フォレストサイドハウスの住人達(その22) 
10 フォレストサイドハウスの住人達(その22)(730) 
鶴岡次郎
2018/09/25 (火) 11:11
No.3169

「案外・・、愛さんの推理は当たっているかもしれないよ…・・」

愛と千春がびっくりして由美子を見ています。

「あの日・・、私たちが抱き合っているのを見て、激怒した咲江さんが、
捨て台詞を残して村上さんの部屋から出て行ったでしょう…、
その時、村上さんは凄く落ち着いていた…、
私が、咲江さんの後を追うよう勧めたけれど、
黙って首を振っていた…」

「そうだね・・、
本音を言えば、咲江さんだって、引き留めてほしかったはずだね・・、
何故・・、村上さんは引き止めなかったのだろう‥?」

愛が首をひねっています。

「『この人は気がついている…、
私に騙されたことに気がついている…
トリップに嵌ったからには・・、
咲江を追っても無駄だ…』と・・・、村上さんは悟っている。
何も確証はなかったけれど・・、
わたしはそう感じ取った…、女の勘が働いたのかもしれない…」

愛と千春がびっくりしながらも、由美子の話に引きこまれています。

「後のなって落ち着いて考えると・・・、
村上さんが私たちの仕掛けに気がつかないはずがないのよ・・、
私と村上さんが寝ている現場に、
咲江さんが突然入り込んできたでしょう・・、
これが、偶然にしては出来過ぎている…。
捨て台詞を吐いて咲江さんは出て行った・・。
安っぽいテレビドラマでもあまり見かけない、出来過ぎた展開でしょう‥
すべてが・・、現実的でない展開なのよ…・」

「そういえば・・、そうだね・・・、
恋人が浮気相手と一緒に寝ている現場に踏み込むことが出来たのだから・・、
冷静に考えれば、誰かが手引きしたと考えるのが普通だね‥」

愛が由美子の話に乗っています。

「そうでしょう…、
男と女のことでは百戦錬磨の村上さんが
この仕掛けに気がつかないはずがない・・・。
そして、謎の女、由美子の狙いは咲江さんと彼との仲を裂くことだと、
村上さんなら、簡単に読み取ることが出来たと思う・・・」

「なるほど・・、
村上さんは私たちの悪だくみに気がついているね、確かに…・
その様に説明されると、よーく判る…‥」

愛が言葉を発し、千春も頷いています。

「何者かが、村上さんと咲江さんの仲を裂くため動いた・・。
何者かが、私、由美子を送り込んできた・・・。
首謀者は咲江さんのご主人か・・、あるいは知人か…、
村上さんはいろいろ考えたと思う…、しかし結論は出ない。
そこで、村上さんは犯人捜しを止めることにした…・」

「・・・・・・・」

愛と千春が緊張の面持ちで聞き耳を立てています。

「女と寝ている現場を押さえられて、
どうあがいても咲江さんとの仲は、これで終わったと・・、
彼には判ったと思う…。
それなら、散り際は遊び人らしく綺麗に飾ろうと思ったのよ・・・
そこで彼は遊び人の原点に戻ることにした・・・」

「・・・・・・・」

いよいよ、核心に入って来たと、愛と千春が緊張しています。