フォレストサイドハウスの住人達(その20)
14 フォレストサイドハウスの住人達(その20)(639)
鶴岡次郎
2017/10/17 (火) 17:39
No.3064
年配の男は少し酔っているのでしょうか・・・。初めて出会った女性に、こんな危ない言葉を出すほ
ど下卑た男でなく、むしろ品のいい男に見えるのです。普段の彼であれば、このような下品な言葉
を、酒場の女に向けてであればともかく・・、綺麗で、普通の主婦に見える咲江には、絶対吐き出さ
ないはずです。何かが変です・・・・。

先ほどの若い男もそうでした。初めて会った女性におしっこの話題を出したのです。普段はもっと理
性的な行動、発言が出来るはずです。男たちに何が起きているのでしょうか‥。

どうやら、咲江の体から発散される官能的な匂いが男達の体に作用し、男たちの中に、野生を呼び起
こしているように思えます。多分、彼ら自身も気が付かないのですが、男たちはかなり欲情し、彼ら
の言動が、かなりの部分でオスの本能で支配されるようになっているのです。このまま咲江の傍に居
て、彼女が振りまく官能の嵐に巻き込まれていると、男たちは徐々に理性を失い、完全に野生のオス
に戻ることになるでしょう・・・。

年配の男の下品な戯言を聞いて、一番、動揺しているのは、当の年配の男でなく、咲江でもなく、ま
だ完全には、理性を失っていない二人の若い男達です。

綺麗な咲江を汚い戯言で汚したことが、若者には我慢できないのです。戯言を発した年配の男への怒
りもありますが、この場に居ながら、何もできないわが身のふがいなさに、若い二人は怒り、焦って
いるのです。機転の利いた言葉でこの場の雰囲気を何とか治めたいと思っているのですが、焦れば焦
るほどいい言葉が浮かばないのです。

次の瞬間、咲江の予想外の反応に二人の若い男は救われるのです。

「そうですか…、
そのジョッキにですか・・、
おじ様・・、
いいんですか、そんな危ないこと言って…」

妖艶に燃える瞳を年配の男に向けています。男達は、その瞳を見て、一瞬たじろいでいます。

「もしかして・・、
おじ様・・、
他の女性に、そんなこと・・、
無理やり、やらせた経験があるのでしょう…」

いたずらっぽい笑みを浮かべて、年配の男の顔を覗き込んでいます。

「ハハ・・・、
バレてしまったか…・
勿論、初めてではないよ・・、
かなり昔…、
そんな遊びをしたことがある…・」

この言葉で、皆の顔に笑顔が戻ってきました。若者たちはほっとしています。

「そうでしょう…、
おじ様を見ていて、危険な人・・、
この方・・、かなりの遊び人だと思いました・・」

「遊び人か…、
・・・で・・、
その遊び人が誘ったら…、
お嬢さんは・・・、どうするの・・」

「さあ…、どうしましょう…、
ジョッキに、したことはないので‥・・」

「ジョッキはともかく・・・、
人前で、したことはあるだろう…」

「ふふ・・・、
おじ様って・・、
どこまでも、いやらしいわね…」

「その口ぶりでは、経験があるようだね・・・」

「ふふ・・・、
ご想像に任せます…」

嫣然と笑っている咲江です。若者二人はぽっかり口を開けて、大人、二人の危うい会話に聞きほれて
います。