フォレストサイドハウスの住人達(その15) 
21 フォレストサイドハウスの住人達(その15)(515) 
鶴岡次郎
2016/10/28 (金) 14:18
No.2916

突然・・、千春がその場に両手をついて愛と由美子に向かって深々と頭を下げました。

「難しいのは良く判っています・・。
それでも、今私が頼れるのは由美子さんと愛さんだけなのです。

人一倍責任感が強く・・、今まで浮気どころか、
他の男に気を許したこともない咲江を村上から救い出したい・・。
できれば彼女の家庭を壊さないで、すんなりと別れさせたい…、

同時に、彼女の心に巣食っている大きな罪悪感も少しは取り除きたい・・、
別れた後も・・、罪の意識を引きずるようでは、
咲江があまりに可愛そうだと思いますから…。

これが私の願いです…、勝手なことばかり並べましたが・・、
力を貸してください・・、この通りです、お願いします…・」

千春が由美子と愛に訴えています。

「千春さんの気持ちは良く判っている・・、
私たちで出来るだけのことはやりましょう…。
これから先は、どんなことがあっても・・・、
私と由美子さんは咲江さんと千春さんの見方だよ・・」

愛が千春を見て宣言しています。涙ぐみながら千春が頭を下げています。由美子が何度も頷いていま
す。

「一年以上続いた二人の仲を割る方法・・、
この問題の解決策はそんなにたくさん無い・・、
一つの考えは、ご主人にすべてを打ち明けること・・・、
これで、全て問題は解決する…・」

由美子があっさり言っています。

「でも・・、そんなことをすれば・・・、
最悪・・、離婚となり、家庭が崩壊することになる・・」

愛が心配そうに答えています。

「そうね・・・、離婚の可能性は高いね・・・」、

由美子が冷たく言い放っています。

「私なら・・、夫に告白する道は選ばない・・
割り切って、一生その秘密を隠し続ける…」

千春が言葉を挟んでいます。

「私も千春さんの考えに一票入れる・・・」

愛がすかさず千春の意見に賛成しています。

「女って・・、誰もが・・、
秘密の一つや二つ隠し持って生きているし・・・、
それに、秘密を隠し続ける才能も備わっていると思う・・・、
咲江さんも秘密を抱えて生き抜くことができるはず…、
いえ・・、やり抜くべきよ…、
私たちがサポートすれば、何とかなると思う・・・」

愛が珍しく口調を強めて主張しています。

「決まりね・・・、旦那様に告白する選択肢はないと考えよう・・、
その前提で、これから先、彼女の身の振り方を考えよう・・・」

どうやら最初から告白する選択肢を由美子は考えていなかった様子です。愛と千春の意向を確かめる
ために、あえて由美子は告白の手段を話題に挙げたのです。二人が告白案に反対だと判ると、あっさ
りと告白案を捨てています。愛と千春が嬉しそうに大きく頷いています。