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フォレストサイドハウスの住人達(その15) 

[1] スレッドオーナー: 鶴岡次郎 :2016/09/19 (月) 14:32 ID:J9vM0XIA No.2895

泉の森の取り持つ縁で、由美子と愛はSFハウスに住む千春と知り合いました。最初から波長が
合ったのでしょうか、あるいは千春のとんでもない浮気現場を由美子が偶然目撃したせいで、出
会った最初から三人の女は何も隠さず、自身の恥ずかしい過去をさらけ出すことになりました。そ
のせいでしょうか、三人はすっかり親しくなりました。

由美子は殆ど毎週のように愛の売店に出向き、そこで二、三時間たわいのない会話を弾ませるのが
習慣ですが、その二人の仲に千春も仲間入りする様子です。それぞれ個性的な女性ですし、由美子
と千春は夫公認の愛人を持つ多情な女ですから、三人集まれば、この先も面白い事件が起きそうな
予感がします。

毎度申し上げて恐縮ですが、読者の皆様のご意見、ご感想は『自由にレスして下さい(その11)』
の読者専用スレにご投稿ださい。多数のご意見を待っています。    

また、文中登場する人物、団体は全てフイクションで実在のものでないことをお断りしておきます。
卑猥な言葉を文脈上やむを得ず使用することになりますが、伏字等で不快な思いをさせないよう注意
しますが、気を悪くされることもあると存じます。そうした時は読み流してご容赦ください。

発表した内容の筋を壊さない程度に、後になって文章に手を加えることがあります。勿論、誤字余脱
字も気がつけば修正しています。記事の文頭と、文末に下記のように修正記号を入れるようにしま
す。修正記号にお気づきの時は、もう一度修正した当該記事を読み直していただけると幸いです。

・〈(1)2014.5.8〉 文末にこの記事があれば、この日、この記事に1回目の手を加えたことを示
ます。
・〈記事番号1779に修正を加えました。(2)2014.5.8〉 文頭にこの記事があれば、記事番号1779
 に二回目の修正を加えたことを示し、日付は最後の修正日付です。ご面倒でも当該記事を読み直し
ていただければ幸いです。


[2] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(496)   鶴岡次郎 :2016/09/19 (月) 14:49 ID:J9vM0XIA No.2896

咲江の悩み

坂上咲江には小学生二年の息子と、4歳になる娘が居て、娘は浦上千春の息子と同じ幼稚園に通って
います。身長160センチに満たない小柄な女性で、目が細い純日本風の古典的な美人です。短大を
卒業した後、国立研究所の事務職として採用され、OLをしていたのですが、5歳上の坂上夏樹と職
場結婚して、寿退社して、以来、専業主婦を続けているのです。

夫の坂上夏樹は真面目で、正義感の強い人物で、小学校から大学院までずっとトップの学業成績を収
め、秀才の名をほしいままにしてきた人物です。長身で、痩身で、秀才にありがちな冷たい感じはな
く、人柄でしょうか、その類希な才能のなせる業なのでしょうか、茫洋としていて傍にいる人をこよ
なく癒してくれる人物なのです。咲江も夏樹のそんなところにべた惚れなのです。

博士課程を終わった後、武者修行のような形で大学に籍を置いたまま国立の研究所に勤めることに
なったのですが、いずれ母校の教授になることが約束されていると言われています。専門分野では国
際的に知られる有名人で、いずれノーベル賞も夢でないと言われている人物です。三年前に念願のマ
イホームを手に入れ、SFハウスへ引っ越してきたのです。

幼稚園が一緒だということで咲江と千春は急速に親しくなりました。かなり派手目で、背の高い千春
と、何事にも控えめな女性である咲江は、見た目も考え方もかなり異なるのですが、そのことが
返って二人を引き付けることになり、二人の仲は急速に深まりました。

付き合い始めて間もなく、千春はソープ勤めをしていることも、佐王子と言うセックスフレンドが居
ることも咲江に告げるほどの仲になっていました。咲江は見かけ以上にしっかりしていて、彼女のモ
ラルと今まで生きて来た経験則に照らせば、とても受け入れることが出来ない千春の奔放な性生活を
聞かされても、驚き、あこがれることがあっても、一方的に非難したり、軽蔑したりすることなく、
それなりに理解を示しているのです。

それでいて、自身の生活では夫一人を守りきり、千春の話に刺激され浮気願望を持つものの、それを
実行に移すことなど、夢にも考えない堅実な生活を守っているのです。そんな咲江に事件が降りかか
りました。


その日、咲江は久しぶりに都心の繁華街に一人で来ていました。短大の同窓会が開かれることにな
り、子供たちを夫に預け、出席したのです。同期の女たちの中にはまだ結婚しないで現役のOLとし
て頑張って働いている人もかなりいて、それなりに新鮮な刺激を受ける半日を過ごしました。

会が終わった後、二次会の誘い断り、子供たちのために評判のケーキを買い求めるために少し足を延
ばしたのです。その店はソープや、いかがわしい店が軒を並べる歓楽街と背中合わせの場所にありま
した。勿論、咲江は風俗街がそこにあることは知っていましたが、自分とは無縁の世界だと思ってい
て、関心さえ持ったことがなかったのです。昔、OLだった頃、勤め先の研究所から徒歩で行けるこ
の店へ行き、月に一度か、二度その店で自分へのご褒美で、ケーキを買い求めるのが、当時、咲江の
最大の楽しみだったのです。

店でケーキを買い求め、急いで帰るつもりで駅への近道を選んだのです。その道は風俗街を通り抜け
る道で、昔もそうだったのですが、普段なら咲江がその道を選ぶことはなかったのです。しかし、そ
の日、喜ぶ子供たちの顔が早く見たくて、咲江はその道をとってしまったのです。


[3] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(497)   鶴岡次郎 :2016/09/20 (火) 15:02 ID:0/SPKTpw No.2897

明るい表通りから右に逸れると、薄暗い路地の奥に毒々しく原色の光を放つ看板が立っている風俗街
が見えます。表通りから速足でビルの角を曲がった時、咲江の目の前に大きな壁が突然立ちはだかり
ました。壁と思ったのは黒服を着た二人の男だったのです。男たちは身軽に咲江の体をかわしたので
すが、もともと体育が得意でない咲江はとっさのことで反応できなくて、手にしたケーキの箱を宙に
投げ出しその場に跪いてしまったのです。

焼けつくような激しい痛みが咲江を襲いました。悲鳴も上げていました。それだけではなかったので
す…。

ケーキの箱が男の一人に当たり、中からケーキが飛び出し、彼の黒いズボンに白いクリームをぶちま
けていたのです。さすがに男は声を出しませんが、渋い表情で咲江を見ていました。

痛みより、ケーキを無駄にしたことより、男のズボンを汚したことが咲江にとって一番気になること
でした。急いで立ち上がり、男に近づきハンカチでクリームを拭おうとしたのですが、ハンカチで何
とかなる状態でないことがすぐわかりました。

「スミマセン…、
クリーニング代を払わせてください…」

その言葉を出すのが、咲江にできるただ一つのことでした…。

「いいんだ・・、いいんだ…、
こんなモノ・・、洗えばすぐとれるから・・・、
それにしても、あなた…、
血が出ていますよ…」

そう言われて、咲江は自分の膝を改めて見ました。ストキングが破れて、はっきりそれとわかるほど
出血しているのです。血を見ると急激に痛みが増していました。咲江はへなへなとその場に座り込ん
でしまいました。悲しいはずですが涙は出しませんでした。

「ああ・・・、そんなところに座ってしまって…
そのままではダメだ…、手当てをしないと…、
おい・・、ご婦人を背負って店まで運べ・・」

その時になって初めて千春は二人の男が黒のスーツで身を固めていることに気が付いていました。明
らかに普通のサラリーマンとは違う粋な着こなしなのです。スーツも高価なものに見えます。

一人は50歳くらいで、170に届かない身長ですが、贅肉のないシャープな体をしています。鼻の
下に口ひげを蓄え、やや色のついた縁なしグラスをかけた渋い中年です。もう一人はかなり若いイケ
メンで、180センチを超える長身で細身の男です。二人とも普段はめったに会うことがない種類の
男です。少なくとも主婦である咲江には縁の遠い人種です。

ただならない二人の男を見て、大変な相手に迷惑をかけってしまった・・。咲江は背中が冷たくなる
ような恐怖を感じていました。


[4] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(498)   鶴岡次郎 :2016/09/21 (水) 11:05 ID:uYCjRJPM No.2898

若いイケメンがその場に腰を下ろし、黙って片膝をペイブメントの上について、咲江に背中を向けま
した。

「奥様・・、遠慮なさらず・・、おぶさってください…・。
この近くに私の事務所があります。そこで応急手当てしましょう…」

中年が微笑みを浮かべて言いました。暗闇の中でも、素早く咲江の指輪を見て、人妻だと判断してい
るのです。油断できない男です。咲江は断ることができませんでした。それから先のことは、すべて
咲江には夢の中の出来事のように感じられました。
 
若い男の背中は暖かく、若草にも似た体臭を嗅ぎ取り、咲江はうっとりとしていました。それほど大
きくない乳房をぴったりと背中に押し付け、大きく広げた両脚でたくましい男の体を挟み込んでいる
のです。頬を首の周りに近づけ、唇をそれとなく男の首に押し付けていました。

ストッキングの薄い布一枚を隔てて男の体に触れているのです。イケメン君が歩を進めると背中や腹
部のたくましい筋肉の動きがダイレクトに女の肌に伝わってくるのです。大腿部に食い込んでいる男
の指を咲江は苦しいほどはっきりと感じ取っていました。それだけで体が潤むほど感じていたので
す。

若い男は軽々と咲江を背負い、ビルの外階段を上がり、二階にある通用口から事務所に通じる狭い通
路を辿り、硝子戸をあけて事務所に入りました。それほど広くない室内に机が10脚ほど置かれてい
る比較的地味な事務所でした。窓を背負って中央に、おそらくこの事務所内で一番位が高い人物の机
の傍に、粗末な合成皮を張ったソファーがありました。咲江はそのソファーに降ろされました。

「奥さん、ストッキングを切り取りますが・・、いいですね・・・」

中年男は咲江の返事を待たずスカートの裾を腰までまくり上げ、膝の破れたところからハサミを入
れ、足先まで一気に切り開き、次に腰までストッキングを切り開きました。ハサミの冷たい感触を咲
江は臀部で感じ取り、一瞬震えるほどの刺激を受けていました。パンストは片足だけになり、T
バックのショーツが露わになっていました。おそらく、毛深い股間のハミ毛を男達は目撃したに違い
ありません。

咲江が止めることが出来ないほど素早い、見事な男のハサミさばきでした。ショーツ姿をさらけ出し
ても、今更恥ずかしがるのが不自然に思えるほど中年男の所作に嫌味や、やらしさはないのです。医
者の前に居る心地さえ咲江は感じていたのです。咲江は黙って、男に体を任せる様子を見せていま
す。

そこで中年が立ち上がり、イケメン君に近寄り何事か指示しています。そして、イケメン君は急ぎ足
で事務所を出て行きました。中年と咲江が残されたのです。スカートが捲りあげられ、パンストの片
足が腰から足先まで切り開かれ、ショーツ姿を男の前にさらし出しているのです。この上なく危険な
状態ですが、咲江はそれほど不安に思っていませんでした。

男が再び咲江の両脚の間に跪きました。女は男を迎えるように両脚を少し開いています。もろだしに
なった大腿部に男は右手を置き、両脚を更に押し開くようにして、女の脚の間に体を入れて左ひざ内
側の傷に顔を寄せて、傷を診ています。

男の鼻息が咲江の脚に微妙な刺激を与えています。先ほどイケメン君に背負われてかなり感じていた
局部が再び潤ってくるのを咲江は感じ取っていました。


[5] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(499)   鶴岡次郎 :2016/09/22 (木) 14:04 ID:fr9XWKa6 No.2899

明らかにそうした手当てに慣れている感じで、治療用の薬や備品も普通の家庭とは比べられないほど
完備されているのです。貴重な物を取り扱うようにして、傷を消毒し、軟膏を塗り、包帯を器用に巻
いています。

男の視線がやや開き加減になっている咲江の股間に注がれているのを女はずーっと感じ取っていまし
た。視線を感じ取り、その部分が熱くなり、明らかなぬめりさえはっきり感じ取っているのです。そ
れでも女は股間を緩めたままで、やや開き加減にして男の視線を楽しんでいるのです。しかし、そん
な女も、股間から漏れ出した妙なる香りが敏感な男の鼻腔をかなり刺激していることまでは気づいて
いませんでした。

右手で包帯を巻きながら脚が動かないように支えるつもりなのでしょう、左手は大腿部をしっかり
握っていて、その手が大腿部からじわりじわり奥へ進んで、指先がほとんどショーツのボトムに触れ
る寸前まで来ているのです。当然男の指の侵入を感じているはずですが、女はそんな男の手を嫌
がっていない様子で、むしろ股間をやや開き加減にして、男の指を迎え入れようとしているようにさ
え見えるのです。

かなり時間をかけた丁寧な作業でした。包帯がようやく巻き終わりました。治療は終わったのです。
ところが男の左手は女の股間へ届いていて、今にもその部分に触れる寸前のままで、その場所を離れ
ようとしないのです。女も治療を忘れている様子です。

男の視線が大胆になり、女の股間に固定されています。それを感じ取ったせいでしょうか、そこから
沸き上がる芳香は、いまや男を狂わせるほど強いものに変わっています。男の視線はショーツの谷間
にわずかなシミを見つけだしていました。

男の指が一度か二度、ボトムのその部分に軽くタッチしました。女はそれを感じ取って体を震わせて
います。

「ああ・・・、失礼・・、
ここ・・、痛いですか・・・、
痛かったら・・、そう言ってくださいね…・」

「いえ・・・・、何ともありません…・」

「こうすると・・、どうですか…
痛くありませんか・・」

そう言いながら、包帯の上から傷を右手でやや強く触っています。そして、左指をショーツの隙間か
ら忍び込ませ、指二本を局部に挿入しているのです。

「ああ・・・、痛い…・ッ・・・・」

傷の痛みと局部への指の挿入による快感を同時に感じ取り、女が高い声を上げています。

「ああ・・・、失礼…、
ここ・・・、痛いようでしたら・・・、止めましょうか・・・・・」

「ああ・・・、いいです・・・
そのまま・…、そのままで・・・・」

「こうすると・・、どうですか…」

「ああ・・・・、
気持ちいいです……
そこ、そこ・・・、いいです…・」

男の左指が巧みに踊り始めているのです。女は高い声を出し、両脚をいっぱいに広げています。


[6] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(500)   鶴岡次郎 :2016/09/24 (土) 16:45 ID:w1lnGt3. No.2900

女の様子を見て、これなら大丈夫と見て取った男は、Tバックショーツをはぎ取りました。女は尻を
上げて男の作業に協力しています。一糸まとわない下半身が露わになり、女はいっぱいに両脚を開き
その部分をさらしています。

濡れそぼった女陰が露わになり、淫らにうごめいています。女は覚悟を決めている様子で、あがらい
ません。それどころか、積極的に両脚を開き、その部分を男に見せつけるように腰を持ち上げ、男を
呼び込むようにゆったりと左右に動かしているのです。

女の両脚の間に体を入れて、右指、左指をフルに稼働して女のポイントを大胆に、的確に刺激してい
ます。もう・・、女はすべてを忘れ快感の中に溺れています。あふれ出た愛液がソファーの表面を濡
らしています。女は苦悩の表情を浮かべ、大声を上げて悶えています。女の指が男の股間に伸び、ズ
ボンの上から男根を握りしめています。女は男根を受け入れる覚悟が出来ている様子です。

イケメン君が外出から戻ってきた足音が聞こえてきました。その音にすぐに気が付いた中年が手を止
め、腰までまくり上げていたスカートの裾を元に戻しています。突然作業を中止した男を女は恨めし
そうに睨んでいます。男は親指を立て、部屋の入り口方向を何度か指さしました。どうやら女も状況
がつかめた様子です、大きく股を広げて投げ出していた脚を慌てて整えています。

ソファーからショーツを拾い上げ女に差し出しています。それまで夢の中に居るようにして治療を受
けていた女がようやく目覚めた様子で男と視線を合わせて、頬を染め、ショーツを受け取っていま
す。それは絞れば滴るほど濡れそぼっています。濡れたショーツの重さを感じ取り、女はさらに恥ず
かしさが増したのでしょう、身をよじっています。そんな女を好ましげに見ながら、男が右人差し指
を唇の前に立て、にっこり微笑んでいます。女も軽く頷き、ショーツを手のひらの中に隠していま
す。

30分ほど前、偶然街角で出会い、妙な縁で男の事務所に担ぎ込まれ、まだ名前さえ名乗り合ってい
ない仲ですが、もう・・、咲江は中年男をすっかり受け入れた様子です。最初は怖い男と感じていた
のですが、優しく治療を受け、その上、あられもない姿をさらしたことで、女は中年男に強い親近感
を持つようになっているのです。その変化は、セックスの後に見せる女の変化に似たものがありま
す。

「応急処置を済ませておきましたから、化膿することはないと思います。念のため明日にでも医者に
診てもらってください。それから、これは痛み止めの飲み薬です・・、痛くて眠れない時に飲んでく
ださい。私も常用していますが、副作用は少ないようです…」.

「ありがとうございます・・・」

咲江はうっとりとして頭を下げていました。ケガをしたとはいえ、男からこんなに大切に取り扱われ
たことは記憶にないのです。

「お好みに合うといいのですが・・・」

イケメン君がパンストを咲江に差し出しています。

咲江が今着けているストッキングと同じメーカの品です。おそらくパンストをハサミで切り裂く時、
中年がメーカを確かめ、イケメン君に同じ品を買い求めるよう指示したのだと思います。油断できな
い男です。

トイレで着替えを済ませてソファーに戻ると、なんと・・、新しいケーキの箱がテーブルに置かれて
いました。イケメン君がストッキング同様、買い求めてきたのです。ケーキ店の店員が咲江の伝票を
見て、同じ物を揃えてくれたのです。そしてしばらくすると運転手姿の人物が事務所に入ってきまし
た。

「迷惑をおかけした償いに、自宅まで送らせてください・・、
本来ですと、私たちのどちらかがお供すべきなのですが・・・、
二人ともこちらにヤボ用が残っていて・・、お供できないのです・・。
信用できる会社のハイヤーですから、安心して利用してください・・
勿論、料金は支払い済みです・・・」

中年が笑みを浮かべて説明しました。こうして、断るスキさえ与えない行き届いたマナーで咲江は車
に運び込まれたのです。


[7] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(501)   鶴岡次郎 :2016/09/25 (日) 15:50 ID:Xitas282 No.2901
自宅へ戻った時、二人の男に世話になったと夫に告げるのを、何故か咲江はためらいました。宴会場
で転んでひざを擦り剥いたと夫に告げたのです。夫は笑っていました。彼の笑顔を見て咲江の心は少
し痛みました。夫に秘密を持ったことは今までなかったのです。この小さな嘘が引き金となって、こ
の先、咲江はずるずると道を外していくことになるのです。

傷の治療を受けたところまではともかく、中年男の指を拒否しないで、股間に受け入れたことが咲江
自身、現実に起きたこととは思えない気持ちなのです。それでも、お風呂に入り、そっと大腿部を撫
ぜるとはっきりと男の指の感触を思い出していました。そっと亀裂に指を入れると、そこは洪水状態
でした。

〈ああ・・、なんて馬鹿なことをしたんだろう…、
あの時、手を払えば・・、それで何事も起こらないで終わったはずなのに…、
アソコをじっと見つめられ・・、
彼の指が・・、アソコに届きそうになっているのに気が付ていたのに・・、
私は抵抗しなかった・・・、むしろ、脚を広げて迎え入れていた…〉

湯船に身を沈めて、咲江は中年男のことを思い出していました。

〈指を入れられた時・・・、
私は・・・、私は・・、彼に抱かれてもいいと思っていた…・
もし・・、そんなことになっていたら…
ああ・・、考えるだけでも恐ろしい・・〉

そのまま最後まで行くつもりになっていた女心を思い出し、背中が凍るような恐怖感を抱いているの
です。

その一方で…・

〈でも・・、誰にもバレないのなら・・・、
一度だけ・・、ただの一度だけでいい・・・、
他の男に抱かれたい…・・、
このまま何もしないで、女の盛りが過ぎるのを待つのは嫌だ…・〉

どこかで、気弱な彼女自身をあざ笑い、背信行為を促す、もう一人の咲江が居ることをはっきりと感
じ取っていたのです。


数日後、家事や子供の出迎え時間を何とか調整して、先日ケガをした同じ時間を選んで咲江はその事
務所を訪問しました。その時間であればあの事務所も営業中だと推測したのです。二人の男の様子か
ら何となく特殊な商いをしている事務所ではないかと思って、それで、普通の会社なら営業を終
わっているはずの夜の7時をあえて選んだのです。

「村上装備」と言う会社名を咲江は記憶にとどめていました。ネットで調べると資本金200万円、
従業員数名の会社で、社長は村上総一郎、53歳で、店舗の改装請負や店舗用の備品を扱い、売り上
げも、利益もそこそこで、まずはまっとうな会社でした。


事務所を訪ねると、先日の二人の男が忙しく働いていました。数名居ると言われている他の社員は外
で働いているのでしょう。二人は先日の正装と違い、ラフな格好をしています。

若いイケメン・・、村松栄治、23歳は、かなり大きな段ボールの箱を開けて、中から食器類を丁寧
に取り出し床に並べていました。おそらく卸問屋から届いた商品を整理して、お客様へ配達する準備
をしていると思えます。中年は・・、社長の村上総一郎は、パソコンに向かって伝票を見ながら打ち
込みを続けています。二人の様子を見る限り、どこから見てもごく普通の商店の風景です。普通と違
うのは、時刻が夜の7時を過ぎていることです。

丁寧にお礼を言い、準備してきたクッキーを咲江は差し出しました。村松がかいがいしく動いてお茶
の準備をしています。

「翌日、近くの医院へ行きました。応急処置が非常に行き届いていると医者が褒めていました。それ
で、かなりの傷だけれど、一週間もすればきれいに治り、痕も残らないということでした。本当にお
世話になりました・・」

「イヤ・・、イヤ・・・
私たちこそ、とんでもない迷惑をかけました…、
私たちにとっては慣れた道ですから、暗闇の中でも平気で歩くのですが、
あの付近は昼間をともかく、夜になると、暗くて危険な場所なんです・・。
これからは、夜はあの道を通らないで、
少し遠回りでも明るい道を選んでください・・」

「ハイ・・・」

「ところで・・、咲江さん・・・・
夕食は済んでいますか・・・、
未だでしたら、ご一緒にいかがですか・・・、
おいしいイタリアンの店が近くにあるのですよ…」

食器類配送の仕事があるという村松栄治を残して、咲江と村上は肩を並べて、事務所を出ました。そ
して、その夜の内に二人は男女の関係を持ったのです。


[8] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(502)   鶴岡次郎 :2016/09/27 (火) 15:40 ID:bFrLtGJ6 No.2902
こうなることを、家を出る時から咲江は想像して、覚悟を固めていたのです。シャワーを使い、下着
もそれなりの物を着け、避妊具もバッグに忍ばせていたのです。家を出る時から、誘われれば断らな
いと決めていたのです。

決心するまで随分と迷いました。幼い子供がいることを口実にすれば、先日のお礼は電話でも済みま
すし、お礼の品も送り届ければいいのです。主婦が一番忙しいはずの夕暮れ時、貴重な時間を割い
て、わざわざ男が確実に事務所に居る時間を狙って訪問するのです。勘のいいあの男なら、この時間
を選んでやって来た咲江の好色な下心を読み取り、ほくそ笑むだろうとも思ったのです。しか
し・・、最後には咲江の中に居るもう一人の女が背中を押してくれたのです。

〈咲江・・、何を迷っているの…
こんなチャンスは二度と来ないよ…・、
このまま女を終わってもいいの…?

咲江を見るあの男のいやらしい視線を思い出してごらん・・・
あの巧みな指使いを覚えているでしょう…
きっと…、失神するほど感じさせてくれるはず…・

きっと食事に誘ってくるはず・・・・
黙って頷くだけでいいのよ・・・、
終わった後、口を拭えば・・・、
誰にもバレないから…・〉

男と女の仲は、予想が付かない展開があると言えばそれまでですが、咲江の下した判断は普通に考え
ると不思議で、唐突な決断です。ですが・・、咲江にとっては考えに考えた末に下した決意・・、熟
慮の末に決めた行為だったのです。なぜそんなことをしたのか…、それが男と女の関係だからとしか
言えません。


一度だけの浮気と咲江は決めていました。しかし、もう一度会ってほしいと、別れ際に抱きしめら
れ、唇を吸われ、男から迫られると、咲江は黙って頷いていたのです。

二度目の出会いは一週間後の昼間でした。この時間であれば自由に咲江は動けるのです。昼間の情事
は予想外の快楽を咲江に与えました。さんさんと日の光が差し込むホテルのベッドの上で、咲江は生
涯で初めて失神を味わいました。こうなると女は弱いと、咲江は思い知らされました。

失神からよみがえり、ぼんやりしている隙を狙ったように男が後ろから抱きついてきました。右手で
乳房を優しく握り、左手は素早く膣に挿入されているのです。女の腰に感じる男根は少し硬くなった
程度です。

「咲江…、正直に言う・・、
俺はこの年で初めて女に惚れってしまった…
旦那と別れろとは言わない、
月に一、二度でいい、俺と会ってほしい…」

「ダメ…、
ああ・・・、そんなことできない・・
これっきりと約束したじゃない…」

「やっぱり駄目か・・・、
無理な相談かな…」

そう言いながら、女の首に唇を押しつけ、舌で首筋を嘗め回し始めています。女が苦しそうに顔をゆ
がめています。男の両手は乳房と膣を愛撫しているのです。

「ああ・・、ダメ…、
お願い・・・、これっきりで止めましょう…、
ああ・・・、止めて…」

男は黙って両手、唇の愛撫を続けています。女は呻きながら男の手を必死で解こうとしています。

「ああ・・・、ダメ…」

右半身を下にして、女の左足が高々と持ち上げられています。いきり立った男根が女唇に触れていま
す。女の抵抗が止まり、腰を男根に擦り付けるようにしています。

男が男根を握り、女唇をこすっています。驚くほどの愛液がほとばしり出ています。女は挿入を望ん
で、腰をしきりに動かしています。男は男根の先端を女唇に押し付けたり、離したりしています。

「ああ・・、お願い・・・、焦らさないで…・」

「俺の愛人になると約束してほしい…」

「ああ・・、そんな…」

女が悶えています。男が一気に挿入を果たしました。体をのけぞらせ、女が絶叫しています。

「俺の愛人になるな…・」

「なる、なる…、愛人になる…、
もっと・・、もっと・・・、
ああ・・・、もっと・・、突いて…・・」

こうして、村上のモノを深々と受け入れた状態で、村上の愛人になると、咲江は泣き叫びながら約束
してしまったのです。


[9] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(503)   鶴岡次郎 :2016/09/29 (木) 10:52 ID:tcgxfZmg No.2903

悦楽の渦中で愛人になると約束した形ですが、その気になれば取り消すことはできたのです、短い付
き合いですが、女には村上の生き方、生活スタイルが幾分か判り始めていたのです。格好良さを売り
物にしている村上であれば、嫌がる女を無理やり愛人にするつもりは持たないはずだと女にも判って
いたのです。それでも咲江は自身の言葉を取り消しませんでした。愛人になると公言したことを咲江
は決して後悔していなかったのです。むしろこれで良かったと思っているのです。

人妻にとって、他の男の愛人なると公言することは、あまりにも罪深い約束事です、とても正常な精
神状態では口に出せないことです。その女の立場と気持ちを尊重して、狂ったような情感の高まりの
中で、村上は咲江に愛人になることを求め、女が嫌々ながらその申し出を受け入れる形をとることに
したのです。村上の狙いは、遊びの中に男と女の本音を散りばめた形なのです。

村上の立場に立てば、戯れの中で取り付けた約束事にそれほど拘束力があるとは当然、思っていな
かったのです。それでもこの約束にすべて意味がないとは思っていなかったのです。少なくても、女
がこの関係を嫌っていないことは判ったのです。咲江を夫から奪い取るつもりも、金銭を貢がせるこ
とも、端から考えていませんでしたから、これ以降は流れに任せて、離婚など深刻な問題が起きない
よう、深い付き合いを避け、愛人の言葉さえ封印して、村上は咲江との仲を楽しんだのです。後に
なって判るのですが、むしろ危険な状態に陥ったのは咲江だったのです。


この日を境にして、村上と咲江の情事は深く潜航して行われるようになったのです。連絡には携帯電
話を一切使用しないことにしたのです。連絡をしたい方が公衆電話から相手先の固定電話に掛けるこ
とにしたのです。もちろん、メール、手紙などは一切使用しません。

出会いの場所と時間にも工夫を凝らしました。咲江のマンション近くの地下鉄駅から都心へ向けて5
駅行ったところに比較的大きな町、M駅があります。二人はこの町にあるホテルを利用することに決
めました。そこにはたくさんのその種のホテルがあって、目立たないこと、二人とも30分程度で行
けることを考え、このM駅のホテルに決めたのです。

咲江のマンションのある駅からM駅へは急行で直行できるのですが、ここへ行くのに、咲江は二度電
車を乗り換えて行くようにしているのです。これは村上のアイデアで注意深く尾行をチェックするこ
とにしているのです。

M駅の東口を出ると郊外唯一と言われる繁華街があって、ソープや、飲食店、そしてホテルが軒を並
べているのです。一階が喫茶店になっているホテルを出会いの場として選びました。早く来た方がホ
テルの予約を済ませ、喫茶店でお茶をいただきながら相手を待ち、相手が現れると入れ違いに店を出
て、別の入り口からホテルへ入り目的の部屋に入るのです。遅く来た者は喫茶店でお茶をゆっくり飲
み、十分にスパイの目を警戒してから喫茶店から直接ホテルへ入るのです。勿論、帰る時は、時間を
ずらせて別々に部屋を出て、それぞれ違う出口からホテルを出ます。

昼間、子供たちが幼稚園や小学校へ行ったあと数時間、二人で過ごすのですが、最初は月に一度と決
めていました。それが、咲江から言いだし、月に二度のペースで会うことにしているのです。

こうして二人の密かな関係は半年ほど静かに続きました。村上と関係を持ってからも、咲江の日常に
変化はありません。当然、夫夏樹の生活にも変化はありません。以前通り、判で押したように、規則
正しい、しかし充実した日々が村上家を通り過ぎてゆきました。

夫を送り出した後、小5の長男と幼稚園児の長女を送り出すと咲江の自由な時間がやってきます。家
事を午前中に済ませ、近くの商店街か、少し足を延ばしてM町のデバ地下へ買い物に出かけるので
す。村上への連絡は買い物に出かけた時、公衆電話を使用して行うのが常なのです。毎日でも会いた
いと咲江は思うのですが、村上はやんわりと拒否しました。そして、咲江を説得して月に二度と決め
たルールを守らせているのです。


[10] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(504)   鶴岡次郎 :2016/10/03 (月) 11:11 ID:dxjp7rlE No.2904
夫とは週末に関係を持つことになっていて、律儀に、かなり事務的にに、夫はこの習慣を消化するの
です。村上と付き合うようになって、咲江の体はかなり変わって来ていました。夫との事務的と思え
るセックスでも十分に感じるようになっているのです。感じすぎるのを警戒していないと、とんでも
ない醜態をさらすことになりそうなのです。

アレの寸法とか、硬さだけを取り上げて夫と村上を比較すると、村上のソレは夫、坂上夏樹のモノに
到底かなわないのです。村上と夫のモノしか実物は知りませんが、最近、ネットで他の男のモノを見
ることを覚えた咲江は、夫のモノが日本人離れをした寸法を持ったモノであることに気が付いている
のです。そのことを知って、夫を見直し、大切しなくてはいけない・・、そう思い始めているので
す。

夫は判で押したように決まった手順で咲江を抱きます。キッスをして、咲江の局部に一分間程、指で
触れ、それが終わると挿入を開始するのです。新婚のころはかなり痛みを感じ、抱かれること自体が
苦痛だったのですが、ある時から、咲江は週末には事前にオナニーをしてその部分を前もって潤滑す
る術を覚えたのです。最近では・・、村上を知ってからは・・、オナニーの必要がなくなり、夫に抱
かれると思うだけで十分潤う体になっているのです。

挿入されると、その圧倒的な威力で、咲江は短時間で頂点に駆け上がるのです。最近はその逝く感覚
がすさまじいものになり、上に載っている夫を振り落としそうになることも珍しくないのです。その
意味で咲江は夫とのセックスに不満は持っていません。ただ、できれば週一をせめて週二に増やして
ほしいと思っているのです。しかし、夫、夏樹はセックスをセーブしているというより、セックスよ
りも面白い仕事に熱中している感じで、週一の事務的とも思えるセックスで十分満足しているので
す。

一方、村上のセックスはとにかくねっち濃いのです。肉棒の挿入時間はせいぜい30分で、夏樹の場
合と違い挿入が必ずしもクライマックスのトリガーにはならないのです。ホテルの部屋に入ると、と
にかく咲江の全身を摩り、舐める作業を飽きることなく続けるのです。いろいろな性具も買い揃え
て、その日になれば、大きなバッグに詰め込んでいそいそとやって来るのです。

夫がロケット発進のように一気に攻めるタイプであれば、村上は自転車のようにゆっくり、のろのろ
と核心に迫るタイプで、気が付けば、いつの間にかいい気持にされていて、最後にはのけ反り返り、
あらぬことを絶叫している状態に咲江は追い込まれているのです。もちろん、両方の男が・・、二人
のセックスの両方が、咲江は大好きです。できれば二人との関係をいつまでも続けたい・・、それが
咲江の本音なのです。しかし・・、破局は思わない形で咲江を襲いました。


いつものように情事を済ませホテルの扉を開けて廊下に出た時、部屋の前を通り抜けようとする
カップルにばったり出会ったのです。それほど広くない廊下ですから、ほとんど顔を突き合わせるほ
どの近さに、そのカップルは立っていたのです。今日に限らず、今までも何度かそんなことは起きま
した、それでも互いに面識のない仲ですから、互いに意味不明の笑みを浮かべて、黙って相手が通り
過ぎるのを待つだけだったのです。

「あら…」

「・・・・・・・」

若い男の腕にぶら下がっている中年の女、派手なワンピースを着て、思い切り派手目に化粧した女で
す。時折マンションの廊下で出会う同じ階に住む女性だったのです。40過ぎた女、子供はいない様
子・・、麻生・・と言う苗字しか知らない人物でした。

いつもの習慣で咲江一人が部屋を出て来たので、その女、麻生何某(なにがし)に村上の顔を見られる
ことは避けられたのですが、この時間主婦がこのホテルへ来るのは浮気以外に考えらないのです。も
ちろん麻生何某も明らかに浮気です。

「もう・・、お帰り・・・・?
私たちはこれからよ・・・」

淫蕩な笑みを浮かべて近づき、麻生何某が咲江の耳に口を寄せてきて呟いたのです。気に障る強い香
水の香りに咲江は思わず顔をしかめています。


[11] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(505)   鶴岡次郎 :2016/10/07 (金) 16:12 ID:OlleIks2 No.2905

「お互い、ここでは会わなかった・・、
知らなかったことにしようね…」

そう言って、麻生は咲江の顔を見てにっこり微笑みました。反射的に、咲江も小さく頷いています。

「それはそうとして・・・、
あなた・・・、
このまま、真っ直ぐ、自宅へ帰るつもり・・?」

「・・・・・・?」

「気が付かないの…・?
瞳が潤んでいて・・、妙に顔が輝いている・・・
先ほどまで男に抱かれていました…・、と・・
その顔が語っている…、フフ・・・」

不覚にもあわてて両手で顔を覆い、相手の好色そうな笑みを見て、直ぐに手を開放している咲江で
す。

「ホッ、ホッ・・・・、正直ね・・・、
その様子では、随分と楽しんだようね…・、
腰まわりだって何となく嫌らしい雰囲気よ・…、
未だ・・、アソコ…、濡れているんじゃないの…・、
男の匂いが残っているんじゃないの・・・、ふふ・・・・」

そう言って鼻先を咲江の体に寄せているのです。反射的に、思わず体を後ろに引いています。勿論、
シャワーを使い、お化粧だってちゃんと済ませているのです。匂いが残っているはずはないと思うの
ですが、気になっている咲江です。

「ハハ・・・、安心しなさい・・、何も匂わないよ…
でも、そんなでは・・・、直ぐに、旦那様に浮気がバレるよ…・、
どこか喫茶店で少し休んでいくといいよ・・・、フフ…・
お互い危ない橋を渡っているんだから・・・、
細心の注意を払わないとだめよ……」

女は咲江の肩に手を置いて耳にささやいているのです。彼女の手が置かれた部分がそこから腐るよう
な嫌な感覚を咲江は感じていました。こんな女と一緒のされたのではたまらないと思うのですが、彼
女の指摘が当たっているのは確かです。

三時間余り、これ以上は無理と思えるほどいろんな姿態で絡み合い、声が涸れるほど大声を上げ、体
中の水分をすべて吐き出すほど楽しんだのです。男の手や、唇で愛撫を受けた感覚が全身にはっきり
残っているのです、けだるい倦怠感とうるんだ瞳は隠しようがないのです。その気になって見る人が
見れば、情事直後のベッドから今抜け出してきた女だと判るはずです。

「じゃーね・・、私たち…、あまり時間がないの…、
彼・・、若いから・・・、大変なの…・、
頑張るわ・…、フフ…・」

そういって、麻生は手を振って、淫蕩な笑顔を残して、その場を離れたのです。咲江は凍り付いたよ
うにして彼女の後姿を見ていました。その日、村上には何も言わないで咲江は家へ帰りました。


[12] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(506)   鶴岡次郎 :2016/10/08 (土) 12:26 ID:s6ryXkKA No.2906

打つ手もなく無為に何日か過ぎました。ある日、近くの商店街で、遠くにいる麻生の後姿を見たので
す。恐れていたことが起きたのです。咲江は慌てて逃げ帰りました。それ以来、外を歩くのが怖くな
り、日暮れ時、街を行き交う人の顔が見えにくい時間帯を選んで買い物をするようになりました。い
ろいろ迷いましたが、最後には村上に連絡を入れて、もう・・、会わないよう申し入れました。事情
を聞いた村上は多くを語らず、案外簡単に納得しました。こうして二人の関係はひとまず終わりまし
た。

これで終わっていれば、咲江の浮気は誰にも知られないで、本人もそれほど悩まないで、時間の経過
とともに、村上のことを忘れることが出来たのです。

二ヶ月は何とか我慢できました。三ヶ月目に入るとイライラして不機嫌になりました。そんな時、夫
夏樹が二週間の予定で、北欧で開かれる、学会に出張することになったのです。

かなりちゅうちょの末、思い切って村上に連絡しました。彼の声を聞いて抑えていた感情が一気に爆
発しました。

「ああ・・・、抱いてほしい・・・
村上さんが…、欲しい…・」

涙ながらに電話の向こうで絶叫する咲江の声を聞いて、慎重だった村上も動かざるを得ない気持ちに
なりました。

「では・・、二時・・、
いつものホテルで・・・」

「あのホテルだけは嫌・・・、絶対いや…」

ホテルへは行きたくないという咲江の申し出を受けて、しばらく考えた末、村上はある提案をしまし
た。あまり乗り気ではなかったのですが、他に方法がないので咲江はその提案を受け入れたのです。
事務所の近くにある村上のアパートを利用することをになったのです。

鉄筋三階建ての古いアパートで、2DKの部屋でした。一人住まいで、ここ二年ほど、女を部屋に招
いたことはなく、これから先も女を連れ込むつもりはない、咲江が最初で最後の女だと、村上は
言っていました。男の一人住まいにしてはきれいに保たれていて、大型テレビとソファーが置かれた
10畳ほどの居間、6畳間にダブルベッドが置かれた寝室、都心にあるアパートであることを考える
と恵まれた住宅だと言えます。

そのアパートへ通うのに一時間ほどかかることを除いていては、咲江にとってはこれと言うほど不都
合はありませんでした。滞在可能な時間が限られているので、そんなに大したものは準備できないの
ですが、時々は食材を持ち込み、咲江の手料理を二人で食べるようになりました。互いに口には出し
ませんが、「通い妻」の言葉が二人の脳裏を過ることが多くなっていたのです。

ホテルへ通っていた頃より、咲江の内なる罪悪感は格段に肥大していました。男の部屋を訪ね、男の
体臭が染み込んだベッドで抱かれ、男のために食事を作る、この行為が咲江の心を次第に蝕んで行き
ました。募る夫への罪悪感とそれに反比例して高まる村上への愛情、その狭間で咲江はもがき苦しん
でいたのです。

それからまた半年が過ぎました。その頃にはもう・・、麻生の眼を恐れることはなくなっていまし
た。彼女のことが気にならなくなったというより、あの頃に比べて、罪悪感の質が大きく変わってい
たのです。あの頃は、夫や、周囲の目を盗んでこっそり浮気をしている罪の意識だけでした。今
は・・、このまま進めば破局が待っていることは目に見えている状態で、かといって、後戻りもでき
ないところまで来ていることを咲江自身が一番よく知っているのです。生きていることが罪だと思い
込むような状態へ追い込まれていたのです。


[13] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(507)   鶴岡次郎 :2016/10/17 (月) 11:48 ID:K04qhetI No.2907
咲江の生活から完全に笑顔が消えていました。その影響はすぐに幼い子供たちにも表れ始めました。
わがままを言ったり、理由なく泣き出したり、学校へ行くのを嫌がったり、変貌した母親の心を子供
たちは敏感に感知して、それなりに反抗を示していたのです。

一方、夏樹はライフワークにしていた研究がいよいよある節目に近づいていたのです。その現象を掴
めば、もちろん世界初の偉業であり、ノーベル賞さえも夢でないと思われている成果が目の前に見え
てきているのです。研究所に数日泊まり続けることも多くなっていました。週一、千春を抱く習慣も
ここ数ヶ月絶えているのです。

その一方で、底なしの罪悪感にさいなまれながら、沸き上がる欲望を抑えきれなくて、咲江の足は村
上のアパートに向かっていたのです。そのアパートで過ごす数時間、村上の手でほんろうされ、彼の
舌で全身を舐められ、最後に陰茎を挿入され男の体液で体が染まるその間だけ・・・、夫のことも、
子供のことも、すべて忘れ、ただ全身を襲う快楽に身を沈めることが出来るのです。

真っ暗な暗闇が眼下に見える崖っぷちに咲江は立っていたと思います。そして、もう一歩踏み出せ
ば、そこから真っ逆さまに落下し、卑しい女体を自らの手で抹殺することになっていたと思います。
それほど咲江は追い詰められていたのです。咲江を崖の上になんとか足止めさせたのは千春の存在で
した。


咲江と千春は幼稚園児の子供の送り迎えで必ず日に一度は顔を合わせます。子供を送り出した後、短
い時間お茶を楽しみ、おしゃべりに花を咲かせることもあります。二人は互いに何でも打ち明け、些
細なことでも困ったことがあれば相談する仲になっていたのです。

愛人がいることも、ソープ勤めも、千春は隠さず咲江に話していました。咲江も村上と浮気をするよ
うになった経緯、そのことが原因で抱え込んでいる悩みも全部、千春に打ち明けていたのです。

「咲江には荷の重いことだと思うけれど…、
このことはあなた一人墓場まで持っていくのだと決心することだね…
あなたの家庭は私の家とは違うから・・・、
他の男に抱かれていますと告白した瞬間、全てが狂いだすと思う…」

ある時から、咲江と会えば必ず千春は最後にはこう言って、咲江を力づけるようになっていました。

「ご主人に告白すれば、あなたは罪悪感から解放され、一時的には楽になると思うけれど、その結
果、あなたが今抱えている苦しみをご主人が背負うことになる。そうなれば、罪のないご主人を苦し
めることになり、最悪、家庭は崩壊する・・・。
浮気という大罪を犯しておきながら、この上、ご主人を苦しめることはしてはいけない、それ
が・・、私ができるただ一つのアドバイスだよ…」

墓場まで秘密を抱えていけ・・・、この親友のアドバイスを咲江は大切に守っています。少なくとも
この一年間、千春以外この秘密を誰にも話さず、見事に秘密を守り切っているのです。それが、最近
になって、どうにも堪えられない時間が多くなってきているのです。

「自業自得と言えば、それまでだけれど…、
もう・・・、堪えられない…」

千春に会えば、必ず咲江は訴えるのです。

「男を欲しがる忌まわしいこの体が憎い・・・、
主人に黙っているのが耐えられない…、
かといって・・、村上さんと別れることもできない・・」

涙こそ出しませんが・・、いや、涙も出せないほど思いつめた状態に追い込まれているのでしょう、
千春に向かって、咲江は彼女自身を呪う言葉を連ねているのです。誰を恨むことも、責めることもで
きない、彼女自身の問題だと咲江はよく自覚しているのです。


「イライラして、子供たちに理由なく当たり散らすようになった…
子供たちは私の変化に、とっくに気が付いている・・、

主人は・・、
今は・・、研究活動以外何も考えられない状態なの…、
そんな主人を私は暖かく見守りたい・…」

涙ぐみながら咲江は切々と千春に訴えています。

「ひどい裏切りをしていながら、
こんな事、とても言えないと分かっているけれど・・・、
絶対・・、主人の邪魔はしたくない…、

もし・・・、主人が今のように仕事の最終段階に入っていなければ、
離婚覚悟で、何もかも打ち明けていたと思う・・・、
そうすれば、どれほど楽になれるか…」

「咲江・・、もう少し頑張ろう…、
ご主人の研究にめどがつくまでは、何とか頑張ろう・・、
それまで、私でよければ力になるから…」

絶望して、いまにも身を捨てかねない様子を見せる親友の話を黙って聞くこと以外、今の千春には何
もできないのです。しかし、もう咲江が我慢の限界にきていることは千春にも良く判るのです。何か
手を打たないと大変なことになると・・、千春は焦っていました。そして、ある決心を固めたので
す。


[14] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(508)   鶴岡次郎 :2016/10/18 (火) 09:22 ID:yyReHfXA No.2909

この日、由美子と千春が愛の店に集まっています。ソープへの出勤日程をずらせて由美子の都合に合
わせて千春はここへやってきているのです。それほど今日は千春にとって三人の集まりが大切なもの
になっているのです。

席に着き、お茶を一口すすると、千春は堰を切ったように語り始めました。この店に来た時から千春
の全身から緊張感が発信されていました。千春の様子から、何かあると感じ取っていた由美子と愛は
驚きながらも黙って聞いています。

「幼稚園のママ友なんですが、咲江さんと言って、同じマンションの13階に住んでいる、私と同い
年の友達が居ます。かなり深刻な悩みを抱えることになって、私・・、相談を受けたのですが、私で
は話を聞くだけで、なんとも手助けできないのです。お二人に相談すれば道が開けるかと思ったので
す・・・」

かなり長い話になりました。それでも、おしゃべり上手な千春の話は、さすがに良くまとまってい
て、要点がきっちり整理されていました。

ようやく話が終わりました。話し終わった千春がおいしそうにお茶を飲んでいます。一仕事が終
わった様子です。

「一年以上か・・・、長い不倫だね・・・、
それだけ長いと、一般的には確信犯と思われても仕方ない・・
救う手立ては無いよ・・・、
・・と言うより…、
彼女を何から救うというの…?
自業自得でしょう…、
堕ちるところまで落ちて当然でしょう…・」

愛がにべもない感想を言っています。

「そうね・・・、
ご主人はいい方だし、可愛い子もいて・・、
経済的にも恵まれ、何不自由なく、何の苦労もない・・・、
理想的な暮らしができる環境に恵まれている・・・。
話を聞いた限りでは、彼女に同情できる余地はすくないわね・・・」

愛の言葉に由美子が一応、同調を示しています。それでも愛の意見に一方的に賛同している様子では
ありません。由美子自身も愛人を含め沢山の男と関係を持っているわけですから、主婦稼業を守り抜
いている愛のように一方的に咲江の浮気行為を責めることはできないのです。

「ただ・・、男と女の問題は当人以外判らないことが多いから・・、
傍目ではどんなに良く見えても・・・、
なにかと隠れた苦労があって・・・、
当の本人にはそれなりの言い分があるものだけれどね・・・、
夫との生活がつまらないとか、夜の生活が充実していないとか・・、
その方・・、咲江さん本人はどう言っているの・・・」

浮気をしている咲江にもそれなりの言い分があるはずと・・、この種の問題では経験豊富な由美子が
咲江の浮気に一応の理解を示しています。

「それがね・・・、
誰も悪くない・・、
悪いのは彼女自身だと言い張って、
それ以上、何の言い訳も言わないのよ・・、
それでいて、傍で見ているのが辛いほど、憔悴している・・」

千春が表情を曇らせて話しています。

「浮気の果てに、その男が忘れられなくなった・・・、、
かといって旦那様と別れる気持ちは最初から存在しない・・・。

二人の男を愛してしまった女が、進むことも出来ず、
戻ることもできないで、罪悪感と欲望の板挟みになって・・、
身を捨てるほど悩んでいる・・・、

確かに、誰が聞いても、同情の余地がない状況だと言える…」

由美子が自身に言い聞かせるように咲江の立場を解説しています。


[15] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(509)   鶴岡次郎 :2016/10/20 (木) 09:11 ID:0/SPKTpw No.2910
「でも・・・、千春さんが言うように、
死ぬほど彼女が悩んでいるとすれば・・、
ここは同じ女性として・・・、
いえ・・、親友を何としても救いたい千春さんの気持ちを汲んで、
何か手助けできる方法を考えたい・・、
私はそう思う・・」

由美子の言葉にほっとした表情を千春が浮かべています。

「誰にも相談できない、誰も自分の行為を理解してくれない…、
こんな状況は本当に辛いものだよ…・
100人いる人の内、99人に批判されても、一人の理解者が居れば、
人は何とか生きていけるものだと思う…・」

何かを考えながら、注意深く言葉を選びながら、由美子が話しています。

「由美子さんがそう言うなら・・・、
私だって・・、女の一人だからね・・・、

夫への裏切りは許せないけれど・・・、
やってしまったことは元に戻せないのも確かだから…

これから先、咲江さんが立ち直り、まっとうに生きるというのなら…・
咲江さんの力になってもいいよ・・・」

愛が渋々ですが、由美子の提案に賛成しています。

「では・・、決まった…、
咲江さんを救うため、私たちに何が出来るか考えよう…、
そのためにはもっと咲江さん自身と、
彼女の置かれた状況を正確につかむ必要がある・・・、
・・・で、彼女が村上の下に走った訳は何だろう…・・」

自然の流れで、経験豊富な由美子がこの場の進行係を務める様子です。

「訳って・・?、
簡単でしょう…、
男が欲しかっただけでしょう…
体が堪らなくうずいたのでしょう…・
そんなこと、経験豊富なお二人ならすぐ判るでしょう…・」

愛があっさり切り捨てています。千春も由美子も苦笑いしています。

「愛さんにはかなわないわね…
確かに・・、私をはじめ、無節操に浮気を楽しんでいる女が多い・・・、
体の疼きに耐えられなくて、それほど好きでもない男に抱かれる女も沢山居る、
でも、考えてみてほしい…・、
体がうずいて、男が欲しいと思っても・・・、
普通の主婦が、街で偶然出会った50男にすぐ抱かれるかしら・・?
仮に・・・、愛さんならどうなの…?」

由美子の質問に愛がはっとしています。


[16] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(510)   鶴岡次郎 :2016/10/21 (金) 11:48 ID:uYCjRJPM No.2911

「多分、村上は魅力的な中年男だと想像できるけれど、
そうだからと言って、これまで一度も浮気をしたことがない咲江さんが、
抱かれる覚悟を固めて、ノコノコと男の事務所を訪ねるかしら・・?
浮気者の私だって・・、
そんな・・、はしたないことは絶対しない…・・」

「・・・・・・・」

改めて由美子からその指摘を受けると、確かに奇妙だと愛は勿論、千春も考えている様子です。そし
て、咲江が村上の下に走った原因がもっと深いところにあり、それはおそらく咲江の心の中に芽生え
た心の病だと千春も愛も気が付き始めていたのです。

「確かに由美子さんの言うとおりよ・・・、
何か・・、得体のしれない強い力が…・
咲江さんを突き動かす強い力が・・、咲江さんの中で動いたに違いない・・・
そうでなければ、あの咲江さんが50男の愛人になるはずがない・・・
でも・・、その強い力って・・、何だろう…・?」

千春が心配そうな表情を浮かべ発言しています。

「夫にかまってもらえなくて寂しかったから・・・、
体がうずいてたまらくなっていたから・・・、
村上の放つ強力なオスの魅力に引き付けられたから・・・
このように、女が浮気に走る原因はいろいろ考えられる・・・・」

指を折りながら浮気の動機を愛がカウントしています。

「どれも、咲江さんの行動を説明できそうに思える・・
でも・・、これまで貞節を守ってきた咲江さんがその殻を破るには、
これだけでは少し弱いようにも思える・・・
何かが他に原因がありそうだけど・・、
私には・・・、判らない…」

愛が呟いています。彼女にもいい考えがなさそうです。由美子が笑って二人を見ています。

「ああ・・、判らない…・、
由美子さんのことだから、
その答えを掴んでいるのでしょう・・、
まず・・、それを聞かせてちょうだい・・・」

しびれを切らした愛が由美子に質問しています。由美子が大きく頷き、話し始めました。

「末の子供が幼稚園に入り、子供と夫を送り出すと、
今まで想像もできなかった自由な時間が咲江さんのものになった・・。
しばらくはその自由時間を楽しむことができるけれど、
やがて、やるせない焦燥感が咲江さんを襲ってくる…」

由美子が語り始めると、千春も愛もじっと耳を傾けています。

「夫は働き盛りの時期に入り、仕事に夢中になっている・・、
子供たちもそれぞれに自分の世界を楽しんでいる・・、
それに比べて、自分は・・・、
あいも変わらず、食事の支度と家事に振り回されている・・、
私も同じ思いに囚われたことがあったから…・
彼女の気持ちが手に取るように判るのよ……」

千春が盛んに頷きながら由美子の話を聞いています。話の内容に同感しているのです。ここへきてよ
うやく愛と千春は由美子が言おうとしていることに気が付いた様子です。


[17] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(511)   鶴岡次郎 :2016/10/22 (土) 09:21 ID:fr9XWKa6 No.2912

「咲江さんが村上と知り合ったのは・・、
確か、同窓会の帰りだったね…」

「ええ・・、そうですが・・・
暗いビルの陰で、ぶつかり合って、咲江さんは膝を擦りむいた…・」

「同窓会の帰り、咲江さんの心はいつもより激しく乱れていたと思う…
同窓会に出て・・、現役で働いている仲間を見て・・
彼女たちの華やかな話を聞き、楽しそうな様子を見て、
咲江さんは・・、
彼女自身のふがいなさを強く感じたと思う…」

「その気持ち・・・、判ります・・。
私にも同じ経験がありますから…・」

千春が由美子の話に大きく頷いています。

「咲江さんの歳では、同窓会では、まだ、未婚の人が輝いて見えるからね…
咲江さんはかなり劣等感を抱え込むことになったと思う…」

「・・・・・」

千春と愛が黙って頷いています。

「でも・・実態は・・、
より深刻な悩みを未婚の人が抱えているんだけれどね・・・、
それを彼女たちは、決して口にしないからね…、
もう数年経つと、主婦の位が圧倒的に輝き始め、
独身女が大きな悩みを抱くことになるんだけれどね…・」

由美子の説明に愛が笑みを浮かべて軽く頷いています。

「同窓会に出て、少し寂しくなったところで、
咲江さんは村上と遭遇した・・・
普段なら・・、例えば、昼間、買い物帰りの途中であれば、
50男の村上に出会っても咲江さんは気にも留めなかったと思う…・」

「確かに・・、いくら魅力的な男だと言っても・・・、
街で偶然出会った50男にあの咲江さんが自分から体を投げ出すなんて、
想像もできないことだった・・・
あの日、同窓会に出た咲江さんの中で、女の焦りが芽生えたのね…
その焦りの気持ちが咲江さんの背中を強く推したのね…・
どうしてもっと早く彼女の行動を理解できなかったのかしら、
彼女の気持ち・・、やっと判った、由美子さんのおかげだわ…・」

ようやく咲江が浮気に走った背景が判り、千春が興奮した調子で話しています。

「そう…、同窓会に出て、女の自信を失いかけたその時・・、
偶然出会った男が村上であったことが、咲江さんの命取りになった・・、
彼以外の普通の男であれば、もっと若くて、もっとイケメンでも・・、
咲江さんはあそこまでスンナリと落ちなかったと思う・・・」

確信に満ちた表情で由美子が語っています。


[18] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(512)   鶴岡次郎 :2016/10/24 (月) 14:23 ID:w1lnGt3. No.2913
「村上の凄さを少し話すわね・・・、
女たらしは、女との最初の出会いにすべてを掛けるのよ・・、
この時の村上もまさにそうだった・・・」

笑みを浮かべて由美子が楽しそうに語っています。

「傷ついたお姫様を部下に背負わせ、事務所に連れ込んだ・・。
この時点で咲江さんは村上の術中に嵌り、
抜けられないところへ引き込まれたと言える・・・・」

愛と千春が何度も頷いています。

「傷の手当てをしている間に、
彼・・、部下の男に着替えのストッキングを買い求めさせたでしょう・・、
普通の男はこんなことは思いつきもしない、
それを彼は日常行為のようにやるの・・、
ぴったりのストッキングを買い与えられ、
女にすれば、『君のことは何でも判るよ・・』と・・、
呼びかけられている気になり、一気に彼への親しみが増すと思う…」

「確かに・・、着替えの下着を与えられると・・、
女って・・、変な気分になるわね…、
そこまで知られたのだからと・・、
その男を受け入れてもいい気になるかも・・・」

千春が大きく頷いています。

「それだけではないのよ・・・、
さらに・・、お土産のケーキを買い求め、
仕上げにハイヤーで自宅まで送り届けた・・・。
恋愛中のどんな男でもここまで出来ないことを易々とやってのけたのよ・・、
この間、女たらしは何の下心も見せなかった・・・」

「由美子さんから改めて聞かされると…、
彼のやったことはとんでもなく行き届いている・・
私は一度もそんなサービスを受けた覚えがない・・・
それで下心を女に勘づかせないなんて…、
村上は相当のやり手ね…・」

愛が驚きながら発言しています。

「彼が意識して下心を抑えたと思うでしょう…、
そうではないの、彼は無意識で、何の見返りも期待しないで、
女性に奉仕できるのよ・・・、
そんな才能を身に着けた男なのよ・・、
村上という男は…」

「へぇ…、そんな男が世の中に居るんだ…・
私も・・、一度でいいからそんな男に会いたかった…
どうなってもいい気分になるね…、確かに…」

愛が感心した表情で、発言しています。由美子にすれば、この種の男は、そんな男がたむろする場に
行けば、掃いて捨てるほど居ると言いたい様子です。

「村上のサービスを受け入れながら、
咲江さんは女王様になったような気分だったとおもう・・・、
忘れていた独身の頃、輝いていた頃を、思い出していたのよ・・・、
『女として認められている・・』と、自信を持ったと思う・・」

「・・・・・・・」

「そして、迷った末・・、彼に返礼に行くと決めた時・・、
あの・・、うずくような興奮を・・、
女なら一生忘れられないあの記憶…、
初めて男に抱かれた時の・・・、
あの興奮と緊張感を思い出していたのよ・・」

「判る・・、咲江さんの気持ち良く判る・・・」

愛が興奮して話しています。

「当日・・、シャワーを浴び、隅々まで体を清め、
勝負下着を身に着け・・・・、何度も服装をチェックし・・・、
遅く帰る旨、家族に伝えた・・・、夫は笑顔で了解したと思う・・。
その時、胸の痛みを感じたはずだけれど、彼女の気持ちは変わらなかった」

「そこまで行ったら・・、もう・・・、止まらないね…」

愛が沈んだ声で言っています。

「一歩、家を出ると、もうすべてを忘れ・・、
弾む心を抑えながら彼との約束の場に向かったと思う・・
こんな状況になった女を止めることは誰もできない…・・」

「・・・・・・」

愛と千春が由美子の説明に聞きほれています。二人とも彼女たち自身がその日の咲江になったような
気分で由美子の話を聞いているのです。そして、女の性、女の業をひしひしと感じ取っていたので
す。


[19] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(513)   鶴岡次郎 :2016/10/25 (火) 10:10 ID:Xitas282 No.2914
「女たらしはムードあふれたイタリアンレストランに女を招待して、
上品なジョークで女を笑わせ、女のファッションをそれとなく褒めた・・、
女はうっとりとして、男の顔を見つめていたと思う…。
最愛の旦那様にさえ見せたことがない、欲情した表情をさらしていたと思う」

「脆いもんだね・・・、女って…・」

愛がポツリとつぶやいています。女の弱さを言い当てられ、気落ちしているのです。

「店を出て、手を握られ、ビルの陰で唇を奪われると・・。
もう・・、抵抗できない・・、
誘われるままホテルに入り、体を触られると、
女の運命は決まってしまう…
後は・・、手練を尽くした男の思うがまま…
悦楽の嵐の中で、体中の水分を全て吐き出し・・、
泣き叫びながら、女は情欲の沼に深々と沈み込んで行くのよ・・」

「・・・・・・・」

千春と愛が黙って頷いています。二人とも苦しそうな表情を浮かべています。咲江が転落する様が二
人には良く見えているのかもしれません。

「男に騙されたわけでなく、
自ら選んで男の胸に飛び込んで行った・・
その思いが咲江さんの中では今でも強いと思う・・、
もしかしたら・・、
村上のことを運命の人だと勘違いしているのかもしれない・・」

「そんなことって…、
それでは・・、あまりに咲江がかわいそ過ぎる・・・」

意外なことを聞くと言う表情で千春が由美子を見ています。

「千春さん・・、
彼女をかばう気持ちはわかるけれど、ここは冷静に考えよう・・、
あなたにとっては辛いことだろうけど、
優しい咲江さんだからこそ、堕ちるところまで落ちたと思う・・」

「はい…」

「自分が居なければ村上はダメになるとまで思い込んでいるかもしれないよ・・、
そして、女がそんな気持ちでいることを、
女たらしの村上は本能的に察知して、うまく女に甘えているのよ・・・、
憎らしいでしょう…」

「・・・・・・・・」

千春と愛が大きく頷いています。男への憤りが募っている様子です。しかし、その怒りは度を越した
ものではなく、あるあきらめに似た要素も含まれているのです。男だけを責めるわけには行かない、
男の罠に陥る女にも等分の責任があることを女たちはよく知っているのです。

「咲江さんだって、自分がバカなことをしていると承知しているはず・・、
夫や子供に申し訳ないと思う気持ちは強いはず…、
心が込もった千春さんの説得を聞くたび、心が揺れているに違いない・・」

「・・・・・・・」

千春が悲しそうな表情を浮かべ、何事か言いたそうにしていますが、結局、言葉を出せないのです。

「でも・・、彼女は男と別れられないのよ・・
たぶん、誰が説得しても咲江さんの心は動かないと思う…・
ここまで落ちた女は誰の言うことも聞く耳を持たないのよ・・
自分自身で出口を見つける以外、救われる道はないのよ…・」

「・・・・・・・・」

他人事でなく、情欲の迷路に迷い込んでいる自分自身に言い聞かせるように由美子が語っています。
愛と千春が悲しそうな表情を浮かべ、言葉もなく、何度も、何度も小さく頷いています。愛も、千春
も・・、もし・・、彼女たち自身が咲江の立場に立てば、彼女と同じ状況に陥るだろうと考えている
様子です。沈黙の時間がその場を流れています。またもや、どうしようもない女の性の悲しさと脆さ
を女三人は噛みしめているのです。


[20] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(514)   鶴岡次郎 :2016/10/27 (木) 14:33 ID:bFrLtGJ6 No.2915

しばらくの沈黙を破ってゆっくりと千春が口を開きました。先ほどまでとは異なり、どこか晴れやか
な表情です。

「なぜあの咲江が、旦那さんや子供のことを忘れ、
50男の村上に走ったのか・・、
どう考えても、その理由が判らなくて・・、
彼女も私と同じ浮気性なのだと疑ったこともあったけれど・・・、
由美子さんの解説を聞いて、なんだかすっきりした…。
免疫のない咲江がとんでもない男に偶然出会ってしまったのね・・、
男のテクニックを咲江は男の真心だと思い込んでいるのね・・
何も知らない、初心な咲江が色地獄に迷い込んだのね…」

「そうよ・・、
子供のように純粋な気持ちを持った咲江さんだからこそ、
村上の餌食になり、抜き差しできないところまで行ってしまったのよ…
村上も・・、彼は彼なりに・・、真剣に・・、
咲江さんの思いに応えようとしているのよ…」

由美子が冷静に答えています。

「村上のような男に遭遇すると・・、
女なら・・・、
誰でも・・、確実に落ちると思う・・、
彼の罠に落ちない女が居たとしたら…、
そんな女は・・、おそらく・・」

言い過ぎたと思ったのでしょう、そこで由美子は言葉を飲み込みました。

「それで・・、
村上は咲江さんをどうするつもりかしら・・・?
ずっと情婦にしておくつもりはないでしょう…、
どこかで働かせて金を掴むつもりかしら…」

愛が質問しています。

「いえ・・、そんなことは考えていないと思う・・・、
村上はそれなりに誠実な男だと思う・・、
それはその後の彼の付き合い方を見ればわかる…、
咲江さんを落として、金にしようと思っているのなら、
もっと早い段階で、汚い手を使ったと思う・・」

「確かにそうね・・・」

「彼は・・、本気で咲江さんに惚れていると思う・・
・・と言っても、一般の男が女に惚れるのとは少し違うけれどね・・・、
少なくとも、咲江さんと一緒にいる間は・・
彼女を心から愛していると思う・・・」

由美子の説明に愛も、千春も頷いています。

「心を通い合わせた二人が、ずるずると付き合い続けて、
一年経った・・
二人とも、この先どうするのか決めていないと思う…
多分・・、自分たちでは決められないのだと思う…・」

「なるほど・・・
愛の形は人それぞれと言うことね…・、
でも・・終着点のない愛って・・、どこか危険な気がする…」

愛が心配そうに言っています。

「そうなのよ・・、
二人に・・、どこへ行くつもりなの・・と、
無理に結果を求めると・・、
とんでもない処へ行ってしまう危険がある・・」

大きな吐息を吐き出し、由美子が答えています。

「・・・・・」

言葉なく千春が大きなため息を吐き出しています。

「二人の内どちらかでも遊び心が多ければ、
なんとか手の打ちようはあるのだけれどね…、
咲江さんは勿論だけれど、
遊び人である村上までかなり真剣だから困るのよ…」

由美子が嘆いています。


[21] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(515)   鶴岡次郎 :2016/10/28 (金) 14:18 ID:y9sL7xsI No.2916

突然・・、千春がその場に両手をついて愛と由美子に向かって深々と頭を下げました。

「難しいのは良く判っています・・。
それでも、今私が頼れるのは由美子さんと愛さんだけなのです。

人一倍責任感が強く・・、今まで浮気どころか、
他の男に気を許したこともない咲江を村上から救い出したい・・。
できれば彼女の家庭を壊さないで、すんなりと別れさせたい…、

同時に、彼女の心に巣食っている大きな罪悪感も少しは取り除きたい・・、
別れた後も・・、罪の意識を引きずるようでは、
咲江があまりに可愛そうだと思いますから…。

これが私の願いです…、勝手なことばかり並べましたが・・、
力を貸してください・・、この通りです、お願いします…・」

千春が由美子と愛に訴えています。

「千春さんの気持ちは良く判っている・・、
私たちで出来るだけのことはやりましょう…。
これから先は、どんなことがあっても・・・、
私と由美子さんは咲江さんと千春さんの見方だよ・・」

愛が千春を見て宣言しています。涙ぐみながら千春が頭を下げています。由美子が何度も頷いていま
す。

「一年以上続いた二人の仲を割る方法・・、
この問題の解決策はそんなにたくさん無い・・、
一つの考えは、ご主人にすべてを打ち明けること・・・、
これで、全て問題は解決する…・」

由美子があっさり言っています。

「でも・・、そんなことをすれば・・・、
最悪・・、離婚となり、家庭が崩壊することになる・・」

愛が心配そうに答えています。

「そうね・・・、離婚の可能性は高いね・・・」、

由美子が冷たく言い放っています。

「私なら・・、夫に告白する道は選ばない・・
割り切って、一生その秘密を隠し続ける…」

千春が言葉を挟んでいます。

「私も千春さんの考えに一票入れる・・・」

愛がすかさず千春の意見に賛成しています。

「女って・・、誰もが・・、
秘密の一つや二つ隠し持って生きているし・・・、
それに、秘密を隠し続ける才能も備わっていると思う・・・、
咲江さんも秘密を抱えて生き抜くことができるはず…、
いえ・・、やり抜くべきよ…、
私たちがサポートすれば、何とかなると思う・・・」

愛が珍しく口調を強めて主張しています。

「決まりね・・・、旦那様に告白する選択肢はないと考えよう・・、
その前提で、これから先、彼女の身の振り方を考えよう・・・」

どうやら最初から告白する選択肢を由美子は考えていなかった様子です。愛と千春の意向を確かめる
ために、あえて由美子は告白の手段を話題に挙げたのです。二人が告白案に反対だと判ると、あっさ
りと告白案を捨てています。愛と千春が嬉しそうに大きく頷いています。


[22] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(516)   鶴岡次郎 :2016/10/29 (土) 15:01 ID:tcgxfZmg No.2917

「旦那様に告白しないとなると・・・、
さらに、問題解決は難しくなる…・、
咲枝さん自身が自発的に村上と切れるのが一番いいのだけれど、
これがまた難しい・・・、
むしろ・・、現状維持で秘密をひた隠し続ける道の方が簡単に思える・・」

愛が難しい表情で言っています。

「愛さんのおっしゃる通りです…、
愛欲の関係を清算するには、二人はあまりに長く付き合い過ぎた・・。
私の経験から言っても、咲江さんが村上との関係を清算するのは難しい・・、
彼女の体が別れることを許さないと思う…

それに・・、仮に・・・、別れることが出来ても・・・、
その先に待っているのは地獄・・・・
そう考えると・・、別れることが、本当に最善の策なのかしらとさえ思う……」

千春が呟いています。由美子が千春のつぶやきを聞いて少し気にしています。

「千春さん・・、
何か言いたいことがあるのなら、聞かせて…
村上と別れることが出来ても…
その先は地獄・・・と、言ったわね…
私・・・、そのことが少し気になっているのよ・・、
もしかして・・、別れる必要がないと思っているの…?」

「ハイ・・、確かに迷っています・・、
とんでもない発想で、お二人には叱られる覚悟で言います…」

何事か決心をした表情を浮かべ千春が由美子と愛を見詰めています。

「もし・・、村上と切れることが出来ても・・・、
自分の犯した罪の意識から咲江は永久に逃げられないと思うのです。
昔の朗らかで、明るい咲江は永久に戻ってこないと思うのです・・
そう・・・、考えると・・・、私…・・」

ポツリ、ポツリと千春が話しています。堪えて涙を抑えていますが、今にも泣きだしそうです。

「無理に村上と別れないで、家族を捨てる道もあるのではと思うのです・・。
幸い彼は独身ですから・・・、
彼と所帯を持てば、旦那様や、子供の顔を見ないで暮らせることになります、
家族を捨てた罪の意識は残りますが・・・、
逃げ場のない不倫の罪からは解放されると思うのです・・・。
ゴメンナサイ・・、そんなバカなことさえ考えてしまうのです…」

「・・・・・・・・」

愛がびっくりして何かを言い出そうとして、慌てて口を押さえています。軽はずみなことは言えない
と愛はとっさに考えたのです。由美子は黙って千春を見つめています。

「本当は・・、私にも・・、どうしていいか判らないのです・・。
村上と別れるべきだと思いながらも・・・、
一生、罪の意識を背負って行くよりは・・・、
たとえ、人の道から外れても・・・、
村上と面白おかしく暮らした方が咲江は幸せかなとも思うのです…
本当にバカな話だと思うでしょう…、でも可能性はあると思っています・・・」

千春が首を垂れ、そっと涙を拭いています。

「一生・・、犯した罪の意識に怯えるより・・、
思い切って、村上と一緒になる道もあると言いたいのね・・
むしろ、そちらの道が人間らしいと千春さんは思っているのね・・
バカな話だなんて・・、そうは思わない…、
咲江さんの幸せを本当に願っている千春さんだからこそ・・、
そんな発想が出たと思う…・」

微笑みを浮かべて愛が言っています。千春はただ頷くだけです。

先ほどまで、村上と戦い、咲江を取り戻す勇ましい話が展開されていたのですが、一転して、その場
に少し沈んだ雰囲気が流れています。村上と関係を続けるのも一策かな・・、といったムードが流れ
ているのです。


[23] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(517)   鶴岡次郎 :2016/10/30 (日) 11:21 ID:4kIL9I7M No.2918

沈滞したムードを由美子の声が吹き飛ばしました。

「何を言っているの・・・、
その考えは間違っているよ・・・、

浮気女の罪悪感なんかに振り回されては・・、ダメ・・・、
浮気女の罪悪感なんてものは・・、底の浅いものだよ・・・、
一見、深刻そうに見えて、その実、一過性のモノよ・・・、
時間が経てば跡形もなく消えるものだよ…
特に女の罪悪感なんて・・、長続きしないのが相場なの…」

由美子が断定的に発言しています。愛は勿論、千春もその意見を聞いてうれしそうな表情を浮かべて
います。実のところは、由美子のような歯切れの良いレスポンスで不安を一掃してほしいと千春は期
待していた様子なのです。

「浮気女の心に巣食っている罪悪感は・・・、
浮気相手とすんなりと別れることが出来れば・・、
殆どあとかたなく消えるものよ・・・、
だから、咲江さんの場合も、それほど気にする必要はない…
散々、他の男と遊んでいるこの私が言うのだから信用してほしい…」

由美子が断定的に言っています。それでも、二人の女は半信半疑の様子です。

「まだ信用できない様子だけれど、嘘じゃないのだから・・・、
私の経験から言って・・、
浮気女が罪悪感に悩むのは、浮気相手に惚れ込んでいる間だけのことなの、
単なる浮気だのに、体の関係を続けると、
互いの深い愛がその中に存在すると思い込んでしまうのね…・。
そうなると、夫や家族への罪悪感にさいなまれることになる。

浮気相手のことを単なる性欲処理用の男か、
通りすがりのセックス相手と考えることが出来れば、
それほど罪悪感に悩まされることはないのだけれどね・・」

自身の経験を語る口ぶりで由美子が話しています。

「一年余り、村上の手管にどっぷりつかりこんだ咲江さんは、
もう・・、彼なしでは生きて行けないと思い込んでいるに違いない・・。
頭では彼から離れたい、別れるべきだと思っても、
体が意志に反して彼を求めるのよ・・

セックスと愛情を切り離すことが出来ないのが女の本性で、
夫とは違うやり方で抱かれればその男に魅力を感じ、
夫が授けてくれない深い喜びを与えてくれる男こそ、
真の伴侶だと考えるようになる・・。
咲江さんは村上を運命の人だと考えるようになっているかも・・

彼に抱かれた生々しい情感を、
彼への愛情だと咲江さんは考えているはず・・、
そうなると・・、彼女の罪悪感は最高に燃え盛ることになる…

千春さんが今、咲江さんの中に見ているのは、
今を盛りに燃えている最悪状態の罪悪感なの…、
咲江さんが苦しむのを見て、こんなに苦しむのなら・・、
今の生活を捨てた方が良いと、傍で見ている者は思うのよ・・・、

もう少し待ってご覧・・、
そんなことがあったかしら・・と、
彼女が言いだすようになるから・・
同情をして損をしたと・・、きっと思うから…」

「・・・・・・・・」

由美子の情熱的な話はまだ続くようです。愛も、千春も驚きの表情を浮かべ、黙って聞いています。


[24] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(518)   鶴岡次郎 :2016/10/31 (月) 15:02 ID:X2q3KLoQ No.2919

浮気女の罪悪感の底が浅いことを由美子がこれほど情熱的に力説するには訳があるのです。浮気女が
罪悪感で悩むのは、身から出た錆で、致し方がないことだとしても、周りにいる者までも巻き込ん
で、彼女の罪悪感の犠牲者にしてはいけないと由美子は常々思っているのです。それが・・、浮気女
が気を配るべき最低限の礼儀だと由美子は考えているのです。

罪を悔いて悩むのであれば一人静かに反省すればいいことで、自身の中で燃え盛る罪悪感を制御でき
なくて、沈み込んだ姿を家族に見せたり、最悪自身の命を絶ったりして、残された夫や家族に迷惑を
かけるのは、二重の罪を犯すことになると由美子は考えているのです。

由美子にしても、最初からこの割り切った考えを持っていたわけではありません、散々に悩んだ末に
この考えに到達したのです。そして、出来ることならこの考えを全ての浮気女に教えたいと由美子は
思っているのです。

浮気をする以上、秘密を隠しきる覚悟と、バレた時の潔い身の処置方を常に準備するのは当然です
が、そのことに加えて、自身の罪の意識を表に出さないことが大切だと由美子は考えているのです。
むしろ、罪を犯したことなど一度もないとふてぶてしく構えるべきだと彼女は考えているのです。

夫から許しを得ているとはいえ、由美子自身、他の男に身をゆだねた直後、少なからぬ罪悪感にさい
なまれることが多いのです。男に抱かれている瞬間、その男が行きずりの男であっても、由美子はそ
の男に以前から惚れ込んでいるように、身も心も投げ出す厄介な癖があるのです。

一度燃え出すと、その男に身も心もすべて投げ出してしまうのです。それだからこそ、由美子に一度
でも接した男たちは誰も、「この女に好かれている・・、少なくても嫌われてはいないと・・」と、
思い込むのです。そして、由美子のことを永久に忘れないで、再会を求めるのです。

男と別れて一人になった時、どうしてあんなに燃えたのだろう・・、あの瞬間、夫のことを忘れ、男
の体に四肢を絡めて、身も世もなく絶叫した彼女自身のことを思い出して、悔いることが毎回なので
す。そして、最悪なのは、その罪悪感が家に着くころには跡形もなく消えていることなのです。そん
な由美子を彼女自身は嫌いでしかたないのです。

〈女の・・、いえ・・、浮気女の罪悪感なんて…、
こんなに儚いモノなのかしら・・、
それにしても・・、
自分ながら、あきれるほどあっさりしている・・・。
これで良いのかしら…〉

そして、何度も浮気の経験を積むと徐々にその感情にも慣れてくるのです。

〈良いも悪いも・・、これが私なのね…
くよくよ悩まないことにしよう…、

これは・・、もって生まれた感性・・、
神が私に授けてくれた・・、贈り物・・

夫や、家族を裏切ったことは事実だから・・、
その罪滅ぼしに・・、精一杯彼らに尽くそう・・・〉

かなり手前勝手な考えですが、ある時から由美子はそう割り切って、あまり彼女自身を責めないよう
にする習慣を身に着けているのです。


[25] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(519)   鶴岡次郎 :2016/11/02 (水) 15:14 ID:ywL4lJGE No.2920

千晴と愛がまだ納得していない様子を見て、由美子は思いました。

〈ああ・・、この人たちも皆と同じように・・、
罪悪感に打ちひしがれる浮気女を良しとする感性を持っているのね・・・、
普通はそう思うのが当然だけれどね・・、

口を拭って、毅然としている浮気女こそ立派だと私は思うけれど…、
なかなか私の気持ちは判ってもらえない・・、
ダメ元で、もう少し説明して見よう・・、
千春さんなら・・、あるいは・・、少しは判ってくれるかも…〉

千春と愛がやや当惑しているのは承知しているのですが、由美子はさらに自説を語ることにしたので
す。

「ある日突然、何かが起きて…・
彼を愛しいと思う気持ちが萎え・・、
彼への情欲が消えると・・・、
不思議なことに・・、
あれほど強かった罪悪感も衰えることになる・・・・、

浮気女の罪悪感って、そういうものなのよ…・
悲しい女の性だけれど、情欲と罪悪感は背中合わせなのよ・・
情欲が消えれば、罪悪感も消滅する…」

「・・・・・・・」

愛と千春はただ黙って聞いています。由美子の説明について行けないところがあるのです。

「浮気をして、相手の男に惚れてしまうと・・、
夫や、家族のことを思い・・、
女は酷い罪悪感を抱くことになるけれど…、

男への興味が消え、浮気が止まると・・・、
女は何事もなかったように口を拭うことができるのよ・・・、
要するに・・・、
浮気女の罪悪感はあきれるほど底が浅いと言える…・」

由美子が語るとその言葉に重みが加わります。それでも、愛も千春も心から納得した様子ではありま
せん。これではどこまで行っても平行線だと、由美子はある決心をして口を開きました。彼女にして
は珍しいことです。

「散々に浮気をして、夫を裏切っていながら・・、
罪悪感を過度に持たない方が良い・・、
それが・・、女が幸せに生きて行く知恵だと・・・。

浮気女その者である私が・・、何を勝手なことを言うと、
千春さんも、愛さんも思うでしょう・・、
その通りだと思う…。

でも…、判ってほしい・・・、
悪いことだと判っていても、
体の要求に理性が負けることってあるでしょう、

私にとって・・、男が欲しいと思う感情はまさにそれなの…、
どうしてもたまらくなって浮気をしてしまうのね・・・、
それを責められたら・・、ただ頭を下げることしかできない・・、
反省はするけれど、それ以上は何もできない…、

こんな時・・、私は何をすればいいと思う・・・、
私は・・・、
開き直って、与えられた人生を懸命に生きることしかできない…」

普段は絶対口にしない心の底を由美子が切々と語っています。

「良く判りました…、
由美子さんの説明を聞いていて、私には違和感がありません・・。
私も・・、由美子さんと同じ悩みを抱えています…。
これからは、由美子さんのおっしゃるとおり、
浮気をしても・・、毅然と自分に立ち向かい、
一生懸命、私の人生を生き抜きます・・」

千春が明るい表情で言っています。由美子は満足そうな顔をしています。


[26] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(520)   鶴岡次郎 :2016/11/03 (木) 15:02 ID:dxjp7rlE No.2921
「でも・・、咲江は違う気がして・・・、
純粋で、穢れを知らない咲江のことだから・・、
村上と別れた後もずっと罪悪感を抱きつづけ、
永久にその罪を忘れることが出来ないで、
肩身の狭い思いで一生を過ごすのではないかと心配しているのです・・
そうであれば・・、思い切って、家庭を捨て、自由に生きた方が…・」

それ以上は語ろうとしないで千春が視線を落としています。自説に自信が持てないのです。それで
も、親友だけに・・、普段の明るく、素直な咲江を知っているだけに・・、犯した罪の重さに咲江
が一生苦しみ通すのではないかと千春の心配は尽きないのです。

「友を思う千春さんの気持ちは立派だと思う・・。
でも、咲江さんはお人形じゃないのよ・・、
血の通った・・、情欲も人並みにある大人の女なのよ・・・、
聖処女のように親友を枠にはめて思うのはちょっとね…・、
千春さんの気持ちを知ったら、彼女もきっと重荷に思うよ・・」

「・・・・・・」

はっとして千春が由美子の表情を見ています。ようやく何かに千春は気が付いた様子です。

「ああ・・・、そうなんですね・・・、
私・・・、知らず知らずの内に・・・
咲江の中に自分の理想像をはめ込んでいたのですね…・」

「・・・・・・・・」

笑みを浮かべて由美子が頷いています。

「気ままに他の男に抱かれ、さらには、ソープ勤めさえやっているのですが、当然のことながら、
決してこれが正しい生き方だと思ったことは一度もありません。それどころか、いつも言いしれな
い劣等感を持っているのです。

浮気の罪の重さに慄く初心な咲江をみて・・・、
こんな女こそ、理想の女だと・・、
こんな女になりたいと・・、私・・思い込んでいるのです…。

咲江が罪悪感に苦しむ様子を見て、
そんなに悩むなら、家庭を捨て、好きな相手との生活を選ぶべきと考え・・、
咲江に私の考えを押し付けようとしているのですね…」

何かが吹っ切れたのでしょう、嬉しそうな表情で咲江が語っています。

千春の気持ちは由美子には良く判るのです。かって、由美子も千春と同じように、好色な自身を卑下
し、出来ることなら何も知らなかった、普通の主婦に戻りたいと何度も思ったことがあるのです。し
かし、その願いは空しい結果しか生みませんでした。

そんな時・・・、夫の言葉が由美子を救ったのです。

〈由美子はそのままが良い・・、
浮気をして、ケロンとしている由美子が好きだ…、
浮気をして悩んでいる由美子なんて、何の魅力もないよ…
これからも・・、好きなように生きてくれたらいいよ…
ただし・・、私を捨てないことが条件だよ…、フフ…・〉

それを契機に由美子は、自身の犯した罪に毅然と立ち向かう気持ちを固めたのです。

「ようやく、判ってくれたようね・・。
千春さんには千春さんの人生があるように・・、
咲江さんには咲江さんの人生がある・・・。

男遊びを繰り返しても、平然として生き抜く女を演じる千春さん・・、
初めての浮気の罪深さに慄きながら、それでも浮気を続ける咲江さん・・、
それぞれに人生があるのよ、

何が正しいかなんて・・、
誰にもわからないし、そのことを追求する意味さえない…」

「はい・・、
私・・、知らず知らずに・・、
自分の頑なな考えを咲江に押し付ける処でした…。
罪を犯した、咲江自身が身の振り方を決めればいいのですね・・、
私がとやかく口を出す必要はないのですね…」

「そうよ・・、
私たちは寄り添うけれど、咲江さんを支配してはいけない・・。

私たちがお膳立てをして・・、
苦しみ抜いている咲江さんを少しでも楽にしてあげよう・・、
その先は・・、咲江さんの自由意思に任せましょう…

村上と別れるにしても・・、このまま進むにしても・・、
それは彼女の自由意思・・・

私たちは・・、私たちの考えで、
できる限りのサポートをしましょう…
そのサポートを咲江さんが拒むなら、潔く引き下がりましょう…」

「はい・・・」

千春の表情に明るさが戻っています。


[27] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(521)   鶴岡次郎 :2016/11/04 (金) 14:29 ID:/F13JabY No.2923

「さて・・・、次の課題は・・、
これが一番難しい問題だけれど・・、
咲江さんの中で燃えている村上へのひたむきな情欲を・・、
その感情を、咲江さんは村上への愛情と考えていると思うけれど・・、
この気持ちを、どのようにして散らし、抑え込むかだね…」

「はい…」

愛と千春が緊張した面持ちで答えています。

「村上が与えてくれる肉の喜びは、
彼の専売特許品でないことを咲江さんに教えたい・・・。
他の男からでもその喜びを十分得ることが出来ると教えたい・・・。
要するに喜びを与えてくれる男は村上一人でないことを教えるのよ・・・、
それには、村上以上の快楽を与えてくれる男を探し出し、
咲江さんに与えるのが一番簡単な方法だと思う・・」

「そんな男って・・、都合よく居るかしら…
仮に、居たとしても・・、
その男の味があまりに良くて…、
咲江さんがまた惚れ込んだら、大変ね・・・」

笑みを浮かべた愛が冗談ぽく言って、由美子に睨まれ、首をすくめています。

「愛さんじゃあるまいし・・・、
咲江さんはそんな女ではありません…。
・・・と言いたいところだけれど・・・、
愛さんの心配は当然ね・・・」

由美子が笑いながら愛の言葉に応えています。

「女は凄腕の男にかかると一コロだからね…・
咲江さんが次の男に夢中になる可能性は高い・・、
そう考えると・・、女って…、本当に厄介な動物だね…・。
そんなことになれば、また一苦労だね…・
愛さんもそうした女心が判るようになったのね・・、フフ…・」

愛をからかうように、笑いながら由美子が言っています。

「由美子さんたら・・・、
そこじゃないの・・、問題は・・、
由美子さんならそんな心配があるけれど、
咲江さんに限って、次の男にまで惚れ込むことはあり得ない・・、

私が問題にしたいのは・・
そんな都合のいい男が見つかるかと、言うこと…」

愛が慌てて訂正しています。

「フフ…、判っている・・、
心配しないで・・、
男のことなら・・、私には目論見がある…、
村上に匹敵する男って・・、
案外簡単に見つかる気がしている・・、
それは・・、後で話すは…、楽しみにしていて…」

「えっ…、本当ですか、簡単に見つかるのですか…?
楽しみ・・、
そんな男なら、咲江さんの後でもいい、
ちょっとだけでもいい・・、味見したい…、フフ・・」

美味しい男の話題になると、早速千春が口を挟んでいきます。

「そうだ…、何なら・・、
本当に美味しい男かどうか判定するお毒見係になってもいい・・」

淫蕩な笑みを浮かべ千春が言っています。

「ふふ・・・、スケベな本領を発揮してきたわね・・・、
その言葉を、実は・・、待っていたの…、
千春さんにもその男を食べていただくことになるかもよ…、
咲江さんを救うため、千春さんには一肌脱いでほしいと思っているから・・」

「エッ・・、本当ですか・・・、
私、美味しい男を味見できるのなら・・、
いえ、いえ・・・、咲江のためなら・・・、
一肌どころか・・、全裸になってもかまわない…
男の一人や、二人・・、
いつでも、しっかりいただきますから…・、声をかけてください・・」

「頼もしい…」

スケベーな笑みを浮かべ千春が本気を見せています。この調子なら、咲江のためなら、千春は数人の
男を相手にすることも簡単にやってのけるでしょう。そんな千春を見て、由美子が淫蕩な笑みを浮か
べて何度も頷いています。


[28] フォレストサイドハウスの住人達(その15)(522)   鶴岡次郎 :2016/11/13 (日) 15:32 ID:t3qBpBxU No.2924
「村上に匹敵するたくましい男を見つけ出し・・、
その男を咲江さんに与える…、
これで咲江さんの情欲はかなり癒されるはず…・」

「咲江がうらやましい…」

好色そうな笑みを浮かべ千春が言っています。

「残された課題は咲江さんの中にある村上への思いね…
咲江さんはその思いを愛情と勘違いしているはずだけれど・・、
彼への思いを決定的に消すことが次の課題・・。
それには咲江さんの心に直接働きかける手段が必要になる・・・」

「心に直接働きかける手段ね・・・、
体の欲望を治めるのと違い、
恋しい男を忘れるのは、女にとって難しい…・」

愛が困った表情でつぶやき、千春も頷いています。

「こんなのどうかしら・・・
有ること、無いこと・・、村上の女癖の悪い噂話を作り出して、
例えば、近所の人妻を抱いているとか・・、
そんな作り話を咲江さんに吹き込むのはどうかしら…、
でも・・、ダメね・・、
人の噂くらいでは咲江さんの心は動じないはず・・」

アイデアを出していながら、その場でその案を否定している愛です。

「咲江さんの中にしっかり築かれている村上のイメージを壊したい・・、
荒療治でもいい・・、どんな汚い策を弄しても良い、
村上を陥れ・・、咲江さんの目の前で大きな失敗を犯させる・・、
それによって、村上への熱い思いに、水をかけるのよ・・・」

そう言いながらも、由美子自身、いいアイデアが思い浮かばないのです。

「『こんなだらしがない男なのだ…』と、
咲江さんが悟れば成功よ・・・、
そうなれば、村上へ傾斜した心を、
咲江さんは彼女自身で立て直せると思う・・・。
何か・・、いいアイデアがないかしら…?
村上を陥れる工夫が・・・」

困り果てた様子で由美子が千春と愛に質問をなげかけているのです。そうはいっても、生身の男、
それもかなりのやり手の男を陥れる案など、愛と千春に簡単に見つけ出せるはずがありません、し
ばらく静寂が続きました、由美子が大きな吐息を吐き出し、口を開きました。

「やはり・・・、これしかないわね・・・
ちょっと汚い手を使うことになるけれど…・
仕方ないわね・・・、
今の私にはこのアイデアしか浮かばない・・・」

愛と千春の表情に笑みが戻っています。由美子が導き出す答えを二人はずっと待っていたのです。

「私が考えた作戦を聞いてほしい…、
私たち三人の力だけでは難しい作戦だけれど、
千春さんの旦那様、そしてUさんの力を借りれば何とかなると思う・・・」

由美子はかなりの時間を割いて、愛と千春に作戦を披露しました。

「素晴らしい・・、さすが、由美子さん・・、
作戦を聞いて、何とかなりそうな気がしてきた…、
そうはいっても、由美子さんの役割は本当にきつそうだけれど・・、
勿論、私も、主人も頑張ります…」

由美子の説明を聞き終わった千春の表情が明るくなっています。

「千春さんご夫妻には、大いに働いてもらうことになりそうね・・、
今回の作戦では、ある意味、お二人が主役になると思う・・・。
お互い頑張りましょう…」

三人の女が両手を差し出し互いに固く握り合いました。咲江と彼女の一家の幸せのため、三人の女は
力を合わせ、セックス作戦を展開することになったのです。


[29] 新しいスレに移ります  鶴岡次郎 :2016/11/14 (月) 09:39 ID:MAWbGSP2 No.2925
新しいスレに章を立てます。 ジロー


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