フォレストサイドハウスの住人達(その14)
9 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(464)
鶴岡次郎
2016/05/25 (水) 14:02
No.2860
「総会を取り仕切った支部が、Uさんの居ない私を憐れんで、セックスの相手役として一人の男を私
に張り付けてくれたのよ・・。
もう・・、気が付いていると思うけれど、その男が佐王子さんだった・・」

「・・・・」

由美子が冷めた目で千春を見て、さらりと説明しています。無感動に千春が頷き、愛一人がおろおろ
して由美子と千春の表情を交互に探っているのです。


「総会で総組長代行の大役を果たしたことで私はくたくたになっていた、男に抱かれるより、ゆっく
り休みたい気持ちの方が強かった。だけど、せっかくの接待をむげに断ると角が立つし、例年、総組
長のUさんと情婦である私がセックスショウを見せるのが宴会の出し物の一つになっていたから、そ
の日も、形だけ、一度だけ、宴会場で皆の見ている前で、スポットライトを浴びた中で、体を開いて
彼を受け入れることにした・・」

千春の顔を真正面から見て、由美子がしっかりした口調で告げています。千春はただ黙って頷いてい
ます。

「ごく普通のセックスだった。それほど深く逝かなかった…。
交わりが終わった後、彼にお礼を言って、部屋に戻って早々と寝てしまった。
そして翌日の早朝便で東京に戻ってきた・・・」

「彼と接して・・・、
一度きりで止めてしまうんなんて…、
それはあり得ないと思います…
感じなかったのですか・・・、
もっとやりたいと思わなかったのですか…」

千春が反論しています。佐王子に抱かれていながら由美子が感じなかったことが許せないと思ってい
る雰囲気です。佐王子の男性力が否定されたと受け止めているのかもしれません。

「それなりに感じたわ・・・、
でも・・、記憶に鮮明に残るほどだったかと聞かれると・・・、
申し訳ないけれど、それほどでもなかったと・・、
そう言う以外に言葉はない・・」

「そうですか・・・、
当事者の由美子さんがそういうのだから仕方ないですね・・・、
・・・で、どのくらいの時間・・、
彼とは絡み合っていたのですか…」

「どのくらいといっても…」

親しくなったと言っても、今日知り合ったばかりですから、普段なら決してそんな破廉恥な質問をし
ないはずの千春がかなり微妙なところを突いてきています。由美子はすこし困っています。愛は、む
しろ面白そうに二人のやり取りを見ています。どうやら千春は平常心を少し失っている様子です。

「そんなに長くなかったわ・・・、
2分か・・、長くても3分で、二人とも終わったと思う…」

「おかしい・・、
彼の場合、どんなに急いでいても・・・、
30分以上は攻めてくるのが普通・・、
数分で終わるなんて、考えられない…
そんな軟な佐王子さんではないはず…・・」

血相を変えて千春が由美子に詰め寄っています。千春の迫力にたじろいだ由美子は返事ができない様子です。