フォレストサイドハウスの住人達(その24)
25 フォレストサイドハウスの住人達(その24)
鶴岡次郎
2019/05/21 (火) 10:56
No.3217

悠里は何事か考え込んでいます。加奈には悠里の心の動きが判るのでしょう、悠里が口を開くのを待
っています。静かに、二人の間を時が流れています。一分ほど考えた悠里が、にっこり微笑み、口を
開きました。

「もし・・・、
もしもよ・・、
夫に秘密がバレそうになったら…、
いえ・・、夫が少しでも疑いを持つようなら…」

そこで言葉を飲み込み、悠里はじっと加奈を見つめています。

「私…、
何もかも正直に・・、隠さず‥、
全てを打ち明けることにする‥。
ずるいけれど、告白した後は・・・、
夫の考えに従うことにする…
別れると言われれば・・、黙って受け入れる・・」

一言、一言、言葉を拾いながら、悠里が話しました。

「そうだね・・・、
私が悠里の立場でもそうすると思う…」

悠里の考えに加奈が同意しています。

「それまでは・・・・、
一人で・・、秘密を背負って生きて行く…、
共犯に巻き込んで、加奈には申し訳ないけれど・・・、
このまま、何も知らなかったことにしてほしい…」

「うん・・・」

言葉少なく加奈が同意しています。そして、二人は顔を見合わせて、にっこり微笑み合っています。
体の要求に悩み果て、娼婦に身を墜とした悠里の気持ちを一番理解できるのは加奈なのです。そのこ
とを悠里は勿論、加奈自身もよく知っているのです。二人はそのことを確認し合って、にっこり微笑
んでいるのです。

「あら・・、私らしくもない・・、
すっかり堅い話になってしまったわね…、
旦那のことはこれくらいにして…、
少し話題を変えようか・・・
加奈の大好きなスケベーな話が良いよね‥‥、ふふ・・・」

夫への裏切りが話題になり、場が硬い雰囲気に変わったことに悠里は気がついたのです。その場の流
れを変えようと、朗らかな声を出しています。

「わたし・・、
これでも一流の娼婦なりたいと思っているのよ・・・」

「エッ・・、一流の娼婦・・!
何・・、それ・・・、
一流って・・、
セックスが上手だと言うこと…
それともいっぱいお金を稼ぐことなの…」

加奈も悠里に同調して、軽口を吐いています。

「そうよ、一流の娼婦とは・・、
全てのことでナンバーワンになることなのよ、
でも・・、いろいろ勉強しているけれど、
上手く行かないの‥、
これで・・、この仕事・・、
結構・・、悩むことが多いのよ・・・・」

笑いながら悠里が話しています。