フォレストサイドハウスの住人達(その20)
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鶴岡次郎
2018/03/15 (木) 14:49
No.3101
人が生きていく中で、「あの時・・、ちゃんと話しておけば…、
私の人生も変わっていたかもしれない…」と、思うことが、一つや、二つあるものですが・・、
この時の咲江にも、そのことが当てはまります。

経営する会社の倒産のショックで、一時的性的不能に陥った村上を、献身的に支え、見事復帰させた
咲江の愛情物語を千春に話せば、感動した千春は、咲江と村上の仲を裂く計画を放棄して、二人の仲
を支援する側に立ったと思えるのです。そうなれば、由美子演出・主演のドラマの幕が開くことがな
かったと思います。
しかし、現実には、咲江はかたくなに何も話さず、千春もそのことを聞こうとせず、計画通り、村上
と咲江の仲を分断する作戦、由美子演出・主演のドラマが開幕することになるのです。

由美子が書いた台本に従って、千春は咲江の挑発にかかりました。

「私は・・、村上さんには本命の女が居ると思う…、
可愛そうだけれど・・、
村上さんにとって、咲江は遊びの対象でしかないと思う…」

「・・・・・・・」

もう・・、咲江は反論しません、この話題で千春と口論するつもりがないのです。それほど咲江は村
上との関係に自信を持っているのです。咲江の態度には余裕があります。千晴も引き下がるわけには
行かない訳があるのです。女の誇りと意地を掛けたぶつかり合いが始まったのです。

「これほど言っても…、
村上さんの唯一の女だと・・、
咲江は言い張るのね…」

「うん・・・」、

「私もプロの女だから・・・、
その誇りと意地にかけて、はっきり言わせていただくわ‥、
村上さんのナンバー・ワンの女は別に居る・・
咲江はただもてあそばれている便利な女だと思う・・・」

「千春がその道に精通していることは認めるけれど・・・、
私は当事者だよ・・・、
村上さんと私の関係は永遠だと・・、
当事者の私がそう思っているのだよ・・・、
千春が何と言おうと・・・、
この一点だけは譲れない・・・」

「判った…、
どちらが正しいか…、
村上さんの身辺調査をして確かめない・・?
幸い私の事務所にはいろいろな調査をする専門スタッフが居るから、
その人に頼めば簡単に村上さんの相手が見つかると思う・・、
どう・・、やって見る…」

「うん・・・・・・」

由美子が千春に伝授した揺動作戦成功です。千春の挑発に咲江が見事引っかかりました。

「多分、数日で彼の浮気の尻尾を掴んで、連絡をしてくれるはず・・、
その時は、男女の現場に咲江に乗り込んでもらうことになるけれど・・、
構わないかしら…?」

「うん・・、いいよ・・・
でも・・・、この先、一ケ月の間・・・・、
何も起こらなかったら・・、
今度こそ、私たちの関係に口を挟まないと約束してね‥」

「判った…」

咲江も、千春も自信満々です。こうして、由美子演出・主演のドラマが幕を開くことになったのです。