フォレストサイドハウスの住人達(その14)
37 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(492)
鶴岡次郎
2016/08/25 (木) 12:09
No.2890
一方、由美子は冷静で、微笑みを浮かべて千春の説明を受け入れているのです。そんな由美子を不審
そうに千春が見ています。

「由美子さん・・、あなたにとっては・・・、
幸恵さんの発想と行動は意外なものではないようですね・・、
もしかして・・、この経緯を知っていたのですか…・・」

「いえ・・、初めて知りました…、
でも・・、幸恵さんの発想と行動に私は共感できるのです。
千春さんの説明を聞きながら・・・、
もし・・・、私が幸恵さんの立場に立てば・・・、
私も同じように考え、同じ行動をしただろうと・・・、考えているのです・・」

「ああ・・・、そういうことですか・・・、
素晴らしいことですね・・・
由美子さんは幸恵さんと同じ発想が出来るのですね・・・・、
私は違いました…・、
初めて幸恵さんの話を聞いた時、
私は怒りで我を忘れ・・、
直ぐ、旦那様と別れなさい・・!・・・と、言いました・・・・」

「私も・・、
きっと千春さんと同じ反応をすると思う・・・」

愛が千春の言葉に同意を示しています。

「もし・・・、
幸恵さんが・・、私や、愛さんと同じ反応を見せていたら・・、
幸恵さん夫婦の仲はどうなっていただろう・・・」

千春が呟いています。

「たぶん・・・、夫婦仲は完全に崩壊し、
佐原さんも、幸恵さんも、今頃は、一人寂しく暮らしていると思う・・」

愛が千春のつぶやきに返事をしています。

「だとしたら・・・、
幸恵さんや、由美子さんの判断が正しいことになる…」

千春が答えています。

「必ずしもそうだとは言えない…、
夫の裏切り、秘密を知った時、幸恵さんは当然、絶望し、怒りでいっぱいになったと思う。
でも・・、旦那様を愛する気持ちが彼女を立ち直らせたのだと思う・・」

由美子が解説しています。

「・・と言うことは・・・、
私たちの夫への愛情が少ないということかしら・・・、
ふふ・・・・・」

愛がすかさず由美子の言葉に絡みついています。からかっている様子で笑みを浮かべているのです。

「そう取るのは勝手だけど…、
夫への愛情が強すぎて、裏切った夫をどうしても許さない女だっているはず、
むしろ、その方が女として自然で、私や幸恵さんのように冷静に対応する女を、
男性は敬遠するかもしれない・・・」

笑いながら由美子が答えています。

「人それぞれ、その時の状況に応じて・・
いろんな反応をするものなのね…・・
何が正しくて、何が間違っているか・・・、
人それぞれ、その立場と、置かれた状況で、判断が分かれるのね…」

千春が呟くように言い、そこで口を閉じています。その場に静かな沈黙が広がっています。女三人、
それぞれの思いで自身の胸の内を確かめている様子を見せています。