フォレストサイドハウスの住人達(その24)
9 フォレストサイドハウスの住人達(その24)
鶴岡次郎
2019/03/10 (日) 16:52
No.3200

「どうだろう…、
身元のしっかりした男を俺が紹介するから・・、
思い切って、自宅に男を招き入れ、遊んではどうだ・・」

「エッ・・、
佐王子さんが私に・・、男を紹介してくれるのですか‥‥?
知らない人に抱かれるのですか・・・、
それもお家で‥?」

佐王子が何を言おうとしているのか、悠里には判らない様子です。

「俺が選び抜いた男だから、
何の心配もいらないよ・・・・、
お金を・・、
男からもらうことになるが・・、
これは身元のしっかりした男をふるいにかけて絞り出す大切な手段なんだ‥」

「・・・・・・・・」

ようやく佐王子の意図が理解でき、その内容の異常さに気がつき、悠里は言葉を失っています。

「売春ですね…」

「うん・・・・・」

短い言葉を交わし、二人はじっと見つめ合っています。

下からじっと佐王子を見上げていた悠里が、何事か決心した様子で、ゆっくりと体を起こし、ベッド
に腰を下ろす姿勢になりました。脚を投げ出しているので、濡れた股間を曝したままです。ようや
く、全裸で陰部もさらけ出している自身の恥ずかしい姿に気がつき、ゆっくりとシーツを体に巻き付
けています。佐王子はそんな悠里に優しい視線を送っています。悠里はにっこり微笑み、佐王子に頭
を下げました。

「佐王子さんのおかげで、本当の意味で、私は女の喜びを知りました…。
しかし、その代償で・・・、
夫一人では到底・・、我慢できない体になりました・・・。
男なしでは三日と我慢できない体になりました…。
ここまで落ちてしまった体です…、
いまさら普通の暮らしに戻れないことは、うすうす悟り始めていました。
保さんには、わたしがこうなることは判っていたのですね‥‥」

「・・・・・・・・」

覚悟を決めたのでしょう、淡々と悠里は語っています。

「最初から・・・、
そのつもりで接近してきたのですね・・」

「そうだ・・・
それが私の仕事だ…」

二人は顔を合わせて見つめ合っています。ある意図をもって、佐王子が悠里に近づいてきたことに気
がついても、佐王子を責めることは勿論、彼を怖いと思う気持ちも悠里の中にわいていませんでし
た。

「・・でどうする‥?」

「・・・・・・・・・」

この先は女の自由意思に任せるのが佐王子のやり方です。女の顔を覗きながら、佐王子は事務的に女
に尋ねています。女は黙って、微笑みさえ浮かべて首を傾けて考えるふりをしています。女が嫌だと
言えば、あっさりと開放するつもりなのです。その昔は、女を騙し、客をとらせて、無理やり既成事
実を積み上げて、女を墜としていたのですが、ここ数年は、のんびりと仕事をすると決めているので
す。

「思い切ってやって見ようかな…、
こんな機会はめったに来ないから、
一度は経験してみるのも良いかな…・
嫌になったら、止めても良いのでしょう・・?」

「・・・・・・・・・・」

微笑みながら悠里が答えています。佐王子が黙って笑みを浮かべています。この結果を彼はほぼ確信
していたのです。