フォレストサイドハウス(その25)
22 フォレストサイドハウス(その25)
鶴岡次郎
2020/01/29 (水) 14:30
No.3260
「おそらく、家の子の旦那様がこの事務所に入ったのは・・
金倉さんが初めてだと思います‥。
まして、礼儀正しく店の関係者とあいさつを交わすなんて、
これまでも、これから先も、絶対起こりえないことだと思います。
これは奇跡と呼んで差し支えありません‥。
何か、お祝いをしなくてはいけませんね‥、ハハ・・・」

佐王子が説明しています。

「そう言うことだったのね・・、
確かに…、店長の言う通りだね・・・、
家なんか・・、
いまだにスーパー勤務だと思っている・・」

佳代が笑って納得しています。笑いが広がったことでこの場に穏やかな雰囲気が漂っています。その
場が和んだ雰囲気を察知して、沙織がゆっくりと口を開きました。

「三ケ月前の私は本当に何も知らない、何もできない女でした。佐王子さんをはじめ、お姐さん方、
スタッフの皆様のおかげです。三ケ月間お世話になり、70人を超えるお客様の相手をすることが出
来ました。自分なりに、セックスとは何か、どうすれば男の方を喜ばすことが出来るか、少し判った
気がしています。まだまだ未熟者ですが、残された時間が私にはそんなに多くないのです…。
ここらで、次のステップに移ろうと夫と話し合い、今日こちらを訪ねました・・・」

金倉夫妻が深々と頭を下げています。

「勝手ですが、
今日でお店を辞めさせていただきたいのです。
当初計画通り、子作りに入る予定です…。
無事目的を果たした後は・・、
その時に考えるつもりです・・」

子作りが円滑にできるセックスの技を習得するという当初の目的がほぼ達成されたので、仕事を中断
することにしたいと沙織は申し出たのです。しばらく自宅で休養して、体がきれいになった頃を見計
らって子作りに入る予定だと、付け加えました。

仕事を中断して一ケ月後、見事沙織は妊娠しました。そして10ケ月後、元気な女児を出産したので
す。名前は金倉保子と命名されました。佐王子保の名前から一字もらったのだと金倉夫妻はみんなに
言っています。その上、夫妻の両親が共に早くに亡くなっている金倉家では、時折訪ねてくる佐王子
を「おじいちゃん」と呼ばせています。佐王子もそう呼ばれるのを喜んでいる様子で、忙しい中に時
間を作って、保子に会いに来るのです。

長女を出産した後、一年ごとに長男、次女と、倉田夫妻は三人の子宝を授かりました。

そしてそれから10年が過ぎ、沙織は43歳になりました。この時、夫、道夫は事務次官コースの最
終関門である局長にまで登っています。長女保子は中学三年生、13歳になりました。母親似の豊満
な肉体と美貌を受け継ぎ、父親からは素晴らしい頭脳を譲られたようです。どこに居てもその周りが
幸せを感じる、そんな綺麗な女子中学生に成長しました。長男は10歳、末っ子の次女は9歳になり
元気に小学校に通っています。