フォレストサイドハウスの住人達(その21)(674)
48 フォレストサイドハウスの住人達(その21)(720)
鶴岡次郎
2018/08/09 (木) 11:06
No.3155

「家庭を持たない俺が言うのは変だが…、
本音をぶつけ合って、いつも喧嘩をしている夫婦もいるし、
坂上さん夫婦のように、本音を吐き出すことは抑えて、
いつも相手の幸せを深く考えている夫婦もいるよ・・・、
いずれが正しいかなどは、判らない・・、
いろんな形の夫婦が居てもいいと思う…」

呟くように、言葉を拾いながら村上は語っています。

「そうね・・・・、
夫婦の形に一定の決まりはないのね…。
あまり考えこまないで、
夫を愛し、自分自身に誠実に生きることを心がけることにする・・・」

明るい表情で咲江が言っています。今回の経験で、咲江は何かを掴んだ様子です。夫を裏切ったこと
は紛れもない事実で、決して許されることではないのですが、一方では、彼女自身、自分の気持ちを
裏切らないで生きてきた自負があるのです。言い換えれば、浮気と言う大罪を夫から追及されれば、
弁解せず、夫が与える罰を受け入れる覚悟を決めていたのです。これから先も、彼女自身が信じる道
を歩いて行くと、心を決めた様子です。

「奥さんの助けが必要になる時が、いずれ来ると思う…、
俺をEDから立ち直らせたように、
彼が窮地に立った時、献身的に支えることだね…、
奥さんなら、出来るよ…・」

「うん・・、そうする‥
それまでは、総一郎さんが私に甘えてください…
う・・んと、可愛がってあげるから…」

「おい、おい・・、
あまり入れ込まないでほしいな‥、
以前とは状況が違うのだから‥」

「なあ・・に、その言い方・・、
俺にあまり惚れ込むな・・、
そう言いたいわけ…?」

「うん・・、そんな格好いい話ではないが・・・、
当たらずとも遠からずだ…」

「必要以上に惚れ込むなと言っているのね・・、
その入れ込み加減が判らないなら、
私とは別れる・・と、そう思っているの・・・?」

「そうではない・・、
奥さんと別れるなら、むしろ死を選ぶよ‥」

「大げさね・・、死なれたら困るから、
別れないことにするわ‥、ふふ…
でも・・、死ぬほど好いてくれているなんて・・、とっても嬉しい…」

「大好きな奥さんとこうして仲良くさせていただいているのは、
ご主人の大きな器量のおかげだと思っている。
奥さんと同じくらい、ご主人を大切な人だと思っている・・
その意味で、これまでとは違う心構えで奥さんと接するつもりだ、
俺はご主人を決して裏切らないと決めている・・、
そこのところを、奥さんもよく理解してほしい、
節度あるお付き合いをしてほしい・・」

「節度あるお付き合い…?
それって・・、
セックス抜きってことなの…?」

「いや・・、そう言うわけではない・・、
セックスは、今まで通り・・、
いや、多分・・・、
今まで以上に、励むつもりだ・・・」

「なら・・、私はいいわ‥
私は毎日でも良いのよ‥‥」

セックスが出来るのなら、あとは問題ないと割り切ったらしく、咲江はあっさり納得しています。

「毎日か…、
それは・・・、ちょっと難しいかな…、
俺にも仕事があるし…、
病から回復したばっかりだし…・」

「ふふ・・・、バカね・・・、
冗談よ、冗談…、
毎日するはずがないでしょう…」

「・・・・・・」

それ以上この種の会話を続けることは危険だと察した様子で村上が言葉を飲み、咲江の表情を横目で
盗み見しています。村上の困惑には気づかないようすで咲江はすました横顔を見せています。先ほど
のディープキッスで少し乱れたルージュ、張りのある頬、みずみずしい瞳、それと意識をしなくても
傍に居るすべてのオスを惹き付ける今盛りのメスのオーラを発散しています。村上でなくても、毎日
挑まれたら大変だと逃げ腰になるほどの魅力を発散しているのです。