フォレストサイドハウスの住人達(その24)
8 フォレストサイドハウスの住人達(その24)
鶴岡次郎
2019/03/07 (木) 15:40
No.3199
突然意外な言葉を聞いて、目を見開いて佐王子を見つめている悠里から視線を外し、佐王子はゆっく
りと口を開きました。さすがに悠里と視線を合わすことが出来ないのです。

「今日までは毎日この家に通ってきたが・・
俺も、仕事を色々抱えていて…、
これ以上無理は出来ないのだよ・・」

「判っています…、
何となくそんな日が・・、
いずれやって来ると思っていました・・・・」

「そうか・・、
そう言ってくれると助かる…」

「毎日は無理でも、一週間に三度・・、
いえ・・二度なら、なんとか我慢できます。
それでいいから、お願いします‥‥」

佐王子がゆっくりと首を振っています。悠里は涙を瞳にあふれさせています。

「正直に言おう・・、
以前にも言ったことだが・・、
他にも女が居て・・、
悠里のところへ来るのは、月に一度が精いっぱいだ…」

「エッ・・、そんな・・」

佐王子がソープ店を経営していること、女を扱う裏稼業をしていることまでも、数日前に悠里は佐王
子から教えられたのです。そして、このマンション内に限っても、十人以上の女が彼に抱かれるのを
待っていることを悠里はその時知ったのです。

その時、不思議と強い嫉妬心は沸きませんでした、男の持つ雰囲気から、何となく裏稼業の男だと気
がついていたのかもしれません。そして、いずれ捨てられる日が来ることも覚悟はしたのです。しか
し、現実にそのことを宣言されると悠里は言葉を失っているのです。

「以前のようにカラオケ遊びで男を探すのも一つの手だが…、
そんな危険な遊びを悠里にはさせたくない…・」

「・・・・・・・・・・」

悠里の体を心配する様子を見せている佐王子です。悠里は穏やかな表情で、次に来る男の言葉を
待っています。

「かと言って…、
悠里が男なしで過ごせるはずがないし…
何とかしなくてはな…・」

「・・・・・・」

独り言のようにつぶやく佐王子の言葉が悠里の体を貫いています。彼の言う通り、佐王子に開発され
た体は男なしで三日も持たないことは悠里自身が一番よく知っているのです。しかし、そのことにあ
えて触れてきた男の意図が判らないです。元をただせば悠里をそんな体に変貌させたのは、佐王子自
身なのです。文句が言いたいのはこちらだと少しむっとして悠里は佐王子を見つめています。