フォレストサイドハウスの住人達(その18)
17 フォレストサイドハウスの住人達(その18)(603)
鶴岡次郎
2017/07/07 (金) 11:03
No.3022

「良かったよ‥‥、
人生最高のセックスだった…」

裸体を大の字に開いて、首だけ女の方に向けて男が声を出しました。

「私も…、
こんなに感じたことがない…」

女もまた、男に顔だけを向けて、微笑みを浮かべています。起き上がりたいのですが、体がしびれて
自由にならない様子です。男と同様、四肢をだらしがなく広げています。股間から、白い液体が流れ
出しています。その部分は激しい摩擦を受けたせいでしょう、ピンク色に変色して、痛々しそうに見
えます。

「正直言えば…、
昨日までは・・、
ここで・・・、
俺の・・、男の人生は終わりになると・・・、
そう思って・・、あきらめていた…」

「・・・・・・」

「散々好き勝手なことをやって来たから・・、
その付けが回ってきた…、
そう思って、あきらめることにした…・」

「・・・・・・・・」

天井を向いて、男がつぶやいています。女に話しかけているというより、彼自身に語り掛けているよ
うに見えます。

「奥さんが…、
いや・・、この瞬間だけは・・・
咲江と言わせてほしい…・」

「ハイ・・・・・・」

咲江が嬉しそうに頷いています。

一年以上男女の関係を続けているのに、村上は咲江と呼ぶことがないのです。人妻を愛人にしている
以上、決して破ってはいけない掟が村上の中には幾つか存在していて、そのいくつかの掟の中に、女
を奥さんと呼び続ける決まりがあるのです。

「咲江が・・・、
慣れない、恥ずかしい真似をして…、
俺を…、励ましてくれているのは判っていた…、
咲江には・・、随分と辛いことだっただろう…・」

「・・・・・・」

「正直に言えば、その咲江の気持ちさえ、重荷になっていた…」

「・・・・・・・」

実は・・、そのことを咲江自身も心配していたのです。傍にいる女が急かせれば、急かせるほど、男
は立たなくなるのでは…、心配していたのです。心配したとおり、咲江が見せるみだらな姿や、優し
い励ましの仕草が、村上にとって、心の負担になっていたのです。