フォレストサイドハウスの住人達(その14)
6 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(461)
鶴岡次郎
2016/05/22 (日) 17:00
No.2857

「セックスを神聖な行為だと私たちが考えていると言いましたが、その反面、普通の人に比較する
と、私たちは人前で男女の交歓をすることをそんなに恥ずかしいことだと思わない。人前でも誰はば
かることなく、キッスをしたりする者が多い・・。それで、一般の人から見れば、組の中の男女関係
はかなり乱れていると思われることになる。シロクロショウに出るなど、朝飯前だと誤解されること
になる・・」

由美子がしんみりと語っています。

「由美子さんの仲間は本能に、より忠実に生きているのね…、
うらやましいことだと思います…」

千春が本当にうらやましそうに言っています。

「本能に忠実であるのは確かね…。
もっと言えば、何が人生で大切か、
その価値観が一般の人と少しずれているのかもしれない・・・
それにしても・・・、
私たちの生き方を知って驚いたり、軽蔑したりする人は多いけれど、
その生き方をうらやましいと言ったのは千春さんが初めて…」

由美子が笑って答えています。千春の考え方、感じ方に親近感を覚え始めているのです。

「少し説明させていただくと、私たちの仲間は女も男も自分自身の見かけの魅力を磨くことにかなり
時間を割くのよ、接客商売だし、身を飾ることが好きな者が多いせいかもしれないけれど・・・、
いわゆる色っぽい男や女が私たちの世界に多いのはみんなが努力している結果だと思う。

でも、一見乱れているように見える私たちのセックスに関していえば、他の人が思っている以上に秩
序が保たれていると思う、特に夫婦者の浮気にはかなり厳しいの、浮気の内容次第では組から追放処
分になることもある。それで、乱れているようで、案外秩序が保たれているのかな・・」

「まあ・・、人として当然と言えば当然だね・・・、
乱れているように見えて、芯はしっかり押さえているって言うことね・・」

由美子の説明に愛が解説を加えています。千春が深々と頷いています。

「セックスに関して言えば、私たちは旅先で雑魚寝することが多くて、必要に迫られて、大部屋で夫
婦の営みをすることになるの、そんな時、傍の者は二人を見ないようにするか、自分たちも負けない
ように夫婦の営みを開始することになる。だから仲間内では、どの女が大声を出すとか、どの男のモ
ノが並外れて大きいとか、そういった会話が自然と出るようになっている・・・。他の社会ではあり
えないことよね・・・、女たちでさえそんな会話に慣れていて、会話の中に入っていくこともあ
る…・」

「おおらかなのね…」

「おおらかと言えば、おおらかなのかな…、
でも・・、こうした生活に一般の人が慣れるにはそうとう時間がかかるのよ・・・、
時々、若くもない素人がこの社会に逃げ込んでくることがあるけれど、
どうしてもその生活に慣れることが出来なくて、逃げ出す人もいる・・」

由美子がしんみりした表情で説明しています。逃げ出した仲間たちのことを思い出しているので
しょう。