フォレストサイドハウスの住人達(その15) 
23 フォレストサイドハウスの住人達(その15)(517) 
鶴岡次郎
2016/10/30 (日) 11:21
No.2918

沈滞したムードを由美子の声が吹き飛ばしました。

「何を言っているの・・・、
その考えは間違っているよ・・・、

浮気女の罪悪感なんかに振り回されては・・、ダメ・・・、
浮気女の罪悪感なんてものは・・、底の浅いものだよ・・・、
一見、深刻そうに見えて、その実、一過性のモノよ・・・、
時間が経てば跡形もなく消えるものだよ…
特に女の罪悪感なんて・・、長続きしないのが相場なの…」

由美子が断定的に発言しています。愛は勿論、千春もその意見を聞いてうれしそうな表情を浮かべて
います。実のところは、由美子のような歯切れの良いレスポンスで不安を一掃してほしいと千春は期
待していた様子なのです。

「浮気女の心に巣食っている罪悪感は・・・、
浮気相手とすんなりと別れることが出来れば・・、
殆どあとかたなく消えるものよ・・・、
だから、咲江さんの場合も、それほど気にする必要はない…
散々、他の男と遊んでいるこの私が言うのだから信用してほしい…」

由美子が断定的に言っています。それでも、二人の女は半信半疑の様子です。

「まだ信用できない様子だけれど、嘘じゃないのだから・・・、
私の経験から言って・・、
浮気女が罪悪感に悩むのは、浮気相手に惚れ込んでいる間だけのことなの、
単なる浮気だのに、体の関係を続けると、
互いの深い愛がその中に存在すると思い込んでしまうのね…・。
そうなると、夫や家族への罪悪感にさいなまれることになる。

浮気相手のことを単なる性欲処理用の男か、
通りすがりのセックス相手と考えることが出来れば、
それほど罪悪感に悩まされることはないのだけれどね・・」

自身の経験を語る口ぶりで由美子が話しています。

「一年余り、村上の手管にどっぷりつかりこんだ咲江さんは、
もう・・、彼なしでは生きて行けないと思い込んでいるに違いない・・。
頭では彼から離れたい、別れるべきだと思っても、
体が意志に反して彼を求めるのよ・・

セックスと愛情を切り離すことが出来ないのが女の本性で、
夫とは違うやり方で抱かれればその男に魅力を感じ、
夫が授けてくれない深い喜びを与えてくれる男こそ、
真の伴侶だと考えるようになる・・。
咲江さんは村上を運命の人だと考えるようになっているかも・・

彼に抱かれた生々しい情感を、
彼への愛情だと咲江さんは考えているはず・・、
そうなると・・、彼女の罪悪感は最高に燃え盛ることになる…

千春さんが今、咲江さんの中に見ているのは、
今を盛りに燃えている最悪状態の罪悪感なの…、
咲江さんが苦しむのを見て、こんなに苦しむのなら・・、
今の生活を捨てた方が良いと、傍で見ている者は思うのよ・・・、

もう少し待ってご覧・・、
そんなことがあったかしら・・と、
彼女が言いだすようになるから・・
同情をして損をしたと・・、きっと思うから…」

「・・・・・・・・」

由美子の情熱的な話はまだ続くようです。愛も、千春も驚きの表情を浮かべ、黙って聞いています。