フォレストサイドハウスの住人達(その24)
5 フォレストサイドハウスの住人達(その24)
鶴岡次郎
2019/02/14 (木) 13:04
No.3196
(2019_2_13,記事番号3195に修正を加えました)

加奈が立ち上がり、ドアーの傍に立っている男の傍に歩いて行きました。

〈ゴメンナサイ・・・、
せっかく来ていただいたけれど…、
次の機会にしてほしいわ‥…〉

断りの言葉を考えながら男の傍へ行きました。

彼の傍に立った時、言い知れない恍惚感に加奈は突然取り込まれたのです。断りの言葉は直ぐに頭か
ら消えていました。

男は170センチに満たない身長で、少し痩せ気味です。面長の顔は良く見れば、それなりにイケ面
なのですが、睫と鼻が異常に目立つ濃い顔で、そのため全体にアンバランスな印象を受けるのです。
ただ、一度会うと決して忘れないと思える顔でした。

入室を断るはずだった男なのに、そのことをすっかり忘れて、加奈はにっこり微笑んで、一歩踏み出
しました。ほとんど体が接するほどに近づいています。濃い、粘っこい体臭が加奈を包んでいます。
加奈は大きく呼吸をして、胸一杯男の香りを吸い込んでいます。それだけで、全身が甘く緩んでくる
のです。

〈近くで見ると、捨てたものでもないわ‥、
この男でいいと思う・・、
ううん・・、この男でないとダメ…・
ああ・・、早く食べたい…・・〉

もう・・、断ることなどできない状態に追いこまれています。

加奈は完全に取り込まれています。たぶん、加奈は・・、いえ・・、加奈に限らず女であれば、い
え、いえ・・、メスだけが感知できる動物的な精気を佐王子は全身から発散させているのです。

〈どうしたの…、加奈らしくない・・、
男が動かないのね・・、
ちょっと怖そうな男だし…、
佐藤クンを呼ぼうか・・・・〉

加奈の様子を見て、男を追い出すことに手こずっていると悠里は考えました。悠里は加奈の応援に向
かうことにしました、恐る恐る扉の方向へ足を踏み出しました。過去にも経験があるのですが、女二
人だとなめてかかって、断っているのに、強引に入室しようとする男が居るのです。男が居座るよう
ならスタッフの佐藤を呼ぶことを考えて、悠里の手には携帯電話がしっかり握りしめられています。
加奈と男に一メートルと近づいた時、悠里は突然立ち止まりました。

〈ナ、ナニ…・
この強い香り…・
良い・・・、匂い…・
感じる、感じる、この匂いは・・・
そうよ・・・、
アレよ、アレそのものの匂いよ…・〉

女の芯を揺るがすような精気が悠里を襲ったのです。

今の悠里は明らかに加奈より性感が鋭いようです。カラオケルームに入った瞬間から、30分後には
この部屋で始まるはずである遊びを想像して、妄想を駆り立て、甘い期待で体を濡らし始めていたの
です。そこへ、佐王子のすさまじい精気が襲たのですから、たまりません、全身がかっと燃え上が
り、股間からは恥ずかしいほど愛液が吹き上がり、大腿部まで濡れ始めているのです。おそらく下着
にはそのことが歴然とわかるほどシミが広がっているはずです。

手を差し出し、言葉を発しないで、男の右手を握り、ほとんど引きずり込むようにして部屋に引き入
れたのです。加奈が笑いを浮かべ、びっくりしています。