フォレストサイドハウスの住人達(その22) 
9 フォレストサイドハウスの住人達(その22)(729) 
鶴岡次郎
2018/09/21 (金) 10:56
No.3168

「ゴメンナサイね・・・、
由美子の気持ちを少しも理解できなくて…、
そんなに悩んでいるなんて・・、
一言、相談してくれたらよかったのに……」

愛が由美子に謝っています。

「ううん…、
一人の女として、
絶対やってはいけないことをしてしまった・・。
そう思っているから‥、
この罪は一生背負って行こうと決めて・・、
一切の弁解は言わないつもりだった・・」

「確かに、由美子の言葉を聞くと、
私達・・、もう少し慎重に行動すべきだったと、今になって思う…
ここに居る全員があの計画を良いと思ったのだからね…」

由美子の言葉に愛が同意を示しています。

「本来なら、私一人の胸にしまっておくべきことだったけれど・・、
千春さんの報告を聞いて、
咲江さんご夫妻の関係に大きなひびが発生していないことを知り、
うれしくなって、あなた達なら良いだろうと、つい口を滑らしたのよ…・」

「お互い・・、この先も気を付けないとね・・、
女が・・、女をラブトラップに陥れるようなことをしてはいけないね…。
もっとも・・、私なんか・・、
旦那以外に抱かれる機会は絶対ないから・・、
罪を犯す心配はないけれどね…・、アハハ・・・」

愛が豪快に笑い、由美子が苦笑しています。その場が少し明るくなりました。

「ねえ・・・、
もしかしたら…、
村上さんは・・、知っているかもしれないね・・、
由美子に騙されたことに気がついているのかもしれないね‥」

愛が突然言い出しました。

「そうかしら・・」

千春が首をひねって反論しています。

「きっとそうよ・・、
あの時の女は自分が雇った娼婦だと・・
村上さんが咲江さんに教えたのでしょう・・」

「はい・・、咲江がそう言っていました・・」

「顧客に化けて潜り込んできた由美子に騙されたことに・・、
うすうす気がついたから・・・、
謎の女は、自分が雇った娼婦だと説明したのよ・・・。
私はそう思うよ…・」

「愛さん・・・、
名探偵になれるかもしれない、
とっても面白い推理ね・・・、
ただ、その推理には一つ疑問が残る・・、
由美子さんの芝居に騙されたと気がついていながら、
なぜ、村上さんはすべて自分が計画したことだと言ったの・・・・
村上さんにとって、そうすることにどんな利益があるのかしら‥
村上さんだって、もちろん咲江も・・、
別れたいとは思っていなかったのだから・・、
わざわざ波風を立てる必要はないもの・・・・・」

「う・・ん・・・、
女に騙されたことが悔しかったからかしら…、
それで・・、騙されたことを隠して、
全て自分が計画したことにした・・・、
チョッと弱いね・・、
降参・・、名探偵失格ね・・、この推理は取り消すわ…」

千春に問い詰められて愛があっさり旗を降ろしています。笑いながら千春と愛のやり取りを聞いてい
た由美子が真顔に戻って口を開きました。