フォレストサイドハウスの住人達(その16)
30 フォレストサイドハウスの住人達(その16)(550)
鶴岡次郎
2017/02/14 (火) 10:51
No.2957

「今更後悔しても始まらないけれど…、
私たちは…・、
いくら弁解しても取り返しのつかない過ちを犯してしまった・・・・、
千春さんに大罪を犯させてしまった…・、

でも・・、これだけは言いたい…、
悪意からその罪を犯したわけではない・・・、
咲江さんを救うには、この方法に一番効果があると思ったのが発端だった・・。

あの時、千春さんが親友を思う気持ちは本物だった・・・、
あなたのその気持ちに動かされて、私たちも協力を申し出た・・。
でも・・、もっと・・、よく考えるべきだった…、

お願いだから・・、親友の旦那を寝取ったなどと・・、
自分自身を責めることはしないでほしい・・・、
それでは、私たちは・・、あまりに哀れで、悲しい・・・」

切々と由美子が訴えています。千春を慰めるというより、由美子自身の心の内を語っている様子で
す。

「今、私たちにできることは・・・、
このことを出来るだけ早く忘れることよ・・、

咲江さんがこのことに気づいていないのなら・・、
お墓の中までこの秘密を持っていきましょう・・、

そして・・・、
難しいことだけれど・・・、
千春さん・・・、

忘れよう・・、
夏樹さんに抱かれたことは忘れよう…・・」

千春の苦しみが判るのでしょう、由美子が必死で言葉を尽くしています。

由美子の言葉を聞いても千春の表情はさえません。千春の表情を見て、予想以上に深刻な状態だと由
美子は思いました。もし、由美子が千春の立場に立てば、親友の旦那と寝ても、これほど悩まないで
前を向くはずだと思っているのですが、若い千春にそこまでの割り切りを求めるのは無理だったと、
またしても由美子は自身の見通しの甘さを責めていたのです。そして、さらに言葉を出そうとしたの
です。その由美子を抑え込むように千春が口を開きました。

「由美子さん・・・、
そうじゃないのです…、
由美子さんはすこし誤解をしています…。
私…、夏樹さんと寝たことを後悔などしていません…
彼と寝たことを恥ずべき行為だとは思っていません・・」

「エッ・・・・」

「親友の旦那に抱かれたこと、そのこと自体を・・、
私は特に悪いことをしたとは思っていません…、
そうすることが・・・、
親友を窮地から救いだす唯一の手段だと言った由美子さんの言葉を・・、
今でも、信じていますから・・」

「・・・・・・・・」

雲行きが怪しくなり、由美子と愛がびっくりした表情で千春を見ています。