が残されているかわからないが、
考えているだけではダメで、行動すべきだと思った。

それで喜美枝に電話をした。
二人で話し合って、壁が乗り越えられないか、試す気になったのだ・・・。

ああ・・、仕事の電話が入ったらしい、詳しいことは今夜話すよ・・・」

ここまで伍台が一方的に話し、ここで電話を切ろうとしました。通話が消える間際に、「ありが
とう・・」と、元妻、喜美枝の弾んだ声が、伍台の耳に心地よく響いていました。〈1〉


[15] 一丁目一番地の管理人(435)  鶴岡次郎 :2012/07/08 (日) 15:36 ID:Sp892jUo No.2264
2263(1)

伍台と食事の約束を済ませた喜美枝は自宅の部屋で泣き崩れていました。喜美枝の両親は、今は
隠退して悠々自適の生活をしているのですが、娘が伍台から食事に誘われた話を聞き、同じ様に
涙を流していました。

喜美枝との電話を終えた伍台はレストランの予約を済ませ、その後少し考えた様子を見せて、六
本木にあるプチ・ホテルに予約を入れました。幸いスイートの予約が取れました。ここは、婚約
時代、忙しい伍台の時間に合わせて、喜美枝と待ち合わせて、熱い時間を過ごした思い出の場所
だったのです。

全ての準備が完了した後、用意周到な伍台は、最期の仕上げに由美子に電話を入れました。

「由美子さん・・、
どうやら、私達は『潮時』を迎えたようです。

今晩、喜美枝を食事に誘いました。
その後、流れ次第では、喜美枝を抱くつもりです」

「そう・・・、
いよいよ決心したのですね・・・」

電話の向こうで由美子が涙を溢れさせていました。

「由美子さんにこんなことを頼めた筋合いではないのですが、
いままでいろいろ面倒見てもらった由美子さんに、
もう一度だけ、甘えることにしました・・。

生真面目な妻ではなく、インランな喜美枝を抱きたいのです。
喜美枝だって、イタリア男に抱かれた時のように、全てを忘れて乱れたいと思っているはずです。

しかし、今二人きりで会えば、互いにけん制しあって、以前の殻から抜け出すことは出来ないと
思います。そうなると、味気ないセックスとなり、二人の関係はここで終わります。

それで、由美子さんに相談することにしたのです・・」

ここまで伍台の話を聞いて、彼の相談事がある程度まで想像できた由美子は、彼女なりに作戦を
練り始めていました。

「喜美枝にはインランな素顔をそのままで、私と接してほしい・・、
彼女が自分の意志で決めて、昔の殻を破り、奔放に乱れて欲しい・・・、
私は心からそれを願っているのです。

しかし、その場で私が頼んでも、喜美枝は容易に私の真意を理解出来ないと思います。女心をコ
ントロールするに十分な閨の力を私が持っていれば、力ずくで喜美枝をインランにさせることが
出来るはずですが、とてもその自信が有りません。それに万が一失敗した時のことを考えると無
謀なことは出来ないと、しり込みしてしまうのです。

結局、私にはいい工夫がなくて・・・、
由美子さんに相談することにしたのです・・」

「・・・・・・・・」

電話の向うで由美子は笑みを浮かべたまま、口を閉ざしていました。慎重な伍台らしい依頼内容
だと思っていたのです。その一方で、その依頼内容は由美子にも渡りに船だと我が意を得た思い
になっていたのです。


[16] 一丁目一番地の管理人(434)  鶴岡次郎 :2012/07/09 (月) 16:52 ID:5kbpNU4I No.2265

一年がかりで伍台を教育して、ようやく女性の性を教え込み、イタリア男とのセックスに溺れた
喜美枝の中にある女の性、女の業を理解させたのです。喜美枝と伍台が元の鞘に納まるためには、
喜美枝の教育が必要だと思っていて、その機会を狙っていたのです。伍台の話を聞いて、その機
会が突然訪れたことを喜びながら、あまりにも急な話で由美子は少し慌てていました。

約束のデイナーまでの数時間内に喜美枝を洗脳して、彼女が進んでインランな素顔を曝すように
仕組む必要があるのです。かなり難しい仕事ですが、由美子にはどうやら勝算があるようです。
・・というのも、喜美枝には既にインランな素地が出来上がっているわけですから、後は彼女の
気持を前向きにするだけで目的が達成できると由美子は考えたのです。

喜美枝と伍台が再会する日が決まれば頼まれなくても、喜美枝に接近して、彼女を洗脳する役目
をかって出ようと思っていたのです。既に、その日のために由美子の中では喜美枝攻略の筋書き
が完成していているのです。残る作業は、その場の状況にあわせて少し修正するだけで本番用の
筋書きが出来上がるのです。由美子は喜美枝攻略シナリオの最期の仕上げにかかっていました。

「もし、もし・・、由美子さん・・」

「そんな大声を出さなくても、よく聞こえています・・」

突然、黙り込んだ由美子のことを気にして、大声を上げる伍台に、わざと、つっけんどんに由美
子が答えています。由美子にすれば、喜美枝攻略の筋書きを整理するため、少し沈黙の時間が必
要だったのです。その由美子の沈黙を由美子のご機嫌が悪くなったと解釈したようで、電話の向
うで伍台が困り果てていました。

「判りました・・、
私から喜美枝さんに電話を入れます。

でも・・、
私と伍台さんの関係は一切口に出しませんから、そのつもりでいてください。
喜美枝さんが素顔を出すよう、上手く話しますから安心してください。
喜美枝さんがインランな素顔をさらけ出しても、決して嫌がらないで下さいね、

それから・・、これは私の最後のアドバイスですが、
彼女の恋人については、適当に妬く様にしてください・・
本気で、彼女を責めない様にしてくださいネ・・・」

「勿論です・・。
由美子さんの教えられたとおり行動します。
彼女がその気にさえなってくれるなら・・、
私はインランな彼女の全てを・・、
男と過ごした過去も含めて、無条件で受け入れるつもりです・・
このことを、今、由美子さんに約束します・・・」

「その言葉を信用します。それでは任せてください・・、
彼女を洗脳してホテルへ送り込みますから、
私を狂わせたように、全身全霊で、喜美枝さんを可愛がってください・・。
きっと成功すると思います。良い結果連絡を待っています・・・」

由美子との連絡を終えて、伍台は右手を握り締め突き上げるガッツ・ポーズを決めていました。


[17] 一丁目一番地の管理人(435)  鶴岡次郎 :2012/07/12 (木) 14:25 ID:P4u/hepQ No.2266
伍台との電話を終え、由美子はその場で喜美枝に電話を入れました。彼女の頭の中には喜美枝攻
略の完全なシナリオが出来上がっているのです。久しぶりの挨拶を交わして、由美子はゆっくり
本題に入りました。

「主人と伍台さんは、以前どおり、親しく付き合っていて、何でも話し合う仲のようです。先ほ
ど、私・・、二人の電話を偶然盗み聞きしたのです。それで、伍台さんと喜美枝さんが久しぶり
に再会して食事をすることを知りました。

お二人の仲が元に戻ることを願っている夫は、伍台さんにいろいろアドバイスをしていました。
その話を隣の部屋で断片的に聞いていて、おせっかいついでに、私からも、喜美枝さんにアドバ
イスすることを思い立ったのです。

女は女同士、何かのお役に立てればと思ったのです。このことは主人にも、勿論、伍台さんにも
内緒のことです。ご迷惑でなければ、聞いていただけますか・・」

突然の由美子の電話に喜美枝は驚いていましたが、伍台が鶴岡に相談した経緯を聞いて、むしろ
安堵していました。

「きっと・・、彼からご主人に相談したのだと思います。おそらく女性を食事に誘うことなど、
私と別れてからは伍台は一度も経験がないと思います。私の扱い方で、ご主人に相談したのだと
思います。

実は、私も悩んでいて、誰かに相談したい気持なのです。
彼から食事に誘われて、凄くうれしいのですが、
私・・、何を準備して、どう対応していいのか、迷っていて・・、
かといってこんなこと相談できる人もいなくて、
本当に困っているところでした・・・。

由美子さんに相談に乗っていただけるのなら、
こんな心強いことはありません。よろしくお願い申します・・。

実は、久しく出かけることがなかったので、今のシーズン、
何を着て行ったら良いのか、そんなことから悩んでいるのです・・」

服装、化粧、デイナーでの話題など当たり障りないところから話題が弾け、結局由美子と喜美枝
の電話は、延々と二時間あまり続きました。


「食事の時、別れた恋人のことは喜美枝さんから一切話題に出さないことです。
あなたが話題にしなければ、伍台さんがその話題を出すことはないと思います。
何度か浮気をしましたが、私から浮気相手のことを話題にしたことは一度も有りません。
そうすると、主人もそのことを話題にしないのです。

男って言う動物は不思議な生き物で、妻の浮気相手のことが、どんなに気になっていても、男達
は面と向かっては質問はしてこないのです。社会的にそれなりに地位が固まった男はなおさらこ
の傾向が強いようです。伍台さんも、家の主人もそれは誇り高い男達です。私達が話題に出さな
い限り、絶対妻の恋人のことは聞いてきませんから、その性癖を上手く利用するのです・・・」

若い頃からかなり男遊びをして、そのたび毎に鶴岡に許されている過去の罪を由美子は告白しま
した。その経験から、女性から浮気相手の話題は出さないことだと教えたのです。

「昼間は絶対恋人のことを話題に出さないといったけれど、
ベッドの上ではネ・・・、
男って、本当に変わるの・・・、
昼間はあれほど紳士ぶっていた彼が、変わるの・・、

『・・アレが大きいか、どうか・・』、
『・・何処にキッスをされた・・』とか、
『・・失神したことはあるか・・』など、低俗なことを、こと細かく聞いてくる・・

どちらが本当の主人なのか、最初は途惑っていた・・。でも、慣れてくると、無理に主人の持つ
男の本質を掘り下げるのではなく、男とはそうしたものだと頭から丸呑みして、理解することに
した。喜美枝さんもそうすることを勧めます。

ところで、多分、今の喜美枝さんには参考になると思うので、
私が初めて浮気をした時のことを少し話してみます・・・」

頃合を見て、由美子は話題をセックス関係に振りました。電話の向うで、喜美枝が緊張している
雰囲気を由美子は感じ取っています。思ったとおり、伍台とのセックスが一番気になっているの
だと由美子は確信していたのです。由美子はシナリオどおり話を進めることにしました。


[18] 一丁目一番地の管理人(436)  鶴岡次郎 :2012/07/14 (土) 16:13 ID:mlfujSkQ No.2267

「結婚して三ヶ月目だった、長期海外出張で主人が居ない時、街で出会った40男とフラフラと
関係を持ったことがあった。初めての浮気だった。その頃、セックスの良さがようやく判り始め
ていて、身体の疼きを抑え切れなくて、男なら誰にでも抱かれる気分になっていたのだと思う。

その男は逞しくて、酷く日焼けをした大きな男で、初めて彼の腕に抱かれた時、日向の香りがし
たことを鮮明に覚えている。後で判ったことだけれど、日雇い土建職人の暮らしを続けている独
身の男だった。

最初はその日限りの浮気のつもりだった。それが、ズルズルと、主人の留守中、一ヶ月近く、毎
日のようにその男に抱かれた。

罪の意識があったのは最初の二、三日だった。40男のテクニックと逞しい体に溺れて、6畳一
間の汚い彼の下宿に入り浸り、男は仕事を休み、昼夜問わず、私は翻弄され、悶え、時間を問わ
ず、全身で彼を受け入れ、泣き叫んで暮らしていた・・・」

喜美枝の気持ちは複雑でした。イタリア男との過去は今となっては決して思い出したくない古傷
なのです。それが、伍台の電話でその過去を掘り返され、今また、由美子によって古傷を弄られ
ているのです。いっそ電話を切ってしまおうとも思いましたが、善意から由美子が電話をしてき
たことが良く判るだけに、我慢して聞くことにしているのです。

「古いアパートだったから、私達のことはアパート中に知れ渡り、評判になっていたと思う、そ
れでも、私は何とも思っていなかった。多分、今思うと、その40男の手で幼かった私の身体と
心が一気に開花して、常識的な羞恥心を忘れることが出来たのだと思う。多分、あのアパートの
生活がその後に続くインランな人生における私の原点だと思います。

あの男の手で、私は全く別人に変わりました。いえ、正確に言えば、潜在的に存在していた女の
本質が、あの男の手で日の眼を見ることになったのだと思います。

出張から帰ってきた主人に、覚悟を決めて全てを告白した。離婚になっても仕方がないと思って
いた。主人には申し訳ないけれど、あれだけの楽しんだのだから、これも一つの女の生き方だと
思って、どんなことになっても、決して後悔してはいけないと思っていた。その一方では、主人
と別れたくない気持は強く、出来ることなら、こんな私を受け入れて欲しいと淡い期待を持って
いた。

その男には、お世話になったお礼を言って、いくばくかのお金を与え、別れを告げた。その男は
私を愛していると泣いて縋ってきたけれど、何とか納得させた。男とはそれ切りだった・・・」

電話の向うで喜美枝は、黙って由美子の話を聞いていました。思い出したくもない自身の浮気を
連想することを嫌って、最初は聞き流していたのですが、話の途中から耳を傾け始めたのです。
由美子が何か重要なことを伝えようとしているのを、どうやら喜美枝は悟ったのです

「結局主人は許してくれた。許されたその夜、主人の腕の中で大しく抱かれていた。以前より感
じ易くなっている体にびっくりしながら、それでも、それを気配に出さないよう我慢していた。

女って、ダメなんですね・・・、
主人が入って来た時、我慢出来なくなって・・、我を忘れてしまって・・・。
気が付いたら、あの40男の上で悶えたように、
主人の身体の上に馬乗りになって、悶えていた・・・。

本当にスケベーでしょう・・・、
勿論、主人はびっくりしていた・・・
だって、新婚三ヶ月の妻が騎乗位で乱れるのだから・・・」

「それで・・、その後はどうなったのですか・・・」

「どうなるって・・・、
主人、凄く喜んでくれて、もう一度抱いてくれた・・。

そしたら、もっと大きな波が押し寄せてきて、
私・・、あの男に教えられたいやらしい言葉を一杯吐き出して、
悶えに、もだえていた・・・。

もう・・、どうなってもいい気分だった。
これで嫌われて、捨てられることに成っても仕方がないと思っていた・・・
これが私の素顔なんだから、とうてい隠しきれない、
そんな、開き直った気持ちになっていた・・・・」

「・・・・・・・・」

由美子の話を聞きながら、喜美枝は自身の犯した罪と由美子の罪を比較しながら、同じ様な罪を
犯しながら、今の由美子と自身の境遇の差を、しみじみと見直していました。そして、こうした
状況になったのは、誰のせいでもなく、彼女自身の弱さと未熟さ故だったことを痛いほど感じ
取っていたのです。そして、自身の淫らな体験を語りながら、喜美枝に語りかけている由美子の
本意をおぼろげながら喜美枝は理解し始めていたのです。先ほどまでの喜美枝では有りません。
真剣な表情で由美子の一言一言に反応しているのです。



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