フォレストサイドハウスの住人達(その22) 
5 フォレストサイドハウスの住人達(その22)(725) 
鶴岡次郎
2018/09/10 (月) 14:37
No.3164

「お二人ともこの先は聞きたくない様子に見えますけれど…、
どうします。止めますか…?」

千春がからかうように由美子と愛の顔を覗き込んでいます。

「いい展開にはなりそうにもない様子だけれど…、
ここまで聞いて・・、止めるのは変ね・・・、
終わってしまったことだし・・、
不愉快な話を覚悟して聞くわ…」

愛がうなずき、由美子も黙って頷いています。

「それでは話を続けます‥‥。
その日、ご主人がいつもより早く家に帰っていて、玄関で咲江を出迎えた。
咲江は自分が自分でない状態のまま、ご主人と玄関で対面せざるを得なかった。
勿論、夕食の支度は出来ていないし、濡れ場を覗いた後、急いでアパートを出たから、服装は乱れて
いるし、何よりも表情がうつろだったと思います…。
村上さんのアパートを出てから、40分後のことだそうですから‥」

「あら、あら・・、
そんな状態でご主人と顔を合わせれば・・‥
当然、ご主人は不審に思うわね…・、
堪えられなくて、
咲江さんは全部告白してしまったのか…」

愛が結論を口に出しています。

「そう思うでしょう・・、
ところが、咲江の旦那様は違っていた・・・、
彼女の身に起きた異変にある程度まで気づいていながら、
そのことには何も触れないで・・、
そっと抱きしめて・・・、
凄く妖艶だね・・、
とってもきれいだよ・・・と・・、
ご主人は咲江を褒めたらしいの…」

「エッ・・・、
そのタイミングで・・、
その誉め言葉・・、
すごいことを言うのね・・、
咲江の旦那様は…
それじゃ・・、女はひとたまりもないね…」

愛が感嘆して叫んでいます。

「村上さんと由美子さんの絡みをじっと見つめてきた咲江は・・、
私も・・・、女だから判るんだけれど・・、
嫉妬と、それを上回る情欲で身を焦がす思いになっていたはず
おそらく、二人の絡みを見ながら、
自分の指で自分を慰めたと思います‥。
だから、自宅へ戻り、勤めからは帰っていた夫の前に現れた咲江は・・・、
情事直後の女のように、濡れて輝いていたはずです。
妖しく変貌した妻を見て、旦那様は驚きの気持ちを素直に口に出した…」

咲江から聞かされたその時の様子を千春が説明しています。

「燃えるような情欲を映し出す濡れた瞳・・、
少し乱れた衣服・・、
罪の意識にさいなまれ、伏し目がちになりながらも、
すがるように、濡れた視線を夫に送る女・・。
濃い女臭があたりに漂っている…。
男心を迷わすよね、この情景は・・、確かに…」

愛がうっとりとその場の様子を解説しています。愛の言葉に千春がけらけらと笑っています。由美子
も笑顔を取り戻しています。先ほどは少し落ち込んていたのですが、もうすっかりいつもの明るい女
子会の雰囲気になっています。