フォレストサイドハウスの住人達(その22) 
6 フォレストサイドハウスの住人達(その22)(726) 
鶴岡次郎
2018/09/12 (水) 11:44
No.3165
「この女は、絶対、手放せない、
男なら誰だって、そう思うはず・・、
このいい女を手元にキープ出来るのなら、
女が犯した浮気など問題でない、すべて許してもいい・・、
そう思うはずだね、男なら…」

絶好調の愛のコメントは続きます。

「そうなんですよ・・・、
愛さんは何でもわかりますね・・
女には判らない男の不思議な情感の動きが判るのですね・・。
もしかして・・、そんな経験があるのですか・・?」

「・・・・・・・」

千春の質問に愛は照れ笑いを浮かべて、ただ黙っています。大病院の理事長令嬢と婚約し、次期院長
を約束された男と手を取り合って、駆け落ちした経歴を持つ愛なのです。恋に落ちた男の情感、その
大きな包容力、そのすべてを正確に愛は理解できるのです。

「『この人なら・・、
この人なら、きっと受け入れてくれる、
浮気を・・、不倫の愛を・・、
全部告白しても、
受け入れてくれるかもしれない・・・』
咲江はそう思ったと・・・、私に話してくれました・・・」

話しながら千春は泣いています。愛も、由美子も涙を浮かべています。由美子にすれば彼女が仕掛け
た罠で咲江が不幸になる話だけは聞きたくない気分だったのです。坂上夏樹の大きな器のおかげで、
咲江が救われ、由美子もまた救われたのです。

「そして咲江はこんなことも言いました。
『このチャンス逃したら、
この人を永久に失うかもしれない…、
全てを告白して・・、その結果に掛けよう…』」

千春の説明は核心に入っています。

愛と、由美子が、じっと千春の顔を見つめてその先の報告を待っています。

「『村上さんとの関係を続けてもいいよ、
嫉妬心で焼き尽くされる気分も悪いものではない・・』、
ご主人はご自分の寝取られ気質まで咲江に披露したの…」

「やったね・・、
そこまで来ると、もう・・、大丈夫だね…」

愛が涙を流しながら頷いています。由美子もほっとしています。

「咲江は、はっきり言わなかったけれど・・、
浮気を告白した直後、夜のベッドの上でだって、
咲江は大変貌を遂げたはずよ・・
そのことでも、旦那様のポイントを稼いだと思う・・」

千春が恥ずかしそうに言っています。

「そうだよ・・、
浮気は女の性感を飛躍的に向上させるからね…
でも・・、どんなに感じても・・、
思うまま、その快感を表に出すことは出来ない・、
むしろ控えめに反応しなければ、怪しまれる…・・・」

「おっしゃる通りです…」

「それが・・、浮気を旦那様に告白すると・・・、
もう怖いものは何もない・・・、
感じるままに、悶え、叫ぶことが出来るようになった・・
女はそんな時、大変身するからね…・」

愛が興奮して説明しています。

「愛さん・・・、
相当・・、浮気の経験があるようですね…」

「無いわよ・・、
由美子と違って…
私は旦那一筋よ‥」

「あら・・、
そこで私を引き合いに出す…?」

由美子が抗議して、三人が声を出して笑っています。