フォレストサイドハウスの住人達(その14)
36 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(491)
鶴岡次郎
2016/08/23 (火) 15:27
No.2889

「当時、幸恵さんはパソコン教室に通い始めた頃で、まだ彼女専用のパソコンを持っていなかった
時、夫の留守中、彼のパソコンに単純に興味を持ち、教室で教えられた通り操作して、パソコンの中
にあるファイルを偶然開くことに成功したのです。まさか妻がパソコンを操作できると佐原さんは
思っていませんからパスワードさえ設定していなかったのです・・・」

千春の説明に由美子と愛が軽く頷いています。どうやらここまでの経緯を二人は承知している様子で
す。

「やはりそうでしたか・・、
パソコンの中にある動画とか写真を見て、
幸恵さんは夫の秘密を知ったのですね…・
佐原さんもその疑いが一番濃いと言っていましたが・・・・、

話を聞いた私たちも、その可能性が高いと思ったのですが、
幸恵さんはパソコンを操作できないと聞いていましたから、
どのようにしてその秘密を知ったのか、不明だったのです…・・」

由美子が納得の表情で口を開いています。

「最初、幸恵さんの失踪原因には全く心当たりがないと佐原さんは言い張っていたのですが、私たち
とのおつきあいが深まるにつれ、心許すようになり、自身のSM趣味を告白してくれたのです。そし
て、もし・・、幸恵さんが何らかの手段で、または偶然の機会を得て、夫の秘密・・、変態的なSM
趣味・・、の存在を知れば彼女が怒りと失望から失踪しても不思議はないと明かしてくれたので
す・・」

由美子の説明に千春が頷いています。

「確かに・・、パソコンの秘密ファイルを覗いたことが、幸恵さんが失踪を決意したトリガーに
なったことは間違いないのですが・・・・、失踪を決意したのは、佐原さんに対して怒りや失望を抱
いたからではありません・・」

「エッ・・・・、
怒りや失望から、夫が嫌になり、失踪したのではなかったの…?」

愛がびっくりして大きな声を出しています。

「夫の悪趣味を知って幸恵さんが怒りや失望から失踪したのかとの質問であれば・・、
それは間違っていると言えます・・・」

「そうなの…、
何年も尽くしてきた夫に裏切られ、
悪趣味な夫の行為に嫌気がさして・・・
何もかも、どうでもいいと思うようになり・・、
それで・・・、自棄になって、ソープ嬢に落ちたのかと思っていた…・」

意外な事実を知り、愛が驚いています。一方、愛ほど驚いた様子を見せないで、由美子は何か物思い
に耽る様子です。

「では一体・・・、何が幸恵さんを失踪させたの…、
素人の幸恵さんを突き動かし、
ソープ嬢に身を落とす決意をさせたのは何なの・・・・?」

愛がほとんど叫ぶように問いかけています。

「パソコンの中でSM遊戯に溺れこんでいる佐原さんを見て、
彼を軽蔑したり、彼のやっていることを幸恵さんは非難したりしなかった…。
それどころか・・・、
彼がそんなに溺れている遊戯であれば、それをもっと詳しく知りたい・・、
できることなら・・・・
彼女自身もその遊戯に加わり、彼を喜ばせ、彼と一緒に楽しみたい・・、
そう思ったのです・・・・」

「・・・・・・・・」

千春の言葉に愛が絶句しています。それほど大きな衝撃を受けたのです。

「う・・・・ん・・・・、
素晴らしい・・・、素晴らしい発想ね・・・、
私・・・、そんな発想が出来る幸恵さんが好きになってきた…・」

愛が手放しで幸恵を褒め、由美子も笑みを浮かべて頷いています。

「男たちが思うほど、女はSM遊戯に興味を持たないものだけれど・・・、
愛する夫のためなら、幸恵さんは自分を犠牲にすることなど、気にもかけないで、
夫の趣味に付き合うと決めたのね・・・」

愛が興奮して話しています。

「その通りよ・・・、
旦那様と一緒に遊ぶため・・、夫を喜ばせるため・・、
SMクラブの女と同じテクを身につけたいと幸恵さんは思ったの・・」

「そこまでやるの…!
それで・・、ソープに勤めることにしたのか…!」

愛は凄く驚いた表情で、ほとんど叫ぶように声を出しています。