フォレストサイドハウスの住人達(その24)
22 フォレストサイドハウスの住人達(その24)
鶴岡次郎
2019/05/03 (金) 17:26
No.3214
「生涯最高のセックスだった…」

遠い目を窓の外へ向け悠里がつぶやいています。身体がその時のことを思い出しているのでしょう、
そっと胸に触り、乳房をブラウスの上から軽く握っています。そして形良く座っている両脚を微妙に
動かしているのです。加奈は黙って悠里を見つめています。

「好きでもなく、かといって嫌いでもなく・・、
ごく普通の60男に・・、
今日初めて出会った男だよ・・・」

「そうだね・・・、
街で声を掛けられても、振り向かないね‥」

「そんな男にだよ・・、
抱かれ、挿入され・・・、一杯出されて…、
私は・・、死ぬほどいい気持ちになったのよ・・・、
どうしてだと思う‥、加奈…」

「・・・・・・・」

額がくっつくほど近くに顔を寄せて、悠里が加奈に話しています。加奈が笑って黙って、首を横に振
っています。

「お金をもらったからよ‥」

「エッ‥、お金のせいなの…?
お金をもらったことで興奮するの…」

「そうだよ・・、
私は・・・、この体を売ったのよ‥
そう思うだけで、濡れてくる…・」

「・・・・・・・」

悠里が光る瞳で加奈を見つめています。このような表情を今まで見せたことがありません。目に
見えない何かに挑戦している瞳の色なのです。加奈は黙って悠里を見つめているだけでした。

「この赤い唇も、白い体も、柔らかいおっぱいも・・、
全部、この時間、この男に売ったんだと・・・、
どんなにいじめられても文句言えないんだと・・・、
あの時、私は自分に言い聞かせていた・・・」

「娼婦として、覚悟を固めていたのね…
ある意味・・、立派だと思う…」

「ああ・・、そうなの・・、
私は娼婦なの…、
汚れ果てた・・、娼婦なの・・・、
ああ・・・、加奈…、私は娼婦なのよ…」

加奈の発言、娼婦と言う言葉に悠里は異常に反応しています。顔をゆがめ、今にも泣きそうに
なって、苦しそうに言葉を吐きだしているのです。

「悠里・・・、大丈夫…?
私、いけないことを言ったかしら…?」

加奈は事情が呑み込めない様子です。

「ああ・・、ゴメンナサイ…、
加奈が悪いのではない・・、
私が異常なの・・・
娼婦と呼ばれると、
私…、スイッチが入るみたいなの…」

「そう・・、
私・・、悪い言葉を使った見たいね・・、
ゴメンナサイ・・・・」

悠里が落ち着いたのを見て、加奈は少し安どしています。

「私・・、その言葉に敏感なの…、
その言葉を聞くと・・、
体全体が甘くなって・・、
恥ずかしいけれど、滴るほど濡れ始めるの…
変だね…・」

悠里が苦笑を浮かべて加奈に説明しています。加奈は黙って悠里を見つめています。そして、何かに
気がついたようで、少し考えこむ様子を見せていたのですが、思い切ったようで、ゆっくり口を開き
ました。