フォレストサイドハウスの住人達(その23)
13 フォレストサイドハウスの住人達(その23)(746)
鶴岡次郎
2018/11/29 (木) 13:35
No.3187
「ゴメンナサイね・・、
お招きしておきながら・・、
お客様を残して出かけるなんて…‥
研究のことになると、他は何も見えなくなるのよ‥」

「いえ、いえ・・、
それでこそ、坂上さんです‥。
私は無条件で彼を支えますから、
奥様は何も気にしないでいいですよ‥」

「それにしても・・、
村上さんの手に余るようなら・・、
別の男を準備するよう頼むなんて…・、
何だか・・、恥ずかしい・・・、
私・・、そんなことにはなりませんから…、
夫の言葉は、気にしないでください…・」

「・・・・・・・・」

咲江の言葉に村上は黙って頷いています。坂上に言われるまでもなく、彼自身も何度かそのことを考
えたことがあるのです。終わった後、咲江がひとしきり自慰行為に耽る姿を見るにつけ、最後まで満
足させることが出来ない自身の力なさを思い切り知らされているのです。

他の男を準備することは村上にとってさほど難しくありません、咲江ほどの女であれば喜んで相手を
する男は村上の周りにはたくさんいるのです。その気になれば、一時間以内に数人の男を集めること
が出来るのです。それでも、村上はそのことを実行しようと考えたことがありませんでした、しか
し、咲江の夫である坂上がそのことに触れて来たのです。改めて、村上はいささか追い込まれた気分
になっていました。

「俺で満足できないと思ったら・・、
何時でもそう言ってくれ…、
旦那様も、あのように言っておられることだし…、
その気になったのなら、簡単に男を集めることが出来るから‥」

「判った…、
その気持ちだけで十分・・・、
夏樹と総一郎さんに十分愛されていて・・、
その上、他の男を求めたりしたら・・、
罰が当たる。ありがとう…。
その件は忘れてちょうだい…」

屈託なく咲江は答えています。

「良かったら、お風呂に入って・・、
私は・・、子供たちの様子を見てきます‥、
明日は、7時には皆起きます。
子供たちは、8時には家を出ます。
そのつもりでいてください…」

すっかり主婦の顔に戻って、かいがいしく咲江が動き始めました。この時、もし村上が咲江の本音を
辛抱強く問いただせば、きっとこう答えたと思います。

「親友に千春と言う人がいるの・・、
とっても魅力的な人で、旦那様との仲も良い・・、
彼女、旦那さんから愛人を与えられ、その上…、
ソープに勤めている‥。
もちろん、旦那様と愛人も公認している‥。
正直言って・・、うらやましいと思うことが何度かある・・。
でも・・、私にはできない・・・、
いえ・・、許されないことだと思っている‥」

咲江のこの言葉を聞いたら、きっと、村上は咲江のソープ勤めを認めると思いますが、幸か不幸か、
そこまでは・・、今のところ、発展する気配はありません。