フォレストサイドハウスの住人達(その15) 
20 フォレストサイドハウスの住人達(その15)(514) 
鶴岡次郎
2016/10/27 (木) 14:33
No.2915

しばらくの沈黙を破ってゆっくりと千春が口を開きました。先ほどまでとは異なり、どこか晴れやか
な表情です。

「なぜあの咲江が、旦那さんや子供のことを忘れ、
50男の村上に走ったのか・・、
どう考えても、その理由が判らなくて・・、
彼女も私と同じ浮気性なのだと疑ったこともあったけれど・・・、
由美子さんの解説を聞いて、なんだかすっきりした…。
免疫のない咲江がとんでもない男に偶然出会ってしまったのね・・、
男のテクニックを咲江は男の真心だと思い込んでいるのね・・
何も知らない、初心な咲江が色地獄に迷い込んだのね…」

「そうよ・・、
子供のように純粋な気持ちを持った咲江さんだからこそ、
村上の餌食になり、抜き差しできないところまで行ってしまったのよ…
村上も・・、彼は彼なりに・・、真剣に・・、
咲江さんの思いに応えようとしているのよ…」

由美子が冷静に答えています。

「村上のような男に遭遇すると・・、
女なら・・・、
誰でも・・、確実に落ちると思う・・、
彼の罠に落ちない女が居たとしたら…、
そんな女は・・、おそらく・・」

言い過ぎたと思ったのでしょう、そこで由美子は言葉を飲み込みました。

「それで・・、
村上は咲江さんをどうするつもりかしら・・・?
ずっと情婦にしておくつもりはないでしょう…、
どこかで働かせて金を掴むつもりかしら…」

愛が質問しています。

「いえ・・、そんなことは考えていないと思う・・・、
村上はそれなりに誠実な男だと思う・・、
それはその後の彼の付き合い方を見ればわかる…、
咲江さんを落として、金にしようと思っているのなら、
もっと早い段階で、汚い手を使ったと思う・・」

「確かにそうね・・・」

「彼は・・、本気で咲江さんに惚れていると思う・・
・・と言っても、一般の男が女に惚れるのとは少し違うけれどね・・・、
少なくとも、咲江さんと一緒にいる間は・・
彼女を心から愛していると思う・・・」

由美子の説明に愛も、千春も頷いています。

「心を通い合わせた二人が、ずるずると付き合い続けて、
一年経った・・
二人とも、この先どうするのか決めていないと思う…
多分・・、自分たちでは決められないのだと思う…・」

「なるほど・・・
愛の形は人それぞれと言うことね…・、
でも・・終着点のない愛って・・、どこか危険な気がする…」

愛が心配そうに言っています。

「そうなのよ・・、
二人に・・、どこへ行くつもりなの・・と、
無理に結果を求めると・・、
とんでもない処へ行ってしまう危険がある・・」

大きな吐息を吐き出し、由美子が答えています。

「・・・・・」

言葉なく千春が大きなため息を吐き出しています。

「二人の内どちらかでも遊び心が多ければ、
なんとか手の打ちようはあるのだけれどね…、
咲江さんは勿論だけれど、
遊び人である村上までかなり真剣だから困るのよ…」

由美子が嘆いています。