フォレストサイドハウスの住人達(その16)
26 フォレストサイドハウスの住人達(その16)(546)
鶴岡次郎
2017/02/07 (火) 16:24
No.2953
「あっ…、大変なことに気が付いた…
彼と私・・、W不倫の関係だ・・・!」

主婦である千春と、妻子ある坂上夏樹が、普段の生活の中で接触することはW不倫になり、自由に抱
き合うことができないことにようやく千春は気が付いたのです。

「そのことは私も考えた…、
お店で抱かれる方法しかないよ・・、
夏樹さんがお客になって、お店に行くことになる・・」

さすがに由美子です、すでに千春の心配事の答えは見つけ出していたのです。

「そうだね・・、それしかないね…」

愛も同意しています。

「お店だと、商売気が先走って、楽しみが半減するけれど…、
まあ・・、仕方ないね・・、我慢するしかないか…」

この方法しかないと千春もあきらめたようです。

こうして、ソープランドを坂上夏樹の訓練道場にすることが決まりました。この方法であれば、さほ
ど苦労なく坂上は仕事の合間を縫って、千春を抱く機会を作ることができますし、千春も商売の延長
線上で、坂上に抱かれることができるので、長期戦になっても二人の秘密を保つことはそんなに難し
くないのです。

ただ・・、この計画を実行するに際し、一番初めに出くわす難問は、坂上をソープに向かわせること
です。おそらくソープ店はおろか、風俗街へ足を踏み入れた経験のない堅物の研究者なのです。坂上
夏樹を口説き落として、自らの意志でソープ店に向かわせることは難問です。

「千春さんの旦那様にお願いできないかしら…、
坂上さんを誘って、ソープへ一緒に行ってほしいの…
そこで、偶然、千春さんと遭遇することにすればいい…
その後は・・、千春さんの腕次第ね…・」

坂上をソープに誘い込む役割を千春の夫、浦上三郎に演じてほしいと由美子は提案しているのです。
浦上三郎の最愛の妻、千春が勤めているソープ店へ、坂上を誘って、そこで妻を抱かせる手配の一切
を、千春の夫である浦上三郎にやらせる提案なのです。普通ではありえない人選です。それでも由美
子は迷わず浦上三郎を指名したのです。

「由美子さん・・・、
何てこと言うの…」

愛が口を大きく開けて、驚いた表情で由美子を見て、そして千春を見ています。

「家の旦那にその役割を与えるのは名案だと思う…、
商社の営業マンでいろんなものを売り込んでいるから・・、
坂上さんをソープへ誘い込むことなど簡単だと思う…」

「千晴さんまで・・・、
そんなこと言って…
どうしてそうなの・・、
お二人とも、どうして・・・・、
ことセックスの問題になるとそうルーズなの…、
そこではないでしょう…、
問題は・・、
旦那の営業力の問題ではないでしょう・・」

たまりかねた愛が口をはさんでいます。

「人妻が他人に抱かれるのよ・・・・
絶対、夫には秘密にすべきことでしょう…、
それが・・、その夫に二人の出会いを作らせようとしているのよ
いわば、妻の浮気をその夫に手伝わせようとしていることなのよ・・
ありえないことでしょう…・」

愛の怒りは本物のようです。それでも由美子は笑みを浮かべて聞いています。千春は愛の怒りが収ま
るのをじっと待つ風情です。

「由美子さん、少しおかしいよ・・、
千春さんも千春さんよ・・、
いくら由美子さんの提案でも・・、
それはダメだと言っていいのよ・・」

愛が猛反対しています。愛と由美子が笑っています。

「愛さん・・、いいのよ・・・、
私たち・・、ちょっと変な夫婦なのよ・・、
彼を説得して、やらせる…、
彼以外に、この役をこなせる人はいないと思う…・」

千春もまた、夫、三郎が坂上の説得役に指名されたことに異論を唱えないのです。それどころか、彼
以外にその役はこなせないと広言しているのです。千春の言葉を聞いて由美子は微笑みを浮かべ、何
度も頷いていました。

千春の言葉で愛はなんとなく千春夫妻の奇妙な関係が理解できたようです。憮然としていますが、
千春がその気ならばと、あえて反論しないつもりのようです。