フォレストサイドハウスの住人達(その22) 
7 フォレストサイドハウスの住人達(その22)(727) 
鶴岡次郎
2018/09/15 (土) 11:48
No.3166

ここへきて由美子に笑顔が戻った様子です。咲江が浮気を夏樹に告白したと聞かされた時は、明らか
に顔色を変え、大きな罪を背負っている様子を見せていたのです。咲江夫妻がもしも離婚することに
なれば、それは由美子の責任だと思い込んでいる様子を見せていたのです。坂上夏樹が見せた大きな
男気のおかげで、離婚の危機は去り、以前より咲江夫妻の仲は良くなったことを知ったのです。罪悪
感に打ちひしがれた影が由美子から消えました。

「寝室での反応が驚くほど変貌した咲江さんを見て・・、
妻の浮気はそれほど悪いものではない・・、
たまには、武者修行で他の男を経験させるのも、
悪いことではないと、咲江さんの旦那様は考えたのね・・…」

由美子がほとんど泣きながら言っています。咲江夫妻の仲が以前に増して良くなったことを喜んでい
るのは判るのです、それにしても由美子の喜ぶ様は度が過ぎています。その由美子の喜び様に少し驚
きながら千春が答えています。

「その通りだと思います・・、
旦那様は、妖艶に変貌した咲江を見て、
こんなにいい女になるのなら
この女の罪をすべて許してもよい思ったに違いありません‥。

咲江は咲江で、旦那様の優しさを感じ取り、
この人を裏切り続けることは出来ないと決心して‥
全てを告白した…。
旦那様の愛情が、咲江の鎧をはぎ取ったのです・・・」

由美子の涙が伝染したのでしょう、千春も涙を流して語っています。愛も泣いています。

「ご主人の言葉、その体から迸し出る優しさ、愛情が・・
咲江さんの告白を呼び出したのね…。
この人になら告白しても、大丈夫だと咲江さんは思ったのね・・
男と女、夫婦となったからには、
咲江さんと旦那様のように、互いに心を通わせたいね‥」

愛も感動のコメントをしています。

「そうなんです・・、
ご主人の優しさ、
その深い愛情に・・、
咲江は自分の人生をかけたのよ…。
そして、期待通り・・・、
いえ・・、期待以上の幸せをつかみ取ったのです。
うれしい話ですね・、うれしい誤算ですね…」

千春の頬を涙が流れています。由美子も、愛も涙をあふれ出させています。
そして、由美子がぽつりと言葉を出しました。

「一生その罪を背負っていこうと心に決めて、
絶対、誰にも言わないつもりだったけれど・・、
ここで言わせていただきます…」

「・・・・・・」

愛と千春が不審そうな表情で由美子を見つめています。由美子が微笑みを浮かべてゆっくりと口を開
きました。

「夏樹さんの優しいお気持ちのおかげで、
救われた女が・・、
咲江さんの他に、もう一人いるのよ・、
それは・・・、私なの…」

由美子の言葉は続きます。