フォレストサイドハウスの住人達(その21)(674)
42 フォレストサイドハウスの住人達(その21)(714)
鶴岡次郎
2018/07/20 (金) 16:53
No.3149
「それで・・、判った…、
あの日、取り乱した様子を見せて、戻ってきた咲江が・・、
身も世もなく、泣き崩れたわけが…、
最愛の村上さんが他の女と寝ているところを目撃したのだね、
それじゃ、悔しいし、嫉妬と、情欲で女体は疼くし、
メチャメチャの気分だよね・・・
咲江でなくても、女性なら誰だって、狂うよね…・」

その場の雰囲気を変えるつもりなのでしょう、明るい声で坂上が声を出しています。坂上は上機嫌で
す。この事務所を訪ねてきて一時間も過ぎていないのですが、次々と新しい秘密が暴露され、一時は
妻と村上の関係が決定的な局面に入り、離婚手前まで来ていたことを告げられたのです。そした今
は、ともかくも、二人の関係は解消した様子なのです。坂上の気持ちは晴れ晴れとしていました。

「そうなら・・、そうだと・・、
最初から、言ってくれればよかったのに…」

「だって…、いくら私でも・・・、
一年間も、あなたを裏切り続けた上・・、
最後には、その男に捨てられましたなんて…、
とても言えなかった…、スミマセン・・」

頬に涙の後を見せながら、肩を落とす咲江の肩を坂上が抱きしめています。

「村上さん・・・、
あなたの勇気に私は感謝を申し上げます。
黙っていれば、それはそれで済んだのに・・、
苦しい胸の内を、よくぞ、吐き出していただきました…。
なかなか、出来ないことだと感じ入っております…」

「・・・・・・・」

坂上が軽く頭を下げ、村上が黙って頷いています。男二人、黙っていても通じるものがある様子で
す。

「実は・・、
私も・・、お二人に告白することがあります・」

「・・・・・・」

二人の顔を見ながら、笑みを浮かべて坂上が語っています。咲江と村上が不審そうに坂上を見つめ
ています。

「村上さんと知り合ったのは二週間前で、
男と女の関係は未遂に終わったと・・・、
妻から嘘の告白を受けていたのですが・・・、
実は・・、私は最初から少し変だと思っていました。
そして、その後、決定的な証拠を掴んだのです…
ですから今日、お二人から告白を聞く前に・・・、
ある程度まで真相を察知していました・・・」

「エッ‥、バレていたの・・」

咲江が思わず口走っています。