フォレストサイドハウスの住人達(その16)
31 フォレストサイドハウスの住人達(その16)(551)
鶴岡次郎
2017/02/15 (水) 11:19
No.2958

「あまりに情けないことだから・・、
これだけは・・・、言いたくなかったのですが…、
それでは、お二人のご心配、誤解が解けないので、思い切って言います…」

ためらいながらも、千春が何事か告白するつもりのようです。何を言い出すのか見当がつかないので
しょう、不安そうな表情を浮かべ由美子と愛が千春の顔を見つめています。

「私…、夏樹さんが好きになってしまったのです…・
夏樹さんを鍛えるつもりが、
逆に、男の素晴らしさを彼から教えられた…、

彼に惚れこんでしまったのです…・・、
彼の体が忘れられないのです…・。
こうしていても、彼のことを思うとジーンときます…・」

「・・・・・・」

千春の一言で愛も、由美子もすべてを了解していました。女なら当然そうしたことになるのは予想で
きたはずですが、千春に限って・・・、ソープ店に勤める、いわばその道のプロの千春に限っ
て・・・、そんなことにはならないとの思いが愛にも、由美子にもあったのです。千春も普通の女で
あったと由美子と愛は納得していました。

「親友の旦那様を本気で欲しがるなんて…・、
女の風上にも置けませんよね……」

「・・・・・・・・・」

愛も由美子も何も言えなくて、千春の表情を見守っています。

「でも…、この気持ちはどうにもならないのです…、
夏樹さんに抱かれたいのです…、
あの強くて、太い・・・、彼がほしいの…・」

「・・・・・・・・」

親友の夫を寝たことによる罪の意識は千春の中にほとんど存在しないのです。夏樹の肉体への強いあ
こがれと燃え上がる欲望を千春は抑えきれないのです。夏樹に恋している気持ちはもちろんあるので
すが、その気持ちはるかに超える強い体の要求が千春を悩ませているのです。

心の悩みよりも、燃え上がる女の欲望を抑え切れないのです。由美子には勿論、愛にも、千春のつら
さ、苦しみが手に取るように判るのです。二人の女は当惑しながらも、優しい瞳で千春を見つめてい
るのです。

「咲江はすっかり変わりました…、
何も言いませんが・・、私にはよく判るのです・・。

昼間、私と会話していても、心ここにあらずといった…、
どこか気がぬけた様子を見せるのです・・。

夜の疲れと、全身に漂う快楽の余韻で、
夢うつつの状態になっているのだと思います…」

親身に咲江の身の上を心配していた以前と比較して、千春の様子が少し変です。言葉の端々に少しと
げがあるのです。

「彼女の表情、腰の動きを見ていると判るのです…。
毎日、いっぱい抱かれているに違いないのです・・、
太いモノで、毎日、奥の奥まで突き抜かれているのです…

歩く時だって…、脚が閉まらない様子なのです…、
私もその経験があるので分かりますが…、
太いモノをたっぷりいただくと、
股にモノが挟まった感触が残り、うまく歩けないのです・・」

親しい女同士の会話ですから、かなり露骨に、言っています。それにしても、千春の言葉には咲江へ
の憎しみさえこもっているようです。

「もし・・、
まだ・・、村上と切れないと言うのなら・・、
私が許しません…
夏樹さんほどの男に毎日抱かれていて・・・、
不平を言うなんて…、許せません・・・」

千春が語気を強めて言い切っています。その語気の強さに愛と由美子が驚き、そして、思わず笑い出
しています。

「千春さん・・・、
夏樹さんに少し入れ込み過ぎていない…」

愛の言葉に千春が顔面を少し赤く染めています。