フォレストサイドハウスの住人達(その14)
38 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(493)
鶴岡次郎
2016/09/05 (月) 14:44
No.2891

しばらく静寂が続きました。女たちはそれぞれ自身の心の中を覗き込み、いろいろ考えている様子を
見せています。やがて・・、由美子がゆっくりと口を開きました。

「夫婦の仲は、何が正解で、何が間違っているか、
人それぞれと言うことかしら…、
私のようにみだらな女でも妻として夫は認めてくれている…。

ありがたいと感謝はするけれど・・・、
私が間違っていると人から言われると反論したくなる…。

私たちの夫婦仲を考えるのは後にして・・・、
話を佐原さん夫妻の事件に戻してもいい・・・」

由美子の言葉に、にっこり微笑み、千春がこっくり頷いています。

「私の想像だけど…、旦那様の秘密を偶然パソコンの中に見つけた幸恵さんは、そんなに悩まない
で、直ぐに旦那様好みの女に変身する決意を固めたと思う・・。
しかし、奥様育ちの幸恵さんにはSM遊戯を学ぶ方法など判るはずがない…。
そこで千春さんを思い出したのだと思う・・・」

千春が軽く頷いています。由美子の想像が当たっているのです。

「自分よりかなり若いけれど、その道で苦労している千春さんなら、
きっといいアイデアを出してくれると思ったのね・・」

愛が口を挟んでいます。

「その通りです・・、
突然訪ねてきて、大切な相談があると言った・・・。
秘密のビデオを見せてくれて…、
ソープ嬢になりたいと告白した・・・」

千春が答えています。

「・・・で、
ハイ・・、判りました、協力しましよう・・と、答えたの…?」

愛が真剣な表情で質問しています。

「冗談言わないで・・、
愛する旦那様を思ってのこととはいえ・・、
一歩間違えば、夫婦仲が破滅する危険な行動です・・・、
そんな危険な行為に同意するわけがありません…。
私はその場で断り、思い直すように幸恵さんの説得にかかりました」

「・・・・・・・・」

由美子も愛も黙って聞いています。

「しかし…、幸恵さんの決意は固かったのです・・。
私には迷惑をかけないから、お店を紹介してくれの一点張りです・・、
それで、保さん・・、ああ・・、佐王子さんに相談すると約束しました。
幸恵さんは随分と喜んでいました・・・、

私に頼ったのは、佐王子さんを紹介してほしかったからだと思います。
私は私で・・、佐王子さんの口から、その道の恐ろしさを語ってもらい、
幸恵さんの決意を変えさせるつもりで、幸恵さんの思いを彼に伝えることを約束したのです・」

「・・・・・・・・」

何か質問したそうな様子を愛が見せたのですが、由美子が口を開かないのを見て、ここは黙って聞く
気になった様子で、神妙な姿勢を見せています。