フォレストサイドハウスの住人達(その19)
12 フォレストサイドハウスの住人達(その19)(617)
鶴岡次郎
2017/08/28 (月) 11:16
No.3038

「親分はね・・・、
私のことなどより、仕事が大切なの…、
私を一人置いて…、
今頃は、仲間の親分衆と議論しているはずよ…、
朝まで、戻って来ないと思う…・」

朝まで戻って来ないと告げて、由美子は男を安心させるつもりなのです。

「さすがですね・・、親分は…・。
こんな時でも、組のことを考えておられるのですね…・」

由美子の誘いの言葉は聞こえなかったふりをしています。男は律儀な姿勢を崩さないのです。男の様
子から察知して、由美子はそれ以上は無理には誘いませんでした。そっと、前を合わせて肌を隠して
います。

「竿氏仲間から姐さんのすごい力を、常々聞かされていて、
ずっと・・、由美子姐さんにあこがれていました…。
今回、姐さんの演技を目の当たりにして・・、
本当に感動しました…・・」

男は竿氏だと名乗っているのです。どおりで強い精気を発しているはずだと、男の言葉を聞いて由美
子は納得していました。

「ふふ・・・、嫌ね‥‥、
どんな噂話か知らないけれど‥、
どうせ、ろくでもない作り話でしょう…
どんな話を聞いているの…・」

竿氏仲間の噂話ですから、由美子の体のことや、閨の技に関する話題だと判っていながら、由美子は
話題をそちらに落とし込みたいようです。慎重な態度を見せる男をその気にさせるつもりなので
しょう。

「女を困らせるヤクザのデチ棒を数本へし折った話とか…、
選び抜かれた性豪15人を手玉に取った話とか…、
ああ…、それと・・・、
ハワイ諸島での女神伝説など…、
一杯・・、聞かされています…・」

「嫌ね・・、
変な話ばかり伝わっちゃって…
体とアソコばかり立派な、スケベーな変態女だと思ったでしょう…・、
・・・で、実物を見て、どうだったの…・、
がっかりしたでしょう…・」

由美子にあこがれているという男の話を聞いて、満更でない様子で由美子は笑みを浮かべて、話題を
さらに進めるつもりのようです。

「みんなの話を聞いて、良家の奥様風だったら良いなと・・、
勝手に、想像しておりました…。
想像していた通り…、
いえ・・、期待していた以上に素晴らしい方でした…」

「あら・・、あら…、
大変な褒めようね‥‥、
うれしいわ…」

上機嫌になっている由美子です。

「私は・・・、まだまだ、半人前ですが・・
経験を積んで、早く一人前になって・・・、
由美子姐さんのお相手が出来るようになりたいと・・、
今日、姐さんを見て・・、改めて、強く思いました・・・」

直立不動に近い姿勢で、男はまじめな表情で答えています。由美子は今にも吹き出しそうな表情で
す。由美子を抱くことを目標に修行を続けると、男が公言しているのです。嫌な気分になるはずがあ
りません。

「判ったわ…、ありがとう…、
そこまで思っていただいて・・・、
私・・・、うれしい…・」

「・・・・・・」

由美子の言葉に男はまた頭を下げています。