フォレストサイドハウスの住人達(その20)
2 フォレストサイドハウスの住人達(その20)(627)
鶴岡次郎
2017/09/26 (火) 16:25
No.3051

旅立ち

村上と由美子、そして咲江を交えた愛の修羅場は、「さよなら・・」の言葉を残して、咲江が舞台か
ら静かに消えたことで、その華麗な幕を閉じました。

一方的に、咲江から別れを宣告された村上は何を考え、これから先どのように生きるつもりでしょう
か‥。愛する村上を由美子に寝取られ、その情景を目撃し、圧倒的な由美子の女子力を目の当たりに
して、辛い敗北感にまみれた咲江、夫には今日起きた事件をひた隠しにするのでしょうか・・・。二
人の気持ちの動向が気になります。そして、二人はどちらに向かって、歩き始めるのでしょうか…。

そう言えば、アパートの外で、二人の人物が待機していました。咲江を待つ千春と、由美子から緊急
連絡が入れば村上の部屋に突入すべく、待機しているU、二人の存在も気になります。

いろいろ気にはなるのですが・・、一番気になるのは・・、村上と咲江、男と女、二人がこれから
先、どう生きて行くのが正解なのか…、ということです。一先ず、咲江は夫や子供の下へ戻る道を選
びました。しかし、一方では、村上との生活も捨てがたいと未練を残している様子です。

おそらく・・、誰にも…、由美子にも、千春にも、もちろん筆者にも・・、二人の本当の幸せがどこ
にあるのか、判らないのです。

ここでは、先ず、時間を少し巻き戻して、この日の数日前、華麗で、隠微なドラマの幕が開く前に戻
すことをお許しください。ドラマの開幕に尽力した千春の動きをすこし追って見ることにします。咲
江の村上への思いや、千春の親友を思う気持ちが判るはずです。そして、村上と咲江、男と女、二人
の運命を決めるドラマ、由美子演出・主演のドラマがどのようにして企画され、実行に移されたか、
その様子も分かるはずです。

筆者は期待しているのです。男と女の間で起こる数々の人生ドラマで、時の流れと、人々の思いがそ
のドラマの行き先を、どのようにして決めるのか、もしかして・・、ドラマの渦中で演技をしている
当事者に、そのドラマの筋書きが見える瞬間が訪れるのか・・、もし筋書きが見える瞬間があるとす
れば、その筋書きを変える動きが、演技者に可能なのか…、もし・・、それが出来れば、人は・・、
自分の人生を、その流れを、自身で変えることが出来ることになるのです。

・・・これらの疑問への答えが、この章の終わる頃に、少しでも見えればいいと思っているのです。
皆様におかれましても、ぜひ皆様なりに、その答えを探していただければ幸いです。