フォレストサイドハウスの住人達(その23)
5 フォレストサイドハウスの住人達(その23)(738)
鶴岡次郎
2018/10/23 (火) 14:21
No.3179
「そうムキになって、興奮することはない‥。
村上さんをいじめると思ったのか…、
彼のことがそんなに心配か、妬けるね…ハハ・・・」

「こんな時、冗談を言わないで・・、
彼ともめ事を起こしていただきたくないだけ・・・、
私がいけないのでしょう・・、
だったら・・、私に言って…」

「お前にも、村上さんにも、
何も苦情を言うことはない・・・。
彼に少しお願いしたいことがあるだけなのだ・・・、.
咲江にも関係することなので、
二人揃った時に詳しい話をするつもりなのだ・・」

「彼にお願いしたいことって・・、
何ですか・・?
彼に何が言いたいの・・、
今・・、私に・・、
直接話してちょうだい・・」

精いっぱい食らいついています。妻が不機嫌になっているのを冷静に受け止めて、笑いながら夏樹は
答えました。

「ハハ・・・、すっかりご機嫌斜めだね・・・、
ここで話しても良いが・・、
二人揃った時の方が、話が通じやすいのだ・・、
咲江にとって、悪い話は出ないから…、
心配しなくてもいいよ‥」

「そう言われてもね・・、
心配するよ…、
だってそうでしょう…、
あなたの許しを得ているとはいえ・・・、
私と彼の関係は・・、
人には言えない関係であるのは間違いない。
私と彼の仲は、あなた次第なのよ・・・、
あなたが止めろと言えばそれまでだと思っている‥
そこのところをちっとも判っていないんだから…」

自分でも見当違いの怒りを夫にぶつけていると判っているのですが、何となく、悔しくて咲江は夫に
抵抗しています。

「アハハ‥‥、そう言うことか…、
咲江はいつも・・、後ろめたい気分になっているんだね・・・、
僕が焼けるような嫉妬心を捨てきれないのと同じだね・・」

「そうよ・・、いつも不安定な気持ちなのよ・・・、
だから・・
彼を家に呼んで、相談するということになれば・・・
凄く不安で、居ても立っても居られない気持ちになる・・」

素直に不安な気持ちを咲江が告げています。

「判った・・、
曖昧なことを言ったようだ、謝るよ・・・、
日ごろ咲江がお世話になっている、
そのお礼の席を設けたいのが趣旨だ・・・、
その後、少し彼にお願いがあるんだ・・」

「そう・・、
その願い事と言うのが気になるけれど、
良いわ‥、あなたを信用する‥。
家に来るよう、彼に伝える…、
次の休みの日でいいね…?」

「うん…」

これ以上押し問答しても、夫が話しそうにないこと、あまり執拗に追及すると痛くもない腹を探られ
ることになると、咲江は中途半端な気持ちを抱いたまま、この話題を打ち切りました。それでも、心
の中はすっきりしないのです。