フォレストサイドハウスの住人達(その23)
11 フォレストサイドハウスの住人達(その23)(744)
鶴岡次郎
2018/11/12 (月) 11:12
No.3185
「いやだ…、体力増進に努めるなんて…、
その言い方…、
私がとんでもなく男好きで、
村上さんの全てを食い尽くすように聞こえる…、
ふふ・・・・・」

「おや、おや・・、違ったかな…、
僕が居なくなったら、これ幸いと・・・、
朝、昼、晩・・、見境なく・・・、
村上さんの頭の先から、つま先まで、全部・・・、
食い尽くすつもりではないの・・・・?
村上さんもそのことが判るから、
覚悟のほどを私たちに披露しているのだよ・・・」

「ふふ・・・・、
判りました…、その通りかも・・・、
ありがたく・・、お二人のご厚意をいただきます…
ごちそうさまです…・・、ハハ・・・・・・」

咲江がまじめな表情で頭を下げ、そして突然笑いだしました。二人の男もつられて笑い出していま
す。

「ありがとうございます。
これで安心して出張できます。
わがままついでに・・、
もう一つ・・・、
お願いしたいことがあります…」

「何でしょう・・・、
言ってみてください…」

「今回のことは一生に一度のチャンス到来と思っています。
一人の研究者として、この仕事に命を懸けて挑みたいのです‥。
妻のこと、子供のこと、おろそかにするつもりは勿論ありません・・。
しかし・・・」

ここで言葉を飲み、坂上夏樹は村上と咲江の顔にゆっくりと視線を当てました。咲江も、村上も、坂
上が何を言い出すか予想がついている様子で、じっと坂上を見つめています。

「国内に居ても、研究所に泊まり込む日が多くなり、
多分・・、家に帰る日は限られてくると思います‥‥
家族にはさみしい思いをさせることになります・・・、
それで・・・・、お願いしたいのは・・・」

「坂上さん・・・、
それ以上の説明は必要ありません‥。
そこまでの説明で十分判ります・・。
及ばずながら、村上総一郎・・・、
この命を、咲江さんと旦那様・・、
そして、あの可愛いお子さんたちに、
無条件で差し出します…。
安心して、研究に没頭してください・・・」

坂上夏樹、咲江が涙をあふれさせて、村上に向かって、深々と頭を下げています。

国内に居ても、研究に没頭するあまり、妻と子供たちのケアーまで気が回らないことが多くなる、つ
いては、海外出張で家を空ける時に限らず、研究のめどがつき、落ち着くまで、妻子を一時的に村上
に託したいと、坂上夏樹は言っているのです。村上がそのことを快諾したのです。