フォレストサイドハウスの住人達(その14)
31 フォレストサイドハウスの住人達(その14)(486)
鶴岡次郎
2016/07/26 (火) 13:48
No.2884

「公園を通りかかった時、
イケメン中年が寂しそうにしていたから、
由美子さんが声をかけたところまでよ…」

「ああ・・、そうだった…、
スケベーな千春さんが居ると話が淫らな方向にそれるね…・」

「あら・・、
私のせいばかりではないと思いますけど…」

三人の女がまたゲラゲラ笑っています。

「彼の傍に座って、取り留めない話をしているうちに・・、
もっと彼のことが知りたくなって…、
愛さんの店へ誘った…・」

「あら、あら・・・、やるものですね…、
女の甘い罠だとも知らないで・・、
その男も、ノコノコ付いて行ったのでしょうね…・
男はだれでもスケベーだから・・」

「彼がスケベーかどうか判らないけれど…、
とにかく、快く応じてくれた・・・・」

「やっぱりそうでしょう…、
由美子さんから誘われて断る男はいないと思います…。
その時、由美子さん・・・、やったと思ったでしょう…。
感じ始めていたでしょう・・・、
濡れ始めていたでしょう・・・、違いますか・・・・」

「知りません・・・」

「アハハ・・・・・」

三人の話は縦横に話題を転じながら、盛り上がっています。

愛の店に来たその男は彼の妻佐原幸恵の失踪事件を由美子と愛に話したのです。それでも、この場で
は、千春には幸恵疾走の話は伏せるつもりでいる由美子です。愛も暗黙の裡に由美子の意図を察知し
て、余計な口を挟みません。

「その日の出会いが縁で、私と愛さんは彼の家に招待されることになり・・、
それ以来、彼のお家・・、1613号室を時々訪ねるようになったの・・」

「1613号室…?
ああ・・・、その人、佐原さんだったのですか・・・」

「そうよ・・・、佐原さんなの・・」

「佐原さんね・・・、
確かに・・・、彼は目立つほどのイケメンだわ…・・。
ああ・・、そうか・・、
彼が私の名前と部屋番号を教えたのね…・」

「違う・・、
佐原さんから千春さんの名前を聞いたわけではない・・
佐原さんの隣の家が千春さんの家だと気が付いたのは・・、
今の今よ…、確信が持てなかったから、話がここまでもつれたのよ・・」

「そうよね・・・、確かに・・・、
浦上家のことは勿論・・、
他のマンション住人のことを佐原さんは話題にしたことがない・・・
そういう意味では口の固い人だと言える・・・・」

それまで黙って二人の会話を聞いていた愛が口を挟んできました。

「それなら・・、由美子さん・・・、
あなたはどうして佐原さんの隣が千春さんの家だと判ったの…
私もその訳が知りたい…・・
まさか・・、二人きりの時、彼との寝物語で聞きだしたわけでは・・・?」

ここまでくると、愛にも謎解きの面白さが沸いてきた様子です。千春を押しのけて由美子に質問して
いるのです。由美子がにやにや笑っています。