フォレストサイドハウスの住人達(その20)
16 フォレストサイドハウスの住人達(その20)(641)
鶴岡次郎
2017/10/20 (金) 16:03
No.3066

「ところで・・、おじ様…、
ジョッキに、いっぱい出したら…、
その後は・・、どうするのですか・・・・」

若い二人をからかっていた咲江が、今度は矛先を年配の男に向けました。

「うん…?」

「まさか・・、そのまま・・、
捨てたりしないでしょうね・・・・
飛沫で・・・、
手だって汚れると思いますが…」

一瞬考えた後、年配の男は大声で笑い出しました。

「ハハ・・、
そう来たか…、
お嬢さん、隅に置けないね・・
ハハ・・・、そう来るとは、予想もしていなかった・・・
ハハ・・、参った、参った…・、ハハ・・・・・」

いつまでも男は笑っています。咲江も笑みを浮かべています。不審そうに二人を見つめている二人の
若者、どうやら、咲江が仕掛けた謎が解けていない様子です。

「気に入った…、
いいよ、お嬢さんのモノだったら、
喜んで…、飲み干すよ…
指に付いた飛沫だって、
こうして・・、
一滴も無駄にしないで舐め取るよ‥」

年配の男は、指を舐めながら、咲江を見ています。咲江の瞳が怪しく光っています。

「・・・・・・・・・」

謎が解けた若者二人は、そのあまりに過激な内容にびっくりしています。

「もちろん・・、
君たちだって、喜んで飲むだろう…・」

「ハ・・、ハ・・、ハイ・・、
喜んで…」

反射的に本音を出し、そして次の瞬間、真っ赤になって、咲江の視線から逃れるように下を向いてい
ます。

「ふふ・・・、
お若い二人には刺激の強い話ですよね‥
ゴメンナサイね・・・、
オジ様と、オバサンが悪いのよ・・
汚い話をしてごめんなさいね…」

「いえ、いえ・・、
お姐さんのモノなら…、
喜んで、飲ませていただきます‥‥
汚いなんて…、
少しも・・、思いません…・・」

比較的落ち着いている一人が真剣な表情で答え、もう一人の若者が、自分の意見もそうだと言わんば
かりに、盛んに頷いています。

「あら、あら…、
そう言っていただけると・・、
嘘でもうれしい…、ふふ…・・」

二人の若い男が緊張して答えている様子がおかしくて、咲江が声を出して笑っています。このやり取
りで、この場の雰囲気ががらりと変わりました。見かけは上品だけれど、この女は相当さばけてい
る…と、三人の男は思った様子です。不思議な親近感が、三人の男と、一人の女の間に醸し出されて
いるのです。