フォレストサイドハウスの住人達(その23)
7 フォレストサイドハウスの住人達(その23)(740)
鶴岡次郎
2018/10/30 (火) 16:20
No.3181

情事の後、全力を尽くした咲江は全裸のまま濡れた体をそのままに、深い眠りに堕ちますが、夏樹は
書斎に戻り仕事を続けます。情事の後書斎で一仕事する、これが夏樹の習慣なのです。ところが、今
日はいつもと違って調子が出ないのです。体がだるくて、油断すると眠気に負けそうになるのです。
咲江のサービスがいつも以上だったことで、夏樹も思わず頑張り過ぎたのが原因です。

「もう・・、歳かな…、無理は出来ない…、
やらなければいけない仕事は山積みだけれど…・
こんなに骨抜きにされたのでは・・、
何もできない・・、
今夜はあきらめよう…・
それにしても、今日の咲江は凄かった…、
今日のような日が続けば、とても耐えられないかも・・」

ぶつぶつ言いながら夏樹は椅子から立ち上がりました。あきらめて寝るつもりのようです。寝室の扉
を開けると強い女の香りが鼻腔を刺激しました。全裸の咲江が体を横にして、指を股間に強く指し込
んだ姿のまま寝入っているのです。どうやら、ひとしきり指遊びを楽しんだ後、そのまま寝入った様
子です。口から唾液をたらし、幸せそうな表情で寝ています。

そっとタオルケットを体にかけて、妻の額にキッスをしました。

「ああ…、夏樹・・・・、
もっと、もっと・・、奥へ…、入れて…ェ・」

抱かれている夢を見ているのでしょう、体を折り曲げて、指をさらに深く指し込んでいます。股間か
ら、猥雑な破裂音が出ています。寝ていても、女の情感は活動しているのです。咲江の寝姿を見つめ
ながら、夏樹はほっと大きなため息をつきました。

「もう・・、限界かも‥、
浦上さんの気持ちが、今にしてよく判る…・」

低い声で夏樹がつぶやいています。そして、朽ち木を倒すようにベッドに体を投げ出し、そのまま寝
入ってしまいました。かなり疲れている様子です。

夏樹がつぶやきで名前を出した浦上三郎は千春の旦那です。浦上三郎の紹介で夏樹は初めてソープの
世界で遊び、そこで千春を抱き、女体とセックスに開眼したのです。このソープの経験がなければ夏
樹は相変わらず幼稚なセックスしかできなくて、妻咲江との仲も危うくなっていたと思われるので
す。いわば、浦上三郎と千春は夏樹にセックスの深淵を教えた恩人なのです。

浦上が妻千春をソープで働かせていることに、坂上は当然のことながらひどく驚いたのです。その
時、浦上は簡単にその訳を話しましたが、その時の坂上には到底納得できなかったのです。それが、
今、咲江の猛烈な情欲の迸りを目の当たりにして、夏樹はあの時、浦上三郎が語ったことを鮮明に思
い出しているのです。

「坂上さん・・、私だって…、
妻がソープで何人もの男に抱かれていることを考えると、
気が狂うほど妬けます‥。
何時まで経っても、この気持ちは変わりません‥。
では・・、なぜそんなことをさせるのかと思うでしょう…、
妻を愛しているからです‥。
妻が気持ちよく生きて行くためにはこの道がベストなのです…」

下の子が幼稚園に入園し、子育てを卒業した千春の中で、それまで抑え込んでいた女の情欲に火が付
きました。情欲の高まりに苦しんでいる妻千春を思って、浦上三郎は千春に情人、佐王子保を与えま
す。結婚前からの千春と付き合っていた佐王子は親身になって千春に対応しました。しかし、二人が
かりで対応しても千春を満足させられないことが判ったのです。佐王子と浦上は更なる対応策を打ち
出しました。千春をソープで働かせる決心を固めたのです。

千春は水を得た魚のように、楽しくソープの世界を泳いでいます。その気になれば日に数本の男根を
賞味出来るのです。千春の女は磨かれて燦然と輝いているのです。

千春が近所に買い物に出る時、都心にお出かけの時、通りがかった男たちの視線が千春の姿を追いま
す。今まさに絢爛と咲き誇る花、それが千春なのです。
絢爛と咲き誇る千春の陰に、夫、三郎と、情人、佐王子の血のにじむような苦労があることを知って
いる人は少数です。

いま、狂わしい情欲に悩まされている妻、咲江を見て、坂上夏樹は自分もまた、浦上三郎のように大
胆な対策を打ち出す必要性をひしひしと感じ始めているのです。