フォレストサイドハウスの住人達(その19)
10 フォレストサイドハウスの住人達(その19)(615)
鶴岡次郎
2017/08/21 (月) 15:26
No.3036

舞台の上、由美子の相手をして、精根尽きて、その場で眠り込んでしまった男の体が数体横たわって
います。元気を失った股間を曝して、男たちは幸せそうな表情を浮かべて眠り込んでいます。嫣然と
微笑みを浮かべて、それぞれの男に優しい視線を送っています。精魂尽くして戦い、すべてを捧げつ
くした戦士に、女神が優しい祝福を与えているかのような景色です。

と・・、腰を下ろし、由美子は一人の男の股間に顔を寄せています、最後まで戦い抜いたあの男で
す。項垂れていますが、その威容はいささかも衰えていません、戦い抜いた男根は白い体液で覆わ
れ、芳香をあたりに発しています。少しの間、その香りを楽しんだ由美子は、そっと、唇を寄せ、
お礼と、お別れのキッスをしました。男は穏やかな表情を浮かべ、深い眠りに落ちています。

ゆっくりと立ち上がりました。その瞬間、由美子の体が大きく傾きました。さすがに腰が安定しない
のです。寝ている男の上に倒れ込みそうになるのを、とっさのひねりでかわし、由美子は態勢を整え
ています。今の動きで股間から液体が激しく流れ出し、由美子の脚を伝わり、畳を濡らしています。
脱ぎ捨てられている浴衣で畳をぬぐい、その浴衣を体に巻き付けています。誰が着ていたのかも判ら
ない、愛液で濡れた浴衣の、匂いも、汚れも気にならない様子です。

まだこわばりの残る股間の筋肉を引き締めて由美子は歩き始めました。ふらつきながら、濡れた裸体
のまま、由美子は歩いています。自室へ戻るのです。

気が付けば・・、由美子の視線の先、一人、二人、廊下を歩く人影があります、中には肩を組み
合っている二人連れもあります、会場にいたカップルたちが、それぞれの部屋に引き上げ始めている
様子です。足元をふらつかせ、肌は勿論、陰部も露出させて歩いています。濡れた浴衣を肩に掛けた
だけの由美子も同様です。歩くたびに股間から、コクコクと愛液と精液の入り混じった液体が流れ出
しています。誰も他人を気にする様子はありません。激しい乱交の後では、人々の羞恥心、好奇心は
一時的に消え去るでしょう。


自室でシャワーを浴び、全裸で椅子に座り、由美子は冷たい水で喉を潤しています。セックスショー
の興奮がまだ癒えないのです。体の芯で、未だ男を求めているのです。Uに抱かれるつもりで部屋に
戻ってきたのですが、彼はセックスショーにも顔を見せないで、数人の親分衆と組の運営のことで、
会議室で激論を交わしているのです。Uにとっては、総会はセックスを楽しむ場でなく、日ごろの懸
案事項を仲間の親分衆と話し合う、仕事の場なのです。

その時、ドアーをノックする者がいました。この時間、部屋へ訪ねてくる者が居るとすれば、仲間の
者か、ホテルのスタッフだと由美子は考えました。いずれにしても、うずめ火のように体の中で静か
に燃える情欲と戦っている由美子は応対する気になれず、返事をしないつもりで無視し続けていたの
です。しかし根気強く、静かに、ノックは続いています。

根負けしたのは由美子でした、けだるそうに椅子から立ち上がり、ゆっくりした動作で素肌にガウン
をつけて、覗き穴から来客の顔を確かめることもしないで、無防備にも、ドアーを大きく開けました。

中肉、中背で、取り立てて目立つところがない、ネクタイこそしていませんが、淡いスーツを意気に
着こなした40歳過ぎの、精悍な表情の男が立っていました。由美子の姿を見て、ちょっとびっくり
した後、微笑みを浮かべて、ゆっくり頭を下げました。由美子の知らない顔です。

この時初めて、由美子はあまりにも無防備な自分のふるまいに気づき、慌てて、乱れたガウンの前を
合わせていました。しかし、時はすでに遅かったのです。乳房も、もしかしたら黒い陰影もばっちり
とその男に見られたはずです。その男は、素肌にガウンとはっきりわかる由美子の妖艶な姿を見て
も、平然とその場にたたずみ、黙って頭を下げているのです。