フォレストサイドハウスの住人達(その20)
43 フォレストサイドハウスの住人達(その20)(667)
鶴岡次郎
2018/03/01 (木) 15:08
No.3095

「三人で会うことを決めた。
この時点で、私は主人との結婚を完全にあきらめていた。
短い間だったけれど、いい夢を見たとあきらめることにした。
あの人が主人に、何もかも話すのは判っていた。
ある程度まで私は告白しているけれど、
あの人の口から全てを聞けば、今度こそ主人もあきれ果て、
結婚話は跡形もなく消えると思った・・・
私の行状は・・、本当に・・・、凄いものだったから…・」

当時の乱行を少し悔いている様子を見せ、その時の苦しい心境を思い出したのでしょう、千春の瞳に
涙があふれ出ています。

「当日あの人は、普段とは違って、
アウトローになり切った服装で現れた‥。
そして・・、開口一番・・・、
あの人が主人に告げた…
凄い乱暴な言葉使いだった…」

「怖いね‥‥」

「この女は天性の淫乱で、男好きで、
これまで数えきれない男と関係を持っている。
その上、自分がスケベー女になるすべてのことを教えた、
千春は当代一の淫乱女になった、
とても、素人である主人の手に負える女でない、
普通の家庭を築ける女でないと・・・、
あの人が主人に教えた・・・」

「すごい・・・、本当の修羅場ね…
・・・で、ご主人はどんな様子だったの…・」

「もちろん、緊張していた…、
でも、私以上に冷静だった…、
あの人から聞かされた私の淫乱話はすでに知っていることだから、
そのことで、慌てる様子を見せていなかった…。
黙って、ことさら気負った様子を見せないで、あの人に対面していた」

「すごいね・・、
佐王子さんって・・、ヤクザでしょう…、
普通のサラリーマンならビビッて、おしっこを洩らすよ‥‥
その意味でも、ご主人は立派ね…・」

「ふふ・・・、ヤクザではないけれど、似たような者ね・・
特にその日は、ヤクザでも顔負けのやばい服装だった…」

「・・・で、殴り合いになったの…
そうなれば、ご主人は敵わないよね…」

「主人は冷静に対応していた・・、
主人の対応を見て、あの人の様子が変わった…、
口調も丁寧な、いつもの彼に戻った…、
それまでは、それこそヤクザの真似をして、
それらしく、汚い言葉を吐いていたのよ・・・、
やくざ映画の主人公のように迫力があったわ‥、ふふ・・・」

「ご主人を脅かして、結婚をあきらめさせようと思ったのね・・、
それが失敗したから、作戦を変えたのかしら…」

「主人は判っていたようなの・・、
あの人は悪い人でないと、第一印象で判断したと言っていた。
それで、落ち着いてあの人の出方を探る気になったらしいの・・」

「最初の出会いで勝負はついていたのね・・、
佐王子さんがいくら、凄んでも、ご主人は怖くなかったんだ‥」

咲江が笑いながらコメントして、千春がにっこり微笑んで頷いています。