フォレストサイドハウスの住人達(その17)
35 フォレストサイドハウスの住人達(その17)(586)
鶴岡次郎
2017/05/16 (火) 11:37
No.3001

「あまりにストイックな研究生活を続けた結果、
セックスに興味を持てない体になっていたの…・、主人は…」

「・・・・・・・」

坂上夏樹は性的不能に近い状態だったと・・、夫婦だからこそ知りうる情報を咲江は千春に告げてい
るのです。あまりに衝撃的な咲江の発言に千春はただ驚いて咲江の顔を見ています。

「長い間・・・、私を抱くことが出来ないでいた…・、
多分…、
千春以外の女がいくら頑張っても・・、
主人を立ち直らせることはできなかったと思う…、
これは間違いのないことだと思う…」

「・・・・・・・・」

「もし・・、あの部屋に千春以外の女が居れば・・・、
彼女が若くて、飛びっきり、きれいな娘(こ)でも・・・、
扉を閉めて、すごすごと、その場を立ち去ったと思う…。
知らない女を抱くことなど・・、
彼にはあまりにハードルが高すぎるから・・・」

「・・・・・・・」

千春はただ黙って聞いているだけです。咲江の発言は続きます。

「そうなれば、さらに大きな失意を・・・、
多分決定的なダメージを・・、彼は受けることになり・・・・、
私たち夫婦は崩壊へ向けて、転がり堕ちたと思う…」

「・・・・・・・」

咲江を見つめる千春の瞳に涙があふれ出ています。そこまで咲江が追い込まれていたことに千春は気
が付かないでいたのです。

「悔しいけれど・・、
私にはできないことを千春はやり遂げてくれた…」

「・・・・・・・」

千春は何も答えることができません。ただ、じっと咲江の顔を見ていました。咲江も静かな表情で千
春を見ています。

「あなたを抱いて・・・、
主人は男を取り戻したのよ・・、
完全に・・、凄いほどの男に変身した…・」

「・・・・・・」

こっくりと千春が頷いています。

「主人が女アサリを続けていることは知っている…、
でも・・、私を大切にしてくれるから、黙っている…、
ただ・・・、一つ・・・、心配なことがある…」

「・・・・・・・」

咲江が何を言い出すのか千春は気が付いていました。