フォレストサイドハウスの住人達(その21)(674)
43 フォレストサイドハウスの住人達(その21)(715)
鶴岡次郎
2018/07/29 (日) 15:50
No.3150
咲江の問いかけに笑顔で答えて、坂上はゆっくりと口を開きました。

「あの日のお前は異常だった…、
涙を流した跡が歴然としていたし・・、
それでいて・・、
全身から欲情した香りが漂い出ていた…、
これは何かあったなと・・、感じたよ‥
先ほどの村上さんの説明で納得したのだが…、
村上さんとその女の芝居を見せつけられ、
惚れた男に捨てられたお前はボロボロになって帰って来たのだね・・・」

「そうよ、何もかも終わった・・、
あなたを裏切った罰だ・・、
どうなっていいと、投げやりな気持ちだった・・。
尋ねられれば、ありのままを告白しようと決めていた…。
でも・・、
あなたは何も問いかけてこなかった・・・」

「うん・・、
下手な質問が出来る雰囲気ではなかった・・
お前が、説明するまで質問しないつもりになっていた・・」

「悲しくて・・、辛くって…、
それでも・・、
あなたを裏切っている身だから・・、
あなたにどのように説明しようか、迷いに迷っていた・・」

「でも・・、お前は・・・、
話してくれた…」

「あなたの顔を見て・・、
あなたに抱きしめられて…、
私の帰るところは、ここだとはっきり感じたの・・、
それで、すべてを話すことにした…」

その時を思い出したのでしょう、咲江が涙を流しています。

「妻の告白を聞いていて…、
妻は村上さんに惚れていると思いました・・。
それでも・・、
男と女の関係は未遂に終わったと妻は言いました・・・
妻としては、そのことだけは曖昧にしたかったのでしょう・・」

「・・・・・」

ここで坂上は村上に向かって説明を始めました。村上は黙って頷いています。

「確証こそ掴めませんでしたが、
妻は嘘を言っていると思いました。
二人は深い関係にあるはずだと推察しました。
言ってみれば、浮気妻を持つ男の勘ですかね…・
はは・・・・・・」

「・・・・・・・」

「正直に言います…、
二人が深い関係にあると思っても・・、
私にはそれほど、怒りが沸いていませんでした‥。
その場で妻を問い詰める気持ちもわきませんでした…。
他の男とのあぶない関係を告白し、泣き崩れる妻を見て・・・、
お恥ずかしいことですが、惚れなおしました…・
その時の妻は、悪魔のように魅力的でした…
こんなに魅力的に変貌するのなら・・、
少しくらいの浮気は見逃してもいいとさえ思っていました」

「パパ…・・・」

「・・・・・・」

恥じらいを浮かべながら、咲江は涙を流しているのです。村上が難しい表情を浮かべ、何度も頷いて
います。坂上が咲江に惚れなおした気持ちは村上にはよく理解できる様子です。