フォレストサイドハウスの住人達(その24)
13 フォレストサイドハウスの住人達(その24)
鶴岡次郎
2019/03/18 (月) 11:14
No.3204

「有難う・・、加奈‥、
こんなスケベな友達でスミマセン…、
でも安心して・・・、
やって見て分かったことだけれど・・・、
カラオケ店で遊ぶより簡単で、むしろ安全だと思う・・」

「もう・・、
また・・、そんなことを言う・・、ダメだよ…、
お金をもらってセックスするのだから・・、
安全なはずはないよ・・、
男なんて・・、そんなに甘くないから・・・
一皮むけば、みんな狼になるのだから…」

少し向きになって加奈が悠里を叱っています。いつものことなのですが、どんな時でも、悠里は楽天
的に世の中を見るのです、自分にはない、そのおおらかなところが加奈は好きなのですが、時によ
り、その安易な考え方、ものの見方が加奈には気がかりになることがあるのです。この時もそうで
す、娼婦と言う辛い仕事の本質を悠里は本当に理解しているのかどうか、加奈には心配なのです。

「昔から、何千、何万の女が・・、
やむを得ずその仕事に就いて、
女の盛りの時はまだいいとして・・、
やがて、年老いて・・、
女たちには、社会の底辺に沈み込む道しか残されていなくて・・、
泣きながら、辛い人生を送ることになるのよ…。
悠里にはそうなってほしくないのよ・・、
遊び感覚でいると、おおやけどするよ…」

「ハイ、ハイ…、
判っています。
遊び半分でこの仕事はしません・・、
早く抜けられるように努力します・・・」

どこまで本気で頭を下げているか分かりませんが、ここはおとなしく謝っておくべきだと思ったので
しょう、悠里は素直に頭を下げています。加奈も悠里の性格が判っているので、それ以上くどくは言
いません。一見ちゃらんぽらんに見えて、押さえるところはしっかり押さえている悠里だと加奈は知
っているのです。案外、加奈よりしたたかに世間を生き抜く能力を持っているかもしれないと加奈は
悠里のことをそれなりに評価しているのです。

「・・・でどうなの…、
その・・、お金をもらってやるというのは‥
その・・、カラオケホールで遊ぶのとは違うでしょう‥・?
お客を迎えるに当たって・・・、
その・・、佐王子さんから事前の教育などはなかったの‥」

本音を言えば、加奈自身もその仕事にかなり興味を持っているのです。お金で体を売り、知らない男
に抱かれることに、体が少し濡れるほど興味を感じているのです。

「商売を始めるにあたって・・、
個人的にいろいろ教えてもらったりした・・、
その仕上げに、
佐王子さんのソープ店で三日ほど特別訓練を受けた‥」

「そうだよね・・、
ずぶの素人が突然その仕事は出来ないよね‥
その教育内容に興味があるけど…、
聞いたら失礼だよね…、ふふ…」

「うん・・、とっても失礼な質問だよ・・、ふふ・・
でも知りたいのでしょう・・」

「うん・・・、
とっても興味がある‥
ネエ・・、お願い、少しでいいから聞かせて…」

加奈が身を乗り出すようにして、悠里の口を開かせようと粘っています。この機会を逃したら、この
ような興味深い話を聞く機会は二度と来ないと加奈は思い詰めている様子です。からかうような笑み
を浮かべて、悠里はなかなか口を開こうとしません。どうやらここらから、劣勢だった悠里が逆転し
て、攻勢に立った様子です。