フォレストサイドハウスの住人達(その14)
35 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(490)
鶴岡次郎
2016/08/12 (金) 15:27
No.2888

「なあ・・んだ・・、そこまでご存じなのですか・・・、
なら・・・、何も隠すことはありません・・。
幸恵さんの失踪を手伝い、ソープ勤めを勧めたのは私と佐王子さんです・・。
そして・・、幸恵さんの後を追うようにして私もお店勤めを始めました・・」

笑いをこらえながら千春が告白しています。

「実は・・・、私・・・、
幸恵さんの事件を調査した探偵社の臨時職員なのです。
私の勧めで、佐原さんが幸恵さん失踪の調査を私の事務所に依頼され、
私もその調査に参加することになりました。
それで・・、佐原家の事情はかなりよく知っています。
幸恵さんのアパートで、彼女と面談したこともあります・・・」

「エッ・・、あのアパートへも行ったことがあるのですか・・・、
そうですか。あのアパートも知っているのですか・・・」

5Pなど派手な男遊びをそのアパートでやった経験があるだけに、幸恵のアパートを由美子が知って
いると聞いて、千春は少し気の引ける感じになっています。

「千春さん・・・、
一つ聞いてもいいですか・・・・」

「ハイ・・・、どういうことでしょうか・・・、
由美子さんと愛さんになら何でも答えられそうです・・・」

「ありがとうございます…、
それでは・・・、単刀直入にお尋ねします…」

千春の好意的な発言に由美子がにっこり微笑んでいます。

「千春さんと、佐王子さんはなぜ幸恵さんにソープ嬢の道を勧めたのですか・・、
幸恵さんにソープ嬢の道を勧める際、迷いはなかったのですか…」

「ソープ嬢は幸恵さんご自身が選ばれました。
私と佐王子さんはそのお手伝いをしたのです」

「・・・・・・」

「事実はこの通りですが・・・、
これでは由美子さんの疑問に答えたことにはなりませんね…」

「・・・・・・・」

由美子が無言でこっくり頷いています。

「幸恵さんをなぜ止めなかったのかと・・・、
不審に思っているのですね・・・」

「はい・・・」

素直に由美子が頷ています。幸恵が望んだにしろ、その世界のことをよく知っているはずの佐王子
が、なに不自由なく暮らしている、ずぶの素人である幸恵のソープ嬢転身を本気で進めたことが由美
子には不可解なのです。店の利益を考えて幸恵をソープ嬢に堕とすような佐王子ではないと由美子は
考えているのです。

「由美子さんは佐原さん夫妻のこと、どの程度までご存じなのですか・・・、、
佐原さんから、ご夫婦の事情を聞かれているのですか・・・・?」

千春が由美子に質問しています。かなり深刻な佐原夫妻の問題だけにうかつに話すことが出来ないと
千春は思っている様子です。

「佐原さんからはかなり突っ込んだ話を伺っています・・。
おふたりの間には、何年も夫婦の交渉がない状態であったこと、
そんな状況下で、佐原さんがSMクラブに通い詰めるようになり、
そこでやや変則的な性交を楽しむようになっていたことなどを、
佐原さんは私と愛さんに話してくれました・・」

「ああ・・そこまでご存じなら、隠すことは何もありません…」

由美子の返事を聞いて、千春が安どしています。