フォレストサイドハウスの住人達(その22) 
2 フォレストサイドハウスの住人達(その22)(722) 
鶴岡次郎
2018/08/29 (水) 14:07
No.3160

エピローグ

ここは公園内にある愛の売店の中です。いつものように、愛、由美子、そして千春が集まっていま
す。村上の会社で咲江が働き始めてから、一ケ月以上経った頃のことです。

「聞いてよ・・、咲江のことなんだけれど・・、
あろうことか…、一ケ月前から・・・、
彼女、村上さんの会社で働き始めていたのよ・・
昨日・・、彼女から聞いたの、それで皆さんに伝えなくてはと思い、
愛さんに無理言って、この場を作っていただいたのです」

席に座るや否や、千春が声を潜めて語り始めたのです。

「エッ・・、咲江さんが村上さんの会社へ・・・
二人の関係が戻ったの…」

由美子が一番に反応しました。彼女の表情が輝いています。

「はい・・・、二人の関係は完全に戻りました。
愛さん、由美子さんには大変お世話になり、
特に、由美子さんにはあんなに頑張っていただいたのに・・、
こんな結果になって…、
私・・、申し訳なくて・・」

千春が深々と頭を下げています。

「千春さん・・、良いのよ・・、
二人の関係が戻って、
私・・、むしろ、うれしい…・」

がっかりするはずなのですが、何故か、由美子の表情に喜びがあふれているのです。千晴と愛が不審
そうに由美子の笑顔を見ています。苦労して実行した作戦が失敗したのです。気落ちして当然なので
すが、由美子は明らかに喜んでいるのです。

「月曜日、火曜日、そして金曜日の10時から15時まで・・、
週に三日も、村上さんの会社に勤めることになったらしいの‥」

「ヘぇ・・、週三日も務めるの…、
大変ね・・、
そうでもないか・・、咲江さんにとっては・・
愛する人と一緒だものね…、
・・で、仕事は何をするの…・?」

笑いながら愛が千春に聞いています。

「当然、お仕事は、アレが主体でしょう…、
だって、主婦業が長いから、
急に会社勤めを始めても、何の役にも立たないはずでしょう‥
ココで仕事する以外、他に道はないはずよ・・、
彼女も、私にそう言って、笑っていた・・」

笑いながら、股間を指さして、楽しそうに千春が説明しています。よく見れば、千晴も悔しがってい
ないです。むしろ、咲江が勤務を始めたことを歓迎している様子なのです。愛が、堪りかねたので
しょう、少し口をとがらせて質問しました。

「少しおかしいよ、由美子も、千春さんも・・、
何か隠していない‥‥?」

「・・・・・・」

「咲江さんと村上さんの仲が元に戻ったことを、
由美子はすごく喜んでいるし・・
千春さんも・・、なんだか楽しそうに話しているわね・・・」

「そうかしら…」

「そうよ、おかしいよ・・・、
いってみれば・・、
咲江さんは私たちの好意を無駄にしたわけだから、
由美子も、千春さんも・・、
もっと、怒ってもいいはずだけれど…」

愛の言葉は当然です。

「由美子さんが喜んでいる理由は他にありそうだけど、
私がこのことを歓迎する理由はしっかりあるの・・、
そのことを説明するわね・・・」

千春がおもむろに語り始めました。